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散休レコード第3回 東京60WATTS『すべてのバカものへ』

みなさま、こんにちは。「音楽好きな類人猿」ことゴリさんでございます。

この企画は現在解散した、または活動休止したバンドのCDレビューを通して、その作品の良さや魅力を語り、再評価していく連載です。

さて、散休(サンキュー)レコード第3回目で取り上げるCDはこちら。

東京60WATTS『すべてのバカものへ』

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東京60WATTSの略歴紹介

1999年ごろ、立教大学の音楽サークルで知り合い結成され、メンバーはVo.大川たけし Pf.杉浦琢雄 Gt.佃太郎 Ba.大山敦史 Dr.森利昭。2004年に「外は寒いから/ふわふわ」で東芝EMIからメジャーデビュー。2005年11月にavexに移籍。自主レーベル『HIKARIMON RECORD』を立ち上げる。2006年からは、avexと所属事務所FIVE-Dの共同レーベル『FIVE-D PLUS』所属。2009年に結成10周年を迎えるが、2010年9月無期限活動休止を発表。

まずこのバンドがどういう音楽をやってきたバンドか。彼らの音楽の根源はアメリカはニューオリンズにある。ニューオリンズの文化として培われたジャズ、ソウル、R&Bと言った音楽を下地にして、それを日本人に合わせたポップスとして提供してきたバンドがこの東京60WATTSだ。

そしてこのサウンドの完成系でもあり彼らの代表曲ともなったのが、この「目白通りいつも通り」である。

東京60WATTS目白通りいつも通り」

アルバムの1曲目の冒頭のピアノからぐっと引きつけられる。その後、大川の語りかけるような優しい歌声、そしてソウル、ジャズを下地にしたポップサウンド。この曲以降、特に2005年以降はポップス寄りの曲を発表する。しかしこのアルバムの語るべき点はこの曲ではない。

東京60WATTSのライブを一度でも見た人ならわかると思うのだが、大川という人間は優しいという感じではなく、甲本ヒロト峯田和伸といった、動きや目つきからはパンク精神が宿っているタイプの人間である。それがパンク精神が歌詞によく出ていた楽曲が「昇天」である。

東京60WATTS「昇天」

序盤からでは

《ギターケースに君の手足を詰め込んで ほらね真っ白な骨が見えたよ》

といった生々しく猟奇的な歌詞で「死」を。中盤からは

《僕の体液を君の顔にかけて見上げれば ほらね真っ白な雪の夜だね》

とセックス、すなわち生命を作る作業を描いた歌詞で「生」を、すなわち、「昇天」というテーマを軸に対照的な事柄を歌っているのだ。そしてこの歌詞に合わさりバンドメンバーのおびただしい熱量を感じる演奏。本当に聴いている者が昇天するくらい素晴らしい曲である。

そして最後の「すべてのバカものへ」も素晴らしい。

東京60WATTS「すべてのバカものへ」

自分が売れたらというメッセージをつづったように見えて

《あたりさわりのない歌で売れたクズミュージシャンよ》

《ヒットチャートを金で買い取るレコード会社よ》

《流行に流されるままの消費者連中よ》

(なおライブ版では、この部分の歌詞がより具体的になっている。どう具体的かはぜひ動画を。)と大川は歌う。売れている音楽とその消費者へのアンチテーゼでもあり、ロックを愛するすべての人々の賛歌でもある。この曲は2000年代の屈指の邦楽ブルースだと個人的に思っている。

このような攻めた作品はメジャーデビューした以降は出なかった、いや、出来なかったと言った方が正しいかもしれない。インディーズというしがらみがない場所、20代という若さ、そしてこれから音楽界で爪痕残していこうとする気持ち、それらがすべて揃ったときにでないと、このようなアグレッシブで聴取者の心に刻まれるアルバムは完成しない。

その点において『すべてのバカものへ』は完璧なタイミングで作られた、まぎれもない傑作である。

ぜひ聴いていただきたい。特に、あたりさわりのない歌で売れたクズミュージシャンやヒットチャートを金で買い取るレコード会社、そして流行に流されるままの消費者に。

 

さて、散休レコード第3回いかがだったでしょうか。次回は先日、旧友のバンドのライヴに久しぶり姿を見せてくれた、ギリシャ語で「楽器」を意味するバンドのアルバムを紹介します。

 

 

ゴリさん(@toyoki123

ダラダラ人間の生活