THE BACK HORN『その先へ』

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THE BACK HORN『その先へ』はさえない現状をいますぐ打破したくなる歌

もうすぐ彼らの11枚目のアルバム『運命開花』が発売される。その前に、先日出されたシングルについてやはり書いておきたい。

といっても、記事のタイトルが全てだ。やる気が出ない、成果が出ない、隣のアイツは華々しい活躍を遂げているのに俺ときたら未だゴミくずみたいな人生しか送れていない……。そんな何処にでも転がっているような人、でも心のどこかで「本当はもっとやれるんじゃねえか」「くすぶってないでもっと頑張れるんじゃねえか」そんな思いを熾火のようにかかえている人、ぜひこの曲を聞いてみてほしい。

ボーカル山田の声が一音一音くっきり語りかけ、いや叫びかけてくる。ワンフレーズごとに心が高ぶる。シンプルなサビのそのシンプルさが訴えかけてくる。最後まで聞き終えれば、凝り固まった今の「その先へ」、一歩踏み出さずにはいられないはずだ。

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……と、それだけではなんだから、もう少し。

この曲は、詞を書いた栄純が「自伝的な歌詞」「生き様をそのまんま書く」と語ってるみたいに*1THE BACK HORNそのものとして読めばいいから実にわかりやすい。歌詞に出てくる「1998」はそのまま彼らの結成年。当初のバンド名「魚雷」は本気で「とりあえず全部ぶっ壊そう」と考えていたとしか思えない。

しかし退廃的、刹那的な雰囲気は、サビ前のワンフレーズで、一気にフワッと昇華される。

続くサビはシンプルだ。それゆえに強い。「君」とはファンであり、あの頃の自分たちであるらしい。叶えたかった思いがあるだろう。今実現できるステージに立ってるだろう。やるか、やらないかは自分しだい。だからこそやってやるっきゃない。あの日の自分に報いるため、今の自分が此処にいる。

そして二番はさらにリアルだ。「あこがれと嫉妬」が渦巻いているのは、何もリハスタの喫煙所だけじゃない。予選リーグの試合会場だって、文学新人賞の結果発表ページだって、コンクール出番前の袖の中だって同じだ。強く美しいものに憧れ、一方でその輝きを妬んでしまう。理由は単純だ。だって俺だって、自分だって、なにか「為せる」と思ってここまでノコノコやってきたのだから。

才能がなかった? 何者でもなかった?……違う、一歩が踏み出せてないだけなんだ。

「始まりはいつだってここから」。倒れたっていい。屍を越えて、新たな自分に繋がっていくだろう。

「君」は、仲間であり、過去の自分であり、今の自分を見つめてくれている誰かだ。そんな「君」が誰にだって必ずいるんだ。

もうやれない、と諦めそうになったときに「でもまだもう少し続けてみよう」と思わせてくれた『ちっぽけな希望』がそこにあるんだ。

 

『その先へ』はそんな曲だ。目指す場所があるからこそくじけそうになったとき、ぜひ思い出して一度聞いてみてほしい。

同じ一枚に収録されている『悪人』『路地裏のメビウスリング』も一筋縄ではいかない曲だ。合わせて味わう余裕ができた頃には、きっと始めの一歩が踏み出せていることだろう。*2

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かがり(@14banchi

*1:たとえば→邦楽 THE BACK HORNの情熱の種火、最新シングル『悪人/その先へ』徹底インタヴュー! | 特集 | RO69

*2:『悪人』『その先へ』は2015年11月25日発売のアルバム『運命開花』にも収録される