マンスリー・レコメンド 11月号
11月のマンスリー・レコメンドです。11月も終わってすでに10日……。遅くなってすみません!結構かなり濃いリリースが続いた月だった気がしたのですが、えーと、わりと、なんていうか、みんなマイペースですね(俺もだ……)。あくまで記録用というか、単なる記録がめぐりめぐって「せっかくだから聴いてみようかな」的なきっかけになればいいなーという気持ちでやっているので。何かを見つけていただけたらうれしいです。
しかしみんな、ほんとバラバラだな……。(ぴっち)
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
ぴっち
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
1. Taylor Swift『1989』
王道。長い目で見るとレディー・ガガと張ってるのかもしれない。宇多田ヒカルと浜崎あゆみの関係性を思い出した。光と影。エレクトロというか、EDMの印象が強くなったけど、あくまで味付け程度で基本はシンプルなサウンドとシンプルな歌。それが一番強い。飽きない。楽しかったです。
2. JUCE!『Taste the JUCE!』
そんな単純な話ではないと思うけど、インディーをうまくポップミュージックに仕上げているという意味で、今はロンドンがおもしろいのかもね。
3. Slow Club『Complete Surrender』
MVが公開されて「Everything Is New」でこのサーフっぽい風通しのよさと気だるさにハマってアルバムまで手を伸ばしたら、モータウンやってるの、この人たち。もう超笑った。ただのポップミュージック馬鹿でした。すごく好き。
4. Wilco『Live in Portchester Oct 29 2014』
ウィルコ 10/29 NY公演のフルセット・ライヴ音源が無料DL可 - amass
少し長いけど、アルバムより気持ちよく聴けるかも?
5. ゲスの極み乙女。『魅力がすごいよ』
こういうことを書くのもなんだけど、やっぱりボーカルの声質が苦手。でも鬱っぽいサウンドを爽快に鳴らす心意気、そして遊び心いっぱいの実験性。詰め込みまくっているんだけどしつこくない。うん、いいと思う。少しずつ好きになってきた。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
showhey
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
1. 椎名林檎『日出処』
リリース前は13曲中7曲が既存曲で大丈夫かな?と思っていましたが、全然杞憂でした。既存曲ばっかではフレッシュさが足りないとか思ってすみませんでした……。やはり椎名林檎ほど信頼できるアーティストはいない。新曲はもれなく良いし、シングルで持ってるのも練られた選曲でまとめて聞けるんで僕は大満足です。というか『ありあまる富』にはいつも救われています。
2. 長岡亮介『LOUNGE LOVER』
ペトロールズという主に東京で活動している3ピースバンドでギター、ボーカルを担当している長岡亮介の初の自身名義リリースとなるシングル。
長岡亮介は「浮雲」名義で東京事変の2代目ギタリストだったのは有名ですね。最近では椎名林檎『日出処』のプロモーションTV出演時にギター弾いていて、事変ファンとしては嬉しかった。そのいつかは出るとは思っていた長岡亮介の初リリース『LOUNGE LOVER』をざっくりレヴューします。
1. DAZED
レゲエっぽいというかカリブっぽいというか、ウンチャカしている曲です。重ね録りギターが超心地良い。
2. LOUNGE LOVER
1曲目とは打って変わってアーバンな感じでしかも英語詞の曲です!てかカッコよすぎ、笑。今は無きHotel Costesシリーズに入ってたらおもしろい。
3. LOWDEN
10:35という長尺でストーリー性のあるギーターインスト曲。郷愁をそそる秋っぽい曲です。極まっています。というのはこの曲、事変のアルバム『スポーツ』の最後に入っている「極まる」の元ネタな曲だそうです。
