2014年の音楽について話してみた part2
正月企画の続編です。初回でいろいろ怒られました。 完全に僕の理解不足が原因です。まずはそのことをお詫びします。それから直接ではないのですが、言葉の選び方も指摘されました。今後改善に繋げます。申し訳ありませんでした。
と、正月一発目からやらかしてしまったのですが、懲りずにpart2です。一応、誰かを批判しようとか、こき下ろそうとかそういう意図はありません。ただ「2014年ってどんな一年だったのかな?」「こんな音楽があったんだよ!」ということをみんなで話し合っただけです。「何も得るものがないな」「浅ましいな」と思われたのならさっとブラウザを閉じていただければ。音楽を語ることは、それが専門知識で裏打ちされたものであろうとそうでなかろうと、基本的に浅ましいことだと思っています。ですがそれと同時に、音楽を語ることがいかに楽しいことかもわかっているつもりです。
「2014年の音楽」というふわふわしてつかみ所のないものに、僕らなりに考えてみました。一度やってみたら、僕らが文句ばかりつけていた評論家やライターの方々による一年の総括がどれほど大変なのかがよくわかりました。この記事が何らかのきっかけになればこれ以上うれしいことはありません。実際、このテキストの収録の時、この記事の最後の部分でみんながぶっ飛びました。その感じが伝わるといいな。
あともう少しだけ続きます。(ぴっち)
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前回はこちら。
2014年の音楽について話してみた part1 - 音楽だいすきクラブ
大森靖子はどういう存在なのか?
ぴっち 大森靖子はどういうふうに聴きましたか?
ゴリ ライブで何度か見たけどあの子はヤバい。
かんぞう 夏の魔物が衝撃的すぎた。
ntd 確かに大森さんが銀杏のファンだったってのはナタリーで読みました。
ぴっち 大森靖子って銀杏BOYZのファンだった歴史もありますし、椎名林檎のジャケを直接真似するようにJ-POPの素養もあるし、アイドルフェスに出ていたりするんですよね。
草野 なんすかその、00年代ロキノンのどぎついのをちゃんこ鍋にしたような存在感。
ぴっち いや、完全にちゃんこ鍋なんですよ。
Ai 大森さんってフェスの話題が先行されがちで、実際の音楽の評価があまり聞こえてこないんですよね。フェスで話題になりますが、「ミッドナイト清純異性交遊」で話題を掴みにいって、あとはガチでタイマンライブやるっていう。
ゴリ ライヴすさまじいですよ。特に弾き語り。
Ai この人は「売れる」ってことをものすごく意識していると思います。ベクトルは違えどサカナクションの山口くんに通じるところある。
ぴっち 彼女の音楽には銀杏BOYZ、椎名林檎、モー娘。だけじゃなく、豊田道倫のような別のシーンの人からも影響を受けていて、で、バンド編成だとインディ方面の人を集めていたりして。で、そんな単純に言えるものでもないかもしれないのですが、いわゆる日本のロックやJ-POPから大きな影響を受けた人が、実際にJ-POP、日本を刷新しつつある。そこが新しい気がします。ガラパゴスとか言われそうだけど。
SEKAI NO OWARIはディズニーランド?
ntd 病んでるといえばセカオワがまさに「病んでました」をアピールしてるじゃないですか。
宅 セカオワ、出てきた当初は病んでる売りでしたよね。
Ai 今のセカオワはとにかく子供をちゃんと取り込んでるんです。これがすごい。実際、幼稚園生くらいがライブでちゃんと盛り上がってるんですよ。CDも買ってる。姪っ子(小学3年生)が言ってたんですが、「妖怪ウォッチ、ポケモン、セカオワ」的な感じらしいですよ。
草野 世界終わっちゃってるよ……姪っこ……。妖怪とモンスターにあふれてSEKAI NO OWARI。
宅 音楽的には、RPG以降が語りがいあるのでは、ないでしょうか。
ぴっち 昔を知っている人間からすると、最近のマーチングバンドっぽさが馴染めなくて。とまどったんですよ。
宅 アイリッシュとか室内楽っぽいアレンジしてたりとか、所謂ロックのフォーマットにはあまり拘ってないですよね。アレンジも外部の人がやってるみたいだし。
ぴっち その拘りのなさが逆に切り開いている感じがありますよね。
宅 そうなんすよ、ロックなんか最初から全く気にもとめてない、むしろクソくらいにしか思ってない感じが、非常にロックだと思ってました。
ぴっち ロックバンドなのかもしれないけど、外部のアレンジャーを起用するところは完全にポップス側の発想ですよね。
Ai 以前どこかで「ディズニーランドを目指してる」って言ってましたよ。
草野 あれ?どこかでTomorrowland(EDM系のフェス)を目指してるって言ってたのを覚えてます。
SEKAI NO OWARIのルーツにエモがある?
