前回くるりについて語り倒した、関西圏と関東圏に住まうアラサーなおっさん2人がskype上で語り合う企画の第2回。今回のテーマは関西と関東のインディーバンドについてです。前回は関西は夜の本気ダンス/DENIMS/GENSHOU-現象-/踊るディスコ室町/葉山久瑠実/中村佳穂。関東からはThe Plashments/Bentham/TOKYO HEALTH CLUB/THIS IS JAPANを紹介しました。さて今日はどんなバンドが登場するか。お待ちかね、後編スタートです!!(ゴリさん)
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前編はこちら
関東⑤ ayU tokiO
ゴリ お、ayU tokiO、きましたね!
ayU tokiO「恋する団地」
草野 今年の東京インディーバンドの最重要アクトだった「20140420」で、森は生きている/吉田ヨウヘイGroup/ROTH BART BARON/失敗しない生き方/penoとともに出演、その後デビュー作を発表してます。
ゴリ 俺、大好きなんですよ!
草野 おおー!それはそれは。
ゴリ この東京インディーを凄く象徴している感じですし、大滝詠一さん思い出すのね。
草野 なるほど。そういえば、最初にぼくに関西インディーの印象を聞きましたけど、逆に尋ねます。
ゴリ はい。
草野 ゴリさん、東京のインディーって、どう思います?
ゴリ うーん。東京インディーだけで考えるとね……ひねくれている。
草野 ああ(笑)
東京インディーはひねくれている?
草野 関西とは逆に、という意味でですか?
ゴリ そう。ストレートじゃない。なんかしら意味があったり「え?こんな音楽混ぜるの?」って。その感じがひねくれているよなって。
草野 ディテールにまでこだわるがゆえに、まっすぐなものがひん曲がって見えるような、僕はそういう感じに思える時が多々あります。
ゴリ 森は生きているとかその典型みたいな気がするんだよね。
草野 ROTH BART BARONとか、聴いてると息苦しくなるとか?
ゴリ うん。ROTH BART BARONは一度ライヴ観たんですけど、どこにもない感じは凄いなとも思うし、圧倒的なのもわかるんですが、いまいちなんか乗り切れなかったすよね。俺が卑屈なんだろうけど(笑)
草野 彼らのファンの一人として言いますが、あれはノるとか踊るとかじゃないっす、あの声に聞き惚れるバンドだと
ゴリ あ、そうか。そういう風にして見るとまた違うのかも。
東京インディーと言う名の黄金郷
草野 まぁゴリさんの言う「ひねくれてる」感っていうのはすごくわかるなーと。
ゴリ はい。
草野 [森は生きている、ROTH BART BARON、吉田ヨウヘイGroup]の3組、少し前から活躍中の[cero、シャムキャッツ、昆虫キッズ]の3組、八丁堀に在る「七針」というライブハウスとそこにあるレーベル鳥獣虫魚界隈でいうと[Alfred Beach Sandal、peno(ARTLESS NOTE)、王舟]の3組、さらには昭和音大出身の[スカート、カメラ=万年筆]ここまであげると大分わかりやすく俯瞰視できるのかな。あと、片想いやあだち麗三郎さんが所属してる「とんちれこーど」や、ミツメや失敗しない生き方とかも入ってくるのかな。
ゴリ はい。
草野 いまここに挙げたバンドのメンバーって、実は毎夜のごとき勢いで、どこかのバンドのサポートに行ったりしてるような人ばっかりなんすよ。
ゴリ そうですよね。ceroだと高城さん以外はいろんなところで観ますもん。
草野 ayU tokiOもそうで、これバンド名みたいに見えるけども、猪爪東風(イノツメアユ)というソロプロジェクト。しかもアユさんはthe chef cooks meで演奏していた元メンバー。
ゴリ そう。なんかそう考えると東京インディーって身内感みたいなものがある感じがしますね。
草野 これは彼らと彼らに近しい方々は全面的に否定しそうですが……。おもいっきり言い切っちゃうと、彼らが共通しているフォーキーさ/ドリーミーさの根源は、こういったバンド間のサポートや仲睦まじさの中で育まれてきている、いわば「黄金郷」なのかもしれないです。
「東京インディ」というよりは「東京フォークロア」
