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BOOM BOOM SATELLITES『SHINE LIKE A BILLION SUNS』

合評 レビュー

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昨年からアルバムを本腰入れて作る人が増えてきたような気がする。もちろんそれまで適当なモノばかりリリースされていたわけではないけど、なんていうか、統一感を持ったアルバムが増えてきてないかな。昨年リリースされた銀杏BOYZのアルバムはそれぞれ粒ぞろいの楽曲が収められながらも、アルバム全体で統一したテンションがあった。今年だとONE OK ROCKのアルバムもそう。ある程度キャリアを重ねた人たちが、アルバムというフォーマットでどれほどの物を作れるかに挑戦している。

少し古い話になるけど、2000年代に入って着うたがはじまり、その後、スマホが携帯電話に取って代わった今でもiTunesなどの配信ストアでの単曲ダウンロード、もしくはYouTubeでの視聴が全盛になった。そのような状況でアルバムというリリース形態が求められなくなっているかのように見えなくもない。しかし、そのような逆境にいるからこそ、アーティストは単なる楽曲集では収まらない、明確なアイディアに基づいて作られたアルバムを作り出しているのではないか。みんなタフになっている。否、タフにならなければ生きていけないのだ。

このアルバムも、アルバム全体で一つの物語を提示するものだ。50分31秒、あっという間に過ぎる。音楽であるはずなのに視覚的なイメージが飛び出してくるような印象がある。優れた音楽を聴いて情景が思い浮かぶことは自然だが、彼らの場合、SF映画のような何かが頭を通り過ぎる。まるで物語のような何かが聴く人の頭の中を過ぎ去っていく。

彼らは元々1997年にベルギーのレーベルからシングルをリリースし、「ケミカル・ブラザーズプロディジー以来の衝撃」と報じられるものの、必ずしも海外のサウンドに寄せることで評価されるわけではなかった。むしろ今の日本における評価や立ち位置と同様に、どのシーンにおいても異端の存在だった。

ドラッグやアルコールなど、退廃的なライフスタイルとロックは、常に密接に結びついてきたところはあるじゃないですか。じゃあ、「それとは逆の方向へ進むと、ロックンロールじゃなくなっていくのか?」と考えると、「いや、むしろ、その稀な人生との向き合い方や、その都度起こった彼の気持ちの変化を通して、全く別のハードな音楽を生むことができるんじゃないか?」と思うんです。

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.14 BOOM BOOM SATELLITES - 連載・コラム : CINRA.NET

言うまでもなく日本はドラッグの取り締まりが厳しく、また地理的にも言語的にも異なった文化を持っていることは言うまでもない。彼らがドラッグにもアルコールにも頼ることなく、狂気をサウンドで表現することができたのは、彼らの出自は日本であることが少なからず影響しているだろう。そしてそれがお茶の間に炸裂したのが「KICK IT OUT」だった。

そのように独自のサウンドを手にした彼らがその進化を求めることは彼らにとって必然だった。10年前にリリースされた『FULL OF ELEVATING PLEASURES』の頃の彼らは目の前の人々を躍らせることに意識的だった。しかし今はむしろ「アルバムを通して聴かせたい」思いが強いのではないか。もがき苦しみ格闘した上で、希望のようなぼんやりした何かをほんの少しだけ見出し、僕らに差し出してくれる。

もちろん川島道行の闘病も影響しているだろうし、デビュー以来24年にわたって活動してきた活動のすべても含まれているだろう。でもそれはどのアーティストも同じことだ。しかしこのアルバムを聴くと、彼らがどれほどまでに戦ってきたのか、そしてなぜ希望のようなものを見いだせるようになったのか。そこに至るまでに闘いが目に浮かぶのだ。

実際のところはわからないし、多分本人たちにだってわからないだろう。でもこのアルバムを聴けば、言葉さえ伝わらない相手にさえ、彼らが戦ってきたことが伝わると思う。文脈に頼らない強靭な音楽がここにある。

 

 

