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同じ月を眺めている - フジファブリック @ 長崎DRUM Be-7

12会場を巡る1年ぶりの全国ライブハウスツアー「TOUR 2016"三日月ADVENTURE"」。そのツアーファイナルが隣の長崎県で開催されるということで、少し遠出して行ってみた。

会場の長崎DRUM Be-7、キャパは400人という小規模なライブハウス。開演時間を少し過ぎた頃、インディー・ジョーンズのメインテーマとともにインディーよろしくフェドラハットを被ったメンバー、そしておなじみのサポートドラマーBOBOがステージへ。帽子を客席には投げ入れたのに、「ツアーファイナル!」という山内総一郎の叫びで「徒然モノクローム」からライブはスタート。

爽やかに疾走する「Sugar!」で序盤を勢いづけた後、曲タイトルを思わせぶりに放ってから繰り出すのは「熊の惑星」!9年前のシングル「若者のすべて」のカップリング曲で、オリエンタルなフレーズと奇天烈に振り切った歌詞が何とも形容し難い楽曲だが、観客の盛り上がりは完璧。珍品を出せども愛されているバンドであることを再確認した。

最初のMCでは先ほど投げ入れた帽子はこれまでの会場では要返却だったが、ファイナルなのでNO返却となり、ゲットした観客にプレゼントされるサプライズも。そう、この日はツアーを経て育ってきた楽曲たちの最も美味しい瞬間が楽しめる千秋楽なのだ。かつてなく煌めく高揚感と前向きなセンテンスを持った新曲「ポラリス」も12公演を経て、今のフジファブリックの最新の武器として磨き上げられていた。

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個人的には念願の「robologue」では軽いノリで山内がイントロからクラップを煽る。加藤慎一とBOBOが織り成す横ノリのグルーヴでじわじわ盛り立て、サビで突如泣きメロにメーターが振れる至福の時間。アンサンブルの隙間を自在にギターで渋いフレーズで埋める山内に、負けじと滑らかに鍵盤を叩くラストのセッションは、山内本人が曲終わりに「曲がどんどん育っていくなー!」と口走ってしまうほどの仕上がりだった。

祈りをテーマにした新たなバラード「PRAYER」を経て、1stアルバムから「花」が披露された。歌詞を間違えて苦笑いしつつ一度やり直したものの、アコースティックギターの爪弾きに乗せ、優しくふくらみ、時に太く歌を届ける山内のボーカリストとしての旨味が存分に味わえた。続く「ブルー」も柔らかなバラードだが、アウトロでは徐々にテンポも加速し、昨年のツアーから更に跳躍したインプロビゼーションが激流のように降り注ぐ。楽曲の表情をもひっくり返すフジファブリックのバンドとしての遊び心が伺えるアレンジだった。

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終盤は「アドベンチャーゾーン」と題し、力強いリフで押すハードなロックナンバーが続くブロックが狭いライブハウスの温度をぐんぐん上げていく。昨年はJ-POP寄りのアレンジを取り入れた作品も制作したが、ライブでのモードは一段と硬質。そこから傑作アンセム「TEENAGER」でひたすらポップに弾け飛ぶ。まるで老けこまない、若々しいままのロックバンドの姿がそこにあるようなラストスパートだった。蒸し暑い会場を更にヒートアップさせる灼熱のサーフポップ「Surfer King」で奇妙な一体感を生み出し本編はフィニッシュ。

アンコールでは、ツアータイトルにちなみ月の曲を、と「同じ月」が披露された。前ボーカル志村正彦の生前最後のアルバムとなった「CHRONICLE」の収録曲。個人的にフジファブリックで最も好きなアルバムなのだが、この作品から新体制のライブで披露されるのは先行シングル曲「Sugar!!」以外では初めてである。

パワーポップを主体としたシンプルなサウンドで他作品とは一線を画す「CHRONICLE」の楽曲が新体制で披露されなかったのは志村正彦私小説性が強いから、という説は推測の域を出ないものの、彼が歌うからこそ、という内容のものも確かに多い。しかし同時にとても人間味に溢れてもいる。「同じ月」もまた、市井を生きる一人間としての日々の苦悩や切なさが綴られているのだ。

ここで歌われた「同じ月」には、そのような複雑な思いも込みで全てを溶かして包み込む説得力があった。山内の歌声の伸び、そして歌う者としての姿勢が、8年ぶりに解禁されたこの名曲の色褪せない"普遍性"の部分をくっきりと浮かび上がらせていた。

アンコールラストは「虹」。ツアー最後の時間を惜しむように、アウトロで無邪気に演奏で戯れるメンバーが印象的だった。鳴り止まない拍手に誘われ、ダブルアンコール「星降る夜になったら」がこのツアーの正真正銘、ラストナンバー。サビの大合唱が鮮明に焼き付いている。美しい光景だった。

今まで堅く閉ざされていた「CHRONICLE」の封がついに開かれるなど、また一つ新しい扉を開いたフジファブリック。次のアルバムリリースも遠くはないはずだ。10周年の到達点だった前作「LIFE」の後、予測不能な活動が続くこの1年半の結晶はどのような驚きを持っているのか、楽しみでならない。

 

フジファブリック @ 長崎DRUM Be-7

1. 徒然モノクローム
2. Sugar!!
3. 熊の惑星
4. ポラリス
5. シャリー
6. ダンス2000
7. robologue
8. PRAYER
9. 花
10. ブルー
11. LIFE
12. 夜明けのBEAT
13. WIRED
14. 夢みるルーザー
15. Splash!!
16. バタアシparty night
17. TEENAGER
18. Surfer King
encore
19. 同じ月
20. Green Bird
21. 虹
encore2
22. 星降る夜になったら

 

 

月の人(@ShapeMoon