くるりについて話してみた 〜『THE PIER』とその裏に潜んだもの〜

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好きな音楽にについて語るのは、おそらく誰も経験あることだと思います。「この曲が好き!」「私はあの曲が好き!」「この曲のここがいいあそこがいい!」などなど。そんな話をしていると、いつのまにやら時間が経ってしまうのもよくある話。こういう経験、みんなあるでしょ?

ということで、うめもとさんとかんぞうさんが先に行った対談、ストレイテナーについて話してみた 『冬の太陽/The World Record』編を読み終えた2人の男、くさのとゴリの2人が「やってみようぜ」と2人で対談シリーズをおっ始めます。

まず最初のテーマは、新作『THE PIER』を発売したくるりについて。

以前「くるりの名盤とは?」で盛り上がるなど、音楽大好きクラブに参画する人にとってくるりというバンドはやはり大きな存在。話にも熱が入り、新作から過去作品をなぞり、そして音楽シーンの在り方を深く突っ込む話へと流れて行きました。

その時間、なんと合計約3時間、関西圏と関東圏に住まうアラサーなおっさん2人がskype上で語り合って見出したくるり像とは一体?。

って、実は対談予定前日には、こんなつぶやきを岸田さんが……。

岸田さん、すいません、語ってしまいましたっ!!(草野)

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ゴリ こんばんわ。 

くさの こんばんわです。大変長らくお待たせしてしまいすいません。

ゴリ いえいえ、大丈夫です。酒飲んで待っていましたw

くさの 僕も酒飲もう。

ゴリ 今日はまじめな感じじゃなくて、お酒でも飲みながらゆったりとした気分で話しましょう。

くさの ゆったりゆったり……(ゴゴゴ

ゴリ ゆったりしすぎです(笑)

くさの はは(笑)いきなり話すと、くるりの新作が出たのを知ったのが、みんなが購入しました!とかナタリーとかのツイッターアカウントが「発売日です!」呟いてるのを見て知ったくらいなんですよね。

ゴリ ほうほう。

くさの それで「ほへー、そうかー」とか思いつつも、買うのをずーっとサスペンドしていて。ポロっと買った3日後にこの話と出会い、こうしていま話しを2人でしてる流れで。ゴリさんはもう事前に知っていて、前日購入きめたとか?

ゴリ 僕の場合はki-ftってサイトがありまして。

くさの ええ、あの関西の若手ライターの方々で固められた音楽レビューサイトですね。

ゴリ はい。関西拠点に全国へ関西中心の音楽シーン等を発信している音楽メディア/レビューサイトなんですが、そこでレビューしようと思っいて。だから、数日前からCDの情報も知って、発売日当日に買いましたね。

【クロスレビュー】くるり: THE PIER | ki-ft

くさの なるほどなるほど。

 

ポピュラーミュージック外との融合

くさの で、まぁki-ftでのレビューもあるとは思うけど。単刀直入に聴いてみて、新作どう感じました?

ゴリ 「すごくポップでおもしろい」というのが第一印象です。で、後から「凄いことをやっているんじゃないのか?」と思いました。

くさの 「凄いことやっているんじゃないのか?」というと?

ゴリ これって個人的には『ワルツを踊れ』以来の他ジャンル音楽との融合、接近かなと思っていて。くるりってポピュラー音楽をメインに、エレクトロやカントリー、UK、USロックのエッセンスをアルバムに取りこんできたんですが、唯一の例外が『ワルツを踊れ』で。

ワルツを踊れ Tanz Walzer

ワルツを踊れ Tanz Walzer

 

くさの あれってクラシック音楽で、ポピュラー音楽「外」だもんね。

ゴリ そうそう、『ワルツを踊れ』って「芸術音楽」ですからね。で、今回の『THE PIER』はポピュラー音楽でなく「伝統音楽・伝承音楽」のエッセンスを自らの音楽に取りこんでいて。だけど最終的にはその音楽ですらポップミュージック、つまりポピュラー音楽の一部となって音楽に現れたなと思いましたね。

くさの なるほどです……うっし、じゃあ僕もそろそろエンジン入れて会話していこ……。

ゴリ お願いします!

くさの いやそこは、「草野さんはどうでした?」とかでもいいじゃないすか(笑) 

 

前作から地続きのアルバム

ゴリ はは(笑)草野さんはどないでしたか?今回のアルバムは?

