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VISIONのその先/ねごと @ 福岡BEAT STATION

ライブレポート

ねごとが今年3月にリリースした『VISION』は変革か大成が求められる3rdアルバムの条件を肩肘張らずに達成したかなりの秀作だった。聴いていると、とても清々しい気分になる。一曲一曲のパンチというより、全曲の折り重なりによって聴くたびに魅力がほろりと零れてくるようなアルバムだった。

作品でここまでの成熟を見せたとなると、気になるのがライブだ。彼女たちはデビュー当初よりライブバンドを自負しながらも、そのライブでのアプローチの面でかなり苦戦をしていた時期もあった。その季節を終えて辿り着いた『VISION』という着飾らない傑作が、どのように現場で鳴らされるのか、とても興味深かったのだ。

デビュー5年目にして福岡では初めてのワンマンだった今回のライブ、結果として今まで観たことのないくらい自然体なねごとの音楽が鳴る、充実の2時間だった。

ツアーはセミセミファイナルということで、『VISION』の楽曲たちがしっかりとバンドの身体に馴染んでいる万全の状態。それは序盤で披露された大らかなビートに揚々と歌を乗せた「アンモナイト!」、そして「黄昏のラプソディ」の滑らかなグルーヴですぐに分かった。4人の演奏ががっちりと噛み合い、美しく放たれていく。

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中盤の「ドリーミードライバー」の包容力たっぷりの演奏と、メンバーの穏やかな表情も印象的だった。温かく、彼女たちの母性すら感じてしまうほどの柔らかなサウンドはここ最近の彼女たちの大人びた部分がよく出ている。若くしてシーンに飛び込んだ彼女たちの、たおやかでいて着実な成長が垣間見れる一曲だった。

また、一時期の音楽的な方向性の葛藤を刻みつけた前アルバム『5』の楽曲たちも随所に散りばめられていた。「nameless」や「greatwall」には攻撃的で、ヒリヒリしたパワーがあることを『VISION』の曲たちに挟まれて聴くと実感する。当時は迷いもあったのだろうが、今は既にこれらの楽曲もねごとの根幹に組み込まれ、ライブの起爆剤として躍動していた。何と健全な過去の受け止め方だろう。

ライブ後半、ボーカル蒼山幸子によるMCで語られた「アルバムの中で特に大事にしてきた曲です」という前置きのもと、リード曲「endless」が披露された。

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涼しげだが何処か物憂げな歌い出しから、徐々に限りなく視界が開けていくラストまで一貫するねごとらしいしなやかさと強靭さ。煽りやコール&レスポンスよりも実直な演奏をそのまま差し出すという、現在進行形のねごとのライブを象徴する見事な演奏だった。

「今この瞬間」を心に焼き付けることを歌ったロックバラード「Time Machine」、そして「ああ!長い長い旅は続いていく」と挑発的なくらいの熱量で感情を揺さぶるアッパーな「憧憬」というアルバム通りの流れでライブ本編は終了。徹底的に自分たちの「VISION」を信じ、此処から更に飛躍していくことを誓うかのような強気を感じることができた。

アンコールでは、初期のレア曲「彗星シロップ」をライブで初めて聴くことができて嬉しかった。「福岡の盛り上がりが凄かったから!」と急遽決まった選曲らしい(出番前にベースの佑ちゃんが念入りに進行を確認していた笑)。初めて行われた福岡でのワンマンライブは、ずっと先にも繋がるような意義深い瞬間ばかりだった。自由を手にしたねごとはこれから一体何処まで行けるだろうか。

5/17 ねごと @ 福岡BEAT STATION

1. 未来航路
2. #Sharp
3. アンモナイト
4. 黄昏のラプソディ
5. GREAT CITY KIDS
6. greatwall
7. コーラルブルー
8. 風惹かれ
9. ドリーミードライバー
10. エイリアンエステー
11. 真夜中のアンセム
12. 透明な魚
13. ループ
14. nameless
15. endless
16. シンクロマニカ
17. カロン
18. Time Machine
19. 憧憬
encore
20. 彗星シロップ
21. Re:myend!

 

 

月の人(@ShapeMoon