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何度でもはじまる/フジファブリック @ 福岡DRUM LOGOS

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昨年9月リリースされたアルバム『LIFE』、それに伴う秋のツアー、そして11月の初の単独武道館公演。このタームでフジファブリックは10年間のこれまでの歴史を引き受けて進むことを静かに、改めて強く表明したのだと思う。その次なる一手が、久々に全国のライブハウスを細かく回る「はじまりましツアー」だ。

前回のツアーの続編であることを告げるように、「LIFE」で始まった今回のライブ。続いて初夏を彩る軽快な「虹」、パワーポップな「Sugar!!」とのっけから陽性な名曲を連発する実に晴れやかな滑り出しだ。

今回はサポートギタリスト不在、ドラムにBOBO(54-71)を迎えた4人編成だったが、曲の魅力は損なわれない。BOBOの叩く太くて正確な骨組みに、3人によるスペシャルなアレンジが冴え渡った冒頭3曲だった。

バンドの地力を存分に堪能できたのは「Surrender」だろう。カップリング曲らしい、奔放な展開とダウナーなトーンが妙にクセになる。会場の温度をじわじわと上げてていく。前回のツアーは、様々な物語を踏まえたうえで沁みる部分も多く、そこにこそ大いに感動したものだが、今回は楽曲の純粋なカッコ良さ、面白さで勝負を仕掛けてきてくれる場面ばかりだ。

インディーズ時代の楽曲「環状七号線」も披露された。粘っこいサウンドのうえを唱歌のようなメロディが流れる怪しさたっぷりのナンバーだが、山内総一郎の柔らかさと軽快さを持つ歌声が乗ると原曲と少し違うポップな扉が開かれていておもしろい。

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そんなヘンテコな曲を歌った後に、さらりと「ブルー」という優しく素朴なバラードに繋がってしまうのもフジファブリックの変幻自在さをよく示している。だが、より顕著なのは次に演奏された最新曲「Green Bird」だろう。

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ストリングスがメインで進行する、今迄になく華やかな一曲。披露後のMCで、「フジファブリックって1stから2nd、2ndから3rd、3rdから4thって全部やってる音楽違うでしょう?やっぱり新しいこと、殻を破っていくことをしていきたいんですよ」という旨が山内から語られた。芯にあるのは一貫する「変わり続けたい」という美学だということがよく伝わり、彼らに常に新鮮に惹かれ続ける理由がそこにあると確信した。

そして「ホーランド・ロップ」で、山内が歌詞の1/3を丸々飛ばして、誤魔化すように語りに変えた時にメンバーが煽るように手拍子しまくるなど、リラックスしたメンバーたちの様子も良かった。

山内総一郎は自分モデルのギターを可愛がり弾き倒し、そのままセッションにしてしまう始末。キーボード金澤ダイスケはそのセッションで、久留米ラーメンを食べに行った話をブルース調に歌にする芸達者っぷりを見せる。また、「バタアシParty Night」ではLEDで装飾されたショルキーをどや顔で奏でていた。そして、いつもは動きの少ないベース加藤慎一がステージ前面に出てくる始末だ。会場キャパがいつもの半分程度だったからか、若々しい盛り上げ方になっていたのかもしれない。

ライブ終盤、これまた懐かしい「花屋の娘」が久々に披露された。こんこんと妄想を募らせる歌詞を、切り裂くようなバンド演奏で押し出していく。凄まじいギターの鳴り。ボーカリストとしても完成されつつある山内だが、ギター愛溢れるプレイヤー気質もこれでもかと発揮していた。なかなか彼ほど仕事量の多いフロントマンもいない。歌いながら、ちゃんとリードギターを弾くわけだから。 

ご機嫌なテンションでゆらゆらと歌う直近のアンセム「Magic」、カッティングが焦燥と狂騒を生む必殺の「銀河」というカラーの異なる2曲で散々躍らせて本編は最後の曲へ。このツアーのタイトルにも冠されている「はじまりのうた」だ。

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武道館ライブで、これからを指し示すように初披露された曲だ。

僕ら待つ未来へ歩き出せるなら
同じ場所をまた見つけられるから
その時はまた会いにいけるから(はじまりのうた)

歌詞全体を見るとラブソングだが、これはファンに向けたメッセージとも捉えることが出来る。19本ものライブを行うツアーに出た意義も上の1節を見れば分かる。山内はこの日のMCで「過去はナシよ、じゃなくて全部引き連れて行く」ことも宣言していた。ファンもまたこれまでの物語を引き受けきったうえで、フジファブリックの音楽を好きで居続けたいと思わせてくれる、そんな真っ新で真っ直ぐな美しいポップソングだった。

アンコールでは昨年のツアーでずぶずぶの感傷を誘った「陽炎」が披露された。演奏後、「いやー良い曲だ!」と山内がしみじみと呟いていた。「こうして過去のフジファブリックの曲を演奏し続けられるのが嬉しい」とも語っていた。それがすべてな気がする。もうすぐ来る夏には、彼が歌う「陽炎」が当たり前にある。それは本当に、素晴らしくて正しいことなのだ。

ライブすべてを締めくくったのは「徒然モノクローム」。再始動後、初のシングル曲だ。思えばこの曲もサビの終わりに「行き詰まった所がほら それが始まりです」と歌っていた。そういえばこの日も大熱狂を巻き起こした「夜明けのBEAT」でも、「バクバク鳴ってる鼓動 旅の始まりの合図さ」と歌われていた。この曲を含む数曲を残し、前フロントマン志村正彦はこの世を去ったが、その時期にはレーベル移籍が予定されていた。この曲できっと彼は新天地での旅の始まりを歌おうとしていたのだろう。

歌い手、歌詞の書き手はそれぞれ違うがフジファブリックは、何度もはじまりを歌ってきた。何度もはじまってきたバンドだからこそ、先述の通り、アルバム1枚ごとに変貌する姿を僕らに見せてきてくれた。このライブ、そして「はじまりのうた」にはフジファブリックの何度目かの新しい季節が始まる香りがした。

6/20 フジファブリック LIVE TOUR2015 はじまりましツアー @ 福岡 DRUM LOGOS

1. LIFE
2. 虹
3. Sugar!!
4. WIRED
5. Surrender
6. シャリー
7. 環状七号線
8. Green Bird
9. ブルー
10. ホーランド・ロップ
11. 夜明けのBEAT
12. 花屋の娘
13. バタアシParty Night
14. Magic
15. 銀河
16. はじまりのうた
encore
17. 陽炎
18. 夢みるルーザー
19. 徒然モノクローム

 

 

月の人(@ShapeMoon