読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

音楽で出会った人に恋をした話

コラム

私はある人に恋をした。

私が愛している音楽を、同じように愛する人に恋をした。

 

私は何事にも臆病で、石橋を叩いて叩いて叩いて割って渡れなくする人間である。恋についてもそうだ。家庭環境と過去の経験から「もう恋などしてたまるか」と思っていた。

恋は重荷なだけ。私を好きになってくれる人などいない。そう割り切って生きていこうと思っていた。でもその決意はあっさりと崩壊した。恋に落ちた。自分でもあきれるくらいにいつの間にか落ちていた。

 

その人は私より年上で、見た目は年齢より若く見える。やさしそうだが、中身は変わっていた。最初は自他共に認める変わり者の私以上に変わり者だと思っていた。

ライブで顔を合わせ、会話するごとに何か引っかかるものを感じた。今考えればその時点で恋をしていたのだろう。しかし「恋なんてしない」と決めていたため、自分の気持ちを誤魔化していた。

 

私がその人のことが好きなのだと気がついたのは、ある地方でのライブの日だった。

私たちはそれぞれ各自で遠征していた。その日は私たちの目当てのバンドの出番が予想以上に早かった。前のバンドの演奏に入ってもその人がライブハウスに現れなかった。普段の私ならば、悪魔のような面が出て「間に合わなければいいのに」と思うはずだった。でもその時は違った。あわてて連絡をし、ライブハウスの前で待っていた。 結果、連絡をしたことでその人は無事にライブに間に合った。とてもとても安心した。その人がライブハウスに到着した姿が見えてほっとした。その人のことが好きなのだと自覚した。

 

恋をしない。そう決めていた私が恋をしていいのだろうか。恋をしても傷つくだけではないのか。今の友人関係が崩れたら、ライブにも行きづらくなるのではないのか。

私もその人もメンバーさんに認識されている。いつも何人かでワイワイしているため、そのグループが崩壊したらメンバーさんにも勘付かれるかもしれない。そうしたらその人も私もライブに行きづらくなるのではないか。その人から私はライブを奪いたくない。諦めて今の友人関係のままのほうがいいのではないだろうか。諦めてしまうべきなのではないか。

 

1ヶ月以上悩んだ。そしてひとりで悩んでいても、埒が明かないことに気がついた。まだ20年も生きていない私がそのような局面に対応できるほどの経験値はない。その結論にようやくたどり着いた。いろんな人に相談することにした。

どの人も協力してくれた。私は気持ちを表情に出すのが苦手なため、周りの人は私の片想いに気づいてなかった。そのためとても驚かれた。周りに相談していくほど、後には引けない雰囲気になった。そしてようやく「やれるだけやってみよう」と思うようになった。

 

「まずライブ前にお茶に誘ってみるべきではないか」と言われた。早速実行した。誘いの連絡をするだけで手が震えた。既読がついて断られたらどうしようと不安でいっぱいになった。「いや嘘です。ふざけました」と送りたくなった。

「まだ1ヶ月近く先のことなので予定はわからないですが、予定が入らなければいいですよ」と返ってきた時はとてもうれしかった。 

 

ライブが近づくほど楽しみと不安と様々な感情が混ざった不思議な精神状態になった。何を着ていけばいいのだろうか。気合い入れすぎたらライブがきちんと見られない。しかしあまりに気が抜けた服装はどうか。

思考がぐるぐると回り、前日寝たのが深夜3時過ぎ。うっすらとクマができている姿でお茶とライブに行く羽目になる。最悪である。

ふらりと入ったお店があまり美味しくなかったということ以外、とても楽しかった。そしてライブももちろん楽しかった。だがとてもとても眠かった。実際ライブの後にその人含めワイワイしてるグループでご飯に行ったのだが、半分くらい意識がどこかにいっていた。

 

ライブ前にお茶に誘ってしまい、誘うネタが尽きた。毎回ライブ前に誘う理由付けができないのだ。会いたいがネタがない。どうしようかと思いながら「今度はお店をきちんと決めてまたお茶しましょう」と送った。「いいですよ」と返事がきて、とても嬉しかった。そしてまたお茶することになった。今度はライブ前ではなくお茶だけだ。

 

その日が近づくほどに「私なんかのために交通費出してお茶してもらうなんて」と鬱々とし出した。周りには「お茶だけでもオッケーしてもらえたのだから、自信持ちなさい」と言われた。そのように言われても自分に自信を持てたことなんて、生まれてこのかた一度もない。

やはり前日は眠れなかった。当然クマができていた。今度はライブ前ではなく、しかもバイト前だったために綺麗めな格好でお茶をした。人見知りで緊張しいで男の人と面と向かって話すことがとても苦手な私が3時間以上話したり笑ったりできた。自分でもとても驚いた。

 

私は地図が読めないため、その人に駅からライブハウスまで連れていってもらったり、なるべく隣にいるようにしたり頑張っているつもりだ。他の人に「その人のこと好きなのかー」とその人が近くにいない時にからかわれて急に意識して気持ち悪くなり、心配されることもあった。

 

次はバレンタインの翌日にライブで会う。はじめて自分で稼いだお金でチョコを買った。デパートで1時間以上どれにしようか迷った末に某高級ブランドの小さな箱に入ったチョコを買った。喜んでもらえるかな。渡した時にどんな反応をしてくれるかな。不安と楽しみでふわふわしている。

 

 

らいむ(@Tricky_Pink

過去の執筆記事一覧