正月企画「2014年の音楽について話してみた」完結編です。
プチ炎上したり(part1)、「なんでこの人たち2014年にエモ話してんだ?」ってなったり(part2)と、2014年を総括してるのかそうでないのかわからない座談会ですが、一応僕らなりに2014年の音楽について考えてみた、その結論、みたいなものが書かれています。「ええーそんなんかい!」「無責任すぎる!」「そんなの当たり前だよ!」と笑っていただけたら。とはいえ真剣に考えました。最後まで読んでいただければうれしいです。
多少、もやもやするかもしれないけど……。(ぴっち)
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前回まではこちら。
2014年の音楽について話してみた part1 - 音楽だいすきクラブ
2014年の音楽について話してみた part2 - 音楽だいすきクラブ
アナログレコードブームは東京だけの動きなのか?
Ai 話ぶったぎってごめんなさい。ちょっとみなさんに聞きたいんですが。ここ数年、海外でアナログブームが来ていて、今年は日本でもRECORD STORE DAYが盛り上がったりしたじゃないですか。これも2014年のひとつのトピックと思うのですが。アナログ復興の兆しについてはどう思いますか?
ぴっち 僕は東京、関東圏の現象だと思っていました。
うめもと 同じく。でも盛り上がってるのはすごく伝わってきました。
草野 うん、僕も都市圏のディープな音楽好きの間だけの話っていうことだと思う。
宅 テープのリバイバル、果てはMDのリバイバルの兆しも局地的にありますね!
ぴっち 今年テープは凄かったですね。ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーのサントラもそうだった。
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ゴリ テープだとtofubeatsの『ディスコの神様』もテープ付きでしたね。
佐藤 OGRE YOU ASSHOLEの新譜にもテープついてましたね。
宅 さすがに、MDまでいくと、ただの物珍しさになってますが。MDで新譜出したインディーバンドいくつか見ました。
Ai 実際、RECORD STORE DAYって今年少し盛り上がった感あるけど、東京以外は局地的なんですよね。有名な個人レコード屋さんがある地域が盛り上がっただけ感があります。
ぴっち 盛り上がっていることはいいと思います。僕も住んでたら行っただろうし。ただ地方民はさすがにレコード屋さん自体がほとんどなくて。
Ai というわけで今後、このアナログブームの流れは全国的に波及すると思いますか?僕は波及してほしいけど現実厳しいかなっていう実感なんですが……。
宅 波及しないでしょうね。
ゴリ でもこのブームで20代前半の子がアナログレコード買ったりしている現状もあるんだよな。
佐藤 「アナログが流行る」というよりは「アナログは死なない」ということなんじゃないでしょうか?
Ai 実際、僕の周りの音楽好きな大学生(特に女子大生が多いんだけど)はアナログプレーヤー結構買い始めてるんですよね。でもこれはやはり首都圏だからかな。
宅 あとは、アナログでしか聴けない音源が山のようにあるから、仕方なく買うパターン。
ぴっち ああ、スカートの新譜、買いたかったです。でも再生機器ない……。
宅 スカートの新譜、コードつけてほしいなあ。
ぴっち 坂本慎太郎のシングルは配信版があってレコード持ってない民、歓喜でした。
Ai でも、今ってスピーカー付きで1万弱の結構出てますからね、プレーヤーは。
ゴリ HMVこのタイミングでよくやるなと思いましたけどね。
Ai ぶっちゃけ厳しいとは思いますよ、値段設定が強気すぎる。
草野 中古メインだったはずだけども、新譜もあったりね
ゴリ 大阪だと、FLAKE RECORDSってレコード屋があってそれが一部の若者たちに支持されたりしてますけどね。
Ai FLAKEは本当に羨ましい。大阪出張のたびによってますわ。あとは広島のSTEREO RECORDS!LOSTAGEの五味さんがやってる奈良のTHROATもいい感じです。そういう地域のレコ屋みたいのが出てくるといいんですけどね。
宅 tape school!
