アニソン連載#4 澤野弘之 LIVE2014 [nZk]002 ライブレポート

「去年のファーストライブ終了後、このボーカル・プロジェクト、まだ終わらせたくないなーって心で思っているうちに、いつのまにか本格的になっていたんですよね」

 

ライブも中盤に差し掛かった頃、去年から続く今回のライブについて話が及んだ時、彼はそう口にしていた。

ドラマやアニメへの楽曲を提供する劇伴作曲家のソロライブ、しかもこれまでの挿入歌だけでは飽きたらず、ボーカルプロジェクトを立ち上げて作曲家自らが変名でソロデビューする。いきなり否定的に導入するのもおかしな話だが、目的と結果/主従関係が転倒してしまったかのようなこの状況は、考えてみれば非常におかしな状態であろう。

だがこのMCをまともに捉えれてみれば、この夜のような非常におかしな状況は、彼の自発的な決断によるものではなく、彼が生み出す音楽によって呼び寄せられた「必然の状況」などと言ってもいいのかもしれない、そう僕は思えたのだ。

 

 

 

澤野弘之、アニメやドラマなどの劇伴を中心に活動し、今年34歳にして、この道の人間としては数少ないソロライブを行えるほどに人気を集める劇伴作曲家である。

劇伴、つまり映像に対して音楽をつけるということ。

見誤ってはいけないことがある、映像芸術本来の意味からすれば「映像とともに音楽が流れる」ということは大きな重要度を占めてはいないということを、映像だけ事足りるのであれば無音であっても問題はない、それが映像芸術として一貫した態度であるということ。

事実、トーキー映画となる以前、サイレントムービーと言われる時代の映画には、必要以上の音楽は奏でられていない。というより、始まってから終わりまで、まともに音楽すら流れない映画だってあるほどだ。

映像に音をつけるのは、映像に迫力と何かしらの意味をのせるためなのは言うまでもない。そのために劇伴としての音楽は、普段のポピュラー・ミュージックとは全く異なる意匠を、どこかしら迫られている音楽ともいえる。

澤野弘之の作る劇伴音楽はこれまでの劇伴音楽に比べ、いささか誇張的な意匠が施されている。エレキギターの歪んだ音色によるウォールオブサウンド、決して駆け足にはならないBPM、複雑なメロディライン、それを歌い上げるオペラ歌手顔負けのボーカリストの起用、いずれもこれまでの劇伴音楽からすれば、非常にトガったサウンドとして現れる。

今回のライブで印象的に残ったのが、彼が参加した作品の映像が、一つ足りとも流れなかったことだ。[nZk]というロゴと、歯車めいたシンボルマークが背景に多彩な色で浮かび上がる以外には、特に目立った演出がなかったのだ。

映像と音楽のマッチングで最も言われる失敗の常套句といえば、「映像よりも音が目立っている/音よりも映像が目立っている」ということだ、そして成功の常套句といえば、「シーンを思い出すと音楽を思い出す/音楽を思い出すとシーンが蘇る」であろう。僕は思う、彼が優れているのは、何もそのロックとオペラを接続するサウンドセンスだけではなく、映像を食い破ってしまわぬようにと施すバランス感覚やさじ加減の鋭敏な神経なのだと。同時に、自らの音楽が「映像を同時に再生しうる」のなら、映像を使わずに「映像を想起させうること」で成功に導くことができる、極力大掛かりな演出を減らした裏にはそんな意図があったように見えた。

今年本格的に開始した[nZk]というプロジェクト最大のライブにして、自らに課した最大のハードルを超えるには、音楽しか頼る道はない。そして、この日のライブはそのハードルを完璧で越えていった一夜だった。

その助けとなったのが5人の歌姫、小林未郁、Aimer、Mizuki、cyua、Aimee Blackschiegerを加えた5人が、舞台袖にはけていっては代わる代わるに歌うというステージング、途中インストナンバーがいくつか入ったが、澤野独特のトガったサウンドを淡々と、だが着実に大きな渦を生み出して観客を巻き込んでいった。

白眉だったのは、今年一年間全てののイベントで顔を合わせたAimerとのラスト4曲だ。Aimerの少しくすんだアルトの歌声は、歪んだギターサウンドが立ち込める澤野の楽曲と相性がよく、呼吸感はいうまでもなくバッチリ。時折自然とかかる弱いビブラートとロングトーンで響くギターサウンドの2つの波が独特の緊張感を生んでいく素晴らしい空間は、ガンダムUCをきっかけにしたコラボ曲。あのアニメの本編を思い出さずにはいられない。

 

