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3/19 Base Ball Bear @ 鹿児島SR HALL

ライブレポート

前回のツアーで周りきれなかった地域を中心に敢行された今回の「Tour二十九歳+一」。2014年マイ年間ベストアルバム「二十九歳」を引っ提げ、再度ツアーを行うということで、鹿児島へと遠征してライブに参加した。

前ツアー同様、JUDY AND MARYTRICERATOPS宇多田ヒカルといったベボベ4人の青春時代を彩った楽曲がSEとしてかかる中、開演時間を少し過ぎて客電が落ち、ライブはスタートした。

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幕開けは「ファンファーレがきこえる」。「二十九歳」の予告編のような形でリリースされたシングル曲だが前ツアーでは未披露。さらに鹿児島にベボベが来るのは4年ぶりということもあってか、一曲目から既に酸欠しそうなくらいの盛り上がりだ。音源ではクールに聴こえる「アンビバレントダンサー」や涼風を運ぶような夏の歌「PERFECT BLUE」すらも、かなりの熱量を持ってノンストップで演奏された。

大都市のワンマンでは常に1000人以上を超えるキャパでライブをしているバンドなので、100人規模の小箱で、ここまでステージが近いのは地方公演ならでは。「メジャーデビューして10年近く、女優、モデル、アイドル、たくさんの女を侍らせてきた"妄想"」を込めたというMCを経て披露された艶っぽいギターロック「yellow」も音源とは一味違う熱を帯びていた。

前半のハイライトは、前アルバム「新呼吸」の中でも一際攻撃的なカッティングが炸裂する「転校生」だった。会場を「Oh Oh」のコールで満たした後に、そこに必殺のライブアンセム「LOVE MATHEMATICS」を投下した流れは、アルバム「二十九歳」には少なかった肉弾戦な要素がしっかり取り入れられ、ライブバンドとしての真価を見ることになった。しかもその一連の楽曲群が全て「妄想」のみで歌詞を描き切った曲括りだったことも告げられ、自身の妄想でここまで躍動的なライブチューンを作り上げてしまう小出祐介のソングライティングの珍妙さも垣間見れた。

MCでは、鹿児島に実家があるドラムス堀之内大介氏が大活躍した。堀之内さんがアドリブで、鹿児島に生まれた喜びを歌にし、そのふざけたノリのまま突入したのは「スクランブル」の心地よいグルーヴ。笑いもカッコ良さも並列に届けるこのバンドの稀有な特性がよく出た一曲だった。そして唐突に披露されたのは未発表の新曲。重たいリズムに、闇から必死に這い出すような歌を乗せたへヴィなロックバラードだった。一聴した印象は、とにかく暗い。これが次のアルバムの布石になるのか、ならないのか。いずれにせよ、しっかり歌詞を解きほぐしてみたい曲だった。

次のMCでは、現在ツアーと並行して次回作の制作が進行中であることも伝えられた。しかも曲が出来過ぎていて、どうパッケージするか迷っているという嬉しすぎるお知らせだった。「二十九歳」という到達点を作り上げ、これからバンドは「今まで培ったものを成熟させていく」という方針になることも告げられ、次なる活動にも期待が湧いた。

Base Ball Bearの基本理念、指針が詰まった曲」という前置きのもと披露されたのは「Tabibito In The Dark」。歌詞にはこういう言葉がある。

僕はいつまでも愛されない存在だと塞ぎ込むだけ塞ぎ込んだ僕と別れて
踊れ 踊れ 何もかも忘れて 踊れ音の中で
笑え 笑え すべてを振り切るように 笑え いま dance and dance

今回のツアーはまさにこの曲の理念に基づいて練られたセットリストだった。パーソナルな悩みや苦しみを音の中に飲み込ませ、そして踊り、歌い、笑う。彼らのライブの根源的な魅力が一気に解き放たれるダンスロックだ。

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そこに続くのは代表曲「ELECTRIC SUMMER」。今や定番となった四つ打ちロックのクラシックナンバーだ。イントロの瞬間、歓喜と多幸感を伴ってフロア全員の笑顔が弾けたこのアンセムは、ライブ後半のハイライトになった。

狂騒と緊迫の後に徐々に開かれて行くクライマックスの3曲、「UNDER THE STAR LIGHT」、「光蘚」、「魔王」は前ツアーを引き継ぐ並びだが、何度聴いても深い感動で胸がいっぱいになる。しかし前聴いたときとは少し種類が違う。前ツアーでは、「二十九歳」に辿り着き、納得が行く表現を手にした小出祐介への祝福を伴った感動だったが、今回はそれを踏まえたうえで新たな未来を見据え始めたBase Ball Bearへの期待感を伴った、興奮に近い感動だった。

アンコールではまず、穏やかな「カナリア」がリラックスしたムードの中で届けられた。アルバムを締めくくる曲であり、前ツアーでもライブを締めくくる曲として演奏されていたので、この後に何が続くのか予想がつかなかった。

「ありがとうBase Ball Bearでした!」というお馴染みのシメの挨拶の後に鳴らされたのは「二十九歳」のオープニングナンバー「何才」だった。

澱みからメロンソーダまで翔け抜けたい 魔法じゃない
かなしみもしあわせも網羅したい
欲しいのはすべてと言ったら いけないのかな("何才") 

 アルバムの概説であると同時に、ベボベの表現の究極的なメタファーとも言えるこの曲を最後に演奏することによって、ベボベがこれからもブレない姿勢を持って活動を続けていくことを高らかに宣言しているような気がした。こんなに信頼できるバンド、なかなかいない。過去最高の状態の中、これからも「やばい」作品しか作らないと笑顔で語っていた彼らを、これからもしっかりと見届けたいと思う。

3/19 Base Ball Bear「Tour二十九歳+一」@鹿児島SR HALL

1. ファンファーレがきこえる
2. アンビバレントダンサー
3. PERFECT BLUE
4. yellow
5. そんなに好きじゃなかった
6. 転校生
7. LOVE MATHEMATICS
8. スクランブル
9. 新曲
10. The End
11. Tabibito In The Dark
12. ELECTRIC SUMMER
13. UNDER THE STAR LIGHT
14. 光蘚
15. 魔王
encore
16. カナリア
17. 何才

 

 

月の人(@ShapeMoon