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ボールズ『スポットライト』

レビュー

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そろそろここらで引き返そう

メジャーデビューアルバムの1曲目の歌い出しがこんなフレーズだったものだから、一瞬耳を疑った。7月にリリースされたアルバム『スポットライト』の冒頭を飾るナンバー「通り雨」である。一見ポップであるが実は一筋縄ではいかないセンスを持っているのは、このバンドらしい。アルバムの冒頭10秒間でガッチリとリスナーの心を鷲掴みにしてしまうバンド、それがボールズである。

ボールズは大阪で結成された5人組バンド。もともとは「ミラーマン」という名義で活動していたバンドで、昨年「ミラーマン」名義でリリースしたミニアルバム『ニューシネマ』が好評を博し、メジャーデビューが決定した。今年に入ってから、バンド名を「ボールズ」に改名し、7月9日にメジャーデビューアルバム『スポットライト』をリリースしたばかりのバンドである。

ボールズの楽曲の魅力は「人の体温がそのまま伝わってくるような音楽であること」だと思う。人が生きるスピードで、ちょっとハスキーなボーカルがその思いを音楽として表現しているというイメージ。今回メジャーレーベルからのリリースということで、そんな作風が変わってしまうのではないかという不安もあったのだが、そんな心配は無用だった。それどころか、前作『ニューシネマ』を受けて期待感が高まっていたリスナーを十分に満足させる作品だったと思う。

ただ、歌詞の中身に関しては、本人もインタビューなどで意識的に変えてきたと語っている。『ニューシネマ』では主に「街」を歌ったものだとのことであり、そのためか、抽象的な歌詞が多く、聴く人によって捉え方が変わる、というより正直どう捉えたらいいのか戸惑ってしまう楽曲もあった。それに対して、『スポットライト』では主に「人」を歌ったとのことで、歌詞の世界はよりイメージしやすいものになっていた。それによって、より間口が広くなり、より多くの人の心に届く作品になっているはずだ。

ボールズ「通り雨」

「通り雨」の歌詞は、次のように続く。

そろそろここらで引き返そう
そんな風にできたら
今でもお前はここにいて
おどけてくれたのかい?

つまり「そろそろここらで引き返そう」というのは仮定の話で、実際には引き返すことなくそのまま進んでいったということが歌われている。別れを悔やみつつも、その奥に隠れているのは、決して悪いわけではない現状に別れを告げて、新たな一歩を踏み出すという強い決意。

それはまさにメジャーデビューしたばかりのこのバンドの今の姿に重なる。ボールズは音楽に対して本気で強い意気込みを持っているバンドである。にもかかわらず変にガツガツした印象を受けないのは、天性のポップスセンスによるものだと思う。そのあたりの絶妙なバランスこそが、このバンド独特の楽曲の心地良さを生み出しているのかもしれない。

今年の夏は、ROCK IN JAPANやSPACE LOVE SHOWERをはじめとした、日本各地で行われた各種イベントやライブにも多数出演していたボールズ。東京と大阪で行われるワンマンライブも間近に迫っており、彼らの音楽がこれからますます広がっていくのは間違いない。「大阪のスピッツ」から「日本のボールズ」へ、どこまでこのボールは飛躍していくのか、これからも楽しみにしていたいバンドである。

 


なっくる(@nacl18

カゼマチミュージック