草野 このあたりの話を、70年代のはっぴぃえんど界隈と喩えて話をしていらっしゃった方もいますが、やっぱり僕のような20代の人間としてはちょっとそれは全然実感としてわきづらい。むしろ彼らのことを「東京インディ」というよりは「東京フォークロア」って言い表したほうが、ごくごく自然に頷ける。
ゴリ ふむ。
草野 これまでJ-POPが担ってきたであろう、大衆心理の表れとか、それに伴った喜怒哀楽の感情とかを、ちゃんと言葉や音楽にしてくれる東京のバンド、という意味での東京フォークロア。
ゴリ なるほど。フォークロアね。僕がもう一つ感じていた東京インディのイメージって「非ロック」なんですよ。それこそ僕としてはSAKEROCKが原点かなとも思ったり。それってフォークロアのイメージにぴったりだなと。
草野 星野さんとSAKEROCKは、ceroと同じカクバリズムでのレーベルメイトですもんね。あとトクマルシューゴさんに七尾旅人さんらが先輩格だろうな。
ゴリ はい。
草野 tofubeatsとかShiggy.Jrとかが「いま新たなシティ・ポップ・ミュージック!」みたいな触れ込みでバンバン出てるじゃないですか?彼らが本当に都市部の音楽なら、彼らはその周縁にいるバンドでしょう、と。都市部で叩く人たちが住まう場所で結成され、そういった場所の空気感を代弁するにピッタリかなー、なんて大言を叩くよ!(笑)
関東⑥ 惑星のかぞえ方
草野 そこに惑星のかぞえ方。トクマルシューゴさんのバンド編成の時に、彼らも参加してるんすよね。
惑星のかぞえかた「飛翔」
ゴリ トクマルさんのバンドに何人か参加しているんですね。
草野 ドラムの岸田さん。その岸田さんとベースの池上さんは王舟のバンドに、鳥獣虫魚レーベルからリリースしてるPenoとARTLESS NOTEの水谷さんも惑星のかぞえ方に参加してます。
ゴリ このバンド、今ホームページを見てるんだけど落語とコラボしている。
草野 関西だとどうなのかはわからないですけど「舞台に上がってパフォーマンスをする」という意味で、音楽バンドと劇団とを掛け持ちするとかよくある話なんですけど、最近だとこうやって落語にまでいくとかあるみたいっすね。
ゴリ この石坂さんの声、癒やされますな。
関東⑦ 宮内優里
草野 で、もう一人。宮内優里さん。これはもうライブ映像を見てください、本当に。
宮内 優里「meole」(live)
ゴリ 思い出した。この人テレビに出てた!
ナタリー - 宮内優里が日テレ正月特番「世界1のSHOWタイム」出演
草野 高野寛さん、コーネリアスさん、さっきも名前が上がった星野源さんともコラボ。マルチ・インストゥルメンタル・ミュージシャン。確かに去年日テレでライブ出てましたね。
ゴリ このライブは凄かった。全部一人で音楽作るんですよね。しかも、その場で。
草野 ルーパーを使っての多重録音、別にそれ自体にすごさはないんすけど、まさに「音をつかみにして音像を組み立てていく」ライブですよね。すっげぇきれいな建物が、その場でドンドンと作られて完成するまでを間近で見届ける、この人のライブにはそんなエクスタシー/興奮があります。
ゴリ よくわかります。テレビで見たときはそのライヴに圧倒されたんだけど、今聴くと音楽として完成しています。緻密に一音一音ミルフィーユのごとく層をなして構成されている。すばらしい。
草野 ちゃんとグルーヴ感が備わっていて、少し首を振って踊ることも、ただその音色に聴き浸ることも、どちらも許してる音楽なんすよねー。個人的に最高なのは、Corneliusとのコラボ曲!
宮内優里「digo」
ゴリ ほうほう。これもとてもおもしろいです。
sugar meとYeYe
草野 せっかくなので宮内優里さんが所属しているRallye Labelから、女性ソロミュージシャンsugar me とYeYeという2組も軽く紹介します。青葉市子さんやPredawnや柴田聡子さんに通じるものがありますよ。
YeYe「パレード」
Sugar me「As You Grow」
ゴリ YeYeは関西出身という事もあり、大好きですね。この人も一人で楽器全部やっちゃう人ですね。
草野 角砂糖が溶けていくような歌声してるよなあ。声色だけならsugar meが好きっすね
ゴリ Sugar meも好物です。この人、気になってまだCD買えてなかったんで明日タワレコ行って買ってきます!(笑)
ここで一つだけ反則を犯します!
