自転車に乗って
ご無沙汰しています。クラークです。
久々の投稿ですね。音楽だいすきクラブと言えば、きたる10月に発表されるであろう「2010年代のベストトラック」がもう楽しみで楽しみで。それに先駆けて自分のブログでも2010年代のベストトラックを選出しました。
僕が邦楽の第1位に選んだ楽曲はザ・なつやすみバンドの「自転車」という曲です。
ザ・なつやすみバンド「自転車」
できることなら立体的で透き通ったプロダクションが素晴らしいCD音源で聴いてほしいですが、このフィジカルに躍動するライブ音源もまた魅力的です。もう戻れない過去へのありったけの愛情と強がりと後悔。加速する悲しみを振り払うように踏み込まれるペダル。
出だしの「みずいろの街」というフレーズも完璧だけれど、なによりこんなパンチライン。
世界が忘れそうなちっぽけなことも
ここではかがやく
日常に埋まったワンシーンを鮮やかに切り取り、永遠の煌めきの中へとキャッチーに封じ込めてしまうポップ・ミュージックの魔法がこの曲には宿っている。なんて、おおげさにそんなことを思うのです。
古今東西、自転車を題材にしたソングは数あります。いちばん有名な自転車ソングはやはりクイーンの「バイシクル・レース」でしょうか。いや、やっぱり日本人ならゆずの「夏色」かな。ジュディマリの「自転車」や小林旭のパロディである忌野清志郎の「自転車ショー歌」も捨てがたいところですね。ちょっとコアなところだと、岡村ちゃんの「真夜中のサイクリング」やアッコちゃんの「自転車でおいで」とかも必聴です。
そんな数ある自転車についての名曲の中から特に紹介したい曲がふたつあります。
まずは初期のRCサクセションの大傑作セカンドアルバム『楽しい夕』から、クロージングナンバーである「僕の自転車のうしろに乗りなよ」。
RCサクセション「僕の自転車のうしろに乗りなよ」
ほぼ清志郎の弾き語りなのですが、なんなのでしょうこの感情の豊かさは。フラフラと進む自転車のように不安定なギター。「君」の不在だけがくっきりと浮かびあがるような悲痛さ。冬の刺すように冷たい風を想起させるリリシズム。混乱と冷笑。そしてそれらブルーにこんがらがった感情を蹴散らす叫びとも呻きともつかないボーカル。若き忌野清志郎のほとばしる才気を堪能できるトラックです。
そして、これを紹介したいがためにこの記事をポストしたといっても過言ではない隠れ(すぎ)た名曲。Amikaの「自転車に乗って」。
Amikaという女性シンガーソングライターについては、いつかちゃんとした記事に書きたいので、細かな経歴などはここでは省略します。彼女は2000年前後に『揺れる光ない海の底』と『会えないことになった日』というアルバム(どちらも名盤)をリリースし、以降はインディーズでマキシシングルを1枚リリースしたのみですが、現在もいくつかCMソングを提供するなどの活動を続けています。「自転車に乗って」は2枚のアルバムの間にシングルとして発表されました。
Amika「自転車に乗って」
ザ・なつやすみバンドの「自転車」に出会ってしまった今でも、僕の心の(自転車ソング)ベストテン第1位はこの曲のままなのかもしれません。Bメロの浮遊感がありすぎて最早サイケデリックですらある《ときどき足をぶらぶらさせて》のメロディラインから、直後の瑞々しい《「次の角を右」なんて言いながら》への移ろいに鳥肌をたて、ラストの可憐すぎる《だからもうひとりにしないで》に胸を撃ち抜かれる。本当にとんでもなく素敵な名曲だと思います。あと、Amikaさん、とにかく可愛いすぎ。どうか、ひとりでも多くの人にこの曲が再発見されますように。そんなことを祈っています。
ぜひ、みなさんの自転車ソングも教えてください!
くらーく(@kimiterasu)