ここで突然だが、彼のMCを覚えている限りご紹介しよう。

  1. 「なーんかこう……写真とかCMでは、キリっとしていて、うわー大人だなーっていうかスカした野郎だなこいつーとか思われちゃいそうですけど……下町育ちでこんな喋りだからさ、初めての人はよろしくね!。MCで全然イメージ違うなーとかゲンナリしないでね!、MC中は耳塞いで声出してアオアオ言えば聞こえなくなるしさ!w」
  2. Aimerさん「シングル『誰か、海を』が先週発売になったので、よろしければ、お願いします」澤野さん「いやーほんと、『誰か、海を』って変なタイトルっすよね!いっつも変なタイトルつけてる奴が言うなって話ですけどね!しかし気になりますよね、『誰か、海に』とかだったら連れて行けばいいのかな?なんて考えちゃうけども、『誰か、海を』って色々考えさせるタイトルでホント……『誰か、意味を』なんちゃってねー」
  3. 「昔はこんなオヤジギャグばっか言ってる大人を見て、絶対こんな奴になってやらねぇ!って思ったもんだけど、ムリです、なりますよ絶対!みなさんもね!」
  4. 「あのーひとつ言いたいことがあって、知人から教えてもらったんですけど、グーグルで僕のこと探すと右側に学歴のところあるみたいで。そのー……俺、全然早稲田大学とか出てないですからね!?w」

下町育ちのシャキシャキしたテンションと、本人も公言する「オヤジギャグ」で続くMCは、緊迫感あふれる演奏と対になって非常に心休まる時間になっていた。

アンコール時には、この日34歳の誕生日を迎えた彼へ誕生日ケーキをプレゼント、ハッピーバースデートゥユーを歌われ、「この1年の抱負を!と」話をふられて「もっとオヤジギャグを頑張ります!」とMC、ここまでお笑いにノッていく人とは思いませんでした……。

 

最後に、この日の観客には「ありきたりな」アニメオタクがほぼ見られず、20代~40代の年齢層、女性と男性の比率が1:1、普通のJ-POPミュージシャンのライブとはほぼ大差のない観客層ということに非常に驚いた。工法から見ていた僕の目には、サイリウムなどの光物も2~3本しか見られず、ほとんどの観客が静かに、じっくりと聞き入るようにこの日のライブを堪能していたのだ。

ギルティクラウン」「進撃の巨人」「アルドノア・ゼロ」そして「ガンダムUC」という近年のラインナップからは、ちょっと想像できないような観客層。もちろん「医龍」「陰日向に咲く」「プラチナデータ」などの映画やドラマでの劇伴を聞いてファンになった方々がそのまま流れてきているのだろうとは思う。そういった方々にもアニメを見る機会を設けさせて、歌や音楽を通じてアニメという映像芸術を広く伝播しているというこの事実は、非常に大きな影響を与えていきそうだ。

そして、来年夏には[nZk]3が開催されることが発表された、それまでに彼はいくつの劇伴を務め、いくつのシングルを生み出すことになるのだろうか。劇伴音楽のを男の、これから1年から目が離せなくなりそうだ。


セットリスト

1. Introduction [nZk]
2. aLIEz <TVアニメ「アルドノア・ゼロ>
3. Tide Over~DOA <ドラマ「医龍」?アニメ「進撃の巨人」>
4. Wild War Dance <アニメ「戦国BASARA弐」>
5. ətˈæk 0N tάɪtn <アニメ「進撃の巨人」>
6. βios ~ Before my body is dry <アニメ「ギルティ・クラウン」?「キルラキル」>
7. BLAZE [ZERO-TWO Ver.] <アニメ「戦国BASARA弐」>
8. Rё∀L<C+nZk Version> <アニメ「ギルティ・クラウン」>
9. Blumenkranz <アニメ「キルラキル」>
10. Light your heart up <アニメ「キルラキル」>
11. Release My Soul <アニメ「ギルティ・クラウン」>
12. α≠a <映画「プラチナデータ」>
13. Me & Creed <アニメ「青の祓魔師」>
14. fiore <オリジナルアルバム「musica」>
15. army⇒G♂ <アニメ「進撃の巨人」>
16. EGO <アニメ「機動戦士ガンダムUC」>
17. StarRingChild <アニメ「機動戦士ガンダムUC」>
18. bL∞dy f8 <アルバム「UnChild」>
19. A LETTER <アルバム「UnChild」>
20. RE:I AM <アニメ「機動戦士ガンダムUC」>
21. Because we are tiny in this world <アルバム「UnChild」>
encore
22. BRE@TH//LESS <TVアニメ「アルドノア・ゼロ>
23. Keep on keeping on <TVアニメ「アルドノア・ゼロ>
24. A/Z  <TVアニメ「アルドノア・ゼロ>
25. Piano Solo (LiVE/EViL(ドラマ「魔王」)→BLUE DRAGON(ドラマ「医龍」)→MAIN THEME(アニメ「機神大戦ギガンティック・フォーミュラ」→UNICORNGUNDAM(アニメ「機動戦士ガンダムUC」)

 

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草野(@grassraibow