ゴリ じゃあ、次は僕のターンですかね。
草野 ゴリさんが宣言していた3つめの区切りですかね。
ゴリ そうですね。次は3つ紹介しますが、1つだけ反則します(笑)
草野 やっべぇ、これ中東の笛ならぬ関西の笛だっぺ。
ゴリ その3つですが、本日休演、生き埋めレコーズ、Orca Shoreです。このうち1つが反則です(笑)
草野 ダメだ、わかんない(笑)
関西⑦ 本日休演
ゴリ まあ一つずつ紹介しますがまず『本日休演』。
草野 京都のバンドですね。
本日休演「すきま風の踊り子」
草野 俺、彼らの新作買いましたよ、それこそさっき挙げた東京フォークロアの方々に近いなっていう印象で。
ゴリ 凄く近いと思う。このバンド京都大学の4人組バンドなんですが2014年にアルバム出してそれが評判でclub snoozerの東京公演に出演したんですよ。
草野 うんうん、すごく行きたかった。
ゴリ なんか、このバンドははっぴいえんどを思い出させてくれるんですよね。力の抜けた歌い方やフォークロア的な感じとか。そして、はっぴいえんどのアルバムって名盤だとされているけど今改めて聴くと結構、遊びが多く入っているんですよね。その感じが表れているところも好きですね。
草野 いい作品だよね、本日休演のアルバム。70年代のLPを意識した曲順と、どことなく情緒的なメロディラインが良いなと。あとボーカルの下手さ加減が絶妙にツボをついていて好きっすね。今で言うと、このジャンク感がAriel Pinkとかを思い出させるな~とも?
Ariel Pink's Haunted Graffiti「Only In My Dreams」
草野 この曲はちょうどフォーキーな感じなんであげたけど、めちゃくちゃノイジーなロックもやってたりするのでご注意。
番外 関西レーベル編 生き埋めレコーズ
ゴリ さて、次は生き埋めレコーズなんですがこれが反則です。これレコードレーベルなんですよ(笑)
草野 おお、そりゃ。すげぇ。
ゴリ 生き埋めレコーズは京都発のインディー/パンクレーベルなんですが京都で暮らす若干20歳過ぎの男の子たち3人がやっているです。それぞれ、sprintklub、littlekids、THE FULL TEENZってバンドをやっていて。もともと、「生き埋めレコーズ」っていうのは、Twitterにのせて遊んだりとかしていた、有りもしないレコードレーベルだったんですよ。
草野 ほうほう。
ゴリ でも、自分たちのスプリットを出したい所から「どうせやるなら、どこからも出してないバンドが自分たちのまわりにいっぱいあるし、コンピを出せるんじゃないか」と考え実際、関西のバンドだけでなく関東や果ては北海道までの同世代の音源をあつめてコンピを作る。そして、冗談で作ったはずのレーベルから出しちゃったんですよ。そして、完成したのが生き埋めレコーズの『生き埋めVA』ってアルバムなんです。
草野 すごいなそりゃ。関西人の異次元な行動力を目にした気がした……。
ゴリ でしょ。この企画力っていうか行動力ってとんでもないなって思ったんすよ。で『生き埋めVA』はパンク系の音源が中心かと思いきやギターポップあるしフォークやサイケロックあるし。さらに録音環境とかが違うせいか音質とかバラバラなんですよ。思いっきり宅録みたいな音源もあるし。でも、それが個々のバンドの味にもなっていて、なかなかいいんですよ。
草野 この『生き埋めVA』でゴリさんのお勧めのバンドは?
ゴリ 僕のお勧めは特に名古屋のバンドなんだけどMILKってなんか最高だなと思ってて。チープな感じ丸出しだけど、ものすごく引きこまれるしカッコいいんですよ。
MILK「MY」
草野 いいね、このジャンクな感じ、超ローファイな感じ、やべぇ好き。
ゴリ それと主宰の伊藤さんがやってるバンドのTHE FULL TEENZも収録されているんですが、このアルバムと同時に『魔法はとけた』というアルバムをこの生き埋めレコーズから出していて、これもいいんですよ。
THE FULL TEENZ 「Sea Breeze」
ゴリ パンクなんだけど、とてもポップでカッコいいんですよ。
草野 うん、そしてこのバンドのFULL TEENZってまさか、フルチンってことからとってる?
