この国の音楽批評が男女平等とはとても言えない

ブログ「電子計算機舞踏音楽」の「女は音楽ライター・評論家にはなれない」という記事が話題だ。内容は欧米と日本の各メディアにおける男女の執筆者の比率を元に、日本の音楽メディアにおいて男女差別が蔓延る風潮を嘆き、かつ皮肉るものなのだが、そこで示されたデータが衝撃的だった。

senotic.hatenablog.com

Guardian 38.6% (女性22、男性35)
Pitchfork 40% (女性10、男性15)
Wikipedia 日本の音楽評論家 6% (女性14、男性210)
ele-king 6% (女性2、男性29)
MIKIKI 0% (女性0、男性2)
タワーレコード 8% (女性1、男性12)
Mastered 6% (女性5、男性77)
JET SET 13% (女性7、男性45)
The Sign Magazine 0% (女性0、男性13)
アジカン ベスト 4% (女性1、男性26)

この記事ではGurdianとPitchforkしか扱っていないので欧米のメディアのすべてにおいて男女の比率がある程度以上拮抗させているかはわからないが、日本の音楽メディアの執筆者の女性比率は0-13%なのは衝撃的だと言っていいと思う。

ただ、ここで挙げられたメディアはネットメディア、アジカンのonly in dreamsに至っては専業のライターよりも同業者の側面が強いため、紙のメディアにおける女性比率がどうなのか気になったので調べた。結果から言うと、ここで挙げられたデータほどひどくはないが、かといって褒められるものでもなかった。(なおここでは手持ちの雑誌を用いた。2019年の年間ベストに焦点を当てているわけではないが、その数年後に状況が劇的に改善しているとも思えないのでご容赦願いたい)。

MUSICA 2019年1月号 11.1%(女性1、男性8)*1
MUSIC MAGAZINE 2019年1月号 7.6%(女性3、男性36)*2
CROSSBEAT YEARBOOK 2017-2018 26.6%(女性8、男性22)*3
Rockin'on JAPAN 2017年10月号 44%(女性8、男性10)*4

Rockin'on JAPANは年間ベスト企画をやっていないため、巻末のレビュー執筆者における女性比率を用いた。結果から言えばRockin'on JAPANはPitchfrokやGardianに劣らない水準、そしてCROSSBEATはそこまでではないが26%という比較的ましな水準を記録した。一方で、MUSICAとMUSIC MAGAZINEは日本のネットメディアと大差ない水準だった。

電子計算機舞踏音楽」の

男性目線のみで選ばれ記録されたJPOP史が、歴史として残る

という皮肉を覆す、もしくは反証するに至るデータを示すことはできなかったと言っていいだろう。もちろん言うまでもなく国内には優れた女性の批評家・ライターがいる。しかし彼女らが男性の同業者の2倍の成果を挙げたところでその全体数が少なければ彼女たちの影響力が相対的に小さくなるのは致しかたない。

その上で、そもそも「音楽批評において男女平等は必要なのか?」という疑問が湧いてくる。僕は専門家ではないので確かなことは言えないが、少なくても毎月リリースされる音楽作品の作り手や演者、それからライブおけるお客さん全体を見た上で、飛び抜けて男性の比率が高い、少なくても2倍以上高いとは到底思えない。だとすればこの偏りは改善すべき状況なのだろう。

ちなみに音楽だいすきクラブはあくまでサークル活動であり、原稿料を支払った上で執筆者を選定する媒体ではないのでこれらのメディアと同様に論じていいのかもわからないが、あくまで管理人の自分としては性別によって萎縮することない空間を作れたらいいと思っている。ほとんどの書き手とは面識がないため確かな男女比率を計算することはできないが(でもベスト平成アルバムのレビュー執筆者の女性比率15%だと推測している)、できることならどちらかに偏りすぎた運営は避けたいと思っている次第です。

新年から頭が痛くなるような現状を直視するのはつらかったけど、事実は事実として受け止めなければいけない。2020年もよろしくお願いします。

 

ぴっち(@pitti2210

 

*1:女性→有泉智子、男性→鹿野淳、黒田隆太郎、宇野維正、小野島大、金子厚武、佐久間トーボ、三宅正一、レジー

*2:女性→今井智子岡村詩野Rei、男性→あだち麗三郎、石田昌隆、大石始、大鷹俊一、小倉エージ、小野島大小袋成彬、久保太郎、小山守、坂本哲哉、柴那典、鈴木孝弥、鈴木啓志、STUTS、高橋健太郎、土屋貴雅、土佐有明、高井真道、柳樂光隆、行川和彦、新田晋平、萩原健太、原雅章、ピーター・バラカン、原田尊志、松尾士郎、松永良平松山晋也、宮子和眞、村尾泰郎、安田健一、山口智男、湯浅学、油納将志、渡辺亨、渡辺裕也

