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新しい音楽と出会ったらアルバムを聴こう

コラム

新しい曲を聴いて気に入ったとき、あまりリピートしない。その代わりもしその曲が収録されたアルバムがリリースされていたらすぐに聴くことにしている。もしその曲が収録されたアルバムがリリースされていなければ、その曲を10回ぐらいリピートと直前のアルバムかベストアルバム1枚を聴きながら新しいアルバムを待つことにしている。というのは、新しく出会ったその1曲を、たとえ超気に入っても「聴きすぎない」ことをモットーにしているから。自分がいつからこのスタイルになったか覚えてないけれど、おそらくシングルCDを買わなくなってからかな。それはYoutubeが台頭し始めた頃だったと思う。初めて聴く十数曲の中の数曲だけ歌えるほど知っているような、アンバランスな状態が気に食わない。

シングル、あるいはアルバムの表題曲になる曲は、初めて聴く人にどれだけインパクトを与えられるかの勝負に出ている曲である場合が多い。ということは出会った側としてもファースト・インパクトを大事にしていたいと思う。シングル(表題曲)のインパクトを抱いたまま、アルバムでそのミュージシャンの世界を知りたい。これがわたしの新しい出会いにおける欲求の根底となる。そのインパクトが薄れて慣れてしまうことが怖いのだ。アルバムをトータルで聴くことは1曲をリピートし続けることよりも、そのミュージシャンの意図する時間の流れと音の揺れの中に長く浸かることになり、よりミュージシャンの世界を知ることができる。アルバムはただの曲の寄せ集めではなくて、表現のまとめ(の一部)なのだと感じられるとき、そしてそれが自分の波長と交わるとき、また聴こうと思う。今でこそシングル(表題曲)ばかり聴くほうが簡単にできるが、それだとインパク勝負の連続になり、自分の中でもうおなかいっぱいと飽きてしまう恐れがあることが怖い。あとそれらの曲だけでそのミュージシャンを「わかったつもり」に陥ることも怖い。まあアルバムや過去曲をいくら聴いたところでどっちみちわかったつもり状態なのかも知れないけれど、ね。

アルバムには、大きく分けてベストアルバムとオリジナルアルバムがある。

ベストアルバムは、大抵セールス的な代表曲やライブの定番曲が多く収録されており、わたし自身も最初の1枚には(リリースされていれば)ベストアルバムを選ぶことが多い。似たような曲が続き「濃いな」と感じることもあれば、変化のある曲が続き「幅が広くていいな」と感じることもある。後者のほうは、そのまま好奇心継続決定である。

対してオリジナルアルバムは、大抵シングル数曲とアルバム曲数曲、トータル10曲前後が収録されている(フルアルバムの場合。5曲前後のミニアルバムも多い)。オリジナルアルバムの出来が非常に重要で、1枚の数十分という時間の中に流れや物語性、とっちらからずに1本の筋の通ったもの、プラスアルファで圧倒的なオリジナリティなどを感じられる作品がいわゆる名盤と言われる。シングルが浮いた印象になったりトータルが散漫な印象だと「製作期間短かったのかな…」なんて残念な気持ちになる。シングルCDにも収録されていたカップリング曲が数曲収録されている場合は顕著にがーんである。そのぶん、傑作・名盤を生み出してくれるミュージシャンには尊敬の念と信頼を一気に抱いてしまう。次の作品も聴こうという気分になる。

そうやって繰り返し様々なアルバムを手にしてきて、これまでアルバムごとにカラーの違うミュージシャンと多く出会ってきた。時系列がぐちゃぐちゃであっても、自分にとって新しい一面がどんどん開けてゆく興奮は、そのまま期待値となって上昇してゆく。過去作がない・少ないミュージシャンなら直近のライブに行き、音源化されていない曲を知りに行く。作品を摂取し尽くしたあとはお気に入りを掘り下げていく。そうやって1つの曲との出会いは無限の広がりを魅せてくれる。「どのアルバムが好き?」という会話のほうが、「どの曲が好き?」という会話よりも好きなのも、きっとそのほうがより相手の世界を知る手がかりになる気がするせいだ。1曲単位で手軽に新しい音楽を知れる時代だからこそ、その曲が収録されたアルバムの世界を知る、という行為を大事にしたい。

ところでBase Ball Bearの新譜『二十九歳』が6月4日にリリースされる。ボーカルであり作詞作曲を手がける小出祐介氏は「ぜひともアルバムで通して聴いてほしい」と常々Twitterでアナウンスしている。前作『新呼吸』はアルバムを通して密やかで静謐な1日を追うような作品になっており、まさにアルバムトータルで聴いてこそ真価が発揮された作品だった。歌詞カードも美しい本を思わせるほど凝っていて、モノとしても十二分に価値があると思える。これ以上は割愛するが、わたしのなかのBase Ball Bear像が変わるきっかけとなった一枚だった。わたしはBase Ball Bearの活動を熱心に追っているわけではないけれどきっと新しいアルバムを聴くだろうし、聴くことでさらに彼らへの信頼が深まるのだろうと期待している。(『新呼吸』含む過去アルバムがiTunesで期間限定プライス1300円だってよ!DL!)

Base Ball BearPERFECT BLUE
Base Ball Bear feat. RHYMESTER「The Cut」

 

 

やや(@mewmewl7