海外・都会・田舎みたいな感じに個々魅力的なバライティー豊かなシングルでした!やっぱり飾らずフワフワしている長岡さんのボーカル好きだなー。
しかしこの『LOUNGE LOVER』長岡亮介の全国メガネ屋ツアーの会場と渋谷のタワレコなど限られた場所でしか購入できない模様。詳しくはレーベルの公式twitterで。
LOUNGE LOVER - NAGAOKA RYOSUKE(ENCD28)取扱店舗:Eureka(高知)、光陽眼鏡店(徳島)、蒲池眼鏡舗 FLOOR(熊本)、アイロビクス(福岡)、センス(広島)、POKERFACE渋谷店(東京)、タワーレコード渋谷店(東京 11/4-30)
— ENNDISC (@ENNDISC) 2014, 11月 25
3. 恒川光太郎「秋の牢獄」
本当は先月書けばよかったのですが、今回は11月に読んでほしい小説を紹介したいと思います。
恒川光太郎の著書『秋の牢獄』です。これは「秋の牢獄」「神家没落」「幻は夜に成長する」のある種の牢獄に閉じ込められる三編収録の短編集。恒川光太郎は僕が大好きな作家で作風はホラー、怪異譚からSF、ファンタジーなど独特な不思議物語を書かれていて僕は載っている文芸誌も全て読むぐらい追いかけています(笑)
それでこの本に出会ってからここ三年、僕は毎年11月7日に読むようにしています。というのもこの表題作「秋の牢獄」は女子大生の主人公が11月7日を繰り返すループものなんです。それで自分以外にもループしている、人の存在を知り……というのが大筋です。使い古されたネタですが、設定も独特で「北風伯爵」という謎の存在が出てきたり、同じ日が繰り返すという深刻な状況の中でいきなりアホっぽい事しだしたりして笑える場面もあります。
あと恒川作品と言えば、現実では関わりたくないような超下衆な人を描くのが上手く人間模様が面白いんですよ。しかしラストは何だか清々しい。他の恒川作品では『竜が最後に帰る場所』という短編集が季節的にオススメ!文庫も出ているでぜひ!
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
やや
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
おひさしぶりのマンスリー参加です。というのも、先月からセレクションがCDに限らないだって?というインフォメーションを受けて、今月は絶対に書いておかなければならないものがありまして…。
1. L’Arc-en-Ciel「L’Arc-en Ciel LIVE 2014 at 国立競技場 [Blu-ray]」
これからラルクのライブ映像を見るなら、絶対にこれをオススメします。歌唱、演奏、演出、スケール、どれをとっても一流。所詮ファンの浮かれごとと捉えられるだろうけど、胸を張って誰にでもオススメできるライブ。相変わらず値は張るけど、、でも絶対ブルーレイでお願いしますね。
さらにこのライブ映像は、ソニーの本気の塊でもある。2日間で16万人を動員し、配布したポンチョを観客に着せプロジェクションマッピングのスクリーンにしてみたり、ザイロバンドのようなLEDライトも配布し演出として使用したり、世界初・20台以上の4Kカメラで撮影してみたりと、ソフト化まで含めて完全にソニーの技術博覧会。だけどそのおかげで映像だけでも本当に見応えがあると思う。大きな家電量販店ではよく流れてるので、BRAVIAコーナーでぜひちらっと見てもらいたい。
ライブの中身?当然最高に決まってるじゃないですか、という返答はお約束として(いや長年続いた「明→暗→明」のセトリマンネリも打破して最高でした)(国内および世界6カ国にライブビューイングされた日の模様なので序盤はおすましモードだけどね)、初回限定版におまけとして付いているライブ音源のBlu-spec CDも、ソニーの本気を垣間見られるポイント。ヘッドホンをして目を閉じると、あの日の会場にいるような臨場感を味わえる。ライブ中や映像を見ているときには聴こえてこなかった音が、立体的に浮き出てくる。お願いだからいろんな人に聞いて欲しい。CDだけでリリースして欲しい。ハイレゾで配信リリースでもいいや。moraにお金落とすから頼むよソニー。売ろうよ。