くさの 前作と地続きだな、小慣れたなってのがまず第一印象です。

ゴリ 地続きですか。

くさの ちなみに僕は、くるりのアルバムを全部追いかけてますけど、別段ヘビーなファンでもリスナーじゃないんです。ゴリさんがki-ftで書こうとされている分、僕がつんのめって話をすると、なんというかくるりって、2作で一つのジャンルを制覇してる印象があるんですよね。

ゴリ ほう。2作で1つですか。

くさの 『さよならストレンジャー』『図鑑』でUSロック(主にエモっぽさ)『TEAM ROCK』、『THE WORLD IS MINE』でエレクトロニカやテクノ、『アンテナ』『NIKKI』でもう一度ロック、UKロック寄りなグルーヴ感の追求みたいな形で、いろいろなサウンドを満足いくまで作りこんでいるのがくるりっていうバンドの軌跡なんですよね。ゴリさんが指摘した『ワルツを踊れ』も、ウィーン交響楽団と手を組んでクラシックなサウンドを取り込んだ一作じゃないですか。でもあの作品が本当にすごいのは、岸田さんの声とメロディラインが乗ると、一瞬にしてカントリーへと変貌することだと思っていて、「クラシック」っていう言葉が持ってる威厳強さ/格調高さはほとんど感じないアルバムだったなと思っているんですよ。

ゴリ 確かにそんな感じがしますね。

くさの で、その後の数作『魂のゆくえ』『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』で、ぼくは完全に彼らから離れちゃったんですよ。

ゴリ それまた何で?

くさの 聴いていても「え、何したいんだろ、何を伝えたいんだろ」っていうのが全然わからなくなっちゃって。距離を感じて聴かなくなっちゃったんです。そうして時間は流れて、前作『坩堝の電圧』と直前に行われた代々木のフリーライブの衝撃で完全に戻ってきて、2012年の個人的邦楽ベストでも4位に選ぶくらいには衝撃だったんすよ(微妙な順位で申し訳ない)

@grassrainbowのMy Best ALBUM 2012(邦楽編) - Togetterまとめ

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(通常盤)

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(通常盤)

 

ゴリ なるほど。確かにインタビューで本人たちも『魂のゆくえ』『言葉にならない、笑顔をみせてくれよ』の時期は迷っていたって話してますしね。

くさの へぇー、それは知らなかった!

ゴリ MUSICAのくるりの過去を振り返るインタビューでこれについては話していましたね。佐藤さんが過去のアルバムを振り返りながら、この2作品の時期は悩んでてコンセプトは考えず現場の人と作りながら考え形にしていったと話されていましたよ。ぜひ。これ今読んでもおもしろいと思いますよ。(※2013年11月号)

くさの なるほどなるほど、今作を読み解く参考としてもくるり史を知る上でも、必携なアイテムかもしれないですね。

 

サウンドの衝撃に頼らなくなった

くさの で、前作の話をちょっと雑把に話しちゃうと、『坩堝の電圧』でワールドミュージックとの接続を試みてるなってのが個人的にまず感じていて「chili pepper japones」とか「argentina」とか、ちょいと複雑な感じになると「crab, reactor, future」も。あと、ビート感からして多彩だし、『ワルツを踊れ』のときのカントリー/クラシック的なプロダクションも詰め込んで、快活なロックナンバーも含めてあって、「何なんこれは!?」もう笑いながら聴いていました。冷静に見つめれば、このワールドミュージックエンセンスは所謂コミックソング的なワンクッションとしてあって、本当に伝えたいのは、「沈丁花」「のぞみ一号」「glory days」のラスト3曲に詰まっているなと思って聴いていたんです。

くるり「glory days」

ゴリ はい。

くさの 長々と個人的なくるり論を話しちゃいましたけど、こうして最新作『THE PIER』を聴いてみて、「ワールドミュージックのテイストは、全くお笑いネタじゃなくなってて、すごく格好良く着こなしてる。「くるりヤベェ……」と。

ゴリ ふむ。

くさの よく名盤にあがる『図鑑』と『THE WORLD IS MINE』って、それぞれロックサイドとエレクトロニカサイドからみての名盤だと思うんだけど、今作も同じく、サウンドそのものの衝撃感に頼りきることなく、完璧にそのサウンド感に合わせてコントロールできるようにくるりが進化した一枚だなと思います。

ゴリ 確かに今回のアルバムって相当作りこまれた感じありますよね。今回のアルバムに対して岸田さんが「偽物を本気でやったらどうなるやろ」と思って作ったと言ってて。岸田さんは「俺たちの作ってる音楽なんてニセモノやから本物作らなあかんな」と思っていたみたいだったんですけど、ある時に「それならいっそのこと、プロとして本気で偽物を作ろったらどうなんだろ」って思ったみたいで。衝動的でなく、時間をかけて「作りものを作りこんでいった」それが本作には良く出ていると思います。

