SEKAI NO OWARIの『Tree』について話してみた

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関西と関東に住むアラサーなおっさん2人がskype上で語り合う対談企画。今回は先日リリースされ、大きな反響を呼んでいるSEKAI NO OWARIの『Tree』についてです。「全然彼らのこと知らないけど、とりあえずドラゲナイの人でしょ?」と、音楽に興味のない仕事場の同僚から言われたら何て返しますか?「ああ!あいつらドラゲナイ!だよね!」などと返すコミュニケーションで終わらせたあと、「あれ?セカオワって、結局どんな奴らなんだ?」という疑問符がLINEの通知音の如く響く人に多分もってこいの記事です。いまのセカオワの周辺、そして彼らが生み出した『Tree』を読み解くための、何がしかのヒントになることができれば光栄です。

そしてFukaseこと深瀬慧、あるいはメンバー4人全員の手の上で、無意識に転がされてきた自分自身に気づけるかもしれない。そして彼らの生み出す世界観を同期的に楽しみ、彼らを追うことができる、そんなきっかけすらも掴めるかもしれません。(草野)

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何はともあれ、「ドラゲナイ!!」

草野 ドラゲナイ!

ゴリ いきなり(笑)

草野 いやもうこの流れに、銀の龍の背に乗って月夜を飛んで行く気分で、ドラゲナイ!

ゴリ まあこの調子からもおわかりの通り今日のテーマはセカオワの『Tree』です。 

Tree(初回限定盤CD+DVD)

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草野 病気と、強い薬と、閉鎖された病棟から生まれた奇跡のロックバンド、大ブレイク後初となるセカンドアルバム、堂々の降臨!1億人の日本人よ!座して聴け!

ゴリ (爆笑)

草野 間違ってないよね?(不安)

ゴリ 間違いないです(笑)

草野 よかった。いやだって、これ、本当に待ってたでしょ、1億人。

ゴリ 前半部分は置いといて。まあ、確かに2年半ぶりのアルバムですからね。

草野 1億人の日本人がさ、この赤毛と女とメガネとピエロの4人組のアルバムを待ってたんだよ。SNSで賛美したがる熱狂的なファンと、SNSで批判したがる熱狂的なアンチみたいな人らは、もう既にキリンになっちゃったから人間じゃないけど。

ゴリ ははは(笑)みんな首を長くして待っていたと思うよ。

草野 もしこれが普通のミュージシャンなら、「堂々の復活作!」とか言われるはずなのに、そういうことじゃなく、期待してました!待ってました!ってのが、全て「ドラゲナイ!」に集約されてるとも思うけどもね。

Dragon Night (通常盤)

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ゴリ  twitterの「ドラゲナイ!」の率は本当に凄いよね。僕のTL上では毎日誰かが「ドラゲナイ!」って言っているもん。*1

草野 もう既に、彼らの手を離れたところでヒットしているよね、終いにはボーカルのFukaseがこれだもん。

ゴリ そうだね。もう、勢い的には今年の流行語大賞は「ドラゲナイ!」で決まりそうな感じすらするね(笑)

草野 でもこれ、本来ならこれってシングルとして切られた2014年の10月とかにあったほうが流れとしては自然じゃない?

ゴリ そう言えばそうだよね。

草野 だけどこのアルバムが出てからこの大流行は、やっぱり本当に待ちわびていた人多かったんだと思うよ。特に「ファン以外の人」にとって。

ゴリ ファン以外の人ですか。

草野 それが叩きたがりで笑いネタにしたがる人らでもね!


SEKAI NO OWARIフリーライブ、その熱狂と渦

草野 で、本題に行きますけど、ゴリさんはどうです『Tree』は。

ゴリ 聴きましたよ。セカオワのフリーライヴに行ったその足でタワレコに行って買ってきました。

草野 裏話になるけども、ディアンジェロの対談した次の日がちょうどフリーライヴだったんすよね。ライヴどうでした?舞台はやっぱり森でした?

ゴリ いやいや(笑)いたって普通のフリーライヴの感じでしたよ。ただ久しぶりに行ったんで驚いたことがいくつもあって。

草野 これまでに行ったことが?

