7/10 THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜暁のファンファーレ〜

長い長いエスカレーターを降りるなり、生ぬるい風に押しつぶされた。早熟な台風の手を引いて、湿った空気がお台場の空を覆っていた。見上げた観覧車はきらきらと揺れていた。

開演を待ち望む皆の熱気が、会場の中までじめじめと湿らせていた。その重苦しいざわめきが、ふいに止んだ。暗くなるフロア、ぼうっと光りだすステージ。押し寄せる人々、響くSE、登場する4人、沸き上がる歓声。「暁のファンファーレ」ツアーファイナルZepp Tokyo公演は、アルバム一曲目のこの曲から始まった。

 

「月光」、三拍子にのせた場面転換が華やかだった。「シェイク」、掛け声こみで待ちきれないように盛り上がる。「涙がこぼれたら」、入りのセッションはなかったけれどニヤリと笑うベース岡峰さんに死にそうだった。

MCはドラムス松田さん。5/1の恵比寿から始まったツアー、東京に帰ってきてついにファイナルだと。台風の話は出なくて、こちらももうそれどころじゃなかった。

「タソカゲ」、闇を掴むような手とそれを切り開く声だった。「コワレモノ」、スナック〜のエフェクトにぞくっとした。「白夜」、君を想い何度この手を……ボーカル山田さんの首筋に絡みついたコードが。「エンドレスイマジン」、ブルースハープの呻りに見惚れ聴き惚れる。「舞姫」、フロアが舞い踊った、むしろ拳をつきあげた。

山田さんの「歌ってくれるか?」の掛け声とともに「ブランクページ」、皆で曲調に似合わぬ声を張り上げた。「甦る陽」、あのベースをもう一度きけるだなんて。「飛行機雲」、きらめく海がひろがり景色がぱあっとひらけた。「ホログラフ」、ラストのギターに泣いた。まるで鳴き声のような、遠吠えのような響きだった。

山田さんがすでに声をがらがらにしていたからかもしれないけど、岡峰さんとギター菅波さんがトークを回す場面もあった。ファイナルで東京なのに、4人の方言の話ばかりしていた。初めての地方ライブでの、「東京⤴︎から来ました⤴︎、ザバックホーン⤴︎です⤴︎」「嘘つけ!」の流れ、いつ聴いても鉄板。

ラストスパート。「バトルイマ」、このテンポで熱いのがすごい。「コバルトブルー」、最初の爆発!「戦う君よ」、まだまだ終わらない!「ビリーバーズ」、低音がうねるうねる。そして最後に「シンメトリー」の明るく重厚な響きを余韻に残したまま、ステージは暗くなった。

 

二度目も含めて4曲やってくれたアンコールでは、嬉しすぎる発表があった。

「12月22日に福岡、12月25日に東京新木場で、マニアックヘブン今年もやります!」

マニアックヘブンとは毎年恒例のファン感謝祭的なライブ。普段あまりやらないアルバム曲やカップリング曲ばかりのセットリストに加え、メンバー作の絵画展示やオリジナルカクテル提供などもありの一大イベント。半年も先だけれど、わくわくしてしまってしょうがない。

「サナギ」、「幻日」とこの日まだやっていなかったアルバム曲を続けると、お待ちかねすぎる「無限の荒野」。ダブルアンコールの「シンフォニア」で燃え尽きて、それで終わった。

 

以上がライブの一部始終。後は個人的に思ったり感じたりしたことなど。

山田さん、この日は早々に喉をからしていた。でも昔の曲、「無限の荒野」なんかだと特にその方が似合うなあと思ってしまったし、「白夜」なんかは妖しすぎてえろすぎた。いつか「ミスターワールド」とか「セレナーデ」とか「カラス」とか「ディナー」とかそんなのぶっ続けで聞きたいけど、そしたら間違いなくフロアの三分の二は妊娠するからやっぱりダメ。

菅波さんは「ホログラフ」のソロに尽きる。メロディがいいというのとまた違う、なにか衝動に突き動かされるような。ところでバックホーン、というか山純(山田さんと菅波さんのユニット名)についていえば、私はギターとボーカルの絡みというか掛け合いが涙が出るほど好きなんだけど(一番に近いのはコオロギのバイオリンの「青白い外灯〜」)、この日のライブでもそんな瞬間をいくつも聞けてそのたびめちゃくちゃ幸せになった。

岡峰さんはちょっと自分が不純すぎて言葉じゃ語れないです。ベースがぎゅるぎゅるするたびお腹の中身が掻き混ぜられた。(どういうこと?)きらきらした笑顔がまぶしすぎて溶けそう。目をやるたびにずっと歌詞のとおりに大きく口を動かしてて、うああってなった。ダブルアンコールの一番終わりにはベースをまるで飼い猫のようにフロアに放ってて、最後の一音弾く前に手招きして呼び戻してた。

松田さんは途中までしか姿が見えなかったんだけど、ほんとに歌うように演奏する人だなあと。ライブ会場って、音が大きいこともあってよくドラムに心臓支配される感覚を味わうけれど、それは全くなくそのかわり、波のように遠くまで連れて行かれるというか。あと今日はあんまりMC噛んでなかった。(いつもはカミカミ)

うーん、どうでもいいことしか書き残してない。まあいいか。とにかく、アルバム全曲聴けてほんとよかった。「エンドレスイマジン」のブルースハープも「幻日」のフラメンコ山田もよかった。私、前のアルバムツアーで「反撃の世代」聴けなかったの未だに根にもってるから、「タソカゲ」が聴けて本当に嬉しかった。トークでも、震災のこととかアルバムにこめた思いとか、もう何度も聞く話のはずなのに、また新しいインパクトをもってぶつかってきた。それだけ全力なんだろう。4人がきゃぴきゃぴお喋りするトークもずっと聞いてたかったしもちろん曲もあと何曲でもやってほしかったし、つまりはこの時間が永遠ならいいなあとずっと思っていた。彼らが彼らである限りきっとそれはその通りだから、ありがたい話だなと切に思う。

 

最初、場所取り間違えて踏まれ潰され殴られて死ぬかと思ったけど、なんとか脱出できたし一から百まで楽しんだ。燃え尽きて飛び出したお台場の空はやっぱり湿ってどんより曇っていたけれど、なんだか清々しい夜だった。

 

セットリスト

1. 月光
2. シェイク
3. 涙がこぼれたら
4. タソカゲ
5. コワレモノ
6. 白夜
7. エンドレスイマジン
8. 舞姫
9. ブランクページ
10. 甦る陽
11. 飛行機雲
12. ホログラフ
13. バトルイマ
14. コバルトブルー
15. 戦う君よ
16. ビリーバーズ
17. シンメトリー
encore
18. サナギ
19. 幻日
20. 無限の荒野
encore2
21. シンフォニア

 

 

かがり(@14banchi