読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2ヶ月連続で大森靖子のライブを見た 後編 四月の弾き語りワンマン

ライブレポート

f:id:ongakudaisukiclub:20150415225643j:plain

4/11、福岡ROOMSというキャパ200ほどの小さな会場で大森靖子のワンマンライブを観た。個人的に、弾き語りのワンマンライブという形式自体、初めてだった。

前方に60席ほどの椅子席、そして後方にスタンディングエリアという変わった構造のフロアで、僕は椅子席の最後方に座った。ゆったり観れるなぁ、なんてことを暢気に思っていたが、始まってみればそんな思いはすぐに消えた。ひとときも心休まることのない、大森靖子の剥き出しの言葉とメロディをたっぷり注ぎこまれる90分だった。

僕は大抵、2時間のライブだろうとその日の曲順などをよく覚えているのだが、この日は何曲披露されたのか全く覚えていない。後記のセットリストは全て終わって数日後に情報と記憶を掻き集めて書いたものだ。彼女のライブは、楽曲をひとつ披露すると、余韻をほぼ与えずに次の曲に移る。これをずっと繰り返すものだから、記憶にとどめる隙がない。ひたすら性急に、次々と楽曲を放り投げてくる。これが何だかクセになるのだ。こちらはひたすら受け止め続けるだけなのだが、時間が経つにつれ早く次の曲を、とどんどん求めてしまうようになる。序盤で早くも、大森靖子のライブに魅了される人の独特な感情を理解した。

そしてライブ中に驚いたのは、どんどん変わっていく弾き語りの形式だ。最初5曲はグランドピアノを用い、それ以降は最後までアコースティックギターを用いていたのだが、時にアンプからギターを外した状態だったり、時にマイクを介さない生声で歌ったり、時には後方のスタンディングエリアまで歩みを進め、そこで暫く歌い続けたり、ころころとそのスタイルを変えていった。その場その場で、曲の一番活きが良い状態を探り、すぐに届けるという弾き語りならではの自由度の高さは、ツアー中に生まれた新曲(「春の公園(調布にて)」というタイトル)も自然に披露するスピードにも繋がっているのだろう。

特に良かった楽曲をいくつか挙げてみる。グランドピアノの伴奏で震える歌声を聴かせた「青い部屋」では、滑らかな鍵盤さばきも楽しむことができた。感情的なパフォーマンスに注目しがちだが、楽器のテクニックも目を見張るものがある。それは、繊細な指弾きを駆使するアコースティックギターでも同じように感じた。「夏果て」はその極みだった。痛々しい情景を描き出すような細やかなギターの鳴りに胸がずきずきした。また、大森靖子&THEピンクトカレフ名義でのみ音源が発表されている「ワンダフルワールドエンド」は、弾き語りでより物憂げな印象を強めて届けられた。

www.youtube.com

大きなMCはたった二度だったが、最後のMCで「久々にテレビで観た芸人が、自分のギャグをものすごくタメて言うようになっていた」という話になぞらえて、自身の音源とかなり違う歌唱を面白がりながら喋っていたのが印象的だった。

これは何度かライブ映像を観ていたので事前に知っていたことだが、テンポや言葉の区切り方、抑揚など、彼女はライブにおいてアレンジを加えて歌う。生で聴くとその奔放さにぶっ飛んだわけだが、聴き慣れた感じではないにも関わらず、その場で聴いている自分は確実に気持ち良いところを突かれてしまう。

歌い回しが変貌する曲の中で、特に印象的だったのは「絶対彼女」と「音楽を捨てよ、そして音楽へ」の2曲。「絶対彼女」は、音源よりもやや早口でまくしたて、高揚感を生み出していた。終始、アンプラグド&生声で歌い続け、時に足で床を踏み鳴らしてリズムを作り、激しくなっていく歌いぶりに否応なく燃えてしまった。この歌の中盤の語りの部分は、女子ではない僕ですら「今日も可愛く生きててね」のフレーズに毎度「、、、うん」と涙声で答えたくなってしまうのだが、これがまた早口なのに、その場にいる全員にふわりと呼びかけてくれているようで、より一層可愛く生きなきゃなぁ、と思ってしまった。この距離感で、肉声で、話しかけられるように伝えられたら、誰だってそう思うんじゃないだろうか。

「音楽を捨てよ、そして音楽へ」は、冒頭では囁くように歌ったフレーズが、徐々に爆発していくという音源通りの展開をより大きく聴かせていた。その気迫に汗がじっとりと出てきた。時に優しい曲調、歌い方で場を和やかにすることもあるが、一瞬のうちにその空気を切り裂く絶唱を繰り出す。まるで着実に積み上げていくことを拒否するように、次に鳴りそうな音の予兆を全部裏切っていく。ぶっ壊していく。此処がまさしく大森靖子の本現場であると感じた。

www.youtube.com

メジャーという現場を最大限に活かし、派手なアレンジで固めたアルバム「洗脳」のレコ発ツアーという位置づけにも関わらず、アルバムからの選曲はわずか3曲。これは音源のため作られた楽曲が大半の「洗脳」の性質上、仕方ないことだが(事前に本人「ライブでやるかわからない」と『VVマガジンVol.6』にて語っていた)、さすがにもう少し聴きたかったという思いもある。しかし、このタイミングで大森靖子がここまで勝ち上がってきた表現の素の姿をじっくりと観ることが出来て良かった。これから彼女がどんどん広まっていくにつれ、恐らく会場も大きくなるだろうし、この距離で目撃出来たことも貴重な機会だろう。MC中に、「ほんとはバンドで来たかったんだけど、予算がなくて、、、」と苦笑いしていたのだが、恐らく今後はバンドスタイルでの活動も増えていくことを示唆しているのではないだろうか。予想外にピンクトカレフを終了した彼女だけに、今後の活動を読むのは難しいが、それでも彼女は自身の表現が最大限に活かされる方法を間違いなく選び取り、僕たちの眼前に叩きつけてくれるはずだ。

4/11 大森靖子 @ 福岡ROOMS

1. 歌謡曲
2. kitty's blues
3. 春の公演(調布にて)
4. 青い部屋
5. キラキラ
6. あまい
7. エンドレスダンス
8. 呪いは水色
9. 新宿
10. 絶対彼女
11. 君と映画
12. ノスタルジックJ-POP
12. 夏果て
13. コーヒータイム
14. 音楽を捨てよ、そして音楽へ
15. hayatochiri
16. 裏
17. 秘めごと
18. ワンダフルワールドエンド
19. Over the party
20. デートはやめよう
21. ハンドメイドホーム
encore
22. ミッドナイト清純異性交遊
23. PINK

 

 

月の人(@ShapeMoon

過去の記事一覧