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BIGMAMA『The Vanishing Bride』

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5月の第2週の日曜日といえば、母の日。いつの日からか、実家の母にカーネーションを贈るのと同時に、2人目の母であるBIGMAMAの音楽を聴くことがこの日の通例になってきたみたいだ。『The Vanishing Bride』。彼らの6枚目のフルアルバムにして、間違いなく最高傑作だ。毎度毎度作品が出れば 『最高傑作だ』と言い続けることに若干の後ろめたさを感じつつも、今作においては今後一切この作品を超えるものはできないのではないかと思うぐらい、完成度が高く素晴らしい作品だ。もう言い切っていい。詞、メロディ、曲順、ジャケット、タイトル。どれをとっても過不足なく緻密に計算され尽くされた、捨て置くものなどない掛け値なしのとっておきなのだ。

金井さんの歌う歌は、いつだって「愛」だった。1st の『Love & Leave』に始まり、6枚目の今作にいたるまで、そのスタンスは一貫してブレがない。ただ、彼自身の「愛」の持つ意味合いは、だんだんと変わってきたようにも思える。目の前の人に対する文字通りの「愛」から、母への慈愛に満ちた優しい「愛」、そして僕らリスナーに対する正直で強い「愛」。今作はまさに、そんな強い「愛」を 随所に垣間見ることができる。テーマとされている「幸せと不幸せ」「希望と絶望」という、相反する2つのこと、さらには5曲目の「Frozen Diamond 〜漂う宝石〜」で は《宝石と石ころ》とも歌っており、それこそ「Love & Leave」 (※愛と離)から考えれば、そういった究極的な二択を迫るスタンスはいつだって金井将人その人の姿なのかもしれない。そこには宝石として選んでくれたあなたを全力で幸せにしてあげるという希望に満ちた強い愛があるし、一方で石ころとして思ったあなたが不幸せになり絶望を感じたとしても、それすらも乗り越えていきたいという正直な愛がある。

だけど、それらに介在する彼の意思としては、何事も選ぶ人次第ということ。彼はそれをわかっている。ラストソングで「神様も言う通りに」と歌われているように、自分ではなく、選んでくれる人次第だということ。そして、選んでくれた人を、最高に幸せな気持ちに愛してあげられる準備が、BIGMAMAにはできているのだ。

『The Vanishing Bride』、これからの人生を共に歩んでいきたいと思わせ てくれる、素晴らしい一枚だ。

 

 

かんぞう(@canzou

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愛という言葉で語られがちなBIGMAMAを、違う語で切り取りたい。いくつか候補が上がったので、書きながら最適な物を見つけていこうと思う。

「Sweet Dreams」「ワンダーラスト」、「alongside」といった楽曲では喪失や危機を経て、様々なことを思案した後に前向きに生きる人を描く。そして、「神様も言う通りに」では《たった3秒あれば僕達は自分を変えていける》と歌う。

ところで、金井は幸福と残酷さを両立するフレーズを本作の表題にしたいと思い、長い間探し続けたという。そして、辿り着いた語が「消えた花嫁(The Vanishing Bride)」であり、さらに彼は結婚式で第三者が新婦を奪い去っていくという物語を本作につけた。本作の楽曲はその第三者を主人公にすると、すべて説明できるという。しかし、人生の頂点からどん底に突き落とす設定をつけた割に、本作には不幸や憎悪は描かれていない。

ところで、金井はしばしば「音楽で人を幸せにする事は出来ないけれど、不幸を遠ざけることは出来ると信じています」と言う。

BIGMAMAの楽曲はさらっと聴くだけでもポップで親しみやすいし、さらに好きになってライブに行けば、シンガロングや一体感のあるノリに包まれて幸福な時間の一種を体感できるだろう。

本作のリードトラックとなる「A KITE」には《大丈夫さ僕らはきっと上手くいく》という歌詞がある。(A KITE=赤い糸)本作の筋に沿えば、新婦の小指から出る赤い糸が誰に繋がっているのかは、目では見えない。新婦が人生を終える時に「主人と私は繋がっていたのかもしれないなぁ」とか「本当はこの人じゃなかったのかもしれない」とぼんやり振りかえって初めてわかるものかもしれない。それでも新郎と新婦は結婚を決意したし、第三者もどのような背景があったのかわからないが新婦を奪い去った。もし、彼らが自分の人生の成功という観点で物事をみていたならば、新郎は結婚に踏み切れないだろうし、第三者は奪い去るなんて発想すら持たないだろう。

たとえ根拠のない自信でも無いよりはあった方が、楽観的に物事をみられるし、万が一心が折れても人には時間という最大の武器がある。本作には、一つ一つの絶望的な出来事にとらわれるのではなく、大局的に人生を見通して希望の灯を絶やさない主人公たちの姿が描かれている。

彼らはしばしば「今が僕らは1番かっこいいです」と言う。酸いも甘いも自らの肥やしにして、最終的に映し出したのは希望。この1枚を切り取るなら「希望」という言葉が似合うと思う。

 

 

rinko(@rinkoenjoji

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とても素晴らしいアルバムだ。最初に聴いた時は以前と違う全体的な音のクオリティの高さと力強さに驚いたけれど、じっくり何度も聴き込むうちに前作、前々作にも感じた「愛」をこのアルバムにも感じることができた。

6thアルバム『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』から、BIGMAMAはロックの枠を飛び越えて普遍的な音楽を鳴らし始めたと思う。僕は彼らの音楽をそこまで詳しく知っている訳では無かったが、「エモーショナルなロックサウンドとバイオリンの音色が合わさった特殊なバンド」というイメージはこのアルバムを聴いた時に崩れ去った。

彼らが手にしたその普遍性は7th『君想う、故に我在り』というアルバムで一度完成されたのだと思う。ただ、「好き」「愛してる」だけでは表現しつくせない感情の揺れや想いを一聴して聴き心地の良いメロディーに乗せて歌う。そして全てを聴き終えた時に感じるのは大きな愛に満ちた想いだ。それは曲の物語の対象への愛でもあり、僕たちリスナーへの愛でもある。BIGMAMAはこのアルバムで大きな愛情を確かな演奏力に裏打ちして鳴らすことができるバンドになった。

そして今回の『The Vanishing Bride』では、普遍性のある曲に加えて、曲の持つ物語のスケールを何段階も飛ばして仕上げてきている。今回のアルバムで肝となっているのは「Sweet Dreams (bittersweet)」「Lovers in a Suitcase」「alongside」の3曲だと断言してしまいたい。この3曲に通じているのは今までの曲よりもずっと広い世界と視野を持っているということだ。この3曲は例えばスタジアムで鳴らされたときに特別に映えるであろう世界観の大きい曲になっている。同時に言葉の持つ意味も更に強固なものになっている。これは今までのBIGMAMAの曲には無かった変化だと思う。

「Lovers in a Suitcase」という曲が本当にとても素晴らしい。この曲の後半で展開されるドラマチックさは是非一度聴いて体験してみてほしい。BIGMAMAだからこそたどり着けた大きな愛の物語の終着点がここにはある。

 

 

うめもと(@takkaaaan

takkaaaan blog

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