ネットの音楽オタクが選んだ2025年のベストアルバム 50→1

2013年から始めた「ネットの音楽オタクが選んだベストアルバム」は今回で13年目を迎えました。このランキングはあくまで僕の呼びかけとXとBlueskyそれぞれのハッシュタグ「#2025年ベストアルバム」に寄せられたものを中心に集計しています。観測対象が変われば当然順位も動きます。たまたまこの結果になったくらいに思ってもらえるとありがたいです。あくまで2025年の音楽のほんの一部の傾向を計測したものなので、順位はあまり気にせず、多くの人が楽しんだ作品を見つけるために活用していただけるとうれしいです。

また今回から100位までを記事とし、かつレビューは50位以内のみにしました。制作側の都合もありますが、「今までやりすぎていたのでは?」という思いもありそうしました。詳細版では150位→101位の順位もつけるのでそちらでお許しいただけたらと思います。

末尾にはプレイリストも付けました。今回は目次もあるので順位だけ見ることも容易になったと思います。上位50枚の一部には有志によるレビューもついています。ゆっくりしていってね!(ぴっち)

 

 

このランキングについて

  • ネットの音楽オタクが選んだベストアルバムは特定の誰かが選んで作ったものではありません。
  • Twitterハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しています。
  • 440人分のデータを集計しました。
  • 同点の場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • 順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 100位以内はすべて6人以上に挙げられたものです。
  • レビューは随時追加しています。興味がある方はX(Twitter)の@pitti2210 、もしくはBlueskyの@pitti2210.bsky.socialにリプを下さい。

 

50-41

50. a flood of circle - 夜空に架かる虹

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結成20周年を目前に控えたタイミングの、現体制で7枚目のフルアルバム。他のバンドであれば円熟や安定が売りの音源を出せるのかもしれないが、a flood of circle: 通称フラッドのフロントマン・佐々木亮介は、これでいいのか?と自問しながら、もがいて、変化しながら進み続けることを常に選んできた。本作のほとんどの楽曲ではこれまでに無かったアプローチとして、メンバーが個別に録った音源を佐々木が編集して構築する方式が採られ、結果的にフラッドの新境地を拓くことに成功した。ジャンルの枠を超えた多彩なビートが繰り出されつつも、ロックバンドとして一本の筋が通った風通しの良い作品である。ラップやR&Bなどメジャーシーンのトレンドの変化の中でロックンロールを相対化しつつも、ロックンロールを選び続けてきた佐々木とフラッドが、2020年代の真ん中に繰り出す一手として鮮やかに冴えている。

佐々木はラジオでフラッドを「自慢のバンド」と紹介してきた。1人の作業で制作した期間が長かったかもしれないが、自分が組み上げて形にした楽曲にメンバーがノってきてくれることを信じられる関係だからこそ、また新しい朝の方へ力強く踏み出せているのだと思う。

それでは5月6日に武道館で会いましょう。よろしくどうぞ。

カラカル@Apteryx_Iwk

 

49. サニーデイ・サービス - サニービート

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テクスチャーの時代だなんて謳われるようになって久しい。今作は12の躍動するロックンロール・ミュージックの連なりによって構成されている。言葉も忘れて息を呑むような光景を見るために、彼らは技術や歴史から遠いところへ至ろうとした(100曲近い没曲があるのだとか)。曽我部はロックンロールについて触れる時、「空っぽ」という言葉を多用する。ここで頭でっかちになって余計なことを言いたくなるが、そんな蛇足もこのアルバムには必要ない。心躍る音楽があって、それを聴く私たちが新鮮な風を感じる。今んとこはまあ、それだけなのだろう。

ここ10年ほどの『DANCE TO YOU』『Popcorn Ballads』『ヘブン』『いいね!』などの混迷を経て辿り着いた、泣きたくなるほど澄み渡ったロックンロール。あなたの街にもサニーデイ・サービスはライブへ来るだろうから、いつか足を運んでみてほしい。レオス・カラックスが再評価され、曽我部恵一は幾度目の黄金期を迎えている。そんなすばらしい時代を私たちは生きている。このレコードに針を落として踊ってみよう、それでわかることがきっとあるはず!