うめもと そもそも、セカオワは最初はロックだったのでしょうか?
Ai ロックでした。バンドのフォーマットにDJを入れてみた感じでしたが、あくまでも数あるロックバンドの中の1つでしたね。
草野 ロックロック騒いでるのは周りだけ、本人たちはまったく気にしていない 最近よくある感じっすね。
宅 セカオワの深瀬くんは、Death Cab for Cutieとか後期The Promise Ring、日本のヒップホップまで割と幅広く聴いてる。
Ai 彼は音楽の幅が横にも縦にも広い人らしいんです。なので好きな楽曲も幅広く、その中で「今」受けそうなものをチョイスして曲作ってるって話は聞きます。だから結果として「やりたいこと」をやってますが、その中でも今売れそうなことはすごく意識してると思います。
宅 1stにはチラホラ00年代初頭のUSインディを参照した跡がある。
Ai それ、わかります。
ぴっち 00年代初頭USインディってよくわからないのですが、どういう感じなんですか?
宅 ピアノエモというムーブメントが00年代初頭にあったのですけど、彼らの1stは割とそこからの影響を感じます。
草野 Waking AshlandにCopelandね。
宅 そうっす!具体的なバンドだと、他にはmaeとか!
草野 個人的にはThis day and Ageを推したい……。
宅 懐かしい(笑)
草野 ちなみに、このあたりのピアノエモは、当時TSUTAYAですごいプッシュされてた記憶があります。
Ai うちの近所のTSUTAYAには「今聞くべきピアノエモ」コーナーありましたわ(笑)
草野 ただ、当時のはいわゆるロックンロール・リバイバル期、そこまで大きな波になることもなく、00年代中期には消えた印象があります。UKだとKeaneかな?
宅 キーンも音楽的には近いですが、彼らはTravisの文脈に近いと認識してました。
草野 このあたりの、メロディラインを複層化してオシテいく感じ、序盤に話があったエルレのサウンドにおもいっきり影響与えてますよね。ウィーザーとかが彼らの根っこにありますが。
2010年代のエモ、エモっぽさ
ぴっち しかしどうして日本人はこんなにエモが好きと言われるのでしょうか?というかセカオワの話でエモが出てくるなんて思わなかったです。
宅 エモの話、割とややこしくなりますぜ?
Ai 日本人って本当にエモ好きなんですかね?僕はエモ大好きなんですが、あまりエモが日の目を見てるイメージあまりなくて。
草野 「メロディで心を洗い流す」演歌や歌謡曲がDNAにあるからだとも思います。だから踊ろうとしても、タテばかりで、ヨコノリができない。
ぴっち メロディ重視なのはわかります。でもエモ、少ないですか?エモの派生系が多いというのが実情なのかな?
宅 エモって時代ごとに全く定義や音が違いますからね!
Ai 「メロディで心を洗い流す」、すごくしっくりきます。僕が個人的に感じてるのは(希望も込みで)、四つ打ちのシーンのあとはエモがいよいよ来るのではないかと。
草野 フォークやカントリーのような合唱がくると?
Ai Mumford & Sons的な?The Lumineers的な?
ぴっち え、マムフォードってエモなんですか?
