映画部#2 アイドル映画としての『幕が上がる』
メンバーの玉井詩織さん本人の舞台挨拶にまんまと釣られて「幕が上がる」を観ました。
劇作家・平田オリザさんの原作小説をももいろクローバーZ主演で映画化。ももクロ演じる弱小演劇部のところに黒木華さん演じる新任教師の吉岡が赴任してきます。かつて「学生演劇の女王」と呼ばれていた吉岡先生との出会いをきっかけに演劇部は本気で全国大会を目指すようになる、という青春映画です。そしてアイドル映画でもあります。
結論から言うと『幕が上がる』はアイドル映画として100点満点の出来だと思います。アイドル映画の定義を「そのアイドルの魅力を伝えるために作られた映画」とするならばこの映画はまさにそういうふうに作られているからです。
ただし実はこの映画、「ももクロ主演で映画を撮ろう!」というところから始まった企画ではないそうです。最初に「幕が上がる」の映画化が決まって、それからももクロにオファーを出したらしいのですが、原作の知識ゼロで観たアイドルファンの僕から言わせてもらうと、ももクロのために当て書きしたストーリーとしか思えないんですよ。
例えば有安杏果さんが演じる中西さんという役。他校の強豪演劇部からやって来た転校生という設定なのですが、これはかつてEXILEのバックで踊っていた杏果がLDHからももクロに移籍してきたことのメタファーですよね。それから僕が好きな佐々木彩夏さんが演じる明美ちゃんの「親につい反抗してしまう」エピソードはももクロの楽曲「あーりんは反抗期!」の歌詞に通ずるところがあります。あと百田夏菜子さん演じるさおりが成り行きでなんとなくリーダーになったこととか。そう考えると吉岡先生は完全に元メンバーの早見あかりさんのメタファーだということが映画を観ればわかります。
つまりこの映画は、今までももクロが辿ってきた歴史を演劇部の物語というフィルターを通して振り返ることができる作品になっているのです。
また、この映画は冒頭からラストにかけて順に撮られているので話が進むにつれ登場人物も演技が上手くなっていくし、ももクロちゃん自身も演技が少しずつ上手くなっていきます。最初は「夏菜子だなぁ」と思って観ていたのにだんだんさおりにしか見えなくなります。これは映画の短い撮影期間の中でアイドルが女優に成長していく姿も観られるということです。
楽曲の使い方も非常に効果的で、曲の魅力も発信できていると思います。主題歌の「青春賦」ももちろん良い曲なのですが、ラストシーンでかかる「走れ!」なんか特に良いです。あんないい場面であんないい曲を流されたら、泣かないわけがない(笑)
結果、この映画は、平田オリザの書いた青春ストーリーの皮を被ったももクロのドキュメンタリーだったのです。この映画を観てももクロのファンになった人=通称「幕ノフ」がたくさんいると聞いています。その時点でこの映画はアイドル映画として大成功だといえます。
もちろんそれらを抜きにしても本当に良い青春映画でした。自分は大会のシーンでなんとなく中学時代の吹奏楽部を思い出してしまいました。学生時代文化部だった人はその思い出に浸れるのでぜひ。
あと余談ですが「水曜どうでしょう」の藤村ディレクターが友情出演しているのでどうバカのみなさんもぜひ(笑)
ntd(@ntd95)