tofubeats『ディスコの神様』をめぐる今、本当にアツい音楽

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tofubeatsの2ndシングル『ディスコの神様』出たね!

今回こそスルーしようと思ったのに。

いや、全然嫌いとかじゃないです。むしろ大好き。tofubeatsの大ファンです!でもデビューからすべての音源を買っているアーティストって他にいなくて、むしろこのまま離れられなくなるんじゃないかと。これは依存症なのかも。そろそろ一度断ってアーティストとリスナーの健全な関係に戻らないと。そう思っていた矢先のMV公開。や・ば・す・ぎ・る。MVに出演しているマチルダ、谷口蘭、入夏、奥村友加里の4人が素敵過ぎるのもあるけど、満を持して登場した藤井隆tofubeatsの姿に大興奮。スターだよ!オーラ半端ないよ!や・ば・す・ぎ・る!3分40秒からの展開は必見です。ダンスピーポーならうれしすぎて泣くにちがいない。

tofubeats「ディスコの神様 feat.藤井隆

しかも今回の「ディスコの神様」にはコーラスとしてShiggy Jr.いけだともこ、そして18歳の宅録系シンガーソングライター・ラブリーサマーちゃんも参加しています。

アンテナを張ってる人は知っているだろうけど、Shiggy Jr.は2012年に結成した東京で活動するポップ・バンドです。昨年リリースされた1stミニアルバム『Shiggy Jr. is not a child.』は音楽ファンの目を釘付けにしたというか、自分が釘付けになりました。個人的にはソウル、ディスコあたりを感じさせるバラード「サンキュー」が抜群に良かったけど、今回はやはり2013年のキラーチューンをここに紹介します。

Shiggy Jr.「Saturday Night to Sunday Morning

わかるかな?作詞作曲を手がけるしげゆきはらだの「ポップスをJ-POPに落としこむセンス」が抜群なのは音楽好きなら誰でもすぐにわかるけど、ボーカルのいけださんも抜群に歌がうまいのです。勝手に相対性理論以降にポップアイコンとして求められている歌声」と位置づけています。00年代のライブ至上主義ではなく、相対性理論Perfumeといったそれへのカウンターでもない、2010年代の新たなポップ・スタンダードの歌唱がこれだと。まあ僕が勝手に盛り上がっているだけなのですが。いけださんがこれを見ていないか心配…(恥ずかしい)。ちなみに最初の「いえーい」いけださんだよね?

他のメンバーも素晴らしい音を出しているけど(特にベースが好き)、このミニアルバムをリリース後にいけださんとしげゆきはらださん以外のメンバーが脱退し、森夏彦もろいしかずまの2人が加入しました。森さんはナンバタタンの『ガールズ・レテル・トーク』に参加していて、びっくりするくらい良い音を鳴らすベーシストということをすでに確認済みなのですごく楽しみです。

また先日、新曲「Baby I Love You」を公開した(※現在は非公開)ことからわかるように、現在レコーディングの真っ最中です(たしか)。おそらく今年最も重要な作品の一つになると思うんだけど、ああもう、待ちきれなくて死ぬわ!

そしてもう一人のコーラス、ラブリーサマーちゃんは4月3日にMaltine Recordsからラブリーサマーちゃんと芳川よしの名義で共作EP『はじめまして』をリリースしたばかりのシンガーソングライターです。マルチネなので当然、無料DL可能です。

Maltine Records - [MARU-130] - ラブリーサマーちゃん と 芳川よしの

ただ、個人的にはSoundCloud上に上げられたtofubeatsの「水星」のカバーがあまりに素晴らしかったのでこちらを紹介します。やくしまるえつこを思わせるソフトな歌声でありながら、正反対のエモーショナルな歌唱がたまらなく魅力的。これもまた2010年代っぽい気がします。こちらもSoundCloudのページからDLできます。

ラブリーサマーちゃん「水星(cover)」

また彼女は東京で活動するインディロックバンド・For Tracy Hydeのボーカルとしても活動しています。先日開催されたM3にて新作CDEP『In Fear Of Love』が配布されたのことですが、SoundCloudでその一部となるデモ音源がアップされています。

For Tracy Hyde『In Fear Of Love』(Demo)

