エリシュカの新世界

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ラドミル・エリシュカが日本で評価されはじめたのは最近である。カルロス・クライバーなどと同年代であるが、チェコでの活動が大半であったため、国外にその名が広まることはなかった。

そんな彼が、2004年に初来日してからというもの札幌交響楽団から多くのCDをリリース、2009年にはNHK交響楽団の聴衆投票で1位を獲得など、にわかに注目を集めている。2013年6月までドヴォルザーク協会の会長をつとめ、作曲家ヤナーチェクの孫弟子にあたるエリシュカ。まさかその音楽が吹奏楽で、さらには日本のバンドで聴けるとは思わなかった。

このアルバムはその記念すべき日のライブ盤である。

なんといっても聴きどころは「新世界より」。2楽章は「遠き山に日は落ちて」の旋律と言えばわかっていただけると思う。これだけの有名曲であるが、聴かせる演奏をするのはきわめて難しい。オーケストラに持続力と高い音楽性が求められるからである。

しかしここで聴けるサウンドのなんと素晴らしいことか!

弦の不在やオーケストレーションの違いなどは全く気にならない。むしろ管弦楽の名録音と並べても十分にその魅力をアピールできるのではないか。4楽章もいい。勇ましい金管吹奏楽という形態によってより活かされ、ドヴォルザークの世界を鮮やかに描き出す。

エリシュカの音楽にはエゴがあまり感じられない。主張がないという意味ではない。エゴから解き放たれたとき、音楽そのものがもつ感情が、純粋に開放されているように感じられる。

吹奏楽には「ブラバン」「うるさい」といった印象を持っている方もいるだろうが、このアルバムはそんな色眼鏡を自然に捨てさせられる…そんな作品だ。ぜひ多くの音楽ファンに届いてほしい。

試聴は公式HPから。

 

 

tk_saxo(@tk_saxo)

トベコンチヌエド。