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東京カランコロン『笑うドッペルゲンガー』

レビュー

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去年発売された曲なのだけど、あまりにも素晴らしかったので。随分と知名度も上がっているのでご存知の方も多いはず。東京カランコロンの「笑うドッペルゲンガー」という曲だ。

この曲はボーカルのいちろー*1の「もし自分がミュージシャンじゃなかったら」というアイデアで作られた曲。これが私たちサラリーマンには痛々しいくらい共感できる曲なのである。下記の歌詞が特に刺さった。

つまらねぇんだよすべてが、
つまらねぇんだよあいつが、
でもつまらねぇのは、何よりも
おれ、おれ、おれです

今日もロンリー、メシもロンリー、どこに行くのもロンリー
だから何だってんだ
そんな物差しで幸せは測れんぞ
たかがロンリー
されどロンリー
誰か…
「おれを愛してくれ!」

自虐的で痛々しい歌詞、それと相反するポジティブなメロディーは、時に作り手の思惑すら超えるポップミュージックに変わることがある。例えば90年代のミスチルが表現していた自分と社会を黒い笑いに変えているのにも関わらず、爆発的なポップ感を持った曲のように。

東京カランコロンミスチルに影響を受けていたかはわからないし、別にこの曲がミスチルに影響を受けていると言いたいわけではない。でもあの頃のミスチルが確かに持っていた黒く乾いた笑いを、東京カランコロンは「笑うドッペルゲンガー」で表現することに成功していると思う。この心に溜まった鬱憤をはらすかのような爆発感のあるサビのポップ感、好きにならないわけがない。

2曲目の「Henteko Pop is Dead」もぶっ飛んでいる。こちらは「笑うドッペルゲンガー」とは対をなすように作られた、バンドの現状についての曲なのだが、この歌詞がまた非常に痛快だ。

ネクストブレイクだって呼ばれて、もう4・5年は経ちます
ブレイクって何なんだよ
どうせ他の流行りのバンドで替えがきくんです
邦楽ロックに幸あれ

メディアにゃ隠さず今日も明日も、何でもしゃべるよ
プライド切り売りして

なんて歌詞を書くのだろう。そして続くサビではこう歌っている。

「やめるしかねーよ」
「売れるわけねーよ」

やけに生々しい。さらにこの歌詞に裏付けるかのように、リスナーに喧嘩を売っているともとれそうなくらい、この楽曲のアレンジは相当ヘンテコに作られている。「バンドのやりたいようにやりました!」と言わんばかりだ。ただ、重要なのはこれらが全て計算のもとに作られていることである。 ゲラゲラ笑いつつ、実は自分達の立ち位置を冷静に批評している。だってこの曲もしっかりポップミュージックとしてのオチがついてるんだから。サビの「やめるしかねーよ」、「売れるわけねーよ」の後には、こう続く。

売れるしかない?

(中略)

やめるわけねーよ!

自虐的でありながらしっかりカウンターを狙っている曲なのだ。むしろ上昇志向がある貪欲なバンドじゃないか!

いきなりでなんだが、僕は表面上はヘラヘラしていながらも内心はめちゃくちゃプライドが高く面倒くさい人間である。勝手な思い込みかもしれないが、東京カランコロンにも全く同じ匂いを感じてとった。つまり一見面倒くさそうなポーズを取りながらも虎視眈々と上を見据えているこのバンドの心意気を感じてしまったのだ。

このシングルのラストの3曲目はレディオヘッド「Fake Plastic Trees」のカバー。それも真面目で律儀なカバー。馬鹿野郎。大好きに決まってるじゃないか!

まだ先日出たばかりの新しいアルバムは聴いていない。アルバムではどんな表情を見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。

 

 

うめもと(@takkaaaan

*1:曲によってはボーカルが変わるみたい