ゴリ そうなんだと思います(笑)
草野 ああ、最高にパンクだ、最高じゃないか!!!
ゴリ ありのままを曝け出す感じなんだと思います。
草野 いまこれ見てたんだけど、最後にやるケツメイシの夏の思い出のカバーが最高。
THE FULL TEENZ@Rinky Dinc Studio Kyoto 2013/11/16 「MIDSUMMER SPECIAL!vol.2
ゴリ 関西インディーのこれからを担いそうなレーベル、生き埋めレコーズ僕は太鼓判を押します!
関西⑧ Orca Shore
ゴリ そして、このターンの最後のバンドは Orca Shoreです。
Only Echoes
ORCA SHORE official web site - ORCA SHORE official web site
ゴリ これは神戸のバンドですね。2014年2月結成まだ出来たてのバンドなんですが割と各方面で評判が良くて、僕もこの「Only Echoes」が大好きで。
草野 Only Echoes、サイケな感じすげぇな……。最近で言うとTemplesとか思い出す。
ゴリ そうそう。割と関西でサイケをやるバンドが最近目立ってますね。The fin.そしてSEUSSとか。
The fin.「Faded Light」
SEUSS「Not Well」
草野 僕の個人的な感覚の話なんだけど、関西のバンドで、いま一番クオリティ高いバンドが出まくってるのが神戸だと思ってる。サイケとはまったく違うけど、ちょっと年上でメジャーな存在ではFear, and Loathing in Las Vegas、そしてtofubeatsも神戸出身。
ゴリ 女王蜂とか黒猫チェルシー、アルカラなんかも神戸出身ですね。
草野 神戸は関東で言うと千葉みたいなもんなんだろうなぁ……。開発された湾岸沿いにベッドタウンが次々と生まれる感じとか。
関西インディーに感じるノスタルジア
ゴリ で、この3つに共通する事っていうか、僕個人が勝手に思っている事なんですが「ノスタルジア」だと思うんですよ。
草野 ああ、近しいことを僕も思ってました。ありえない場所に対する憧憬、という感じですねぼくは。
ゴリ で、これ以外で例えばHomecomingsだったりHAPPYだったりとかでもそうなんですが、何十年も前の洋楽と言われてもわからないような作品だと思っていて。
草野 はいはい。
ゴリ なにか、「今の音楽」というよりかは「過去に寄り添う音楽」みたいな感じが個人的には強いなと思ってたりするんです。で、それってPVにも出てる気がするんですよ。
草野 淡い色合いで8mmフィルムで撮られたかのような感じとか、VHAとかカセットテープとかがモチーフになってたりね。
ゴリ でね、これを見ててある事を思ったんですよ。これって渋谷系に似てないか?って。
渋谷系と言う名のノスタルジア
ゴリ 古い映像使う事や過去の音楽に寄り添い引用、なんならサンプリングをしていた事なんか渋谷系と共通点が多いなって思ったんですよ。
草野 そこら辺のリンクポイントを突いたバンドといえば、やっぱりFor Tracy Hydeだなと思うね。
For Tracy Hyde「Halation -光に融けてゆく-」
ゴリ 今聴いていますがとてもいいですわ♪ちなみに渋谷系のPVがこちら。
PIZZICATO FIVE「これは恋ではない」
LOVE TAMBOURINES「CHERISH OUR LOVE」
Kahimi Karie「I am a kitten」
草野 音楽とちょっと離れて文化論な話にシフトしちゃうけども、80年代って写真や映像などでイメージを全面に押し出して、「こういう暮らしができるようになろう!」「こういう場所にいけるように頑張ろう!」っていうことを推めていた時代だったと思う。少なくとも、80年代バブル期の日本は、世界的に見てもそれが有効に作用していた数少ない例の一つだったと思う。
ゴリ うん。
草野 でも実際そういうのって「うそ臭い!」「そんな幸福なイメージがありえるわけがない!」「いまの幸せな生活がずっと続くかも分からないのに!」って言われて嫌がられるのが常じゃないですか?フランスだろうがイギリスだろうがロシア(ソ連)だろうがドイツだろうが、その意識は変わらないはず。そういった不信感があったから、80年代のサブカルはあれだけ大きくなったと思うんです。
ゴリ うんうん。
草野 それを乗り越えた90年代初頭って、80年代を見てきた世代が「まだ僕らにも望みがある」「いやもうそれがないのも分かってる」っていう狭間にあった。だから渋谷系ってあそこまでグチャグチャしてると思うのよ。
ゴリ なるほど。
草野 tofubeatsさんや今上がったバンドの世代や、それに今年27歳になった僕の世代も加わると、「失われた20年」とか言われちゃうじゃないですか?。バブル期の経済的興隆を軸にした言葉で、20年間が括られ、それによってその20年間を過ごした世代は不幸せだと言われる、それってすごく決めつけて言ってないか?と思いません?