ゴリ 前に行ったのがフェスだと2年くらい前になるのかな。フリーライヴも3年くらい前に行っているんですが、その時と違ってた。

草野 えーと、時系列的には、『ENTERTAINMENT』出した頃ですか。

ENTERTAINMENT 初回版(CD+DVD)

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ゴリ そうそう。 アイドル化しているという話は聞いていたので、女の子たちが「キャーキャー」騒ぐのはそれまで驚かなかったんです。でも家族連れが多かったことにびっくりした。

草野 タイアップに「クレヨンしんちゃん」とかありましたし、雰囲気がファンタジーな世界そのもので、親心としても安心して見させられる音楽ライブとしてあると。

ゴリ そうそう。それでもっと驚いたのがフェス的な格好した人が、僕が見た限り、一人もいなくて。本当に「あ、普段は西野カナさんとか、いきものがかりが好きなのかな?」っていう、いわゆる普段はフェスに行かないタイプの人しか来ていなかったんだ。

草野 それすごいおもしろい現象になっているね!

ゴリ 数年前ならまだ、そういったフェス好きライブ好きな人もいたし、去年のROCK IN JAPANの大トリやったわけやないですか。なのに、フェスに普段行かなさそうなお客さんが聴いている。これがすごく興味深かった。


草野 断定的にいうもんじゃないけども、『マスにウケる』っていうのをすごくアリアリと表してる気がするね。

 

SEKAI NO OWARIが放った、王道のポップ・ミュージック

ゴリ でも、音楽聴くとそれもすごくよくわかるんだ。確かに、「これぞポップミュージック!」っていうお手本みたいな音楽なんだもん。

草野 オレ今作を初めて聴いたとき、『あ、これや』ってなりましたね。セカオワを『EARTH』しか聴いてなくて、3年近くipodに入れっぱなしにしてたくせにですけど。「そう、そうね、これ、これだ」ってなった。

ゴリ 「これ、これだ」というのは?

草野 うるさくしすぎない。でも、要所要所をちゃんと押さえてあって、最後の曲になって「ドラゲナイ!」する感じ?

ゴリ うんうん(笑)

草野 実質、シングル曲とカップリング曲が大部分を占めているよね。13曲中9曲は既に発売されていて、introのようなインスト曲「the bell」をぬけば、新曲は3曲しかない。

ゴリ そうだよね。「え?新曲3曲って!!」とは思った(笑)

草野 でもぶっちゃけ、今作で一番好きなのは、新曲3曲のうちの一つ「ムーンライトステーション」なんだよ。

ゴリ お、「ムーンライトステーション」ですか。

草野 ハウスミュージックに、三味線/琴/和太鼓で祭ばやしが絡んでいく、これは反則技かっていうくらいにハイブリッドだと思う。サカナクションの「夜の踊り子」とか思い出した。

ゴリ あれはたしかに。不思議な曲だよね(笑)

草野 セカオワとかクッソださwwwwww」って言って音楽を積極的に勉強している風情のバンドマンは、ちゃんと見習った方がいいよ、こういう姿勢は。こういうことをマスにうけるポップスとして、キッチリやれる人が出そうで出なかったのが、これまでなのだから。

ゴリ ちゃんと実験的な事もやっているなー。いわゆる大文字のJ-POPに甘んじてないとは思ったわ。

草野 オレこの曲聞いた時思ったのは、「あーこれ銀河鉄道999みたいだなー」っていう。かぐや姫がいまの東京に来たら?とかいうモチーフで、このファンタジーな曲を作ってくる、彼ららしさがあるからこそ生み出せるかなと。 

銀河鉄道999 [Blu-ray]

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ゴリ なるほど。ちなみに僕はちょっと解釈違ってます。

草野 お、どう思いました?

