最近の非メジャーなボーカロイド音楽事情

最近のボーカロイド関連の話題というと何を思い浮かべるでしょうか。恐らくまずは紅白歌合戦への出演を果たしたハチこと米津玄師の存在が出てきそうですね。ヒトリエのwowakaの死という悲しい知らせもありました。しかしバルーンこと須田景凪、n-bunaことヨルシカ、有機酸こと神山羊などなど、新たなボカロ出身ミュージシャンたちが続々と一般の音楽シーンへ殴り込みをかけており今後の活躍が期待されるところです。また、歌ってみた界隈やVtuberブームの中でボカロ曲が多く歌われている他、2018年はみきとP「ロキ」が大ヒットするなど、一時の勢いは無くなったと言われる中で未だ根強い人気があると言えます。

しかし本記事のテーマはそこではありません。こうしたメジャーなシーンが存在する一方で、草の根では独特のシーンが形成されています。好きな曲をおすすめしあったり、感想を共有したり……。その中で、私は主にツイッターハッシュタグ#vocanewで新曲を聴いたりする方々にお世話になっています。中には通称「全曲チェック勢」という、投稿される曲を全て聴く猛者までおり、実はかなりのバイタリティを要求される過酷な界隈だったりします。

多くのオリジナル曲が発表される中で、ボカロシーンとはミスマッチなのか、優れた曲がヒットに結び付かないことは珍しくありません(何処でもありがちですね)。もどかしさを感じつつただただ素晴らしいと思える曲、あるいは非メジャーなシーンを代表するほど局地的に支持されていると言えそうな曲、本記事ではそのような曲をいくつか紹介していきたいと思います。

 

Puhyuneco「Lonely, lonely 夕方」

最低限Puhyunecoという名前だけは覚えて帰ってください。とにかく、氏について冷静に語るのは難しい…。揺れる自意識とボカロの歌唱が相俟って、どうしようもなく感情を喚起されます。その人物像も謎が多いです。

 

平田義久/三澄一夏/Torero「Hit The Floor」

一方でこの平田義久はツイッターで危うい発言をしてちょっとした騒ぎを起こす問題児ですが、曲の方ははっぴいえんど周辺を源流とするような正統派邦楽ポップスと言えます。ボカロでは珍しい、人を中心に映した実写PVも話題になりました。

 

yeahyoutoo「かけて 解く その心は」

ボカロシーンの中で特にストイックな音楽性と言えるyeahyoutoo。9分弱にも及ぶ本楽曲は、緊迫感を保ったままドラマチックに展開します。ジャズ、ファンク、プログレなど様々な言葉が当てはまるキラーチューン。

 

sn「sweet sixteen

瑞々しい響きのアコースティックギターを軸とした爽やかなバンドサウンド初音ミクのボーカルは今風のハキハキとした発声で、サウンドに溶け込むという従来の在り方とは異なり、リズムを引っ張る役割を果たしています。チャック・ベリー佐野元春は無関係?

 

X1gl「sora」

ポストクラシカル風味のオーガニックなポップス。特に静謐さの際立つこの曲はボーカルのメロディーが極端すぎて聴き取りにくいにも関わらず、しっかりと響く不思議な音色。あえて音量を下げて聴きたくなります。

 

以上、5曲を紹介しました。これらはあくまでほんの一部にすぎません。しかし、ほんの少しだけでもボカロを気に掛けるきっかけになればと思います。

最後に宣伝になりますが、ここからボカロシーンに興味を持った方は4月28日発売の「ボーカロイド音楽の世界2018」、昨年発売の「ボーカロイド音楽の世界2017」でさらに掘り下げることが出来ると思います。私もレビューで協力してます。よろしくお願いします。

 

 

キュウ(@rooftopstar9

ベスト平成ソング、ベスト平成アルバムを集計します!

性懲りもなく始めてしまいました。

twitterで友達と遊んでいたら、ベスト平成ソングのハッシュタグが生まれ、「なんなら俺集計するよ?」とか言い出してしまい、アルバムまでやることになっちゃいました。「どうして俺は自分で自分の首を絞めるんだ?」と思ったけど、なんかみんな楽しそうだったのでちゃんとやります。

平成といっても前半は自我が芽生える前のことはほとんど覚えてないので、30年間をフラットな目線で見てきたわけではありません。だけど別にいいじゃん。2019年の視点から眺めた平成の30年の記録があってもいいと思います。1年後10年後にはまた変わると思うけどそれでいいかなーって。そういうわけで、この遊びに付き合っていただける方がいたらぜひ一緒に遊びましょう。よろしくお願いします!(ぴっち)

 

例)

 

大体こんな感じで投稿していただけるとありがたいです。メモアプリや画像の貼り付けてでもいいけど、文字で書かれていると本当にありがたいです。何卒……!