 

祭り囃子とロック

くさの 僕はBelong Mediaというところでディスクレビューを担当していますけど、いわゆるロックやインディ界隈で、彼らほど『自国文化とは関係のない文化圏の音楽』を貪欲に吸収し、1枚のアルバムに仕立てあげようとするバンドなんて、ほんと数少ないんですよね。その意味でも世界的にみて、くるりワンアンドオンリーな存在じゃないかなって思います

ゴリ たしかにそれは思いますね。くるりのようなバンド他にいるかな考えるとちょっと想像つかないかな……。

くさの まぁ、日本への流通ルートがきっちりと整っている英米のロック・ミュージックの中での話であって、フランス出身のマヌチャオとかは、くるりにわりと近いけど、彼には浪花節と演歌魂がないし一本調子すぎるキライがあるから(笑)

Manu Chao 「Clandestino」

ゴリ マヌチャオね。あの人もアルバム自体凄くおもしろいですけどね。2ndの『Próxima Estación: Esperanza』のラジオを意識した作りとか、特にね。今のインディバンドも、今後くるりみたいに常に進化していくバンドに発展するかどうかは、この後の活躍次第かなと思いますね。

プロクシマ・エスタシオン・エスペランサ

プロクシマ・エスタシオン・エスペランサ

 

くさの 与太話だけども、ハードロック寄りならTURTLE ISLAND、ブラックミュージック寄りならアラゲホンジがワールド・ミュージック×ロックな作品を作ってる。ゴチャゴチャしてる感じが好きだけど、くるりの新作みたいな精微さや強い作り込み感はないんだよね。

TURTLE ISLAND「この世讃歌」

アラゲホンジ「トーキョー・ネイティブ・タイム」

ゴリ TURTLE ISLANDおもしろいですね!日本の祭囃子にアフリカ民族音楽みたいなエッセンスも感じる。アラゲホンジは僕も大好きですね。日本各地の民謡にソウルやファンクのエッセンスを加えて形にしたのは一種の発明だと思います。

くさの TURTLE ISLANDは今年のグラストンベリー・フェスティバルのオープニングとか務めていて、海外フェスも参加してたりしますよ。アラゲホンジは東京のバンドで活動中、くるりの新作にもアドバイスを与えたサラーム海上さんとも確か面識が合ったはず。大胆ですが、祭囃子×ロックってのは世界を捉えると個人的には思います。

ゴリ 本作でも祭囃子は出てきますよね。「Liberty&Gravity」の《ダダン ダ ダン ダン ダン よいしょ》っていうあの感じとか。

くるり「Liberty&Gravity」

くさの ああそれもだね。個人的にはしゃぼんがぼんぼんのイントロ、盆踊りのリズム感で刻まれるギターリフがメタルっていうところが面白いですね。

ゴリ うんうん。あれも、祭囃子感ありますよね。

 

「最後のメリークリスマス」のおおらかさ

くさの これまでのくるりって、フォーキーな歌い口っていうのが一本筋でずっとあったじゃないですか、今作で一気に民謡とか童謡とかの「日本人に馴染み深いメロディ」を組み込んできてるのが目立っていて、サウンドの難しさで爆発しそうな心が一気に安らげるような感じもあり、そこがクセになるポイントだなと。「最後のメリークリスマスの、最後の1分間のアウトロとか。

最後のメリークリスマス

最後のメリークリスマス

 

ゴリ はいはい、いきなりベートーベンの「喜びの歌」が入る所ですかね。

くさの うん、ここでこれが流れて、ホっとしてユラユラと聴ける感じ。

ゴリ この曲聴くと本当に師走の街、年末ってこんな感じだよなって思いますね。

くさの メインメロディの刻み方っていうんですかね?、歌詞/言葉の多さと音符の並べ方がすごく詰め詰めで入っていて、サウンドは大らかなのにすごくせわしなく感じるんですよねこの曲。うん、確かに年末感ありますね、12月25日、それより後に聞きたくなるかも(笑)

ゴリ これ、おもしろい話でこの曲夏に作られたみたいなんですよ。

くさの もうわけわかんねぇな!

ゴリ 岸田さんが「裸で扇風機の風浴びながら作った」ってインタビューで言ってましたね(笑)

くさの ああ、なるほど、あのおおらかさは扇風機から来てるのか!すげぇ(笑)

ゴリ それはどうかな(笑)

 

くるりがインディー系バンドへ与えた影響

ゴリ あと、僕は本作聴いてもう一つ思ったことがあって。

くさの はい。

ゴリ 今のインディー系バンドって、くるりが根底にあるのかなって思っていて……。

くさの …… すごいっすね、いま、月を踏みしめた人間の第一歩くらいにすごく挑戦的な言葉が出てきましたよ!

