LONE『Reality Testing』に寄せて、宇宙を待つ間に。

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テクノでローンって言ったらLORNとLONEの二人のどちらかだけど、今回は後者のLONEのお話。本名をMatt Cutlerという彼はUKノッティンガム出身のテクノミュージシャン。2007年のファーストから数えると5枚もアルバムを出しているから、若手じゃなくて中堅って言ったほうがいいのかな。

さて、なんでこんなこと言い出したのかっていうと、実はLONEが今月中旬に新作を出すって耳にしてね!!いてもたってもいられなくなって、先行トラックを早速聴いたんだけど.....うわあああ!これは絶対素敵な作品だぞ、今年のベスト入りするかもだぞ、なんて思った次第でね。それで、ここ最近の彼の足取りを辿って、紹介することにしたんだ。

そう、着実にキャリアを積んでいた彼が世間からググッと注目されたのは、2010年のこと。『Emerald Fantasy Tracks』っていう、魅力的なタイトルに相応しい作品が出た。ドリーミーでジェントルな音色は、当時気運が最高潮に達しつつあったチルウェイブのムーブメントとも相性が良かったのかも。ジャケットもWashed Outを思い出させる感じだったし。

Lone「Cloud 909」

彼の作る音楽には、透明度の高いエレガントな雰囲気と、強く光り輝くように鮮明なリズムが踊っている感覚が常にある。デトロイトテクノやシカゴハウスやアンビエントetcの影響を受けたんだろうなっていう、このコズミックなスタイルは基本的に変わらないまま、今に至るまで進んでいくことに。

その後彼がテクノの名門レーベルR&Sと契約すると、これは2年前のことなんだけど、5枚目になる『Galaxy Garden』をリリースした。これがとても美しい作品でね。ジャケットもユニークで、宇宙にネオンで出来たイソギンチャクが群生してるみたいな、何とも言えず惹かれるアートワークだったよ。

Lone「Dream Girl/Sky Surfer」

持ち味である、ふくよかでスムースな音にはキラキラが増して、リズムはよりしなやかに。目を閉じると本当に宇宙を漂っているんじゃないかって錯覚しそうなくらい、スペーシーで遊び心溢れている傑作なんだ。

そして、そんな5枚目に引き続きR&Sから満を持して送り出されるのが、今月発売する『Reality Testing』なんだけど、発表されている先行トラックは2曲みたい。

Lone「Aurora Northern Quarter」

ああもう、たまらないこの感じ。まさしく光のカーテンが揺らめいているような。もう一曲の「2 is 8」ではチルネスに浸されるヒップホップビートのトラックで、Mattの新たな一面を垣間見ることが出来る。期待しかない、聴くしかない。私の中で、10'sに入ってからこんなにも優雅な空気を運んだテクノは、ぱっと思い出してもFloating PointsとDjrumくらいだよ。

どこか懐かしく、優しく心に溶け込んでくる彼の音楽は、個人的にどこか近未来の宇宙を想起させるものがある。タイトル通り、現実を忘れ夢に取り込まれてしまうかもしれないし、抗える自身は全くない。でもそれは望むところなんだ。さあ、後もう少しだけだから、音のエーテルに満ちた宇宙を待とう。

 

 

KV