サラダ『20の頃の話』 

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この世には素晴らしいアルバムなのにほとんどの人が聴いたことのない、そんな埋もれた名盤がたくさんある。そこで今回、自分にとって埋もれた名盤の筆頭である、サラダというバンドが1996年に出した『20の頃の話』を紹介したい。

このアルバム、雑誌の名盤企画で見たことは一度もないし、ネットの個人ブログでも検索してわずかにヒットする程度。そもそもサラダの曲自体YouTubeにあるのはたったの3曲(自分調べ)。そしてバンド名が検索しづらい!

そんな自分はどこからかYouTubeのこの曲にたどり着いた。

サラダ「tike tike ランナウェイ」

1996年発売にして4トラックという録音環境。この音のこもり方、ざらつき加減、チープさ。そして楽曲は70年代ポップスを思い起こさせる。男女ボーカルということもあって、シュガーベイブから洒脱さを引いたといった感じだろうか。

内容は本当にどこにでもいる普通の若者の、日常的な不安や悩みをそのまんまポップスにしているだけである。しかしブルーハーツのように《見えない自由がほしくて見えない銃を撃ちまくる》ことも、スーパーカーのように《今はどうしても言葉につまるからヒキョウなだけでしょう? それで、大人になれるならつらいだけだよ…。》と深く思い悩んだこともない、そんな自分にとって、この『20の頃の話』こそリアルだった。「みんなそんなもんじゃないの?」ということである。 

だけど僕はくるくるり回り 結局感じてるエアポケット

だからって今の自分は立ち止まってないし

かといって今のこの状況がいいわけでもない 

たぶん、誰でもこんな気持ち感じたことあるでしょ?大きな虚無感も不自由も感じてるわけじゃないけど、なんとなくの不安を感じながらなんとなく日々を過ごす。そんな普通の若者のための音楽。これこそが等身大。チープでざらついた音、そしてどこかちぐはぐなコーラスがそんな『20の頃の話』にリアリティを出している。

かわいた心だから君は水のよう

こんなにいい気分にまたなれるなんて

しおれてしまうまえに会えてよかったな

今しかこんなふうに思えないかもな  (「暑くてとけそうな日だった」)

そう歌う「暑くてとけそうな日だった」だけど、これはYouTubeにもどこにもないからCDを買って聴いてね。超名曲だから。

もう一度言うと、ここには取り立てて大きなドラマがあるわけでもなければ、大きな感情の揺れがあるわけでもない。しかしだからこそすっと心に染み入る、等身大の名盤。

サラダ「晴れのバス停」

 


ユウキ(@yuki_gc