関東インディーガイド#1 Alfred Beach Sandal/ROTH BART BARON
アニメ歌手を特集するのに、自分が住む関東のインディーについて特集しないのか。
つーかやれよ、やればわかるさ。
というか、東京(関東)インディーバンド紹介連載をはじめ、よく名前の上がる有名どころ、無名のバンド、ベテランから若手まで、個人的に「イイ!」と思うバンドについての記事、長かろうが短かろうが挙げていきたいと思います。(またしても動画多い、しかも写真もあがってるからなおさら重いよ!)
そんなこんなでさっそく連載一発目から2つのバンドをご紹介。alfred beach sandalとROTH BART BARON、おおよそこの1年で最も熱い東京インディバンド2組だと思う。
まず、ROTH BART BARON。
男性2人組バンド。2009年にヤマハ主催の音楽コンテストで優秀賞を獲得した後、「ROTH BART BARON」「化け物山と合唱団」と2枚のEPを発売(僕は2ndEPとなった「化け物山と合唱団」で彼らを知った)。
日本人バンドであるがUSインディーミュージックとの親和性が非常に高く、海外アーティストのサポートアクト/「出れんの!?サマソニ」枠でサマソニ2013に出演/2014年1月からニューヨークツアーと、フルアルバム未発売のバンドとしては破格の活動を続けてきた。そして今年4月16日、ついにフルアルバム「ロットバルトバロンの氷河期(ROTH BART BARON'S "The Ice Age")」をリリース。現在はレコ発ツアーの真っ最中である。
ROTH BART BARON「小さな巨人」
ROTH BART BARON「アルミニウム / aluminum」
ROTH BART BARON「氷河期#2(Monster)」
彼らの音楽でまず耳を突くのが、三船雅也(vocal, guitar)のボーカリゼーション。ハイトーンのファルセットボイスと、時折見せる耳に粘りついて離れない歌いまわしは、人によっては好悪の判断材料になってしまうほどに圧倒的な個性として光る。
その声と歌いまわしは、ここ5年で最も世界を驚かせたであろうインディーミュージシャンのBon Iver、30歳の若さで夭折した伝説的なシンガーソングライターのJeff Buckley、彼ら2人を思い出させる。
Bon Iver「Perth」
Jeff Buckley「Hallelujah」
2人組でありながら、ライブの際は3人のサポートメンバーを加えた5人体制で臨むことが多い彼ら。バンジョー/マンドリン/ピアノ/グロッケンなどの室内楽(チェンバー)の楽器を多数使ったチェンバーポップ、各楽器の音の大小を自らの手で細やかに奏で重ねられたアンサンブルは、先述したBon Iverに加えて、個人的にはFleet FoxesとかAndrew Birdを思い出す。
Fleet Foxes「Helplessness Blues」
Andrew Bird「Give It Away」
続いて、Alfred Beach Sandal。
北里彰久のソロ活動名義。と言ってもその実は北里のギターを軸にし、ドラムやスティールパン/ラッパとのトリオ、ピアニカやベースを交えたカルテット、あるいはギターやバスーンとのアコースティック・デュオなど、時にソロ独り身として、時にバンド編隊として、自由に自らの音楽を奏でる男だ。
Alfred Beach Sandal「家のない町」
Alfred Beach Sandal「キャンピングカーイズデッド」
実のところ、今の東京インディーを彩るミュージシャンには、彼をフェイバリットにあげる人物も多い。王舟、高城晶平(cero)、トクマルシューゴ、川辺素(ミツメ)、黒岡まさひろ(ホライズン山下宅配便)、オラリー(片想い)、片岡シン(片想い)らが集まり、渋谷WWWを借りきって「アルフレッドビーチサンダル大好き芸人」なるイベントを企画したほどだ。
そんな彼を愛してやまないミュージシャンの一人、シャムキャッツの夏目知幸による「カリブ海のキャプテン・ビーフハート」という言葉ほど、彼の音楽を的確に突いた言葉はないだろう。フォークとブルースを行き来するギターサウンド、心臓の動悸のような自由にゆらいでいくリズム感、メンバー固定をしないライブ行脚も、自身の音楽を"膠着化"させず、むしろ"自由"であるがためであろうか。そのスタンスも音楽性も、かつてキャプテン・ビーフハートと瓜二つに見えてしまう。
