Alabama Shakes『Sound & Color』

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このブログでは久しぶりの洋楽の合評です。普段から洋楽を聴かないわけでもないのですが、元々邦楽リスナーであることの比重が大きくて、なかなか書くのに慣れてなくて。そしてそういう人たちの集まりでもあって。そんな邦楽好きな僕らが、それでも聴き入ってしまったのがこのアルバムでした。(ぴっち)

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アラバマ・シェイクスは凄い。でもそれを言葉にするのが難しい。

サウンドが凄いのだろうか?ロック、ソウル、ブルースを中心としたルーツ。レッド・ツェッペリンジェームス・ブラウンオーティス・レディングといった伝説級の人たちの影響は度々指摘されるが、現代だとジャック・ホワイトに重ねる人もいる。またジャック・ホワイト自身、アラバマ・シェイクスのラブコールを送っている。

実際、音は最高だ。ギターの鳴りは言うに及ばず、それ以上にフレーズの一つ一つがいちいちキマっている。かっこいい。最近のフェスでの映像を見たが、確かに演奏も上手だった。でもそれ以上にフレーズの一つ一つの美しさに聴き言っていた人がたくさんいた。

そしてそのバンドを従えて歌うブリトニー・ハワードの歌がとても表情豊かだ。歌のうまさは言うに及ばず、ロックにありがちなバンドの大音量に負けないように張り上げるタイプのものではなく、歌の一つ一つに感情が込められていると思う。特に怒りと悲しみがとてもパワフルに響いてくる。そういう意味でバンドとブリトニーの歌は一体と言える。演奏の一つ一つを丁寧に聴かせることで歌が映える。その逆もまた然り。お互いが理想的に高め合っている。

ではサウンドと歌、もしくはそのバランスが優れているからこそ、アラバマ・シェイクスは最高なのだろうか?そんなわかりやすいものであったらどれほどよかったか。要素をそれぞれ抜き出して並べてみても、アラバマ・シェイクスの音楽は確かに優れている。しかし優れたバンドと歌い手を揃えれば良いバンドになるわけではない。その鍵を解くのはブリトニー・ハワードにあると思う。

ブリトニー・ハワードについて失礼を承知で述べさせてもらうなら、最初に彼女を見た時に性別がよくわからなかった。見た目や体格もさることながら、マツコ・デラックスのような強烈なインパクトと、同時に性別/人種が曖昧なことが彼女の大きな特徴だと思う。ちなみに彼女は白人の母親と黒人の父親の持つ。

その彼女が「Don't Wanna Fight」でこう叫ぶ。

My life, your life
Don't cross them lines
What you like, what I like
Why can't we both be right?
Attacking, defending
Until there's nothing left worth winning
Your pride and my pride
Don't waste my time

I don't wanna fight no more

 

私の人生、あなたの人生
それらを交差させないで
あなたが好きなもの、私が好きなもの
どうして両方ともが正しいなんて言える?
戦っても守っても、勝利は残り得ない
あなたのプライドと私のプレイド
私の時間を無駄にしないで

私はこれ以上戦いたくないの(拙訳)

彼女には歌うことがあった。彼女は自らの正しさを主張するわけでもないし、相手の愚かさを主張しているわけではない(例えそれが明らかだとしても)。それでも戦うことに意味が無いことを悟り、その放棄を願い、そして叫ぶ。思いが言葉を紡ぎ、そして音を形作るのである。

これがポップミュージックとして歌われることが凄い。アラバマ・シェイクスも凄いけど、それを受け入れるアメリカという国もリスナーも本当に凄い。ものすごく知的だと思う。もし2011年に日本でこのようなことを歌ってくれる人はいなかった。歌って欲しかった。

少し話が逸れるが、先日のボナルー・フェスティバルでの彼らの映像を観て、だだっ広い場所で客がブリトニーの歌に聴き入っている姿に感動してしまった。歌われなければならない歌というものがこの世界にはあるのだ。

 

 

ぴっち(@pitti2210

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このアルバムを聴いていると、本来音楽を聴く上で必要な知識みたいなものさえ、あまり必要ないのではと思う。頭で考えるよりも先に音楽の気持ちよさがこちらに伝わってくるんだよね。例えば「Don't Wanna Fight」という曲の最初の《Uh~》のコーラスを聴いただけで、すごく単純にカッコいいという感想がこぼれてしまう。

このボーカルのブリタニー・ハワードがまた良い声で歌うんだよ。調べて女性だったということを知って驚いた。男女の性別を越えた、とてもソウルフルな歌声だと思う。

『Sound & Color』ではそういった「単純だけど心に訴えかけてくる格好良さ」が全ての楽曲に存在している。それはボーカルや、妙にカラッと乾いた(少し土の匂いもする)サウンドプロダクション、テクニックとパッションが渾然一体となった演奏、それらのアルバムのカラーを彩る音や空気が奇跡的な融合を果たしている。いやはや、ほんとカッコいいアルバムですよ。

 

 

うめもと(@takkaaaan

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