the HIATUS『Keeper Of The Flame』
今年3月、the HIATUSが4枚目となるアルバムをリリースしました。それから少し時間が経ってしまったのですが、とても素晴らしいアルバムだったので、試しに合評を募ったら3人も集まったので決行しました。それだけ語りがいのある作品だけど、まだまだその魅力が伝わっていないので、ぜひ下の動画で音源を聴いて、アルバムを聴いてみてください。その際にこの三者のレビューを楽しんでいただければ幸いです。
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the HIATUS「Something Ever After」(album trailer)
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細美武士の到達点といえる作品だと思う。
もちろんハイエイタス名義の作品なのだけど、エルレを含めそれを細美武士の音楽と括って問題無いと思う。彼はグランジ直系の「The End Of The World」からはじまり、「Supernova」でパンクロックを高らかに鳴らした。「Space Sonic」で次の扉を開き、「Insomnia」でおのれの葛藤をさらけ出した。グランジ、パンク、ロック、エモ、プログレ、フォーク、テクノ、クラシックなど様々な音楽を吸収し、次々に「細美武士の音楽」を更新していった。
エルレが5thアルバムである『ELEVEN FIRE CRACKERS』の次の作品を作れなかったことは、ビジョンをメンバーと共有できなかったからであり、その時の彼のアーティストとしてのエゴはthe HIATUSの3rd、そして今回の4thで果たされた。そんなふうに思う。
聴く人によっていろいろな思うところがあるだろうけど、個人的には本当に「Something Ever After」が素晴らしかった。その後の「Unhurt」「Horse Riding」の流れも本当にすばらしい。ロックを「踊れる音楽」という価値観だけで図るとしたら、それほど機能性を持たないと見なされるかもしれない。しかしこれほどまで音楽的な豊かさを秘めた曲を作れたのだからハイエイタスの存在意義も果たされるはずだ。
10年以上前、「The End Of The World」という曲で《このままずっと二人で過ごせるならいいね》と叫んだ細美武士が、今は「Something Ever After」で《When I woke up next to you(君の隣で僕が目覚めた時)/You told me I was like sunset light(君は僕のことをまるで夕焼けの光みたいと言った)》と昔のことを懐かしそうに回想する。それがなんて切ないことなのか。そして同時に、昔を愛おしむことがどれほど豊かなことなのか。こういう回想は悪くない。
次はエルレという噂がある。それでいい。エルレの2週目はきっと『RIOT ON THE GRILL』に近い作品になると思う。しかしそれとは別に『Keeper Of The Flame』の先という選択肢を、5年後、10年後を視野に考えて欲しい。踊れるロックだけに価値があるわけではないのだから。
ぴっち(@pitti2210)
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いよいよハイエイタスとしてやるべきもの、やりたかった音楽に到達したように感じます。いつかエルレが活動を再開するとしたらそれはそれで喜ばしいけれども、その時はこちらが……なんて、何だか切ない気持ちで聴いてしまう1枚。それほどハイエイタスとしての音楽的探究が極まり、もうこれで最後だとしてもおかしくないようなアルバムだと思えるのです。
その探究の先にドラムを中心とした緻密なリズムアンサンブルが敷かれていながら、親しみやすく、小難しさもどこか緩和されているような気がします。わかりやすいものだけが音楽ではないけれど、難解なだけの音楽がポップミュージックには成り得ないはずで、今作をポップで浸透力のあるものに仕上げているのは紛れもなく細美武士の歌とメロディーだと思います。実は複雑に鳴らされているアンサンブルも、ボーカリストとしての彼の歌の力とメロディーメイカーとしての音楽性や素質が、人懐こく馴染みやすい音楽へと昇華させているのではないでしょうか。
1曲挙げるなら私は「Horse Riding」。譜面に起こせば白オタマジャクシが多めのスケール感あるメロディーと、それとは対照的に裏で細かく刻まれる種々のリズム。この躍動感が大好きです。
おとべ(@tobe_msc)
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the HIATUS「Horse Riding」
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自分は今回初めてthe HIATUSのアルバムに触れたので、今までのアルバムに比べてどうのこうのというのは全く書けないので純粋に思った事だけ書きます。
実は少し苦手なイメージを抱いてました。難しいロックを鳴らしていそうで自分には合わないかなと。まず、そのイメージは全く間違えていました。当たり前だけど、ELLEGARDENの頃から彼の作る音楽はとてもど真ん中でした。今回のアルバムについても彼はとても真っ直ぐに僕らに歌っています。もちろんアレンジ自体は様々な音楽を咀嚼して自分達のロックを鳴らそうという気概が見られるので、少しわかりにくいアレンジもあります。ただ、やはり彼の声はどんなアレンジだろうとダイレクトに響きます。いやこれが本当に素晴らしいし。とてもエモーショナルだと思います。
印象的な流れはやはり「Something Ever After 」「Unhurt」「Horse Riding」「Sunset Off The Coastline 」です。自分のように興味を持ってない方でも聴く価値はあるほど素晴らしい流れと美メロです。というか正直に言います。自分は全部通して聴く回数よりもこの4曲の流ればかりを聴く回数の方が圧倒的に多いです。かなり間違った聴き方だとは思うのですけど、聴き方は自由だろうと開き直ってます。
とんでもなく美しいメロディーを鳴らしているこのバンドを知らない方もまだいるでしょうが、ぜひ聴きましょう。これからもまだまだ聴き所が多いであろうこのアルバムを楽しみながら日々を生活していこうと思います。
うめもと(@takkaaaan)