多分これは新しいタイプのバンドなのだと思う。
小林うてな、Julia Shortreed、ermhoi=Black Boboiは全員が曲を書き、トラックを作り、なおかつ歌うソロアーティストのグループだ。そういう意味では昨年発表されたJulien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Ducusのバンド=boygeniusに似ている。ただ、エレクトロニカ、アンビエント、アシッドフォークなどのジャンルから「バンドとは?」と思われそうだが、それでもこれはきっとバンドだ。音の取捨選択がシビアで、発想がソロの時よりもランダムだが、何より共同で音楽を作る喜びに満ちている。
ところで小林うてなはD.A.N.や蓮沼執太フィル参加時のスティールパン奏者としての側面が強く知られているが、ソロで活動する時はそれを大きく取り上げたりしない。というか使っていない。Balck Boboiの今作では「I'm just into」でスティールパンが使われているが、すべての楽曲で用いるといったルールはない。同様にJulia Shortreedのギターが必ず使われるわけでもない。大まかなクレジットしか確認できていないので詳細はわからないが、おそらく曲を作る上で全員がプロデューサーとして関わること以外にルールはなかったはず。
結果、自身のアイデンティティを強く主張することなく3人それぞれの要素が落ち着いた。逆説的ではあるのだが、3人がそれぞれ自らの持ち味を強く投影しようとはしなかった結果、よりそれぞれの個性がうまく共存できたのだ。実際にソロの楽曲を聴いた上で本作を聴くとそれぞれの持ち味が驚くほどうまく同居している。
妥協点を探ったというわけではなく、曲ごとにエッジが立ち、それでいてソロとは違う場所に到達する。コラボとはまた違った形の、全員がプロデューサーとしてのバンド、これが2019年の新たな水準になると思う。
ぴっち(@pitti2210)