ゴリ 「炎と森のカーニバル」のその続きっていうのが僕の解釈ですね。

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草野 はいはい。炎と森のカーニバルって、きゃりーぱみゅぱみゅとの間柄を謳った歌ですもんね。

ゴリ 横浜で遊園地行ってその帰り「帰りたくないって駄々をこねてる彼女」っていうのファンタジーに置き換えてると思ったんですよ。

草野 物語的に繋がってるもんじゃないのか?ってね、それは俺もすごく思った

ゴリ だから、きゃりーちゃんとデートして帰りたくななんか言われてモテモテだな深瀬って思いました(笑)

草野 これ、インタビュー上では「前の彼女」ってことを確か発言していたんですよ。

ゴリ あ、そうなんだ。

草野 でもきゃりーぱみゅぱみゅとあんなことになったから、もしかして……?とか思ったりはします(笑)

ゴリ はははは(笑)繋がっているといえば「PLAY」→「RPG」の流れもその感じがしますね。

草野 8bitっぽい音入れている往年のゲーム感、いいっすね。ただ歌詞的には一番苦手ですね……。

ゴリ ちなみにどういう部分ですか?

草野 

このゲームはなにかおかしいな 気づいたのに僕は不思議と クリアしたい気持ちに駆られる

とか、いやそんな気持ちにならねぇよ!、というかその後の

ミスったもう一回やってみよう

とか「もう一回もう一回ってやれるほど人生気楽にじゃねぇよ!?」って感じで(笑)

ゴリ ははは。でも、それが深瀬さんらしいとも思いますけどね。

草野 深瀬らしいといえば、「銀河外の悪夢」は、本当に自省録な感じがしていて好きだよ。パニック障害に対する治療薬を未だに飲んでるという話だし。

ゴリ あれも、自分自身のことを歌ってるなって思ったし、それこそ、最初に戻るけど「病気と、強い薬と、閉鎖された病棟」ですよ。


SEKAI NO OWARIは戦略的なマーケッターなのか?

草野 実はその話はね、とあるところから拝借しました。

5年前の、タワレコでのインタビュー。これ、Googleで<SEKAI NO OWARI  インタビュー>で検索すると1ページ目に出てくるんすよ。

ゴリ 元ネタあったんだ(笑)

草野 これさ、インディ時代からそれ以前の彼らのバイオグラフィをすごくうまくまとめてる記事で、セカオワ知らねぇ人でも超簡単に彼らの出自を知ることができる記事なんだけども。このインタビューの途中で、キーボードの藤崎がこう話してるんですよ、長くなるけども引用しますね。

藤崎「私よくインタヴューで言ってるんですけど、深瀬は方法と目的の順番が決まってる人で。例えば、先生になりたいから大学に行く。それは、先生になりたいっていうのが目的で、大学に行くのは方法。でも、大体の人は、とりあえず大学に行くじゃないですか。方法を取ってから、目的を探す。それが深瀬もはできなくて、精神病院に入ってバンドに〈世界の終わり〉っていう名前をつけるまで、このclub EARTHを立ち上げるまでは、目的のほうが見つからなかった」

この後にゴリさんが推していたRPGの歌詞を読むと、

「方法」という悪魔にとりつかれないで

「目的」という大事なものを思い出して

ここでも目的と方法について、謳ってるんですよね。

ゴリ 繋がってるね。

草野 これ、かなりすごいことなんじゃないかって思ってるんだよね。おそらくだけど、セカオワを知るおおよその人たちは、「彼らは思いつきであんな大それた舞台やパフォーマンスをしてる」と感じてるはずんだけど、彼らにとっては「計算して作ってる」っていう意識回路がもちろんあったということになるんじゃないのかなと。しかも元々は深瀬の中にあったであろう意識回路が、メジャーデビュー当時のメンバー内にもつながっていた、そんなことが言えるんじゃないですかね。

ゴリ ふむ。

草野 俺としては、彼らしさをここに見出しているんですよ。目的のために、計算し尽くした上で手段を選び、その手段の行使方法も選びに選んだ上でやっている、いわば・・・。

ゴリ 突発的に見えて、実は計算的なところ。

草野 そう。世界の終わりをSEKAI NO OWARIにしたのも、海外の人に見てもらおうとかそういう意識があったから。「Dragon Knight」でEDMを選んだのは、世界最大のEDMフェス「Tomorrowland」の舞台セットが、欧州神話のようなファンタジーめいたもので、自分たちにピッタリだと思えたから、そう邪推はできますし、多分おおよそ間違ってないはず。

