関西と関東に住むアラサー2人がskype上で語り合う対談企画。今回は『2015年僕たちは何を聴いていたか 曲単位篇』と題しまして、2015年にこの2人は何を聴いていたかとを話し合いました。今回は後編です。
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前回はこちら
小休止
草野 それにしても久しぶりですね。草野&ゴリのトークは。
ゴリ 半年ぶりかな?初回のくるりからもう1年は経ってるよね。
草野 一番最初って何やったっけ?
ゴリ 確か、くるりやないかな。
草野 そうだ、くるりだったね。
ゴリ これからはや1年以上。このアルバムも2014年を代表するアルバムになったよね。
草野 そんで次に関東と関西のインディバンドについて話したんだっけ。
ゴリ この時は長かったけど、熱かったな。今同じことやれってって言われたら俺はできない(笑)
草野 (笑)で、ディアンジェロに繋がるんだったね。そっからは多分、疲れ?みたいなのがあって、ベルセバ以降は自然とパッターン!と止まってましたな!!
D'Angelo And The Vanguardの『Black Messiah』について話してみた
Belle and Sebastianの『Girls In Peacetime Want To Dance』について話してみた
ゴリ そうだね。今回約半年ぶりくらいに戻ってきました。
草野 お互い、夏以降のリアルお仕事が激務だったのと、音楽イベントで書き手を務めたりしてたしね。ゴリさんはボロフェスタでライブレポとかいろいろとやっていたものね。
ゴリ そうだね。まだ読んでない人はぜひ読んでください。
ゴリ 草野さんも同人誌やアニソン関連でインタビューとかいろいろやってますよね。
草野 『Bad Apple』という同人誌を立ち上げて今年上半期に2冊作り、下半期は『Re:animation』っていう野外アニソンフェスでインタビューを務めました。
草野 Bad Apple vol.1ではFor tracy hydeとBoyish、LLLLにインタビューを務めました。あとアニソンについて書いていたらなんとまぁ、Re:Animationというアニソン野外レイヴイベントのオーガナイザーからインタビューしてみるか?と話を貰いまして、やりきりました。
【Re:animation 8 特別企画】スペシャルゲストインタビュー 第1弾 分島花音(インタビュアー:草野虹)
【Re:animation 8 特別企画】スペシャルゲストインタビュー 第2弾 TRUE(インタビュアー:草野虹)
草野 アニソンについて書いていたらなんとまぁ、Re:Animationというアニソン野外レイヴイベントのオーガナイザーからインタビューしてみるか?と話を貰いまして、やりきりました。
ゴリ 草野さん、精力的活動してますよね。
草野 ゴリさんも同じくらい精力的だなー!とは思いますよ!やっぱり。まあ、なんすかね、レギュラーでインタビューを務めさせていただけたり文章書かせていただけるようなメディアさんがあったらいいなー(チラッ)
ゴリ 同じく(オイ!)
6曲目 吉田一郎不可触世界、WHITE ASH
ゴリ それじゃ再開して。
草野 ZAZEN BOYのベーシスト、吉田さんのソロ作品だよね
ゴリ しかも楽器全部ひとりでやった作品。ZAZENのようにアンサンブルが緻密でありながら、変態性もありつつとてもメロウで、アーバンファンクな感じもあり、僕の大好物ですな。
草野 メロウで、アーバンでファンク。吉田さんがこのタイミングで黒人音楽へのリアクションを起こしたのも、やっぱり2010年代の黒人音楽の良さが刺さってるからだと思うのよね。
ゴリ うん。
草野 その意味で、このバンドも同じように、そして彼ららしいやり方でリアクションしてくれたんだと思って。
ゴリ WHITE ASH!
草野 よくやってくれた!って本当に心の中で拍手したよね。
ゴリ WHITE ASHってガレージロック・リヴァイヴァル的な文脈で語られがちだけど。
草野 もちろんそれが彼らの出自だし、Bloc Partyと合同でインタビュー答えるくらいに20歳代後半の洋楽好きを代表してくれるバンドだよね。でもそうじゃない。真っ黒なドッシリとぶっといR&Bグルーヴをかましつつ、ギターが稲光のようにドガーンと響いていく、そういうかっこよさを目指している。
ゴリ おもしろい。
草野 シングル曲だと彼らの得意技がでまくるんだけど、今作ではこういうテイストなんだよね。黒人賛歌かよ!?っていうコーラスに、マイケルの『ポゥ!』が聴こえてきそうなほどにニュージャックスウィングめいたグルーヴ、そしてロックンロール!