Ai いえいえ、フォークやカントリーの流れです、混同すいません!
草野 エモーショナルでしょう、十分!
Ai ちなみにマムフォードはカントリーとエモの合いの子のイメージっす!ライブとかエモいですよ!
ぴっち エモいとは思います。そうか、それでいいのか(笑)
Ai ちょっと戻りますけど、宅さんの言う通り、エモの定義って時代ごとに違うんですよね。だから日本でエモが少ないと思うのかも。ちょっとみんなに聞いてみたいんですが、邦楽で今、皆さんが2014年でもしっかり人気あるなって思うエモバンドってなんですか?
草野 エモバンドかぁ。
宅 いないっす。エモは死んでます。まあ私の視野が狭いだけですが。
ぴっち 「エモい」というニュアンスが残ってるような。
KV きのこ帝国はエモいと感じたんですが。
ntd 残響レコードの人たちはエモじゃないんですか?
草野 きのこはオルタナかな。残響はエモよりはテクニック重視だと思う。
KV うーん、そんなしっかりしたものじゃないんですが、単純にLAST ALLIANCEとか聴いた時に近いものを感じただけというか。すみません。
草野 ああ、ラスアラがちょいエモいのはわかる。
宅 あと、Summermanはエモいっす。
Ai 小さいハコを見ればおもしろいエモバンド出てきてるんですが、ちゃんとシーンで人気があるってレベルのいないかもなぁって気がして。だから少ないと感じるのかも。
どこにルーツを持つか?
ぴっち ただ、セカオワ自体がエモをはじめとした洋楽にルーツがあることははじめて聞きました。そこを完全に誤解してました。例えばさっき話した大森靖子は大きな意味でのJ-POP、つまり日本のポップスから生まれたJ-POPっ子の印象がありました。今のロキノンシーンはその傾向が強くて。
Ai 2014年は例のルーツ論争があったので、良くも悪くもルーツを意識した年でした。
ぴっち それこそ「J-POPがJ-POPを再生産する時代なのかな?」と思っていたのですが、今年最もメジャーな場所で活躍したセカオワの洋楽が、まあ僕が不勉強だっただけなのですが、実はルーツが洋楽にもあって。
草野 音楽的ルーツをルールと読み違えてる人が、結構そのまま多くいる感じがします
Ai そういうことですね。それはわかりますね。ルーツに関しては、是も非もないですからね。個人的にはアーティストのルーツを追うのが好きなので、参照が多いバンドは好きですけど。
森は生きているの2ndは東京インディへのカウンター?
宅 あとは、まったく違うものを発明みたいにくっつけちゃう人らもインディにはいたり。
ぴっち 森は生きているの2ndもそんな感じだと思いました。
宅 森は生きているの2ndで東京インディーは死ぬと思いました!
ぴっち あれ、東京インディへのカウンターですよね!
宅 完全にカウンターです!
草野 カウンターというか、抹殺しにきましたよね、あれは!
のすペン まだ2nd聞いてないですが、1stとは全く違う様子なんでしょうか?
草野 ぜんぜん違うわけじゃなくて、あのサウンドをそのまま、より凄くした。
宅 シャムキャッツも『AFTER HOUR』では千葉の郊外を題材にアルバム作ってるし、意図的に東京インディからの脱却が今年の春先からチラホラ見えてきましたね。
ぴっち つまりインディと呼ばれた人たちが、その立ち位置に安住せず、なおかつ媚びずに独自の進化を遂げたのが森は生きているの2ndだと思います。プログレと形容されていて、個人的には頷きました。
Ai プログレ!それは俄然興味が湧いた!
ぴっち インディって、それこそ良きレコードの時代の素朴さをどこかで遊びつつも、そこをベースに新しい音楽を生み出している感じがあったのですが(偏見だったらごめんなさい)、このアルバムに関してはそういう風潮とか「インディ」というカテゴライズにさえカウンターを打ったと思いました。ceroもそうだと思うのですが、ジャンルやカテゴリーを飛び越えようとしている気がします。
草野 個人的には森は生きているよりは、ROTH BART BARONのデビュー作のほうが本当に素晴らしかったと言いたい。
Ai あと今年は吉田ヨウヘイGROUPも注目されましたね。印象的でした。
宅 付け足すなら、yogee new wavesか。
のすペン あとは失敗しない生き方もでしょうか。
横ノリのグルーヴが増えてきた?