2. VAMPS「VAMPIRE’S LOVE」
HYDEが立案・脚本と制作に携わったというMVが、ベタだけど、映画のように美しい。
シングルは英語バージョン、アルバムには日本語バージョン。歌番組のプロモーションは日本語バージョン。英語バージョンの方が美しさは際立つけれど、日本語バージョンは時代が時代ならミリオンセラーになってたと思うの。21世紀に生まれた歌謡ロックの名バラード。日本語バージョンが収録されたアルバム『BLOODSUCKERS』でも「GHOST」からの繋がりが胸に響く。
特筆すべきはやはりHYDEの声。声という、HYDEの発声器から出る音に含まれる豊かさは、驚くことに年々深みを増している。サビの《Stray dream of you(ねぇ こうして)》《In the darkest night(この胸は)》で魅せる低音から高音への雄大な広がり、2番Aメロ《Even if things don’t change...(このままでいい…)》に魅せる小鳥の秘め事のような儚さ、《Even now…(いまでも)》で魅せる最高音への飛翔。ボーカリストとしての円熟が非常にわかりやすく表れているという点からも、この曲がミリオンセラーになる世界を見てみたかった。
3. THE ORAL CIGARETTES『The BKW Show!!』
奈良出身の4人組ロックバンド。爆進攻めモードONの「BKW=番狂せ」ショー。メジャーデビューシングル「起死回生STORY」で知って耳にこびりついて、フェスで観てノリまくって、リードトラック「嫌い」を聴いてメロメロに、アルバムを聴いてがっつりとすっかりはまってしまった。
四つ打ちを多用するバンドが目立つ中、それだけではない独特の器用なリズム、一本調子にならない大展開、超テクニカルな楽器陣、そして歌謡的メロディアスで艶のある歌とドラマティックな歌詞。キラーチューンや高速ロックから、やさしくさびしいミディアムナンバーを挟み、ラストを飾るバラード「透明な雨宿り」には叙情性、文学性すら感じる。まるで周りを蹴落とす時期を虎視眈々と見計らっているような、隠しきれない狂気・野心・闘争本能が、全体を通してびんびん伝わってくる。貪欲さが力となり武器となり、きちんと音楽に昇華されている。
「起死回生STORY」やフェスでの「大魔王参上」のイメージは陽気な関西人の兄ちゃんという感じだったのに、アルバムを通したイメージは意外と暗くて内省的で捻くれていて妄想癖があるナイーヴな青年。ねえ、そういうのどストライクに決まってるよ?今年メジャーデビューしたバンド界隈では、頭一つ二つ抜けてオーラルが好きです。かっこいい。
4. ACIDMAN『有と無』
世界が終わる事なんて 些細な事さ
小さな僕ら 生まれて 消えるだけ
「世界が終わる夜」
前作『新世界』でもすでに、大木伸夫の精神性が頂点に達したような気がしていた。人がいなくなった後の世界か、もしくは人や生物が出現する前の世界で、君と僕は魂にすぎないと言っているような高みの世界を感じた。ただそれでも地に足は着いていた。
ところが今作『有と無』では、しょっぱなの「永遠の底」が大変。ついに地球から足が離れてしまった。手塚治虫の世界。さらにいえば「火の鳥」の世界。宇宙、輪廻、生命、死や魂、そういうのが苦手じゃない方はこの曲だけでも絶対聴いてほしい。「永遠の底」は、誰も知り得ない、死後の世界から呼び戻されて、再び新しい生命を吹き込まれた人の歌。アルバムは、超然〜ライブで盛り上がる歌までてんこ盛りで、振れ幅についていくのがやっと。それでもラストの「最期の景色」は、実質1曲めの「永遠の底」にループしているから、生命の連鎖のごとく無限にリピート再生してしまう。
個人的には「永遠の底」を視聴機で聴いていて、1番が終わったところで「このあとは家で聴こう」とレジに持ち込んだほど、この曲の持つ圧倒的な宇宙にひれ伏す気持ちでした。きらきら銀河スペイシーな宇宙じゃなくて、空気がなくて寒くて真っ暗闇の、けどなぜかあたたかい宇宙のほうね。ここまで書いておいてなんだけど、あの、うん、宗教じゃないから。