ゴリ (笑)そんな大げさな。

くさの どうぞ、 続きを

ゴリ あの先ほどもいった“音楽のジャンル関係なく柔軟にとりこんで自らのサウンドにする姿勢”ってインディーバンド全部に共通することだと思うんです。それこそ、森は生きているとか、ceroとか、やってきている事って僕はくるりの延長線上の様な気がするんです。以前にthe sign magazineで森は生きているのレビュー田中宗一郎さんが「ここ10数年の間の、くるりの孤軍奮闘っぷりもようやく報われるに違いない」って書いていて「あ、たしかにそうだな」って思ったり……。

くさの ああなるほど、ゴリさんのいうところのインディバンドって、ここ2010年代に出てきた東京インディのバンド群のこと?

ゴリ 東京、そして関西のインディ系全般ですね。

くさの うーん……。森は生きている、cero、吉田ヨウヘイグループ、ROTH BART BARON、Alfred Beach Sandal、シャムキャッツ、昆虫キッズ、ミツメ、スカート、カメラ=万年筆、ayu tokio、peno、ザ・なつやすみバンド、ちょっと前だとオワリカラとかSuiseiNoboAzとか。枚挙に暇がないほどに東京のインディバンドいるけど、みんな昔の海外の音楽を聴くよね。

ゴリ そうそう。

くさの 「そこまで聴いてないよ!!」って言われるバンドメンバーの方もいるとは思うけどもな、いや実際のところはよくわかんないけどもさ?ゴリさんと田中宗一郎さんの指摘って、くるりがこうしてずっとやってきたこととは「音楽家ならもっといろんな音楽を聴いて、リスナーを驚かせようぜ!」っていうことだと思うの。しかも本人たちは無意識にそれをやってる感じがあるし、リスナーも無意識にそれを受け取ってる。

ゴリ はい。

くさの ぶっちゃけ、俺も今作聴いていくつか気づいたうちの一つはそれなんですよ。たまたまなんだけど、去年僕が洋楽で一番衝撃を受けて一番聴いたのは、いま岸田さんがめっちゃプッシュアップしてるティグラン・ハマシャンっていうジャズ・ピアニストの「Shadow Theater」っていうアルバム、つい最近あった彼の来日ライブにも足を運ぶほど好きで、岸田さんも遊びに行きます!とか言ってたっけな。 

【ティグラン・ハマシアン公演:くるりの岸田さんからコメント到着!】ロックバンド「くるり」の岸田繁さんからティグラン・ハマシアン公演に向けてコメントを頂きました! 『遊びにいきま〜す』 by 岸田繁 http://t.co/IEbALIdjcn 公演はいよいよ明日スタートです!

— Cotton Club (@cottonclubjapan) 2014, 9月 24

ゴリ 言われていま聴いたけど、これ無茶苦茶カッコいいですね!

Tigran Hamasyan「Road Song」

くさの そうそうそれです。アジカンの後藤さん、あとさっき名前をあげた吉田ヨウヘイグループのヨウヘイさんも絶賛してて、今度の新作はジャズの名門レーベルのブルーノートから出るのも決まっていたりと、陰ながら、ミュージシャンや評論家筋に物凄い影響を与えてる一作なんですよね。

ゴリ へー、そうなんだ。通りでカッコいいわけだ。

くさの 端的に言っちゃうけども、「音楽家ならいろんな音楽を取りいれようぜ」って、実はすげぇ冒険的だと思うの。だってそれは、それまで安定的にやってきた音楽をわざと不安定にして組み込むってのと非常に近しいじゃないですか。ちょっと話は違うかもしれないですけども、組み合わせ方次第では自然とミクスチャーロック的になると思う、でも、ドクターフィールグッドとか聴きまくって80年代パンクを通過したミッシェル・ガン・エレファントのようなドギツイロックンロールバンドに、「音楽家ならいろんな音楽聴こうよ!!ティグランハマシャンなんてどう?」って言ってもさ……。

 

楽家はいろんな音楽を勉強すべきなのか

ゴリ うんうん。それに関連する事になるかもしれないんだけど、田中宗一郎さんが以前「くるりの一回転」のレビューで、 

「見るべき映画が見れない、読むべき本が読めないという困った事態に比べれば、音楽は遥かに恵まれている。聴こうと思いさえすれば、以前よりも遥かに気軽にどんなものでも聴けるようになった。にもかかわらず、誰もが同じようなものばかり聴いている。ネットというアーキテクチュアによってバイラル化されたものばかり聴いているーー半ば自分自身で選んでいると思い込みながら。それゆえ、こう言い換えるべきかもしれません。聴きたいものしか聴かなくなっている。」