佐藤 自分はペトロールズの『side by side』が今年の空気感を決定づけたかなり重要な一枚だと思うんですがいかがでしょう?
KV ペトロールズの『side by side』ツアー、GREAT3との対バンで行きましたが良かったです。ファンクな夜でした。
佐藤 あのEPが発売されたことで、四つ打ち8ビートが主流だった流れから、シティソウルな16ビートの曲を打ち出すアーティストが増えたように感じます
ぴっち でもソウルミュージックの流れはきてますよね。ダフトパンク→AKB48→GREAT3の流れ(それは流石にないか……)
草野 AKB48がなければ、頷けます(笑)契機にはなってはいないだろうけども、ゲス極とかと同じで、ヨコノリのソウル/モータウンなヨコノリを支持する人は絶対に増えたろうなってのはある。
佐藤 ファレルの「HAPPY」やマイケルの未発表曲アルバムが発売されたのもでかいっすよね
草野 去年で言うとJustin Timberlakeとかね。
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のすペン YUKIのアルバムもソウルな感じでしたね。
KV 全体的にブラックな揺れるリズム、を意識している雰囲気がある気がします。
ぴっち プリンスはどうでした?まだチェックしてないのですが。あと岡村ちゃん!
Ai めちゃ良かったです。方向性の違う2枚を出してくるあたり、さすが皇帝。ソロ名義の方はソウルフルでしたね。個人的には必ず美人を携えるジンクス踏襲しまくりのメンバーで組んだバンド版のアルバムの方がツボでしたが。来年のフジに来てくれないかなぁ。
宅 プリンス、フェス嫌いっすもんね。来日も全然しないし。観たいなあ。
佐藤 星野源の「桜の森」、あれもマイケルとプリンスを意識してますよね。
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ゴリ 星野さんの本作ってたしかブラックミュージックが好きな自分でどれだけブラックーミュージック的な事が出来るか、みた言いなこと言ってた気がします。
草野 星野さんのすぐ近くには、和製JBがいます。
Ai ha ma ke n!!
ゴリ ハマケンだ(笑)
佐藤 あと、APOGEEの新作は5年後に評価されると思う。
草野 海外におけるブラック・ミュージック回帰は、EDMの反動かなと。日本におけるブラックミュージック回帰は、単にブラックなミュージックがこの10年出てこなかったってことの反動だとも思います。
みんなが藤井洋平に目覚めた夜
宅 藤井洋平好きな人いないかな?いないか~ 特別に黒いんだけどな。
うめもと 藤井洋平、イントロからカッケーす!!
宅 藤井洋平は最高っす。ライブ観て泣きました
のすペン 藤井洋平カッコイイ!ちゃんと聴いてみよう!
草野 《お前のアソコを 俺のものにしたい》
ぴっち (みんな藤井洋平を聴いてる……!)
宅 ceroのブラックミュージックへの傾倒も藤井洋平の影響ですもんね。
ゴリ 藤井洋平の顔で語る感凄い!
Ai すげえ……いい。
草野 (ここらへんの下世話な感じが、やっと受け付けられるようになったんだなっていまJ-POPとか邦楽リスナーの懐が深くなったことに感動してる、俺がいる……)。ムーディすぎて勝山思い出した。
Ai 右から左へいっとく?
らいむ 右から左、懐かしい(笑)
ぴっち 岡村ちゃんが頭に浮かびました。あと面影ラッキーホールも。
宅 藤井洋平の2013年に出たアルバム、マジで鬼名作っす。もはや顔が好きっす。
草野 あのアルバムのジャケ、すっごい印象深いですよね!
Ai 顔のインパクト半端ない!
宅 「顔!」って感じですよね!
(続きます)