5. THE BACK HORN/熊切和嘉「光の音色」
映画の事前情報を調べるのはあまり好きじゃない。ということでてっきりバックホーンの映画だと思い込んで観に行ったら、ロケ地はウラジオストック。主人公はロシア人俳優と犬。彼らにセリフやBGMはなく、自然のみせる表情と、身体の演技のみで行われる。でもストーリーがある。
開始しばらくは静寂な映画に「おや…?」と疑問を持ってしまったのだけど、ひとたびバックホーンが演奏しだすと、静寂の意味が一瞬で理解できた。場面に必要な心情や感情の凹凸や温度をバックホーンの音楽があらわすのだ。しかも観客のいないライブという形で。
演奏される曲はHPでも公開されているが、「アカイヤミ」のシーンは戦争映画嫌いの自分には辛くて、劇場を後にするお客さんもいた。この曲ラストのマツさんの顔が忘れられない。あと「ブラックホールバースデイ」の聴こえ方が変わった。どう変わるかといえば…この先はぜひ観て欲しい。曲がすべてを雄弁に語るから。
6. クリント・イーストウッド「ジャージー・ボーイズ」
ビートルズ登場以前に大人気だったというポップスグループ、ザ・フォー・シーズンズの伝記的物語。事前知識はゼロだったけど、元ネタはブロードウェイ・ミュージカルの名作。結果、素晴らしすぎて映画館で2度観ました。
グループが生まれる前からエンディングまでを十数曲の歌が彩る。さらに、かの有名な「君の瞳に恋してる(Can’t Take My Eyes Off You)」は、友情・栄光・裏切り・奮闘・喪失、という過程があったうえで、この人たちから生まれた大切な曲なのだということを知った。舞台版「ジャージー・ボーイズ」のオリジナルキャストが4人中3人出演していることもあって、とにかく、強烈な歌の力が心を襲う。べつに人生観が変わるような大きなテーマはないけれど、世代問わずあらゆる人に、歌の力を体験してほしい映画だと思う。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
菱型良音
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
今月もマンスリーレコメンドの時期がやってまいりました。選りすぐりの10曲をお送りします。
1. KNOCK OUT MONKEY「How long?」
疾走感の在る無駄のないサウンドが、私の心を鋭く打ち抜きました。「こういうストレートなロックが聴きたかった!」という、まさにそんな作品です。音楽好きなら、絶対聴いてみてください。損はさせません。
2. OGRE YOU ASSHOLE「ムダがないって素晴らしい」
2014年に敢えてのクレイアニメです。めっちゃ時間と労力がかかっています。タイトルと相反するヴィデオですね。わたしたちが生きている社会なんて、矛盾で溢れているのですから、それでいいのです。「ムダがあるって素晴らしい」!
3. 中田裕二「ドア」
常人の比ではない色気を持つ男、中田裕二。彼の最新アルバムの8曲目です。「どうしたらそんなに色気が出るんですか?」と訊いたら、どんな答えが返ってくるのでしょうか。ムフフ、イヤン!
4. 西野カナ「Tough Girl」
このところのカナさんのパフォーマンスを見ていると、音楽を心から楽しんでいるな、というのがよく伝わってきます。最新アルバム「with LOVE」の要所である8曲目(個人的な話をすると、8、9曲目が優れているアルバムに、ほぼハズレはないと思っています)に持ってきた気合十分の新曲です。
5. FLOWER FLOWER「素晴らしい世界」
6. FLOWER FLOWER「バイバイ」
不動の人気を得ていながらも「YUI」としてのソロ活動を2012年の末に終了し、翌2013年からはロックバンド「FLOWER FLOWER」のヴォーカリスト「yui」へとシフト。ライヴや配信でのみ発表されていた作品たちが、ついに先日CDとしてリリースされました。不安定ながらもアグレッシヴな歌声とエッヂの効いたサウンドに力をもらえます。「バイバイ」のドラムスは必聴!