ゴリ なるほど。

草野 こうなると、Fukaseがただのポッと出の中二病っぽいバカみたいに見えなくなってくるよね。今でも精神安定剤を服用して、病んでしまっている体だけども、本当に計算高く音楽をやってる。

ゴリ うんうん。

草野 個人的には「何か手違いでもいいから、BUMP OF CHICKENと対バンツアーしないかな」とか思っちゃったりはするけども(笑)

ゴリ ははは(笑)

草野 真面目な話、藤原は「俺はいずれ童謡とかを歌ってみたい」っていうことも言っていて、アニメ・タイアップも積極的、家族連れのお客さんがライブに来ているのも最近のバンプではよく見られるみたい。音楽もケルト・ミュージックやカントリー・ミュージックを引用しつつ、東欧的ファンタジーや神話を日本において表現してるのがBUMP OF CHICKEN、ということでセカオワバンプの正当な後継者に近しいとも思えるよ。 あ、あと、やたらと死生観について書きたがるところもね!

ゴリ そう言われると、バンプの『ユグドラシル』とかはセカオワに近い気もするな。

ユグドラシル

ユグドラシル

 

 

どれだけ彩っても、彼らは変わっていない

ゴリ 僕ね、本作聴いて「根本はなんにも変ってないな」と思ったんですよ。

草野 うん。

ゴリ 基本、ブラスバンド入れたり、服は変わったりしているけど、死生観やファンタジーの要素って今までと変わっていないし。言葉選ばずに言うと「現実逃避」に見えるなって思ったんすよね。

草野 はいはい。

ゴリ 映画に例えると深瀬さんがやっている事って「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のセルマなんだと思うんだ。 

ダンサー・イン・ザ・ダーク(Blu-ray Disc)

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草野 なつかしい!

ゴリ つらいことがあっても妄想さえあればその世界はファンタジーに変わる。それってやはりFukaseの病気とかがあってのこそだと思う。

草野 果たしてそれは「幸せ」なのか?っていうのは、それこそ他人様の目だからね。もしかしたら彼らにロックを見出すなら、そういった限定性をもたせる意義と問いかけなのかもしれないね。なにせ『ENTERTAIMENT』っていうアルバム出してるバンドなわけだし。

ゴリ セカオワとしては、深瀬さんとしては、自分のような辛い経験を皆にはさせたくない。だから僕の妄想の世界を音楽で、ステージで、具現化して見せているのかなと思ったんだ。

草野 なるほど。

ゴリ あえて、歌は生身の声じゃなくてフィルターを通すのもそんな理由かなと。

草野 夢のなかの声、っていう雰囲気にしたいんだろうね

ゴリ この間のライヴ観て「セカオワはディズニーランドぽいな」って思ったんだ。それは、決して現実の隙を見せない鉄壁なファンタジー。そして、それを見る家族連れの光景がディズニーランドだなと思ったんですよね……。

草野 おおそうか、有言実行だね、本当に。

ゴリ 本当におもしろいグループだよ。

草野 ここまで来ると「ああ彼らはどこに行くんだろうなー」って思います。

ゴリ このまま夢の世界を具現化していくのか。あるいは現実世界に戻っていくのか。まあ、ロックはやらない気はするけども(笑)

草野 やらないね、きっと反抗をモロにだすような真似はしない。

ゴリ ただ、流行をどんどん追って行きそうだなとは思うけど。今回のEDM化含めね。

草野 メロディに寄り添っていくようなサウンドになってくれればなぁーなどと甘い期待をしてるよ。

ゴリ 次回作も楽しみだね。次は何年後になるか。

草野 バンプみたいにリリース周期が長くなるのは、真似しないでね?

ゴリ そこは真似しないだろ(笑)

(2015年1月28日収録)

 

 

草野(@grassrainbow)×ゴリ(@toyoki123

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*1:2015年1月28日当時