どうしてアナログをリリースするの?
ぴっち どうしてインディの方々はアナログ限定の音源を出すのでしょうか?
宅 完全に文脈だと思います。パンクに限定するならば、それこそパンクなんかは昔からアナログで出す事がクールであるという絶対的な文脈が存在しておりますです。説明不足だな、少し時間かけたいな。
Ai パンク周りは7インチだしたりとかするのが文脈だったりしますもんね。
ぴっち やっぱり東京近郊は「レコードで出す」という文脈を共有できる下地、要はレコ屋が生きていて、それは地方にはなくて、という意味でやっぱりうらやましいです。
宅 パンクとかネオアコは完全に名盤がこぞって7インチばかりです!
草野 CDを作るのすら高すぎるし,そうやってCDにするのが既に商業くさい!っていうんで80年代にデッドケネディーズあたりがカセットとか出してた とかそういう話かな。
宅 カセットはプレスが今でもダントツで安いんですよね
ダウンロード配信って実は地方向け?
ぴっち 最近考えていたのですが、iTunesとかのダウンロード配信って完全に地方民向けだなーって。それは東京/地方という意味合いもありますし、アメリカ/他国って意味合いもあって。
草野 結果的にそうなってますよね、mp3にするのは、プレス費もクソもなく、ただソフトにぶち込んでクリックですし。そりゃBandcampがあれだけデカくなるよなーと思ったり。
Ai そうなんですよね。確実にレコード屋さんって減っていて、やはり地方から減っていくわけで。となるとダウンロードは重要ですよね。今後、実際レコ屋が地方で復興する兆しもないし。増えてほしいけど。
宅 もはやアナログってフィギュアとかと同じで、所有欲を満たすための側面もあるし。
どうやってBandcampの音源を見つける?
ぴっち で、少しBandcampの話もしたいのですが、そもそもみんなはどうやって音源見つけてるんですか?
Ai 僕はもう完全に知り合いからのレコメンド頼りですね。
草野 Twitterに音楽系のアカウントをリストに入れて、そのリストで出てきた名前やURLをクリックしページに飛び、いろいろ聴き調べる感じ。
まっつ Bandcampに関しては完全にブログづてで音源探る感じですかね。タグ検索はあまりしないかも。
草野 逆に、レコメンドとか個人ブログを参照しないな、自分は。
ぴっち 「自分で検索する」ということでしょうか?というのも、先日Pitchforkで日本のネットレーベルが特集されたように、今、ネットって日本に限らず膨大な音楽が次々にアップされるじゃないですか。プレス費用もかからないし。
草野 はい。
ぴっち だとすると、間違いなくそれを紹介する人、もしくはメディアが大事になると思うのですが、Bandcampを紹介するメディアの国内のトップがHi-Hi-Whoopeeだったけど今は休止していて。もちろん個人単位のブログが活動しているのは事実だけど、その一方でMikikiのようなタワレコのメディアがネットの情報を取り扱うようになったりして。結局、この動きも大手というか、資本力を持ったメディアに吸収されるのかなーって思っていて。
草野 Bandcampを紹介するブログ/メディアというのが若干本末転倒感あるの、オレの気のせいなのかな?
うめもと 自分で探すことに醍醐味があるってことですか?
草野 まさにそれで。どうして誰かしらの目を通して嗜好性が固まっちまったところにいって、ものを探さなくちゃいけないんだと。それならネットで音を探す意味が半分以上損なわれないかっていうのがまずある。
うめもと それを言われると「アイタタタ」ってなるんすけど、でも実際紹介された良いものは良いもので事実で。
ぴっち 別に文章全部を読む必要はないし、あくまで「こんなのあるんだ?」というものを見つける場所にはなっていません?
草野 そこねー。
ぴっち というか、メディアってそういうものでは?つまり、メディアは誰かが運営している以上、多少なりとも嗜好性は反映されていません?
