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2012/2/22 People In The Box『Citizen Soul』release tour at 横浜Club Lizard

この日、人生3度目のPeople In The Boxのライブに行ってきた。2年以上経った今でも忘れたくないくらい自分にとって記念碑的なライブだった。そのあたりを当時の言葉のまま届けてみようと思う。

整理番号120番台。思ったより横幅が狭くステージ低い。真ん中あたりの位置確保。後ろに男の子が2人が立っていた。2人は友達でそれぞれ別のバンドを組んでいるようだった。「泥の中の生活やんねえかなあ」と男の子が言った。「やんねえよ」ともう一人の男の子が笑いながら言った。「失業クイーンやんねえかな」「やんねえよ」2人はほかにもいろんな話をしてた。ライブ後、Twitterにその2人の会話を隣で聞いてた方がいて、つまり私の横にいたあの子だと思ったりした。

20分くらいで暗転。メンバーが出てくるかと思ったらそうではなかった。暗闇の中でハタノさんの朗読が始まった。どこか架空のおとぎ話のようで、でも妙なところでリアル。「きみたちがこれから飲み込むたくさんのものたち。ピープルインザボックスは、そんな選択のうちの一つでしかありません」すてきなお話だった。People In The Boxは架空の中に存在する確かな現実なのだ。

「沈黙」でスタート。どこにもないような変拍子からはじまる。いや拍子なんてものはすでにない。そのような曲のメロディーを3人が見事に組み合わせて1つの曲にする。辛辣な世界の荒廃を告げているのに、なぜか前向きな気持ちになれる。そして「笛吹き男」へ。ベースのラインと大吾さんのハモリがいいなあと思ってたら、ライブで大好きになった「市民」に続き興奮。

「寒くなってきましたけどみなさん大丈夫ですか?」そんなハタノさんの喋りにみんなくすくすと笑う。少なくとも私は「なってきたんじゃねえよだいぶ前からだいぶ寒かったよ」と思ったけど、「あれ、そうか今日ってあったかかったんですよね。そぐわないこと言っちゃいましたね」と話す。

4曲目の「親愛なるニュートン街の」で再開。福井さんが地元で録ってきたというセミの声がないのが少し物足りない気もしたけれど、どこか懐かしく、もの悲しさの中から立ち上がる明るさはライブでもそのまま。「ペーパートリップ」ではイントロで詰まる感覚。それでも「うわあ好きな曲だあ」と思っていたのだけど、歌の入りまでずれた時点でハタノがストップ。「もっかいやろっかー」とにこやかな雰囲気で入り直した。

大吾さんのMCは絶対やるだろうなって思ってた掛け声から始まった。「シティゾゥンシティゾゥンシティゾゥンソウル!」「ハイっ!」彼の声は彼が叩くドラムの音によく似ている。鋭利な形なのに先は丸みを帯びて、すっと届いてくる。

「一番遠くからきたって自信ある人手をあげてー!」誰も手を上げない。そしてハタノさんが声を挟む。「でも、もしかしたら、「架空の国からきました」みたいな人もいるんじゃない?」「なるほどー!ではその『架空の国』の国名は?」「はい、えーと、シューマイランド。…ええ、今のは35点」自分に甘すぎるハタノさんであった。福井さん、今日初めて口を開くかと思ったけど、ちらりと見もせずに楽器に夢中。まるで聴いてもいないみたいに華麗なスルー。お見事。

9曲目の「冷血と作法」が一番聴きたい曲だった。わくわくして手をぎゅっと握りしめてしまった。知ってるはずの展開が、全く知らない世界のような顔をして目の前に広がって、めまぐるしくて翻弄されて、どこか連れ去られてしまいそう。あの爆音の中にもう一度だけでもいいから突き落とされてみたい。

またライブハウスの話になった。「後ろの方の人、俺ちゃんとよく見えてるからねー!」、大吾さん。「乱視だからねえ、コンタクトが1か月分で1万円くらいすんのよ」「だからね、そんな乱視に似合う曲をやります」からの「ブリキの夜明け」へ。この曲の最後2行の歌詞がとても好き。また聴きたいなあ。この曲だ!とわかりながら聴きたい。

そして新譜から「ニムロッド」が演奏された。打って変わって、音の輪郭が鮮明に。ライブで聴くのは3回目だけど、どんどん深みが増している。初めて聴いたときはサラっとしすぎていると思ったけど、曲調にだまされてる間に、高みへと連れていかれる。そして最後、聴きなれた「旧市街」のイントロ。CDとはまた違うテンポの取り方とかカウントに、「わー」ってなる。ベースがかっこよすぎる。とにかくこの曲でピープルにぐっと引き寄せられたというのがあるので、そんな曲を何度も何度もライブで聴くことができて、ほんとうに幸せ。

ラストの「汽笛」は一曲で世界が完結していると思う。出だしの歌詞がとても印象的だ。

《広い荒野に、汽笛だけが響いている》

一度聴いただけで惚れ込んでしまった曲はこれだけかも。敢えて例える必要はないと思うけど、この曲を聴くと「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」のことをいつも思い出す。あそこもきっとこんな場所だったに違いない。コーラスが織りなす不協和音が、この世界の終りを告げる。軋む響きがなぜだか心地よかった。

アンコールは出だしでこけた。ずるずる転んで3音目でストップ。この日2回目のハプニングにけらけら笑う客席。とハタノさん、「うるせええー!」「間違えてなにがわるい!」と開き直る姿がかわいい。そんなことをしておきながら、

《2度とは許せない》

と歌ってドキッとさせられるのだから、もう完敗。アンコール2曲目の「ベルリン」。正直、アンコールに似合わないんじゃ?と思ったけど全然そんなことはなかった。赤と緑の照明がちかちかしてるのもうれしい。そこからの「バースデイ」、今日がたとえどんな日だったとしても、

《今日は君のバースデイ》

なんて歌われてしまったらもう。最後の一節は絶叫だった。ああ終わりなんだなと、満足感に浸れる響きだった。

1. 沈黙
2. 笛吹き男
3. 市民
4. 親愛なるニュートン街の
5. 見えない警察のための
6. ペーパートリップ
7. 技法
8. 犬猫芝居
9. 冷血と作法
10. ブリキの夜明け
11. ニコラとテスラ
12. 月曜日/無菌室
13. はじまりの国
14. スルツェイ
15. ニムロッド
16. 旧市街
17. 汽笛
encore
18. 日曜日/浴室
19. ベルリン
20. バースデイ

 

 

かがり(@14banchi