と書いていて、それに当てはまる気がする。あと、草野さんが先ほど触れた「音楽家ならいろんな音楽を取りいえようぜ!」ということが多分MUSICAの有泉さんのツイートにも書かれているような気がして。

くさの 個人的には、田中宗一郎さんのこの記事はちょっと意地悪いけども、すごくおもしろいと思うんだ。くるりと同じ関西圏に、KANA-BOONがいるじゃないですか。彼らって、アジカンとかホルモンが大好きで、BPM170を平均にして4つ打ちドラム(イーブンドラム)でもって曲を構成してる。それが一部の人にはウケが悪くて、「それは勉強不足だ!」みたいなことを言ってる人もたくさんいるじゃないですか。

ゴリ うんうん。

くさの 結論から言うと、人様から見て勉強不足だろうが、ミュージシャンとしてカッケェ曲や美しい曲を作ったらオッケーでしょう?ってのは、まず一つ筋の通し方としてある。で、有泉さんのつぶやきもそうだけど、困ったらどんどん勉強すればイイと思う。くるりだって、最初は轟音ギターサウンドに始まり、音響派エレクトロニカを汲んで血肉化していったことを踏まえれば、それで良いと思うんすよね。

ゴリ 確かにその通りですね。

くさの 今の時代って、いろんな音楽を聞くことができる。その結果、ある程度以上の「音楽IQ高い」リスナーがどんどんと生まれてもいるし、真反対に、聴きたいものしか聴かないような無勉強な(言葉悪いけども)リスナーが増えてもいる。この大きな差異は、これまでの日本洋楽文化の影響と延長にあるし、ネットの波によって余計に大きくなったうねりとして潜んでることだと思う。リスナーの数/パイは決まっているけども、リスナー層が多様かつ多彩にもなってるのが今のリスナー層だとも思う。

ゴリ はい。

くさの くるり、またはその立ち位置/志向性を目指すバンドにとってみれば、音楽IQ高いリスナー層は年々増加する傾向にあるだろうし、良い時代になるなとも思う。でも次なる問題は、そうして『勉強をするリスナーが同じような畑に住んでいる人ばかり』だったらどうするんだ?ってところなんだろうけども……。

ゴリ うん。その問題は大きいかもね。

くさの でもまぁ、くるりが日本の洋楽文化の化身として、アメーバのような吸収力を誇っているのは、本当にすごいことだなというのは間違いないですよ。

 

くるりというバンドは、あなたにとってどんなバンドですか?」

くさの さてさて

ゴリ 気づけば3時間も話しているんですよね。

くさの そうなんですよね、こうして話してると、気づけば3時間。寄り道しながらの流れだけどあっという間……。

ゴリ そろそろ締めにはいりたいなと思うんですが、最後に僕これが聞きたいんです。くさのさんにとってくるりってどんなバンドですか?

くさの  んーーー、最も遠くにいる口の悪い旧友のような感じ……かなぁ?。

ゴリ ほうほう。

くさの 会うのは楽しみで心地いいのはわかってるけど、会ったら何かしらで喧嘩腰になっちゃう間柄で、でもそれすらも心地よいバンド……かな?

ゴリ なるほど。

くさの 逆にゴリさんにとってくるりってどんなバンドですか?

ゴリ シンプルに言うと「音楽の幅そして可能性を広げてくれるバンド」かな。

くさの うんうん

ゴリ 音楽好きなら誰だっていろんな音楽知りたいし、未知なる体験してみたいし、音楽で色々自分が気がつかない事を発見したいと思うんです。それを最良な形で提示してくれるバンドがくるりかなって思います。

くさの なんだろう。 結婚式の挨拶とかプロポーズみたいだね。

ゴリ ははは!(爆笑)

くさの 今度、ワンマンライブをちゃんと見たいです。知り合いの誰もがくるりのワンマンライブを見に行って、どれくらい楽しいのかを切々と語ってるんで行きたいです。

ゴリ 僕もフェスでは何度も見ているんですがワンマンまだ見たことなくて、今回のツアーは見に行こうとも思っています。

くさの それは意外!じゃあもしも次の対談があるときは、くるりのライブここがすごかった!!で行きましょう(笑)

ゴリ それもいいですね。じゃあ、ぜひまたやりましょう!

 

 

草野(@grassrainbow) × ゴリさん(@toyoki123