ゴリ うんうん。
草野 彼らの表現の中には、「この時代に行きてー!戻りてー!」っていう憧憬はあるでしょう。でも僕はこの表現の中に、そういうのとは逆ベクトルの、彼らの自意識を見いだすことができると思う。資本主義社会の根底にある、成長パラノイアみたいな精神性に対する、明らかな反抗。「いや別に、成長とかしなくても、いまの平穏な世界が続けばそれでいいんだ」という感覚。僕にはそういうものが受け取れます。
ゴリ それ、すごくわかる気がしますね。
番外 関東レーベル Sauna Cool
草野 ゴリさんがそういうバンドをあげるなら、僕もこのレーベルをあげようかな……。
ゴリ ほうほう。それは気になりますな。
草野 Sauna Coolっていうレーベルが去年設立したんですけども。とりあえずその、最初の作品がホントなんでこんなん作ったの?っていう一作でかなり話題になりましたね。
Sauna Cool » Blog Archive » Artist: V.A.Title: Sauna Cool 1
ゴリ はいはい。cra10やTeen Runningsのレーベルね。
草野 そうです!それでコンピレーションアルバムなんですけど、51組のミュージシャンが出てるんですが、「全曲30秒以内の新曲」っていう縛りなんすよ。しかも、12月25日発売という。
ゴリ うわー、それは知らなかった。まじか!(笑)
草野 ハッキリ言うと「バカかよ!?」っていう(笑)
ゴリ 30秒縛りは酷すぎる(笑)
草野 この企画をすべてひっくり返すようなコンピですよ!(笑)ミツメは言うに及ばず、New HouseにVIDEOTAPEMUSICがいて、group AにTHE KEYS、Miila and the Geeksがいるとか何なんすかねこれっていう。
ゴリ 凄いメンツだわ(笑)あ、ちなみに僕がSauna Coolを知ったのが、Teen Runningsって元々京都のsecond royalって老舗のレコードレーベルで最初は活動してたんですよ。で、その頃から好きだったんですが気が付いたら関東に行っててて、このレーベルを立ち上げてね。
草野 おおなるほどね。
ゴリ 具体的には紹介しないですがこのレーベルのアーティストは全部聴いてて間違いなしです。
Teen Runnings「Make It Better」
草野 car10は栃木の足利出身、御存知のとおり内陸地です。
CAR10「海物語」
草野 これが憧憬ってやつなのかなーって思いますw The DrumsのLet's Go Surfingを思い出しますね。
The Drums「Let's Go Surfing
ゴリ あ、ちなみに先ほど紹介した生き埋めレコーズの『生き埋めVA』の中にcra10の川田さんのソロプロジェクト PRESSURE GROUPも収録されています。
草野 すごいつながり!
関東⑧ YKIKI BEAT
草野 そしてお次はYKIKI BEAT。
YKIKI BEAT「Forever」
草野 このボーカルの声と発音、絶対に帰国子女だな。
ゴリ イントロで「移民の歌」っぽいなと思ったら、真逆なギターポップ!カッコいい!
草野 完成度が高すぎて、これ来年辺りに出るであろうファーストアルバムでベストアルバムになっちゃうんじゃ?っていう不安感すら抱かせるほどのすばらしさ。来年必ずブレイクしますよ!
