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3/23 ASIAN KUNG-FU GENERATION @ Zepp Fukuoka

特に名前のない この喜びを集めて
いまひとつ抑揚の無い日々に魔法を仕掛けて

ライブ中盤で披露された「マジックディスク」の歌詞にあるこの2行は、音楽の本質、そして僕が足繁く通うライブというものの意義を見事に言い当てた数少ない言葉だと思っている。アジカンが4年ぶりに行った今回のZepp Fukuokaでのライブは、そんな魔法が目いっぱい降り注いでくるような幸せなひと時だった。

メンバー登場と同時に男女問わず飛び交う歓声。福岡にやってくるのは2年半ぶりだが人気の衰えは全く感じられない。鳴り止まない歓声の中、静かに奏でるコードで始まったのは「ソラニン」だった。次第に加速していく曲展開に合わせてどんどん気持ちが高まっていく。それをさらに増幅させるような「アフターダーク」「それでは、また明日」といったパブリックなアジカン像を常に更新し続けて来た歴戦のアッパーなギターロックを立て続けに投下して早くも盛り上がりは最高潮だ。

このツアーには、サポートメンバーとしてキーボーディストの下村亮介(the chef cooks me)が参加。彼の音選びは本当に的確でおもしろい。続く「ブルートレイン」「ブラックアウト」でも、時に無機質に、時に表情豊かな鍵盤の音色で、楽曲のカラーを一層鮮やかにしてくれた。個人的に、アジカンを聴くきっかけになった2曲だったので、リリースから10年近くを経て尚も違う色合いを楽しめるアレンジが嬉しい。

ボーカルギター後藤正文が「みんながあまり好きじゃない『マジックディスク』というアルバムから」と、苦笑しながら告げて始まったのは「イエス」と「マジックディスク」。実験的だった『マジックディスク』の中でも、比較的これまでに近い楽曲だが、久々に聴くと意外と複雑な構造をしていることに気づく。ここ最近がシンプルなバンドサウンドに回帰しているということに5年前の楽曲で気づけた。

そして意外にも序盤で披露されたのは、大ヒットシングル「リライト」だ。2004年のリリース以降、いったい幾つのフェスを大合唱で揺らしてきたか分からない2000年代邦楽ロックの代表曲なわけだが、最近は間奏を長く取って最後のサビの噴出力を最大限に高めるアレンジを施してきていた。今回はそのアレンジが、歌詞中の《芽生えてた感情切って泣いて》《所詮ただ凡庸知って泣いて》をオーディエンスに小声で歌わせる一風変わったコール&レスポンスを行うなど、更にリラックスしたネタのようになっていた。アジカンのライブで曲中に、笑いが起こるようなことは今まで一切なかったので、かなり驚いた。もうベテランの域になり、このような部分にもユーモアを忍ばせるようになれたのだろう。

ここからは暫く最新モードのアジカンを見せるブロック。口火を切ったのはニューシングル「Easter/復活祭」。とにかくデカくて鋭い音を叩き付けるような激しいロックナンバーだ。ライブという場に放たれるとそのスピード感とラウドさに呆気にとられるほど魅了された。

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アジカン4人が集まるとこういう音が気持ち良い」というMCを経て披露されたのは5月に出るという新アルバムからの2曲。「Little Lennon/小さなレノン」という新曲は、「Easter/復活祭」の禍々しく不穏な歌い出しのムードを引継ぎつつ、光射すようなサビが印象的。「Planet Of the Apes/猿の惑星」という新曲は、初期の曲に通じるような歪んだサウンドで、軽快に進むギターロックだった。どちらも、今までにないほどのシンプルさと潔さに満ちていて、これが集合したアルバムは過去最高に若々しい作品になるのではないか、とワクワクする。

いよいよライブは後半へ。「スローダウン」の力強いビートとに乗せて歌われる何気ない日々の切なさ。ラフなセッションから流れ込んだ「さよならロストジェネレイション」のドラマチックなメロディでゆったり紡がれていく悲しみや諦念を受け入れて時代に向き合う決意。そして何処までも晴れやかに人生を歌い上げた「今を生きて」へと繋がっていくこの3曲の流れはこの日のハイライトだった。あらゆる事象が疲弊しているこの時代を生き抜く精神を組曲にして象徴的に伝えてくれているように聴こえた。

本編最後のブロックでまず演奏されたのは「ローリングストーン」、「スタンダード」という近年の開放的なアジカンサウンドで作られた2曲だった。陽性のエネルギーを持つこの2曲が、クライマックスを眩しく彩った。どちらも、サビのシャウトがどこまでも突き抜けて行きそうで、堪らない気分だった。

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「何か言葉を足そうと思ったけどこの感じだけで十分だよね」と、ぼんやりとした音色をギターで奏でながら後藤が呟いた後で、本編最後の楽曲「タイトロープ」が鳴らされた。喪失感に貫かれた『ファンクラブ』というヘヴィな傑作を優しく包み込み、「どうか投げ出さないで そっと心に繋いで」と歌うスローバラードが、このライブを終えて、生活に戻っていく僕らの日々を温かく照らすように響き渡った。

 アンコールではまず、ギター喜多健介がメインボーカルを務めた「シーサイドスリーピング」が披露され、その爽快さが新鮮だった。そして名曲「海岸通り」。春めいてきたこの時期には余りにも適切な選曲。全身で染み込んでくる感傷にたっぷりと酔いしれた。

アンコールの最後に演奏されたのは「君という花」。緩やかな四つ打ちと切れ味あるギター、それをしっかり支えるベースラインという耳馴染みあるいつものバンドサウンドが、鍵盤で更に煌びやかになって、大団円を演出していく。いつもは少し気になる大合唱も、ここまでの熱狂なら全て許せる。僕も大声で歌っている。最後のスキャットまで完璧に歌っている。大いに魔法を降らせた2時間のライブが終わった。

 今回のツアーでは、ファンが求めるアジカン像とバンドが見せたいアジカン像、その両方ともを素直に見せるような堂々たるものだった。ホームであるライブハウスでの久々のワンマンということも要因の一つだろうけど、バンド全体の空気がMC含め凄く良いことが伝わってきたのも大きい気がする。きっとメンバー全員がアジカンという巨大なバンドへの向き合い方を完全に理解したのだと思う。夏からの全国ツアーではきっとより一層でかいオーラを纏ったアジカンが観れるはずだ。半年後が楽しみでならない。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION @ Zepp Fukuoka

1. ソラニン
2. アフターダーク
3. それでは、また明日
4. ブルートレイン
5. ブラックアウト
6. イエス
7. マジックディスク
8. リライト
9. Easter/復活祭
10. Little Lennon/小さなレノン(新曲)
11. 猿の惑星(新曲)
12. スローダウン
13. さよならロストジェネレイション
14. 今を生きて
15. ローリングストーン
16. スタンダード
17. タイトロープ
encore
18. シーサイドスリーピング
19. 海岸通り
20. 君という花

 

 

月の人(@ShapeMoon

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