映画部#1 たまこラブストーリー

突然ですが映画部です。「いきなり映画の話?」ってならないようにこの序文を書き、シリーズ化しました。以前『テレクラキャノンボール』特集とかやってるし、別に音楽だけにこだわっているわけでもないのですが、やっぱり前置きしたほうがいいと思って。

僕が紹介するのもなんだけど『たまこラブストーリー』はアニメ『けいおん!』シリーズを手がけた山田尚子が監督、京都アニメーションが制作を務めた『たまこまーけっと』の映画版です。元々はとある商店街の日常を描いた物語だったのですが、恋愛を全面に押し出した物語として映画化されました。僕も観ました。とてもいい映画です。というわけでうめもとさんの記事です。(ぴっち)

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一生に何度あるかはわからないが、自分にとって大切な作品と出会う瞬間がある。何度見返しても良くて、観る度に好きなシーンが増えていく。そんな作品に出会った時の感情を言葉にするのはとても難しい。陳腐過ぎる感想だが「だいすき」という言葉しか出てこない。

たまこラブストーリー』はその名の通りたまこの恋の物語だ。恋をするということは新しい自分に出会うということだ。たまこは自分の知らない自分に出会うことになる。つまりたまこが初めて恋を知るための物語だ。

 

そんなたまこにずっと恋心を抱いていたもち蔵が格好良かった。彼もまた新しい自分に変わっていく最中で、そのためにある決心をしてたまこに告白をする。

その告白をする河原でのシーンの色使いが素晴らしかった。もち蔵がたまこへの気持ちを伝えるのと同時に風景の色使いも茜色からピンク色へと移り変わる。この心情の移り変わりと風景の色使いの変化が綺麗だった。河原のシーンまではもち蔵のための話なのだろう。

モノローグも彼の視点からだった。ただ、もち蔵が告白を決心してたまこを呼び止め、彼女が持っていた石(大好きなお餅に似た石をたまこは嬉しそうに拾っていたのだ)が河原に落ちた瞬間、物語は一気に動き出し、たまこの視点へと移る。この瞬間が何度観ても完璧な流れで鳥肌が立つ。


 

また、常盤みどりという登場人物がとても魅力的だった。彼女が動かなければ成立しない話でもあった。結果的にもち蔵を動かしたのもたまこの背中を押したのも彼女だった。だからこそ僕は彼女の格好良さの中にある普通の女の子の心に引かれた。

みどりが感じる思いは決して言葉として吐き出されることはない。だけど彼女の表情を見れば彼女がどういう気持ちだったのかは容易に気付く。彼女の心の動きはとてもリアルで僕に近いものだった。本来たまこやもち蔵のような真っ直ぐな心を持っている人は少ないと思う。もちろんその真っ直ぐさが胸を打つのだけれど。僕にとってはみどりの立ち位置の方が感情移入しやすかった。

だからこそ、彼女が最後に決意してくれて良かった。またそんな彼女を友人のかんな(天才)が「良い表情してますよ」と救ってくれて良かった。最後にみどりが笑ってくれるから「たまこラブストーリー」は安心して物語を終えることができたのだ。

 

主人公のたまこもすごく良かった。たまこが初めて恋を知っていく過程は見ていておかしな部分があって笑えるし、可愛いかった。「餅」という単語が全て「もち蔵」になってしまうのなんてかわいすぎる。

ただ、彼女はもち蔵からの思いに戸惑っていて簡単に物事がスムーズに進むわけではなかった。たまこには「当たり前の日常」があって、その日常が変化しないものだと思っていた。

でも日常は変化していくものだ。その中で変わって欲しくないもの、大事なものは自分で必死に掴んで離さないようにしなくてはならない。たまこは不器用ながらもその答えをちゃんと見つけることが出来た。その工程が不器用だけど真っ直ぐで、僕には少し眩しかった。

 

人が恋をする瞬間をアニメーションで描くことは簡単じゃない。フィクションであることをわかっているからだ。正攻法で作るのは難しい。

でもだからこそ『たまこラブストーリー』は素晴らしい作品だったと言える。正攻法で挑んでいるし、恋をすることに伴う熱量がしっかりと表現されている。

見ていて印象深いシーンがあった。たまこがもち蔵を好きだとはっきりと意識するシーンだ。その瞬間のたまこの目の動きで彼女の気持ちを理解出来る。現実でもフィクションでも人の心の動きはよく見るとちょっとしたことでわかるのかもしれない。たまこともち蔵の互いのまだ気付いていない気持ちに、みどりが先に気付いてしまったように。

 

 

うめもと(@takkaaaan

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