ゴリ うん。これは俺も推しますよ。とてもカッコいいですわ。
関西のアングラシーンについて
ゴリ さて、次は僕のターンですが、ここで関西のアングラシーンの話をさせてください。
草野 おお……ついにきたか、関西アングラシーン。
ゴリ まあ、知っている人もいるかもしれませんが関西とアングラってかかわりがものすごく深くって、難波にはアングラの聖地と言われるベアーズって箱があったり「関西NO WAVE」や「関西ゼロ世代」って言葉があるくらい、ムーブメントとして関西に根付いているんですよね。
草野 ボアダムスとか非常階段が原初っていえばいいのかな?やっぱり。
ゴリ 他にもINUやアーント・サリーなんかがいますね。そもそも東京のパンクシーンとして70年代に「東京ロッカーズ」と言うのがあって。
草野 フリクション、LIZARD、ミラーズ、ミスター・カイト、S-KENの5つのバンドのことね。
ゴリ そうそう。79年に、ULTRA BIDE、アーント・サリー、INUなどのバンドの企画として東京ライブ・ツアーを行って、その際に先ほどの東京ロッカーズが「東京ニュー・ウェイヴ'79」というアルバムがでてニュー・ウェイヴだったらこっちはNO WAVEだ。って事で「関西NO WAVE」が生まれたんですよ。
草野 それポストパンク界隈でニューウェイヴって言われていたムーブメントに対してノーウェイヴって言ってコンピ作った『ノー・ニューヨーク』と近い匂いするね。
ゴリ:この間F.M.N.SOUND FACTORYの石橋正二郎さんから、お話しをうかがう機会がありまして、この話を含めてとても面白かったのですが。
草野 なんかすさまじい人から話し聞いてる!F.M.M SOUND FACTORYって、今年で20周年を迎える名門レーベルで、大友良英さんの超初期作品とか出している、関西アングラといえばココっていうイメージがしますね。
関西⑨ 日野浩志郎
ゴリ で、その石橋さんも話しをされていた人物で。2010年代のアングラシーンを牽引するであろう人物、日野浩志郎さんを今回は紹介します。
YPY「BとFとMIX」
ゴリ 大阪を拠点とするバンドgoat、bonanzasのリーダーであり、カセット・レーベル「birdFriend」の主宰者の方であり以前「ki-ft」でもインタビューしました。
【インタビュー】日野浩志郎(birdFriend, goat, bonanzas): インタビュー | ki-ft
草野 ソロでもバンドでも、超かっこいいな!
goat「NEW GAMES(live)」
ゴリ 音楽的にはややミニマル的な要素が強いんですが、とても面白いんですよ。でね、この人がつい最近イベントをやりまして。
草野 ほいほい。
ゴリ 「BEST FRIENDS」というイベントなんですが驚いたのは自分の友達であるバンドあつめて大々的に“ライブサーキット”を行ったんですよ。会場が3つでクラブが2つでもう一つが教会というね。
草野 なんか異質な感じ。
ゴリ 普通に考えてアングーグラウンドでライブサーキット。しかも会場の一つが教会なんてイベント中々ないですよ。ちなみに参加メンバーが巨人ゆえにデカイ、bonnounomukuro、森山ふとし、OPN、湿った犬など。
草野 やばい!これはぜんぜん知らないぞ!
ゴリ 僕もですよ。でも、これだけ大々的にイベントやるって凄い事だと思うんです。なんかね、アングラをメジャーにしていこうって気持ちさえ感じられて、これから本当に関西のシーンを牽引していくのではと思いますね。
関東⑨ Miila and the Geeks
ゴリ で、これで関西のシーンごとに合わせたバンド紹介は終わりなんですが、最後に個人的に大好きな大阪のバンドを紹介したいので、一度関東に譲ります(笑)
草野 そこまでアングラ!っていうのはさすがに俺まだ追いかけていないので、ノーウェイヴっていう言葉に反応して一つ。僕の大好きなバンドを。
ゴリ ほうほう。
草野:さっき名前をあげたけどもMiila and the Geeksを紹介します。
Miila and the Geeks「IN/OUT」(live)
Miila and the Geeks「Want」
ゴリ お、たぶん色々今まで聴いた中でもベスト級で好きかも。サックス無茶苦茶カッコいいですな。
草野 ギター/ドラム/サックスの3ピースバンド、ノーウェイヴっぽいクールな感じに、退廃的なルーズさとローファイなサウンド……。そして、サックスが本当にいい味出してるんだよね!2011年に『New Age』でデビューしたあと、海外ツアーとかしてました。いまSpincoasterでキュレーターを務めてるスガさんっていう人が、2007年からSTYLE BAND TOKYOっていうパーティをオーガナイズしているんですけど、その5周年パーティにBo NingenやLilies And Remainsとかと一緒に出たりしてます。
Bo Ningen「Slider」
Lillies and Remains「This City」
ゴリ この双方も含め「ヤバさ」を濃縮したような音楽だな……。
関東⑩ Moja
草野 勢いに乗ってもう一個バンドを紹介しますね。その5周年パーティの時、Bo ningenのベース/ボーカルのTaigenさんが「イギリスでの暮らしとかライブとか馴染めなかった時期もあったけど、この人らにはすごくお世話になりました、ありがとうございます」ってMCした2ピースバンドmoja!!
