2014年、僕らが出逢ったのはよく晴れた春の日だった。くたびれたレコードショップの店内BGMが気になったので店長に尋ねると、彼はこう答えた。「この曲を尋ねられるのは今日で3人目だよ。あとの2人も君と同じ歳くらいの男の子と女の子だったね。ほら、今あそこのベンチで話してるよ。」
僕たちはCouple。音楽で結ばれた3人だ。
こんな「メンバー紹介になっていない」プロフィールが書かれていた。北海道の3人組によるデビューカセット『Brief Pop』に収録された「きみに言わない」は、結局2015年上半期にどれだけの曲を聴いてみてもそれ以上のものは出会えなかった。半ばムキにさえなってあれこれのバンドの曲を聴いてみたけれど結局この曲に戻る、そんなことを繰り返していた気さえする。
気にしないなんて簡単に言ったら
うのみにして立ち止まらないでしょ
この歌い出しが、何度も頭の中で鳴り響いている。何がそんなに虜にさせているのかわからない。思考を停止して言えば、自分の求めていたものにたまたま出会ってツボに入っただけなんだろうけど、それだけでこんなに繰り返し聴くものだったのかさえ自分のことなのに分からない。とにかく、かわいらしく澄んだ声で歌い始めたこの曲に縛られた。
音楽シーンにおける楽曲の高速化が落ち着き、「ポップ」というものに移行し始めたと感じている。ここ最近いくつかのストリーミングサービスも国内で始まり、音楽を楽しむと同時に、これまで以上に音楽のある生活が浸透するんじゃないかと思う。時間の止まらない生活(生活音)の邪魔をしないよう、空気のように存在する曲。絶えず流れる曲に耳を傾けた瞬間だけ体が少し揺れる、意識しなければ生活を遮るものではないそんな曲。もちろん毎日踊り続けるのも楽しいんだろうけど。
生活の中に当たり前のように音楽のある生活も楽しみだけど、Coupleのプロフィールが事実なら、奇跡的な音楽で結ばれた関係って美しい。この3人を繋いだ曲はなんだったんだろう。そんな事を考えながら、今日もまた心を持っていくような新しい曲との出会いを求めている。
かめ(@kame16g)