関東インディーガイド#4 THIS IS JAPAN
5月2日、久々にライブハウスに行こうと思い、好きなインディバンド、mothercoatのライブを観に行った。
mothercoatのメンバーの方とちょこっと話をしていると、ステージからとんでもなくデカいノイジーな音が飛び込んできて、会話を遮られてしまった。あまりにもうるさかったので、正直ファーストインプレッションは最悪だった。だけども彼ら、THIS IS JAPANのライブを見ていたら、その印象が徐々に変わっていった。
まず今にしては少しめずらしいダブル・ギター・ボーカリスト体制。しかもそのうちの一人、杉森ジャックのMCは似非英語/ニホンゴ英語。棒読みで「オーゥ!、ディスイズジャッパアアアン!!オールライ?エブリバディーーー・・・?ネクストソーングイィィィズ・・・???」というノリなのだ。「なんでそんなキャラなんだ?杉森ジャックよ?」と思わざるをえない。
あまりにもバカバカしいインパクトでありながら、そこでバッチリと食らわされたのが先ほど飛び込んできたノイジーなギターサウンド、70's UKパンク〜ポストパンクの流れをしっかりと踏襲したもので、正直圧倒された。シールがベタベタと貼られたジャック杉森のギターからはパンクの匂いを感じずにいられない。ライブ途中で起こってしまったベースのトラブルにもお笑いネタで返すなど、終始笑顔の絶えない空間をつくっていたのが印象的だった。
THIS IS JAPAN「FightClub2」
「大学のサークルでTHE POP GROUPコピーしてみた」
(※同じ投稿主からだから同じバンドだと思う)
その後ファーストアルバム『THIS IS JAPAN TIMES』が発売されたわけだが、その収録曲、そのタイトルだけでもまた笑ってしまったわけだ。
1. TAXI DRIVER
2. FightClub2
3. BUDDHIST PUNK
4. STEAMBOY
5. アメリカのカー
6. フランケンシュタインズロンリーハーツクラブバンド
7. humber girl
8. INSTANT文明
9. 自由の女神
10. うる星ぼくら
11. 靖國デート
THIS IS JAPAN「TAXI DRIVER」
THIS IS JAPAN「アメリカのカー」
THIS IS JAPAN「ハンバーガール」
THIS IS JAPAN「うる星ぼくら」
THIS IS JAPAN「BUDDHIST PUNK」
1曲目の「TAXI DRIVER」と2曲目の「FightClub2」はあの著名な映画、4曲目の「STEAMBOY」は大友克洋のあの作品、6曲目の「フランケンシュタインズ〜」はもちろんビートルズのあの作品で、7曲目の「humber girl」はあのバンド名。なんというネタ使い、なんというパロディとオマージュの連発。
各曲の詳細についてはこちらから。
【THIS IS JAPAN TIMES】セルフライナーノーツ公開!! | THIS IS JAPAN
先にも述べたが、パンク〜ポストパンクをそのままにぶちかますそのギターサウンドが彼らの特徴。だが、ライブででしか味わえない音圧の高さが失われてしまってるがゆえ、ダブルギターの絡み方に少々一辺倒な印象を持ってしまう。それを飽きさせないのは、グイグイとひっぱっていくリズム隊だ。特にベースサウンドの音粒は、しっかりと丸みを帯びており、いわゆるドンシャリな音とは違ったサウンドを響かせているのが、彼らのサウンドを飽きさせない大きな理由ではないかと思う。
最近の若いミュージシャンは昔の音楽を聴くことで勉強している。
なるほど、それは確かだろう。僕も若いミュージシャン/DJと、クラブやライブハウスで酒を飲みながら、時には酒も何もなく真面目に立ち話をする。詳しい人も中にはいるし、詳しくない人もいる。そのことを忘れてはいけない。でももっと忘れてはいけないのは、音楽だけでなく「海外文化」をも吸い込んだロックバンドが彼らだということ。
「何を外人かぶれなことを」と呟く人がいるのもわかる。だがはっきり言おう。「だからこそおもしろいのだ」と。顔を黒く塗った白人が黒人を真似て、踊り、歌う寸劇、ミンストレルショーに端を発するアメリカ合衆国のエンターテイメント。その大きな潮流を一翼を担っているのがロックンロールという文化であり、「悪ふざけ」という要素は、その後のロックの進化において重要なファクターなのはいうまでもない。
かつてあった実際の話を一つしておきたい。
とある方がイギリスに在住時、学園祭か何かに足を運んだ際のことだ。今では超有名と言えるとあるロックバンドの、インディー(いやアマチュアか?)時代のライブを観たことがあったそうだ。「俺達は、ライブを始めた時から‘ロックンロールスター’って歌っていたんだ」、彼らはその後のインタビューで何度となく答えていたそうだが、その人曰く、彼らことオアシスを見た時にも「Rock'n'Roll Star」を歌っていたのが印象的だったという。80年代末のイギリス、MTVやセカンド・サマー・オブ・ラブが流行っていた頃に「ロックンロールスター」と叫ぶ悪ふざけにも似た「不敵さ」は、THIS IS JAPANにも宿っているように見える。
本人たちにとっては非常に悪い言葉だとは思うが、今のところTHIS IS JAPANというバンドは「悪ふざけ」を本気でこなすことでロックをくらわしていくバンドだと思っている。この皮肉にも似た、マジな悪ふざけというスタイルは、まさにいまの時代を表しながら、関東インディの一部に根ざした感覚ではないだろうか。
草野(@grassrainbow)