*3:女性→赤尾美香、今井スミ、奥浜レイラ、小谷育代、新谷洋子、中島友理、美馬亜貴子、山下紫陽、男性→青山晃大、天井潤之介、荒野政寿、上野功平、内本順一、小熊俊哉、金子厚武、国井央志、黒田隆憲、佐藤英輔、沢田太陽、杉山仁、長谷川町蔵、広瀬融、保坂隆純、村尾泰郎、村上ひさし、山口智男、山本大地、吉田豪、吉本栄、渡辺裕也

*4:女性→杉浦美恵、上野三樹、峯岸利恵、今井智子、吉羽さおり、高橋美穂、峰典子、泰理絵、男性→高橋智樹、小池宏和、遠藤利明小野島大、兵庫慎司、荒金良介、田中大、三宅正一、小田部仁、秋魔竜太郎

2019年のベストアルバムを集計します! #ベストアルバム2019

今年もやります。早いもので2013年にこの企画をはじめて7年目になります(アーカイブとして2010年から2012年の分もあります)。いつまでやれるかわかりませんができる限り続けようと思うので、一緒に遊んでいただける方は何卒!

 

2018年はこんな感じでした。

ongakudaisukiclub.hateblo.jp

 

今年も国内外混合でやります。どちらかのみでも大丈夫です。僕のはこんな感じです。

例)

1. KOHH『Untitled』
2. サカナクション『834.194』
3. NOT WONK『Down the Valley』
4. 土岐麻子『PASSION BLUE』
5. Big Thief『Two Hands』
6. 相対性理論『調べる相対性理論
7. Magic, Drum & Love『HURRICANE UPSETTER』
8. Bon Iver『i,i』
9. iri『Shade』
10. Daniel Caesar『CASE STUDY 01』

 

締切は2019年12月31日23時59分、レビューの受付は2020年1月12日から、結果発表は1月20日から22日を予定しています。

詳細は以下です。

 

ランキングについて

  • 国内・外混合です
  • 邦楽のみ10作品挙げていただいても構いません。洋楽のみでも大丈夫です。
  • EP、ミックステープ、シングル、ベスト盤、コンピレーション、すべて大丈夫です。
  • 選べるのは5枚から10枚までです。4作品未満のデータは受け付けません。
  • 「1位10P、2位9P……10位1P」方式で集計します。順不同の場合はすべて5Pで集計します。参加者1人の最大合計点数は55Pです。
  • 作品の発売日は2019年12月31日までです。2019年以前のものを挙げていただいても大丈夫です。
  • 締切は2019年12月31日23時59分です。
  • 投稿していただいたものにだけに留まらず、あらゆるデータを集計します。

参加方法

  • この記事のコメント欄とtwitterハッシュタグで受け付けます。
  • ブログをお使いの方はリンクを貼っていただけると幸いです。確実に拾います。
  • twitterで「#ベストアルバム2019」を付けて投稿していただいたものはこちら側で確実に集計します。
  • twitterで画像のみでの投稿の場合、作品名の把握が困難な場合があります。作品名を入れていただけるとありがたいです。

記事の公開について

  • 例年同様作品レビューもやります。基本的にディスを除くすべての投稿を載せます。
  • 集計データは非公開です。
  • 個別の作品の獲得ポイントは公開しません。完成後の順位の転載を許可します。レビューの転載はお控えください。

大事なこと

あくまでこのランキングは記録用です。ネットの片隅の傾向の一つを計測したものに過ぎません。作品の優劣とは無関係です。本気になりすぎないでください。遊びです。それがわかる人だけお付き合いください。

その他

質問は随時@pitti2210で受け付けています。

 

ではよろしくお願いします!

ネットの音楽オタクが選んだベスト平成アルバム 50→1

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平成三十一年の終わりに462人(と100人近くの無効票)のデータに基づいて作られたベスト平成アルバム最後の50枚です。僕はわりと順当だと思いました。何も異論はないです。あったところで答えが変わるわけでもないけど。令和も2ヶ月近く経ち、平成という時代に何か思うことはありましたか?僕は今のところ何もないです。いつもの日常が続いています。でも時間が経って平成という時代を思い返す時に、このランキングが誰かの手助けになることができたらうれしいです。(ぴっち)

このランキングについて
  • Twitterハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しました。
  • 募集期間は平成最後の4/20-30の間。
  • 462人のデータを集計しました。
  • 同点の場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • そのため順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 150位以内はすべて6人以上に挙げられたものです。
  • レビューは有志によるものです。500字以内ディス無しでやっています。
  • なおレビューは随時追加されます。
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