まっつ 自分でいちからディグると言っても、まず誰の力も借りずにどう良いものを見つければよいのさ?って話で。その取っ掛かりとしてのブログなのでは?
草野 うん、うん。全然わかるよ。もちろん雑誌を読んでこれいいなぁー!聴くかー!って俺もなるし(笑)こうして話してると、意外とみんなネットから情報得てるんだなぁーってすごく思う。ちょい前のログでも言ってるけども、ネットの音楽系サイトを結構手当たり次第に読むのが僕のやり方っす。
ネットは世界の一部にすぎない
ぴっち 今年はネット、雑誌、テレビ、どれも大事だって思いました。
まっつ 僕も「ネットって凄えな」と思うと同時に、テレビでしか見た事のないグループがいるのも事実だよなーとか思ったりしますね。先日のJAPAN COUNTDOWNの「K-POP セカンド・ウェーブ」なんてネットからは見つけられないし。
ぴっち やっぱり今ってありとあらゆる情報が細分化されてて、例えばロキノン、アイドル、J-POP、インディ、洋楽、みたいなそれぞれの場所があって、それでネットはそれをつなげ合わせているみたいなイメージがあるんだけど。
うめもと はい。
ぴっち 実はネットはただの道具である一方で、やっぱりネットも1つの場所というか、流れみたいなものになってて。その中で一番エッジの効いた場所の一つがBandcampだったりSoundCloudに感じがするんですよね。例えば僕が集計している「ネットの音楽オタクが聴いたベストアルバム」にしてもあれはやっぱり「ネット」なんですよね。決して民意ではない。
草野 うん。
うめもと ああー。
ぴっち でも極北でもない。尖っている側面もありつつ、ポップな面もありつつ、手広くやっているようであり。でもそうではなくて、ただあの場所のあたりでウロウロしている人の平均値に過ぎなくて。
草野 あの場所っていうとtwitterってことですか?
ぴっち あの場所というのはtwitterもそうだし、ブログ、ネットメディアも全部。
草野 僕から見ると、嗜好性が似てるように思えました やっぱりメディアのPRで動いてみんな聴いてるんだなーって感じがした。
ぴっち あれが実際の、現実社会のベストアルバムというとまた違ってて。
草野 そう。違うと思う。
ぴっち 平均値ではあるけど、ある種のネットの漂流している人の空気感というか。
うめもと まさに、ネットシーンな気がしました。じゃないと、さらうんどやtofubeatは自分では知ることがなかったと思います。
宅 音楽だいすきクラブには音楽だいすきクラブのトレンドというか、嗜好が出来てきてる気もする。不特定多数の人がいるはずなのに、思ったよりガラパゴスしてない、と感じてます
結局2014年の音楽はよくわからなかった
ぴっち こうやってありとあらゆる界隈の話を、ざっくりだけどやれたんですけど。思うのは「結局、2014年って何だったんだろう?」って。正直、全然わからなくて。
草野 シーンの流れ的に?
