椎名林檎『椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015』

以前観た『(生)林檎博’14 ―年女の逆襲―』同様、ライブ映像作品として優れていると感じたのでとりあえず思ったことを羅列しておくね。

  1. 現時点において日本で最高級のプレイヤーが集まっている
  2. ただでさえ評価された楽曲を演奏しているにも関わらず、ほぼ全曲に新たなアレンジを施している
  3. 音楽的にそこまでやっているにも関わらず、映像もかなり作り込む
  4. さらに本人もコスプレする
  5. しかもかなりエロい衣装でコスプレしてる
  6. その上ゲストもいる
  7. 振り付けはMIKIKO
  8. ただでさえ29曲も演奏する
  9. これだけやっておきながらホールツアー
  10. おまけに同じホールを借りて無観客で10曲も追加収録してる
  11. これが7020円で買える(amazonだと5000円台からある)
  12. アホか

 本当に馬鹿なんじゃないの?どう考えても釣り合ってない。余計なお世話なのはわかっているが、きちんと利益が出たのか心配になるほど豪華絢爛であると同時に細かな部分まで作り込まれたとんでもないライブ映像集である。

選曲は「百鬼夜行」の名の通りおどろおどろしい曲が中心で、序盤に「そうだ、樹海に行こう」というとんでもないコピーが演出で登場するほど初期を思わせる悪趣味な感じがするのだが、一方でどこか参加メンバーを思わせる曲もあった。近年の『三文ゴシップ』『日出処』からが割合的に多い気がするものの、東京事変の前期/後期の曲もやったり初期の曲もやったりとファンから「神セトリ」と呼ばれたことも頷ける。

またファンにとってはすでにお馴染みであるのだが、それはもうエロいコスプレをしてくれる。初期を知る人には懐かしい「本能」の時のナース姿もやるし(でも本能はやらない)、中盤ではドキッとするような脱ぎっぷりを見せてくれる。ただインタビューで「男性向けと思ったこと1回もない」と話している通り、エロいと言ってもサザンオールスターズのような露骨な健康的なエロは皆無で、例えば安野モヨコのマンガに出てくるようなフェティッシュなエロさで、それこそ女性が喜びそうな美しさなのだが、男性が見ても普通に興奮する。

ただそんな神セトリで、なおかつアホみたいに敏腕のミュージシャンと一緒にアレンジまで作り込みながら、同時にアリーナ公演でも通用するような映像も映し出し、なおかつエロい衣装で客前に出てくる。サービス精神旺盛を通り越して病的ではないのか?

そしてその姿が例えば僕の中では去年の小沢健二と重なるし、さらに言うなら往年のサザンとも重なる。自分の楽曲にある程度の自信はあっても「それだけで通用するほど甘くない」という徹底した過小評価が彼女の根底にあるのではないか。そしてそれは自信ある新曲を作り上げたにも関わらずスクリーンで歌詞を映し出し、なおかつリピートしてお客にも歌わせる小沢健二や、ドーム公演が状態化して演出家状になっている桑田佳祐とも重なるのだ。

自信の楽曲に対する過小評価と、それを補って余りあるとんでもないライブだった。通常盤のパッケージがしょぼいとかもう忘れました。必見でござんす。


ぴっち(@pitti2210