UVERworld『Ø CHOIR』

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先日リリースされたUVERworldの新譜『Ø CHOIR』の合評です。まっつさんと2人分、このバンドとこの1枚に対するグツグツな熱い思いを詰め込んだら、すごいことになってしまいました。ちょっと騙されたと思って聴いてみてください。かっこいいとはこういうことだと。14曲ノンストップ。もっともっとたくさんの人に聴いてもらえると嬉しいです。ではではどうぞ。(かんぞう)

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今、このバンドこそ世間に真剣に聴かれるべきバンドだと、最新作『Ø CHOIR』を聴きながら思いを馳せ、これを書いています。

散々「会いたい愛してる」といった類いの安い言葉が消費されまくる日本のJ-POPの中で、この流れに逆行し無謀とも思える衝突や闘争心を剥き出しにして全速力で駆け抜けて行く。ただ純粋に、今のシーンに真っ向から立ち向かっていける圧倒的な説得力を持った言葉と音楽のスケールは、まぎれもなく日本のトップバンドとしての覚悟の現れだと思います。そして音楽を鳴らすこと、とりわけ「ロックを鳴らすこと」における至上命題は「戦い続けること」にあると僕は思っていて、その点、このUVERworldというバンドは、重戦車のようにどこまでもパワフルなグルーブと、迷いなど一切ないTAKUYA∞が紡ぐ言葉で、デビュー10年目に突入した今も、世の中や、仲間、自分、そしてあなたと真正面から戦い続けている。だから彼らの唄は本当の意味で胸を打つし、これだけ多くの人に聴かれているのだと思う。

先日リリースされた『Ø CHOIR』は、これまでサポートメンバーとしてバンドを支え続けて来た誠果を迎え6人体制となった彼らが放つ8枚目のオリジナルアルバムです。相変わらず、アルバム1枚に詰め込まれた熱量が凄まじい。一音一音からビシビシと感じることができるその熱量に、もう鳥肌の連続です。個人的に嬉しかったのは、Underworldの「Born Slippy」のカバーが収録されていたこと。「おぉ!!」ってなったよね。こんなカバーをするとは思ってなかった。かっこいい。また初回限定版についてくるDVDも、誠果がこのバンドの中でどれだけ大切なメンバーだったか、バンド結成から加入の経緯に至るまでを大ボリュームで語ったインタビュー付きですので必見です。

ここ一ヶ月ででた音楽雑誌をみると、多くで特集が組まれていたり、表紙に使われたりしています。業界として、このバンドの本当の凄さに気付いてしまった、そんな印象も。斜に構えて「はぁ?お前UVERworldとか聴いているの?」とかいっちゃうそこの貴方。この『Ø CHOIR』、ぜひ聴いて欲しい。きっと今まで思っていたよりもずっとずっとカッコ良くて、本当にまっすぐな思いで作られていることがわかると思います。「言うてもクサい言葉ならべてそれなりに歌ってるだけでしょ?売れるための戦略でしょ?」と思ってるのであれば、それがすぐに間違いだったとわかるはず。だって彼らは、本気で言って、本気で歌って、本気で音を鳴らしてるんだもん。カッコつけではなく、それが本当にカッコいいと気付いた瞬間、僕は、一気に振り切られた。最初に持っていたイメージとの劇的な違い。勘違いの向こう側にあったものは、どのバンドよりも熱く、どのバンドよりも本気な、どのバンドよりもカッコいい、最強のロックバンドの姿でした。

 

 

かんぞう(@canzou

canzouのblog

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UVERworld「IMPACT」

 

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7月2日に発売されたUVERworldの8枚目のアルバム『Ø CHOIR』は言わば"総集編"です。自らのスタンスを総括し、次への土台とするための。ボーカルのTAKUYA∞自身、MUSICAで「ここがゼロ地点」と語っています。アルバムにもその雰囲気が現れていて、集大成を更新せんばかりに様々な音楽を自らのグルーヴで飼い慣らす一方、これが1stアルバムかの様に今までに歌ってきたテーマを歌い直しています。それ故、古参も新参も見捨てることなく、自分たちがやりたいことをスポイルしているわけでもない、UVERworldに触れる全ての人を納得させ、別世界へ連れていく最高のアルバムになっています。

誰が言ったか知りませんが、デビュー当時の彼らはその音楽性から「Blindock(闇鍋ロック)」と呼称されていました。そう呼ぶには早過ぎました、今の方がよっぽど闇鍋感があります。デビュー時から持つJ-POPなメロディとヘヴィなサウンドのシンクロ率の高さ。3rdから取り組み始めたクラブミュージックとロックの融合(not「踊れるロック」)。6thからのサックスの本格的な導入。これまでは曲単位で取り込まれていたそれらの要素が、今回はアルバム全体に行き渡っています。本作を一聴しただけだと、それぞれの曲はかなりメチャクチャ(ハードロック、メタル、ブロステップ、トライバル、ヒップホップ、ポエトリーリーディングスワヒリ語etc…)ですが、そんな中にもザッツJ-POPなテクニックが発揮されているので、難解ではありますがアートにもなっていません。ただ、それを差し引いても既存のJ-POPとは手触りがまるで違うんですよね。何というか、全曲"出る杭"であるが故に結果的にまとまって聴こえる、という感じでしょうか。このバランス感覚と目まぐるしさ、頭が痛くなる様な新感覚です。

曲の振れ幅も大きいですが、詞のポジとネガの振れ幅も同様です。普通って場所が存在していない。で、今回のアルバムで歌われているのは実は"終わりへの恐怖"かと。曲によって"終わり"が指す対象は死、別れ、諦念と様々ですが、今回は特にネガティブなワードが歌詞の一定の割合を占めています。その上でそれらのワードをひっくり返すアンサーとして"生きる"というこれ以上ないポジティブなメッセージを歌っている。彼らをオーバーグラウンド足らしめているのは単に「歌詞がストレートで熱い」だけでは無く、リリックの表裏一体性が果たす役割も大きい気がします。

かつて歌われたフレーズがあの日と同じ姿で、しかし新たな解釈も加えて歌われているのにもぐっと来ます。昔「世界を変えたいならまず自分が変われ」と言ったTAKUYA∞が自身の変化を詞に著していますので、かつての名曲のワードやギターフレーズを探すのも楽しみの一つかと。

彼らの2nd『BUGRIGHT』をレヴューした時にも言いましたが、訴えていることは今回も「誰も疎外しない姿勢、ひいては社会の構成員の全てに対する存在の肯定」でした。このアルバムは今までの作品と比べても詞のポジとネガ、曲のバラつき具合が尋常ではありません。以前よりも楽曲の振れ幅が大きい事で、彼らがずっと歌ってきたメッセージの説得力が増しています。誰がどう言おうと構わない。だって、他の誰かの正解は僕の答えじゃないから。自分の立つ場所こそが世界の中心だ、と言う事を昔も今も訴え続けている事がこの一枚でわかります。キャリアが10年を超えるバンドですが、ずっと同じことを歌っているという点で、この一枚はやはり総集編。彼らがどの様な音を鳴らし何と闘ってきたのかが、ヘビーリスナーにも初めて触れる人にも誤解無く伝わるアルバムです。

頭の中を引っ掻き回して書きましたが、結果よくわからない文章になってしまいました。見た目が良いだけの人たちではないということが伝われば幸いです。そして聴いた後にもう一度このレヴューを読んでくださるとうれしいです。いろいろ書きましたが、「全てはそう捉えようさ」ってことで。

 
 

まっつ(@HugAllMyF0128)