7曲目 Hiatus Kaiyote、CICADA
ゴリ じゃあ、ブラックミュージックというのならば思い出したのがこの作品。日本を飛び出してオーストラリアになりますが。
草野 はい被りました(笑)
ゴリ 被りそうだから先に出そうと思って(笑)
草野 今年Blue Note JAZZ FESTIVALで来日したんだよね、すっかり親日派になったみたいな話も。
ゴリ Blue Note、本当に行きたかったんだよ。お金さえあれば。
草野 Jeff Beck、Pat Metheny、Robert Glasper、Incognito、そしてHiatus Kaiyote。
ゴリ 好きなアーティストしかいない。
草野 濃いよね。グルーヴが
ゴリ そう、この濃度だよね。D'Angelo以降、この手のサウンドがまさかオーストラリアから出てくる衝撃。
草野 D'Angelo以降のネオソウルからGeorge Benson的なAOR感もひっくるめ、今年の邦楽インディを代表するのがシティポップっていう潮流になっていて。意識的にも無意識的にも黒人音楽へ反応してる。それも日本だけじゃなく、オーストラリアとか他国でもそういうバンドが出てきてる。
ゴリ そういう意味ではceroの『Obscure Ride』って本当に重要な作品だよね。
草野 重要。僕はceroも好きだけど、今から紹介する曲、というかアルバムが最高。
草野 最初の3曲が素晴らしい。「ひとつふたつ」「Naughty Boy」「君の街へ」ネオソウルめいたリズムセクションがブラックミュージック的な濃さではなく、あえて淡く軽くグルーヴしていく、っていうかこのドラムのスネア叩きの細やかさと音色が本当にクール。東京インディの底深さがはっきりとわかる。本当に好きだ。
ゴリ これは知らなかった。
草野 シティポップとかどうでもいいから、この音に聴き浸ろう。そしてこういう音楽がいま東京から生まれてきたことに感謝しよう!
ゴリ 声がかわいい。
草野 下半期で一番聴いてると思う。ちょっとスモーキーでスウィートな歌声が本当にツボ。歌詞もめっちゃくちゃ響く。
8曲目 Natalie Prass、Swindle
ゴリ 洋楽をもう1曲だけ。
草野 この流れで聴くと最高だね!
ゴリ 前にフジロックに関してあーだこーだ話してた時に「フジロックに来てほしい」って言ったアーティストの一人。70年代後期のビック・バンドやジャズを感じさせる音に、それに負けない力強いでも繊細なこの歌声。早くライヴ観たいな。来日してくれないかな。
草野 僕からはこれ。
ゴリ 今年はブラックミュージックに良い作品がホントに多いね。
草野 多分1分30秒以降でビビると思う。
ゴリ うん、いまそこ聴いて「え?」って声を上げた(笑)
草野 ネオソウルっぽいグルーヴからダブステップ~ジュークのサウンドに一瞬にして変わるんだよね。そしてジャズへ還っていくのがオチ。ここ10年のクラブミュージックやソウルミュージックの流れがよくわかんない人でも、どれだけグルーヴとして違うのかが分かる。
ゴリ いま、一人暮らししてるからなるべく財布のひもを固くしようとしてるのに、買いたい作品山ほど出てくる(笑)
草野 大雑把に言うと、アメリカのヒップホップがイギリスにも00年代以降影響を及ぼしていって、その中でハウスミュージックも一緒になって成長していった、UKガラージっていうフィールドがあるのね。ドラムンベースや2ステップやダブステップ、でっかく見積もってベースミュージックがそこで生まれたんだけども、いまはジュークとかも混ざって黒人若者音楽をブチこんで超アゲていこーぜっていう流れが来てる。Swindleははこ界隈で活躍しているDJ/トラックメイカーで、ジャイル・ピーターソンやマーラに才能を認められてイベントや作品に参加している。
ゴリ これは買うよ。大好き。
草野 アルバムも世界各国の国や都市名が入っていて、その地の雰囲気や音が曲中に現れるというテイスト、東京も入っていて「あぁーわかるぅー!」ってなった(笑)ということで、9曲目に行く前に、Swindleの超かっこいいDJプレイ見ておきましょう!
