読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

LAST ALLIANCE『TEARS LIBRARY』

レビュー

意識的に音楽を聴くようになる、その初めの一歩は往々にして突然踏み出されるもの。誰しも最初の一歩を踏み出さなければ、音楽の広大な世界へは進めない。人によってはきっかけだけじゃ駄目で、衝撃的な一撃を食らう必要がある。私の場合、きっかけはYngwie MalmsteenやHammerFallみたいなメタルだったり、友人が聴かせてくれたTHE BACK HORNdustboxの「Spacewalk」だったりした。しかし、真なる一撃は違うところから飛んできたのである。

LAST ALLIANCE。当時の私には衝撃以外の何物でもなかった。「プロメテウス」のイントロで鳥肌が立って以来、彼らのディスコグラフィを調べて聴いて、そして胸を貫く一撃の連続だった。他のエモ/メロコア勢とは全然違っていたし、そもそもメロコアというにはポップネスが強いし、アレンジは凝っているし、歌詞については彼らが青さを標榜していた通りだけど、中二病という言葉では完全に処理できない、魔法のように魅力的でシリアスな響きをあの時の私は感じていた。あれから色々な音楽を聴いてきたけど、あの語感とメロディへの乗せ方は彼らしか持っていないと思う。モッシュやダイブが苦手でライブには行かなかったけど、それまでに出ていたアルバムとシングルは全て揃えたし、繰り返し繰り返し夢中になって聴いていた。

やがて自分の嗜好は刻々と変化していった。今あらためて聴いてかつての様に熱狂できるかと言うと、正直それは難しい。でもラスアラの曲はやっぱり良いなって感じるし、「音の無い世界」や「シェアリングスカイ」に「疾走」など、いくつかの曲と1st『TEARS LIBRARY』、2nd『UNDERGROUND BLUE』は私の中で輝きを放ち続けている。「ソリチュード」はずっと色褪せることのない大好きな名曲だ。2nd以降ポップネスを高め、VAPと契約してからもオリジナリティを失わず、より洗練された良い作品を作り続ける彼らだけど、1stのエネルギーとエモーションは本当に素晴らしく、今なお胸を搔き毟られるような、心を揺さぶられるような感触がある。名盤と言い切る自信があるのだ。

f:id:ongakudaisukiclub:20140614204349j:plain

曇天の空の下で錆びたナイフを携えて、意志を固めようと力強い足取りで彷徨っている心、というのが『TEARS LIBRARY』の全体的な印象。くすんだギターで始まる「BOYS DON'T CRY」から、魂を焦がし哀愁を帯びて疾走する「RUN INTO THE FREEDOM」、鈍い光を放つ美しいアルペジオが印象的な「偽りのオレンジ」までの完璧な流れ。不安、苛立ち、社会への違和感、自分の甘さへの葛藤が交差し、どこか歪んだ視界のまま流れていくように。

沈み行く太陽は突き放すように言う 「握り返す力がまだあるのか?」
その無闇に振りかざす荒れた光に僕らは歯向かいながら岐路に立

(「BOYS DON'T CRY」) 

ここから始まる自由への逃走 終わることの無い自由への逃走

( RUN INTO THE FREEDOM )

Epitaph Recordsにも影響されたという彼らは元々、S☆CREATORSとBERMUDAというエモコアな2バンドから2人ずつが集まり結成されたバンド(他のメンバー4人はdiscordというバンドになった)なのだけど、その出自は決意表明たる「LAST ALLIANCE」や疾風怒濤の「REBEL FIRE」、「beautiful」に特に色濃く反映されている。英詞が多少おかしくとも、いやむしろだからこそノンリニアで感情の塊となった言葉を、安斉さんと松村さんのツインボーカルがこちらに投げかけてくる。

We unite LAST ALLIANCE to find the true moment that we could get together at last

(「LAST ALLIANCE」) 

「SEE YOU AGAIN」や「SKY IS CRYING」からは、ゲットーの暗部に苦悩しているのか、まるで鉄の匂いのする町を身を切られるような風に晒されながらも、自由を求めて走り続ける人の姿が思い浮かぶ。息が詰まりそうな現実や、耐えきれない気持ちに押しつぶされまいという叫びのようだ。

壁の落書きがきれいなものに見えるくらい歪んでいるだろ
空はもがいているだろう.....

(「SKY IS CRYING」)

まがい物なんかじゃない本物の光を放つ「プラネタリウム」、下らない潮流へのカウンターを謳う「ヒダリムキ」と、収められた珠玉の曲の数々はタイトルに相応しいところだが、終曲「EQUAL REASON」によるクローズがあってこそだろう。温もりを感じる音色とバラードのように落ちたBPMからは、覚悟と次への一歩を踏み出したことを伺わせる。

見失っていた一つの僕への根拠を 思い出してここから抜け出そう
もう振り向かない誰かにすがる様な 無様な逃げ道は選びたくないんだ

(「EQUAL REASON」)

音楽に関して言えば、自分は確かに振り向くことなく進み続けてきた。足取りが止まるはずないさ、眼前には未知なる音楽と遭遇するワクワクしかないのだから。それを教えてくれたのはラスアラだ。紛うことなき私の原点の一つ。

LAST ALLIANCELAST ALLIANCE」 

 

 

KV