Captain Beefheart & Magic Band「Sure 'nuff 'n Yes I do」
Captain Beefheart And His Magic Band「Sweet Sweet Bulbs」
Captain Beefheart「Abba Zaba」
昨年発売された2nd『Dead Montano』は、ウッドベースに岩見継吾(ex.ミドリ、Zycos、Oncenth Trio & etc)、ドラムに光永渉(チムニィ、ランタンパレード、あだち麗三郎クワルテット & etc)、サックスに遠藤里美(片想い)を迎えたことで、北里の脳内に宿る音楽を最も鮮やかに彩ったといえよう一作だ。キャプテン・ビーフハートの名盤『Traut Mask Replica』ほどの崩れきったバンド・アンサンブルはないが、ふらふらと自由に歩き回るような面持ちで、多彩な音楽を奏でる"バンド・ミュージック"として非常におもしろい。
以後のライブ活動でも、彼ら3人をいずれかを呼び寄せて活動をしているあたり、彼自身が居着くべき音を探し当てた一作と言ってもいいのかもしれない。
だが同時に、「カリブ」を歌い、それを「中東」「南米」「中国」へとすり変えながら、アウトサイドを闊歩するシンガー・ソングライターとして、饒舌な唄心と詩情を持ち合った彼の姿が今作には在る。僕たちの耳を離さない何よりの理由として挙げるべきなのは、そこだと僕は思うのだ。
Alfred Beach Sandal「モノポリー」
Alfred Beach Sandal「Summer Sale」
そんな2組が、7月2日に青山の月見ル君想フのイベント『パラシュートセッション祭』にて初顔合わせの対バンライブを行った。
ちなみに、この『パラシュート祭』というイベントは、対バンバンドが客席フロアで向かい合い、セットリストを決めずにその場の流れに任せて、「DJのB2Bみたいに一曲毎交互に曲をやる感じ」(北里 談)ライブ。
おおよそこんな感じのライブセットに。
ROTH BART BARON側
alfred beach sandal側
場所柄のせいか、すっごいおしゃれ空間が広がっておりました。
BGMにはこれが。全然知らないミュージシャンだったけどShazamで速攻検索かけて調べました(どうでもいいけどこれすごい良質アプリ!)。ノルウェー出身のフォーク/カントリーの男女デュオ、すごく心地よかった(というかこのSudan Dudanしか流れていなかったような気がする)
Sudan Dudan「Svein Svane」
Sudan Dudan「Utta De」
この日のライブは、あの特徴的なファルセットボイスでで聴く者を圧していくのROTH BART BARON、フリージャズを引用したかのような阿吽の呼吸でパフォーマンスするバンドと北里の歌声が絡み合うalfred beach sandal、声とアンサンブル、それぞれの特徴を互いに引き立てあうライブになった。ちなみにビーサン(alfred beach sandalの略)は、その場で演奏する曲を決め、ケータイ画面を見せて意思疎通を測ってるのを目撃しました。
前半1時間と後半1時間、間に休憩時間を15分程度はさんだライブ。披露した楽曲はお互い10曲程度だが、セットリストもないままに、曲終わりをフェードアウトしつつ、相手のバンドが次の演奏曲をフェードインしていく。生バンド2組による高純度のパフォーマンスが次々と続いていくという異様な状況は、見ている者から休む時間を奪い、徐々に2組のサウンドへと陶酔させ、独特でユーフォリックな音空間として現れていった。
同時にそれは、彼ら2組のバンドに対する高い期待感が"休憩時間"によって生まれるはずのダレた空気を殺したこと、「旬」同士のバンドの初対面ライブという緊張感、それらが混在したからこそ生まれた空間、と言っても過言ではないだろう。
複数回のみイベントにならず、月見ルの名物イベントになればいいなと思う。
と、長い文章を読んでいただきありがとうございました!
アニソン歌手特集同様、できれば隔週で、その次に月一で、やる気がなくなれば不定期に、更新していこうかなと思います。
ではまた。
草野(@grassrainbow)