9曲目 BOMI、Snail's House
ゴリ いやあ、かっこよかった。9曲目行きます。
ゴリ いままでもこの人を追ってきたけど、過去のキャリアの中で今が一番おもしろい。
草野 この手の曲、実はほとんど聴いてないから新鮮。
ゴリ BOMIって自分の名前を変えて音楽のスタイルやファッションをガラっと変えるのですが、今年は名前を小文字から大文字に変えて活動していて。ファッションも暗い感じに変わったけど、それが個人的に当たりで。 ダーティーな部分や生々しさ、キリッと光るポップセンスこれすごくいいんですよ。
草野 めちゃくちゃ雨降ってる渋谷で撮影してるのか。やたら透けてる服が気になってしまった(笑)
ゴリ あと、これ自体が「お面」での販売っていうのもおもしろいんですよ。お面の裏にダウンロードコードが書いてあってそれで曲をダウンロードするって形なんですよね。この路線でぜひ活動してください。
草野 この曲もおもしろい!じゃあカワイイのが来たからカワイイ系で返そうかな。
草野 はい、まーた日本の10代に神がかったやつが現れました。
ゴリ すげえ音カッコいいのにこの萌えは何(笑)
草野 #kawaiifuturebass ですよ先輩。日本を代表する現行のベースミュージック集団といえばTREKKIE TRAX。そこのディスコグラフィに急に現れたのがSnail's Houseなんだよね。
ゴリ なんか個人的にはDE DE MOUSE的な声の入れ方とか転調の感じとか、それを思い起こさせるなって感じかな。
草野 デデさんのすごさというかみんな読み方は嫌うけどIDMのすごさって、意味がわからないタイミングでカットアップやグリッチを連発しながら、それを組み合わせて超複雑にグルーヴを組み立てることだと思っていて。そこはPrefuse73とかAphex Twinと共通していて、デデさんもまさにその系譜だよね。それをめっちゃポップに振り切ったのがtofubeatsだと思うし、よりディープな方向にもっていったのがグリッチホップ。
ゴリ うん、すごくよくわかる。
草野 それで、あとはどんな曲を素材にするかーシンセで奏でていくかーっていうところで、カワイイ感じの音色や音をイコライジングしまくってかわいく仕立て上げるとおもしろいよね?っていう。UjicoくんのSoundCloudは要チェックだよ。
Ujico*/Snail's House | Free Listening on SoundCloud
ちなみに彼の友人でもある韓国人のNorくんもKawaiiFutureBassなトラックを出してるんだけど、彼はその後Banvoxと一緒にマルチネからEPを出したんだ。本当におもしろい!
Maltine Records - [MARU-150] banvox & Nor - Flux
10曲目 Eve、paranel
ゴリ 上半期の個人的にはベスト1のアルバムで、2015年にいろんな音楽を僕も聴いたけど、その中で衝撃を受けたのがこの人かなって。
ゴリ 緩急の付け方が最高で、歌う部分はしっかり歌いながら遊ぶ部分はしっかり遊ぶ。自由さと迫力を兼ね備えていて僕はすごく好き。ぜひ、関西にお越しの際は京都の中村佳穂ちゃんとの共演してほしいなって妄想してはいるんだけど。
草野 僕のラストはこれですね、しっとり締めましょう。ミニアルバムのタイトルソングです。
悲しいくらい夢を見たよ 君の真っすぐに揺れる心を 醒めない体のなかで 閉じこもって球体にでもなろうかなぁ
ゴリ なんだろ、この奇妙な感じ。
草野 このサウンドがまずすごくて、何かいびつだよね。
ゴリ サウンドと歌声がアンバランスな感じかなって思ったら妙に癖になる。
草野 シンセサイザーになんかのエフェクターをかませれば鳴るだろうけど、これほど不明瞭な音色と重ね方、あとウィスパー気味の声、そしてアンバランスよね。夜中仕事帰りにこればっかり聴いていて、その後にCICADAを聴くと。
ゴリ 最高だよね。
2016年もいろいろ聴きたい
ゴリ 10曲ずつ話したわけですが、本当はまだ紹介したい曲があるけど。
草野 めっちゃくちゃありますね。
ゴリ でもこれ見てくれた方が好きな音楽が一つでも増えてくれたら私たちは幸いで。
草野 結構バラけたよね
ゴリ まあ、あと俺はこれが好きって作品があったらぜひ、このブログで紹介してくれたら!と思います。
草野 僕らも聴きたいしね。
ゴリ そうそう、まだまだ聴けてない曲は山ほどありますからね。
草野 2016年もいろいろ聴きたい!
草野(@kkkkssssnnnn)×ゴリ(@toyoki123)