moja LIVEダイジェスト
moja「Hello Hello」
草野 男性ベースと女性ドラムの2ピース、ライブのテンションがすごい、本当に圧倒される。
ゴリ:とんでもない圧力だと見ただけで感じられますな。こりゃ圧倒されるな……。
草野 バスドラムに専用のアンプ突っ込みますからねこの人ら。
ゴリ それ、凄いな(笑)迫力がとんでもないだろ(笑)
草野 で、彼らとの距離感も面白くて、彼らを囲うように客が入る時があるんすよ。さきにあげた5周年パーティのときがまさにそれで、とんでもない音圧でしたよ……(笑)
ゴリ ようは360℃観客に囲まれる感じか。それは普通に行きたいね。
関西⑩ ナガレ
草野 そして、ゴリさん。この対談を締めくる最後のミュージシャンを!
ゴリ ラスト行きますか。景気良くスカッと勢いのいいバンドを。最後に紹介するのはナガレというバンドです。
ナガレ「うるさいなぁ」
ゴリ 大阪出身の3人組バンドで、つい先日には2ndシングルも出てサウンドクラウドでも視聴できるので是非聴いてください。ちなみに僕はROKUDEMONATIONがとても好きです。
草野 なんかこう、感覚ピエロと似た匂いを感じるね
ゴリ お、でもそれ当たりかも、 普通に仲がいいみたいです。
http://www.nagare-web.com/wp-content/uploads/2014/06/1st無料配布ジャケット.jpg
草野 おお……(笑)
ゴリ 草野さん流石ですね。
草野 いえいえ。
あとがき
草野 で、まとめとして、関西インディ懐深いなと、いろいろおるやん!ということをホント実感しました。
ゴリ そうですね。いろんなシーンがあって本当におもしろいと思います。ぜひこれで関西の音楽が気になった方はですね、実はこう言うのがあります。
ゴリ これは京都在住の音楽ライターであります岡村詩野さんの音楽ライター講座の京都校の方々が作成したものです。これに2010年~2013年にかけての関西出身のアーティストの作品が多数掲載されておるので、気になる方はぜひチェックしていただけたらなと思います。
草野 ……あれ?これ……超壮大な「現代関西音楽帖」PR記事……?
ゴリ そして2014年以降はki-ftで。以上、ステマでございました。(笑)
草野 でもほんとすごいよねこれは。東京の人らでこれが作られないかなーと思う。
ゴリ でも、僕も今回対談して分かったのは東京も奥深いなって。東京インディーだけでなく様々な形があって正直知らないものばかりでしたんで大変参考になりました。
草野 それはありがたい!ロキノンで表紙飾るようなバンドばかりが生まれていたり、フォークのようなサウンドしか出さないようなバンドだけじゃないんですよ。でもきっと現代関西音楽帖の東京版が作られない理由のひとつはそこにあるんすよね、あまりにも多種多様で現場の数も多く、網羅することがほとんどムリに等しい、それが東京や関東のインディの特徴になると思います。
ゴリ なるほど。
草野 今回、僕の目を通してこうしてパパーと話しましたけど、吉祥寺と下北沢、あと神奈川県のほうのバンドや北関東とかのバンドはほとんどノータッチ。それにパンクシーンとクラブシーンを入れ込もうとすると、あと5人は連れてこないと成り立たないね。
ゴリ まだまだ関東は広いな。(笑)そうですね。僕らがノータッチの分野もありますからね。
草野 音楽の世界は広大だわ……(草薙素子ボイス)
ゴリ お、攻殻機動隊だ!(笑)
草野 今日はありがとうございました!
ゴリ こちらこそ。ありがとうございました!
草野(@grassrainbow)×ゴリ(@toyoki123)