7. 倖田來未「Dance In The Rain」
文句なしにただ、ひたすらかっこいいバラード。ダンスや表情で「魅せる」部分と、彼女の代名詞である「聴かせる」低音やフェイクのいずれもが人気絶頂期をはるかに凌ぐ、最高のクオリティ。再生ボタンを押すたび毎回、3分53秒(ヴィデオの場合)のショータイムに誘われます。
8. スキマスイッチ「パラボラヴァ」
スキマスイッチの作品はベースが凝ったアレンジになっているものが多く、今回はまさに「それ!」です。跳ねるリズムにあわせて体を揺らしたくなる感覚、良質なメロディ、常田さんの瑞々しい鍵盤、艶のある大橋さんのヴォーカルに至るまで、これぞスキマスイッチといえる真っ直ぐなラヴソングです。
9. 南壽あさ子「ビートラム」
毎年10月に富山で開催される、路面電車に揺られながら音楽を楽しむという、一風変わったフェス「ビートラム」のテーマ曲として作られた作品です。南壽さんの作品は、毎回ミキシングやマスタリングまで手を抜かずに丁寧に行われており、安心感があります。
10. Rake feat.BONNIE PINK「YaMeTa!!!」
2006年のベスト盤リリース時のワッツインのインタビューで「お行儀のいいアーティストで終わりたくない。悪ガキ魂みたいなものをたまには出さないと」(意訳)と語っていたボニー・ピンクさん。プロデュース能力にも秀でた、Rakeさんの新曲は、彼女の「悪ガキ」な部分をフューチャーして、体にやさしいデトックスソングに仕上がっています。ふたりの声質の相性もバッチリですね。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
うめもと
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
今年一年を振り返るのは少し早いですが、僕にとってこの一年は今まで生きてきた中で一番濃密な音楽体験ができたと思います。音楽だいすきクラブというブログに関われて本当に良かったです。なんだか卒業みたいになっちゃいましたね。しないよ!卒業なんて!
1. akiko『Little Miss Jazz & Jive』
ジャズはあまり詳しく知らないのだけど(知らないことばっかりだな)でもとても聴きやすい。発売されたのは2005年と時代を感じさせますが実際にこのアルバムから出てくる音楽は全く古さを感じさせません。ジャズには詳しくない僕でも楽しく聴けるのは、プロデュースの小西康陽さんによる構成もありますが、多分akikoさんの歌声が大きいです。とってもお洒落なフレーズを囁くように歌ったりアッパーに歌いあげたり、そして時折感じるアメリカン。ジャズってこんなに楽しいんですね。知らなかった。
2. クリストファー・ノーラン「インターステラー」
この映画の素晴らしさを語るには何時間話しても足りないかもしれない。もしくはたった何秒かで伝わるかもしれない。要するに綿密な構成や目まぐるしい程の情報量の多さでありながら伝わってくるのはたった一つの感情であったりする。見終わった後にはノーラン作品を全部見直したくなったり関連していそうな作品を全部観たくなったりする。「映画って楽しいんだな」と当たり前のことを思ったりする。『インターステラー』という物語の答えはシンプルかもしれない。でもまだその答えにたどり着くほどこの映画を分かってない気がする。もう一度観に行こう。そしてこの感情を言葉にしてみよう。そんな興奮に包まれています。後日この作品から感じた感情をもっと掘り下げて言葉にしてみようと思います。
3. 椎名林檎『日出処』