とまあ、1曲目の「ディスコの神様」だけでこれだけのネタがあるわけなのですが、それで終わるような「ヤワな」シングルではありません。tofubeatsが恐ろしいのはシングルでありながらA面に匹敵するカップリングを必ず用意し、なおかつその他にも新しい音源を2曲用意しているところです。

今回の2人目のメインゲストはokadadatofubeatsとokadadaの2人組ユニット・dancinthruthenightsの片割れでもあり、関西とネットを中心に活動するDJ/トラックメイカー。個人的には2010年頃の年末にUSTREAMで話題をかっさらったDJプレイで名前を知ったので、tofubeatsより前から知っていました。

tofubeats「Her Favorite feat.okadada」「衣替え」

今回のシングルには他にも相変わらずのボーカル加工の歌モノなのにやたら染みてくる「衣替え」、そしてハウスチューン「HANERO」も収録。前2曲ほどのクォリティではないけど、こういうB面らしいB面にはマニア心がくすぐられるし、その上リミックス(しかも2人分!)とインストまで収録。iTunesの方だとその上「ディスコの神様」のアカペラがついて1000円!当初は900円の予定だったけど、それでも1000円。お金のことはあまり言いたくないけど、安すぎです!そうなのです。tofubeatsは2010年代屈指の作曲家・トラックメイカーでありながら過剰なまでにサービス精神が旺盛なのです。恐ろしい。

tofubeats「ディスコの神様-megamix-」

そして藤井隆について。藤井隆は昨年6年ぶりのシングルをリリースしました。作詞作曲及びプロデュースを松田聖子が担当しています。その組み合わせの凄さがわからない人が多いと思うので、ぜひ曲を聴いてみてください。僕も音源を聴いてびっくりしました。tofubeatsは「She is my new town」を聴いて驚いたとのことだけど、僕は2曲目の「I just want to hold you」に驚いたのでそちらのMVを紹介します。

藤井隆「I just want to hold you」

エレクトロポップです。元々シングルにおいては、大ヒット曲「ナンダカンダ」の浅倉大介GAKU-MCだけではなく、松本隆筒美京平本間昭光堀込高樹、CHOKKAKU、Tommy february6といった人たちと共演していることからわかるように、藤井隆は音楽偏差値の高い人なのです。考えてみればあの「マシュー南」が一世を風靡したのはキャラクター性だけではなく、細かな世界観を作り上げるだけの知識を必要としていたわけで。正直舐めてた。前述の誰よりもアーティストとしての業を抱えている感じなのに(特にMVとか、怖すぎ)、サウンド自体は恐ろしいまでに口触りのいい仕上がり。

 

そんなわけで、つまりは藤井隆、Shiggy Jr.、ラブリーサマーちゃん、okadada、Carpainterという今聴いておかなければならないアーティストをパッケージしながら、その中でどうしようもないくらい自分の「業」を音楽にせざる得ないtofubeatsが本当にヤバイという話でした。森高千里をフューチャーした「Don't Stop The Music」(=音楽を止めないで!)も直球だったけど、今回も恐ろしいまでにど真ん中なのだ。

《暇で死んじゃいそうな僕を助けてよ MUSIC》

これはtofubeatsの本音であり、原点なのだと思う。この先もずっと彼は音楽に助けられて生きるのだと思う。それは僕のようなリスナーも同じだけど、彼は一生涯、たとえ売れる音楽を作る才能が枯渇しても音楽を聴き続けるのだろうし、作り続けるのだろうし、救われ続けるのだと思う。

《夢でも現実でも どっちでもいいんじゃない》

音楽さえあれば他のことはどうでもいいのだ。そこまで真剣に音楽と向き合いながら、それをシリアスな方面に振り切らないのが本当に素晴らしい。本当に今しか作れない音楽を淡々と作り続けている時期なのだと思う。そして何よりも、要素を分解しただけの僕の理屈すらどうでもいいくらい「踊れる」ことが本当に最高だ。

 

追記。3分40秒からの藤井隆×tofubeatsのほんとうの意味での「ワンルーム・ディスコ」MV、あれは完全に2010年代の新たなディスコ・イメージだと思う。去年のDaft Punkよりもずっと斬新。でもtofubeatsってずっとあれをやり続けているんだよね。グッケンハイム邸でのライブもそうだし。 

 

 

ぴっち(@pitti2210