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The Horrors『Luminous』

合評 レビュー

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とにかくめちゃくちゃカッコいいアルバムだから聴かなきゃもったいないよ!というお節介だけで言うべきことの9割近くを言ってしまった気がする。

昔、バイト先の中学生の男の子におすすめの洋楽を教えてくれと言われてM83を貸したんだけど、今なら「最初の3分半は飛ばしちゃっていいから」とか言ってこのアルバムを貸してあげたはずだ。(ストーン・ローゼズの「I wanna be adored」を彷彿とさせる「Chasing Shadows」の冒頭部分はワクワクするけど、ちょっと焦らしすぎ!)

『ルミナス』はスタジアムで鳴らされても、クラブで鳴らされても等しくオーディエンスを熱狂させる高性能なポップアルバムだ。ロックバンドがダンスミュージックを取り入れるという手法は今更斬新なものではないけれど、それが単なる模倣に終わってしまうケースは少なくない。もちろんご存知のようにプライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』やFriendly Firesの1stのようなダンスを血肉化した最高のアルバムもある。だがそんな過去のレコードは後回しで構わないからこの『ルミナス』を聴けばいい、それらに肩を並べる傑作だから。

ヴァース/コーラス/ヴァースといった使い古されたフォーマットを使わずに、比較的長尺で反復により徐々に高揚させてゆく楽曲が多くを占めている。特にM3,M4の圧倒的な恍惚感とスケールの大きさに、ホラーズというバンドがオアシスやU2といった偉大なスタジアムバンドをも射程にいれたと感じずにはいられない。もちろん気まぐれな彼らのことだ、次作ではまたライブハウスの似合うスタイルに乗り換えているかもしれない。何にしろ『ルミナス』はホラーズというバンドの計り知れないポテンシャルに改めて驚かずにはいられないアルバムとなっている。

長々と言いたかったことの残り1割を書いてきたけれど、やっぱり最初の一言で十分だった気がしないでもない。だから最後にもう一度。

『ルミナス』はとにかく最高にカッコいい素晴らしいアルバムだ。

 

 

クラーク(@kimiterasu

いまここでどこでもない

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The Horrors「So Now You Know」

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大体胡散臭い奴らだと思ってたんだよ。信用しちゃバカを見るよ、とんだハイプ野郎共だってね。メンバー揃ってモデル体型のイケメンばかり、ドレスコードを黒で決め込んでグルーピー引き連れて、鳴らす音はCrampsばりのガレージパンクだ。そんでもって名前はホラーズだと?出来すぎてるよ、そんなの。

ホラーズが頭角を出してきた2006年~2007年頃のUKインディーロックシーンといえば、盛況に次ぐ盛況だった。Arctic Monkeysが火をつけたロックバブル、ニューレイブだのグライムだのポストパンクだのテムズビートだの、今となっては死語と言えるワードが持て囃され、ここ日本でもKlaxonsがブレイクしたのは印象深いところだよね。

そんな飽和手前の狂騒のなか、黒づくめのどぎつい衣装で颯爽と現れたホラーズだ、身構えるに決まってる。誰もが彼等を1発屋のイロモノバンドだと思っていたはずだ。1stアルバム『Strange house』はB級ゴスガレージパンクバンドの初作としては極めて優れていたが、いかんせんチャートの上位を賑わす代物じゃない、一部の音楽オタクが聴くものだ。きっとバンドはこれ一発で解散してボーカルの奴は俳優にでもなるに決まってる。絶対にそうだ。断言するよ。

あれから7年、僕のホラーズに対する見識が全くもって見当違いであったことは皆さんお分かりであろう。当然ボーカルのファリスは俳優になっていない。

彼等は音楽へのスタンスを変えぬまま変化を繰り返し、メディアとリスナー両方からのプロップスを着実に獲得してきた。今回標題となる4thアルバム『Luminous』でも彼等は新たなホラーズの音楽を確信をもって鳴らしている。前作でも片鱗を見せていたエレクトロニクスを本格的に導入、「踊れる」グルーヴを金魚の餌のようにサウンドの中へ放流している。ファリスの歌はとてもメロディアスになった。歌心があり、美しいメロディがあり、心意気がある。勿論彼等らしい幽玄なシンセサイザーやフィードバックギターの響きも健在だが、どれもが明るく開かれた音像に変化している。ソフトサイケポップとでも呼ぼうか。

ひとつ誤解しないでもらいたいことがある。「変化を遂げた事に対する賛辞」は大したものではない。変化することが目的であってはならない。音楽の嗜好は日々変わるものだ、アーティストもそれは全く例外じゃない。彼等の場合、「今、自分達が好んでいる音楽をリアルタイムで自らの音に還元し曲を書く」というシンプルな作曲方法をとっているように思える。過去から現在までの膨大なレコードを聴き漁り、今の自分がグッとくる音楽を自分達でやってみたらそれが最新作になる。極めてナチュラルな変化であり、そこには音楽への敬意と愛情が確かに横たわっていると感じる。早くも次のアルバムが楽しみだ。

最後になるが、今度こそ僕の見識が大間違いでないことを祈っている。是非『Luminous』を聴いて判断してくれ。

 

 

イチロー@takucity4

Anorak citylights

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The Horrors「I See You」

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実際は違うことはわかっているけど(だったら語るな)、「シューゲイズとサイケをUKロックで展開するとこうなる」の見本みたいなアルバムだと思う。まあこれをシューゲイズだけで語るのは間違っていることは百も承知だけど、でも個人的にはそこに深く感心したというか、日本はパンク、テクノ、エモまではロックとしてマスで展開することには成功しているけど、さすがにサイケやシューゲイズで大きな成功をおさめるのはさすがに無理。つまりホラーズの成功はUKロックの歴史の厚さを意味する。

でもね、そういいつつも「とはいってもシューゲイズ(及びサイケ)とダンスはさすがに合わなくね?」と思っていたのね。つまり今回の新機軸であるダンス要素はさすがに野暮だろうと。それ水と油だろうと。酒とコーヒーだろうと。クラブに行ってコーヒー飲むやついる?べろんべろんでぐでんぐでんになりたいのに、正しいステップを踏みたい奴がいるかって?でも聴いてると合うのよ。不思議と。本当にびっくりした。

前作『Skying』ではじめてホラーズの音楽を聴いた時、素敵なタイトルなのにジャケットが暗いと思った。昔のアーティスト写真ははゴシック色の強いB級バンドの容貌だったのに、いつのまにかラフな普段着姿のバンドになった。それなのに相変らずジャケットはダサく、しかもシューゲイズやサイケ本来の方向とは真逆の、歌を届ける方向にバンドは進化していく。

本来、マイナーなジャンルの大衆化には歌という触媒を必要とする。しかしこのアルバムを最後まで聴き終えた後に残るのは、彼らの歌ではなく、ギターの残像であるところがたまらなくシューゲイズ的だと思う。

 

 

ぴっち(@pitti2210