ぴっち もう現実も、それぞれのシーンもネットも雑誌もテレビも広大すぎて手に負えない感じです。
うめもと おもしろい時代にはなってますよね。
まっつ みんなどこに目配せすれば良いのかもわからなくなってきてる気がします。
のすペン ジャンルというか、村の細分化が進みすぎて収拾がつかないってイメージです。
草野 アナログフィジカルが局所的に盛り上がってきたのと、ブラック・ミュージック回帰の匂いが少しずつして、東京のインディではフォークな感じがかなり強まった感じ。
まっつ 僕は東方神起もUVERworldも吉田ヨウヘイgroupもcanooooopyも聴くけど、結局それぞれのシーンの上澄みすら掬えなかったと感じる一年でした。
草野 欲望が止まらなすぎて、働かせるべき理性たる存在がないから、垂れ流しになったままっていうのが村の細分化が"明らかになってきた"のが実態のところだとは思うんすよね それをみんなが知覚するから「こんなん手に負えねぇよ!」ってなる感じ。
ぴっち 本当に「手に負えない!」って一年でした。ネットによってそれが知覚できるようになったのかも。
僕らは万能ではない
草野 インターネット上で盛り上がるすべての音楽シーンをアタマに打ち込む必要性がないのに、みんな追いかけてる、追いかけて、アタマを抱えてるように僕には見える。
うめもと 良い音楽がありすぎて、どれを取っても良いから時間が足りなくなるっていうのはありましたね。
まっつ シーンの俯瞰なんてものはとっくに出来なくなっていて、その感覚が段々多くの人に共有されてきてるのかな。
草野 シーンの俯瞰を"しなくちゃならない"使命感を、僕はまず捨てましたね。
ゴリ 俯瞰することなんてできないっす。
ぴっち ネットってやっぱり万能感があるんですよ。「なんでもアクセスできる!」的な。でもそれが無理だということが年々わかってきました。でもだからと言ってキュレーターが大事だとかそういうことは軽々しく言いたくないんですよ。音楽の楽しみってそれだけじゃないから。
まっつ そもそも自分の"ホーム"が良く分からない感覚 is ある。
草野 個人的なリスニング体験の話も加味されるけど、ネットを使う前からいろんなジャンルをずーっと追いかけてるからそういう聴き方に慣れてしまってるんですよ。「このジャンルの音に自分はほぼ8割型反応する」ってのがわかるとこうなる。僕の場合は邦楽ロキノンがそれだから、いきなりアフリカ音楽聴きに行って、楽しみ方を覚える。「ああこうすれば楽しめるぞ!」っていう、自分探しみたいな感じになってる。「音聴いて楽しめるかだよな……」とも思った次第。
うめもと 本当にそうですね。「楽しめるか」は今年凄く自分にとって重要なキーワードでした。
ゴリ 最終的には自分に合うかだもんな。
ぴっち 頭で考える楽しさを否定するわけではないんですけどね。
草野 一発目に聴いて楽しめなくても、時間をかけて聴くと楽しくなる音楽もあったりして、それはそれで別の楽しさがある感じ。音楽は万能かもしれないけど、聴いてる自分は万能ではないって悟ることもまた大事。
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というわけで「2014年の音楽について話してみた」はここで終わりです。ありがとうございました。本当はもう少し続いたのですが、みんなが寝始めてぐだぐだになってしまったのでカットしました。あとアイドルや海外の音楽の話もしたかったけど時間切れでした。いつかリベンジしたいです。
僕らはたまたまネットでこのブログをやっているけど、インターネットは万能ではないし、音楽を聴く僕らも万能ではない。でも欲望は止まらなくて、誰かが鳴らしてる最高の音楽を見つけたいけどそこには辿り着かない。だけど時間もお金も限られている。そんな当たり前のことを忘れさせてくれるようなフロンティア。それこそがインターネットだと思っていたのですが、どうも簡単なものではなかったみたいです。そのことがわかってきた一年でした。本当に今更ですね。何もわかってなかったんですね。
ただそれでもやっぱりネットは魅力的だし、ネットに集まる音楽も、そして人も、リスナーもおもしろいです。うまくネットと付き合いながら、今後もブログをやっていこうと思います。ちなみに僕らはSkypeでこの座談会をやったので、いまだに参加者とは直接会ったことがないし、彼らが何者なのかも知りません。それに彼らがメンバーなのかも疑問で。同士?友達?そんな感じなのかな?今考えると、かなり変ですよね。
そんなよくわからないメディアですが、今年も音楽だいすきクラブをやっていこうと思います。これでも一応特定の主義・主張を持たずに平和的にのほほん&ぐだぐだにやっているつもりです。基本送られてきた原稿はディス以外、すべて載せます。何か書いてみたい人、そういう記事を楽しんでくれる人のためにやってます。興味がある方はぜひ、何か一緒にやりましょう。今年もよろしくお願いします!(ぴっち)