 

追記(2019-4-22 18:00)

  • 集計はソングだと5曲以上、アルバムだと5枚以上のリストを対象とします。

追記(2019-4-21 15:56)

  • 同一アーティストが3つ以上重複するリストは集計から除外します。

例えば「アルバム」で同じアーティストのアルバムが3枚以上入っている場合は集計しません。ネタとわかっていても集計に偏りが出るためです。ご了承ください。 

ランキングについて

  • 今回は国内のみです。
  • ソング、アルバムで10曲、10枚まで挙げてください。
  • ソング、アルバム、どちらかだけの参加でも大丈夫です。
  • ソングについて、バージョン違いはまとめさせていただきます。(でもミスチルの「I'll Be」とかどうしよう……)
  • アルバムについて、EP、ミックステープ、シングル、ベスト盤、コンピレーション、すべて大丈夫です。
  • 今回は順不同で全作1Pで計算します。
  • リリース日は1989年1月8日から2019年4月30日の間に指定します。
  • 締切は4月30日23時59分です。
  • この記事のコメント欄とtwitterハッシュタグで受け付けます。
  • ブログをお使いの方はリンクを貼っていただければ。確実に拾います。
  • twitterで「#ベスト平成ソング」「#ベスト平成アルバム」を付けて投稿していただいたものはこちら側で勝手に確実に集計します。
  • twitterで画像のみでの投稿の場合、作品名の把握が困難な場合があります。作品名も投稿していただけるとありがたいです。

記事の公開について

  • 上位50か100か150かはわからないけど、レビューもやります。基本的にディスを除くすべての投稿を載せます。
  • 集計データは非公開です。
  • 個別の作品の獲得ポイントは公開しません。完成後の順位の転載を許可します。レビューの転載はお控えください。

大事なこと

  • あくまでこのランキングは記録用です。ネットの一部分の傾向を計測したものに過ぎません。作品の優劣には無関係です。本気になりすぎないでください。遊びです。それがわかる人だけお付き合いください。

その他

  • 質問は随時@pitti2210で受け付けています。

 

ではよろしくお願いします!

KOHH『UNTITLED』

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Apple Music Spotify

御徒町周辺はおもしろい。特にアメ横のカバン屋が。その店は閉店セールと称して定価数万円(らしい)カバンを3000円均一で売っている。そして実際に店を畳むのだが、しばらくすると何100メートルか離れた別のスペースで同じことをやり、それを幾度も繰り返す。実質同一店舗であることは呼び込みのおっちゃんでわかる。そのグレーな感じ。本物とパチモンが、大通りと風俗街が、蔦屋書店とCASTLE RECORDSが、さほど距離もない空間に併存しているあの感じがとても好きだ。

様々なものが並列であるこの状況は何もオフラインに限らず、むしろオンラインの方が加速している。ストリーミングサービスが顕著な例だろう。場はあらかじめ用意されていて、その中から情報や物品を自由に選べる。フィルタリングやエコーチェンバーなどの問題はあるが、そんなのはオフラインでも同じだ。そう考えると、この数十年で私たちは(見かけ上は)フラットにモノを見られるようになったと言えるのではないか。

KOHHの新作は《みんなでひとつ》に始まり《全然見た目は違うけど同じ》で終わる。そう本来、誰も彼も大した差はない。気分が良いときも悪いときもあるし、生まれれば終わるし、もっと言えば死んでようが心に生き続ける人はいるし、逆もまた然りの存在だ。そんな私たちが存在すること自体に大それた意味などなくすべてはフラット。対義語をあえてリリックにいくつも並べることで、そのメッセージ性がより強まる。

加えてKOHHが繰り返し唱えるのは、あらゆる物に価値を与えるのは人だということ。そして、そのレッテル貼りこそが心地よく生きていくためには重要だということだ。彼はたまたま御徒町で純金のチェーンを買いマルセル・デュシャン『泉』に放尿する夢を見ているが、各々が価値観を見出せさえすればメッキのチェーンを誇らしく見せつけても『泉』を傑作として崇めても問題はないのだ。そうしたポジティヴなレッテル貼りはヒップホップにおいて幾度も行われるが、レッテル貼りによるネガティヴな側面も描いたリリックや一貫して不穏なビートは、2019年の今だからこそ切実に、半ば狂気じみた色合いをもって響いてくる。 

昨年末から今年の始めにかけて「俺たちは現実の存在か?それとも虚構か?」というテーマのヒーロー映画がいくつか公開された。そうした価値判断を巡る問題への回答はいずれも「そんなの関係ねえ」というもの。それらの作品と同様、価値は勝手に見出せ、気に入らねえ価値観は蹴散らせとアジテートする本作が、「平らかに成る」時代としての「平成」の終わりに生み出されたのは偶然ではない。

 

 

まっつ(@HugAllMyF0128