初めに僕は椎名林檎のファンでは特にありません。でも今回のアルバムはとても楽しみでした。最初は少し不安だったのです。だってシングルの数とタイアップで発表済みの曲たちがあまりにも多かったから。でもあの完璧主義者がただ既存曲を羅列するだけのアルバムを作るはずが無い。結果的にその予想は当たっていました。むしろ予想を遥かに飛び越えた傑作でした。「傑作」という言葉を軽はずみに使うつもりはありませんが、この『日出処』は傑作中の傑作アルバムだと断言出来ます。間違い無く自分の年間ベストの一つだし、これから先も長くお世話になるアルバムだということはもう確定してしまっているからです。そして僕はやはり思ってしまうのですが、椎名林檎が発する音楽はJ-POPでは無いと思います。J-POPを超えた芸術音楽。多分これから先もずっとそう思って彼女のアルバムを聴いていく。そう思います。
4. 山田尚子「たまこまーけっと」「たまこラブストーリー」
僕は『けいおん!』を詳しく観たことがないし、そもそもこういう日常的なアニメはあまり好みでは無いと思っていた。度肝を抜かれるっていうのはこういうことなのね。『たまこまーけっと』は京アニなりの『クレヨンしんちゃん』や『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』への回答なのかもしれない。「鳥が喋っている」でもその異例の事態は物語の核になんら影響は無い。それよりも主人公達が住んでいる商店街の日常の方がよっぽど大事。言葉にすると阿呆みたいだけど本当にそうなんです。それがとてもラジカルで面白い。もう一つ。『たまこラブストーリー』。最っ高だよ。本当に最高。僕はこの映画を見て爆笑しっぱなしだった。ただコメディとしてじゃない。胸が高まってワクワクとドキドキが止まらなくて笑顔が抑えきれなかったのだ。物語は非常に王道。ラストがどうなるかなんて普通に想像もついちゃう。この映画はそこに行き着くまでの工程をどのように見せるかという点について徹底的に突き詰めていった作品だと思う。この工程とはつまり愛、いや恋か。恋に落ちるとは一体どのようにしてなっていくのか。この工程をただ丁寧に繊細にでも大胆にも見せる。それだけしかしてない映画とも言えます。でもそれを突き詰めたらこんなにも面白い映画になってしまった。そういう映画なんじゃないかと思います。
5. The Last of Us
「なんで今更!なんでゲームの感想!」その指摘正しすぎて何も言えません。でも書きます。だってめちゃくちゃ面白いんだもん!『ラスト・オブ・アス』っていうゲームは、ただ「映画をゲームにしてみよう。いや映画というコンテンツをゲームで超えてみようぜ!」というスタッフの心意気で作られたゲームなんだと思います。すっごい贅沢な体験がこのゲームには待っているのです。ちょっと乱暴に解説すると、サスペンスや人間ドラマを重視しながらパンデミック、パニックはたまたホラーまで(それはバイオハザードにも匹敵しそうなほど)詰め込んじゃっているゲームなんです。「難しそう。あんまり興味無いわそのジャンル。」それも分かるのですがちょっとそれだけで敬遠するには非常に勿体ない。「三千円ほど少し奮発して買う価値あると思うよ!」と大声で叫びたくなる。そんな傑作なゲームソフトなのです。
6. 羽海野チカ「3月のライオン 10巻」
これは物を作る人全てに共通することかもしれないけれど、僕たちの普段の感情を「1」だとしたら音楽や映画やゲームや小説や漫画というか風俗的なものは全て僕たちの感情を「1」以上にしてくれる存在なのかもしれません。当たり前か。でもこの『3月のライオン』の10巻のとあるシーンで僕はかなり痺れてしまいました。文字通り衝撃で全身に稲妻が走ったのです。しかも何が凄いって僕この漫画殆どちゃんと読んでなかったんですよね。立ち読みくらいで。もともとヤバい感動シーンが他の巻にあるのも知ってたし、読みながらその都度凄いなーと感じていたのですが、それどころの話ではありません。漫画の主人公に衝撃を受けたのは初めてです。恐らく作者さんの思惑を超えちゃってますよ、この桐山くんという主人公は。全て揃えてじっくり読み直そうと思いました。