私立恵比寿中学『金八』
私立恵比寿中学はつかみどころのないアイドルグループです。
PerfumeやBABYMETALのように楽曲のジャンルで定義付けできないし、LinQやNegiccoのようにある地方に根付いたローカルアイドルという括りにも入らない。先輩であるももいろクローバーZのような話題性重視のコラボがあるわけでもない。だからメディアは彼女らを取り上げにくいし、アイドルに明るくない人たちがエビ中の曲を聴くきっかけもなかなか生まれません。
しかし、そのことがエビ中の良さとも言えます。楽曲のジャンルに縛りを設けないことで、いろんなタイプの曲が入ったおもちゃ箱のようなアルバムが生まれます。今作は前作に増してその振り幅が大きいので、誰が聴いても必ず心に刺さるはず。
ところで前作のタイトルが「大人と子供の中間」という意味を持つ『中人』であったのに対し、今回は『金八』。これには3つの意味が込められています。
1つは『金八』から3年B組金八先生を容易に連想できるように、今作のテーマが「学校」であること。縛りの少ないエビ中唯一のコンセプト「永遠に中学生」に基づいたアルバムであるということです。
2つ目は「黄金の八人」の略。昨年3月のメンバー卒業・加入(エビ中でいうところの転校・転入)を経て8人になったエビ中のはじめてのアルバムだから、という理由です。
そして3つ目が「金曜八時」。現在、金曜夜8時に放送されているテレビ番組といえばミュージックステーション。アイドルグループのわかりやすい目標として「武道館」と「紅白」がありますが、その間にあると僕が思うのがMステです。昨年武道館でのコンサートを成功させ、「アイドルファンのエビ中」から「誰もが知るエビ中」を目指す彼女たちの次なる目標として定められたのがMステだったのです。
Mステに出たいことを歌った「金八DANCE MUSIC」という曲も収録されています。この曲の作詞作曲はももクロなど数々のアイドルソングでおなじみ前山田健一氏ですが、ここ1〜2年の前山田さん案件で一番好きな楽曲です。でんぱ組.inc「W.W.D」といい、ここぞというタイミングでグループに最も必要な曲を降ろしてくれる前山田さん、流石です。
他の楽曲についてもエレクトロ路線の「PLAYBACK」やソーラン節を意識した楽曲「大漁恵比寿節」など、やはりとにかく楽曲の幅が広いです。また、BiSの楽曲制作チームSCRAMBLESによる「フユコイ」、レキシこと池田貴史が共演していた番組の企画で作り上げた「U.B.U」、さらにシングル曲ですが元JUDY AND MARYのTAKUYA氏によるロックチューン「ハイタテキ!」
他にもたむらぱんやクリープハイプ尾崎世界観など著名なミュージシャンが多く参加しています。その楽曲のどれもがエビ中にしか唄えないエビ中の楽曲になっていました。
アイドルソングに馴染みがない人も、あえてこのアルバムからアイドルを聴き始めることで他のアイドルグループの楽曲の特色がわかり、シーン全体を楽しめるかも。2010年代アイドルのストレートなアルバムとして100点の評価をしたいです!
ntd(@ntd95)