ぴっち(@pitti2210

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このアルバムが発売される直前、川島さんの4度目になる脳腫瘍再発、さらには余命2年 の宣告を受けていたことが発表された。正直、BOOM BOOM SATELLITESに ついては何も知らない。いや、何もというのは大げさだけど、《Kick it out Kick it out Kick it out…》の言葉が妙に頭に残っている、その程度だ。

数年ぶりに聞いた彼らの新譜。このキレッキレの一枚は、聴いた瞬間からもう名盤の香りがプンプンした。すごく作り込まれた多彩な音がたくさん詰まっているのに、とてもキャッチーで全然難しさを感じさせない。バンドサウンドだけではなく、先鋭的なエレクトロをふんだんに使った、とんがりまくった未来のサウンド。人は絶望の淵に立たされてからが強いのだ。全てを投げ出して自分勝手に振舞うのではなく、その絶望に正面切って「絶対にやってやる!」と思い立ったその時、人は思いもよらぬパワーを見せる。

まさにこの一枚は、そんな死の淵を彷徨った2人が見せる圧倒的な「生」のエネルギーが、光のパワーが、ただただ眩しいのだ。それが輝けば輝くほどに、時折見せる暗さや影の部分が引き立ち、そのギャップがまた素晴らしい。

音楽は、広く大きく、多彩であればあるほどに、聴く人の耳を刺激してやまない。何よりこれを聴かずして、何がロックだ、何が音楽だ。日本の音楽を照らす明るい希望はここにあったのだ。

 

 

かんぞう(@canzou

canzouのblog

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正直なところ、僕はBOOM BOOM SATELLITESの熱心なリスナーではなかった。聴いていたのはベスト盤と前作の『EMBRACE』くらい。その程度の知識で今作を初めて聴いた時の感想は以下のようなもの。

「うわー!すごい!これぞブンブンって感じだー!」

うん、さっぱり意味がわからない。アホか。

彼らの音楽はインダストリアル、ダブ、ブレイクビーツ、クラブミュージック、それからジャズやヒップホップ、僕の知らないジャンルも含めて様々なジャンルがミックスされ、BOOM BOOM SATELLITESというロックのフィルターを通して出来上がる。だから聴いた瞬間に「ブンブンだ!」とわかる記名性がある。それは今作も同様である。

ここでさらにぶっちゃけると、僕はこのアルバムを聴いた時「めちゃくちゃ良いんだけど、何が良いのかがまったく理解できない」という情けない思いも感じた。そこからできる限り理解しようと彼らの作品を聴いたり、インタビュー記事を探し出して読み漁ったりもした。

インタビューで語られている今回のアルバムのイメージは「温かみがある、メロディーが強い、希望を感じる」ということ*1。最初は全然よくわからなかった。でも、何度も聴いていくうちに確かに希望を見出そうとする思いを感じたりもした。それはきっと歌がはっきりと聴こえてくるからだ。それはアレンジも同様で、歌を届けることの意識が強くなっている。

BOOM BOOM SATELLITESはいつも自分たちの音楽や作品というものを大事にしてきた。その当たり前のことに命を懸けて本気で向き合っている。だから彼らの音楽には生半可な気持ちでは辿り着けない。そんな領域がある。今回のアルバムはそれが特に歌にフォーカスされている。

なぜ歌を届けることに至ったのか。その理由は正直よくわからない。病気のこともあったのかもしれない。ただ今回のアルバムでたどり着いた景色は感動的なものだった。彼らの音楽を聴いていていろいろ感じることはあったけれど、「A HUNDRED SUNS」や「OVERCOME」のような曲を聴いて「こんな良い曲を書くバンドだったのか!」というような感想を抱くとは思わなかった。いや、本当に失礼な話なんだけど。

きっと彼らには次の景色が見えているのだろう。それが一体なんなのか。僕も彼らと一緒に見に行きたい。また一つ大切にしていきたいバンドに出会ってしまった。

 

 

うめもと(@takkaaaan

takkaaaan blog

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