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

良い日差しを浴びて、良いメシを食う。それだけでも十分健康って言いたい。贅沢すぎる理想は描かずに、無理なくできる範囲で。心を揺らす生活の糧に、たとえば本なら旅行のガイドブック、動画ならVlog。音楽ならこのサニーデイ ・サービスのサニービートがお供になるかもね。日常で再現可能、お手頃なフルコースを堪能できる小料理屋。入り口は、自分と外を繋げるどこでもドア。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

48. Barry Can't Swim - Loner

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47. Creepy Nuts - LEGION

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2人がソロアルバムを出し、グループを組んだあたりまでの頃、たしかに勢いは感じた。某番組で見ていたフリースタイルは圧倒された。ロックフェスなどでも好評そうで、曲にも興味はあり聴いていた。しかし、KICK THE CAN CREWRIP SLYMEらが切り開いてきたような、いやそれ以上に世界の大衆へと広く刺さるまでの境地に2人が辿り着くとは誰が思っただろうか。

日本語ラップ好きとしてもロック・ポップス好きとしてもこんなに魅入られるとは思えなくて、巷の評判と共にじわじわと侵食していき、気がつくと急接近し懐に立っている。隙だらけなアタマで満を持してこの作品を聴いたところ、まんまと思い知らされた。SOUL'd OUTや降神といった変態的で異質な才能たちの個性も随所に飲み込みながら、新鮮に響くビートを積極的に取り入れても尚、カラオケで持て囃されるポップスやアニソン枠にまで届き轟かせるモンスターソングをサラっとこぼす。そんな大いなる説得力が滲む作品に。

集大成が凝縮された結晶のアルバムに思えるけど、あくまでこれもまた道中であり、日常的に作品を落としていくルーティーンのまだまだひとかけら。いち側面でしかないなとも予感させる。恐ろしや。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

同世代と集まるとCreepy Nutsはみんな聴いて育ってきていることを痛感する。ドンキホーテにもヴィレッジヴァンガードにも居場所がなかった、間に合わなかった私たちにとって等身大のカリスマ。日本語ラップに対する大きな愛と膨大な知識はもはや語るまでもないけれど、それ以外の知見も果てしない彼らの引き出しにはどこかシンパシーを覚えるものが多い。「doppelgänger」のビートはロシアンハードベースというより、バーバパパなどインターネット音楽で耳馴染みのあるものをポップシーンがやっているという点で熱狂した人は少なくないでしょう。

カルト的な人気を持っていたラジオを降板してまで、私性を詰め込んだ楽曲たち。私は梅田サイファー名義でリリースされた「エピソード」という曲が非常に好きなのだが、それと同じように「通常回」が本当に大好き。昨年のR-指定は数え切れないほどの客演をこなしていたけれど、それによってCreepy Nutsとしての美学が浮かび上がったように思いました。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

46. Wet Leg - moisturizer

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45. Perfume - ネビュラロマンス 後篇

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思えば遠くに来たもんだ。僕が最初にPerfumeを知ったのは「ポリリズム」だったので古参とはいえないけど、pizzicato fiveを思わせる初期の疑似フレンチポップから、ブレイクした『GAME』期あたりのデジタルロック、90sテクノを経由した上での現在のレトロフューチャー、80sディスコ路線と結構な長い付き合いだ。今作はPerfume中田ヤスタカの長い旅路の一旦の帰結として切なくさせたいのかもしれないが、よくよく考えてみたらPerfumeは昔から切なかった。本人たちのキャラクターは明るいのに、SFのコンセプトに忠実がゆえに曲はなんかもの悲しかった。

だけど本人たちはパワフルで、その力強さは次第に中田ヤスタカにまで影響を及ぼす。「Dream Fighter」「レーザービーム」「FLASH」に至っては切なさからは程遠い。でもそれこそがPerfumeだと思うのね。原点回帰してSF色を強めて活動休止と絡めても、正直そんなに悲しくない。あれだけやってるのだから休みは当然。戻ってくることがわかりすぎていて、そう思って聴くと「再起動世界」は力強すぎて笑えてくるし、でも「巡ループ」はやっぱり少し切ない。思えば遠くに来たもんだ。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

44. Horsegirl - Phonetics On and On

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43. Wolf Alice - The Clearing

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42. NOT WONK - Bout Foreverness

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NOT WONKの5作目『Bout Foreverness』は、3ピース体制を離れベース不在で制作された転換点を象徴する傑作だ。パンクを出自とする彼らだが、本作にはストレートなパンクナンバーは存在しない。ボサノヴァやスロウコアなど多方向的な試みを取り込んだ7曲が深い内省へと誘う。

中でも6曲目「Some of You」は、個人的な体験と結びついた忘れ難い一曲となった。1月下旬、息子の付き添い入院で滞在していた小児病棟。体が弱く、この一年で3度目の入院。日常が崩れていく不穏な予感が重たく揺れていた。21時消灯の病室、暗闇の中で初めてこの曲を再生した。美しいギターの和音から始まり、変調をきっかけに突然のブレイクへと沈み、ノイズに呑まれ、テンポはぐにゃりと歪む。世界が一瞬にして別の位相へとずれ、閉じ込められた時間の中へ落ちていく。現実では「続いてほしくない時間」が延びていくのに、音の中では「永遠に続いてほしい」と思う——そんな矛盾に満ちた、不思議な時間だった。あの夜の暗闇と音の温度は、今もはっきりと残っている。

夜、灯りを消した部屋で。深夜の高速道路で。静けさと孤独がふと顔を出す瞬間にこそ、『Bout Foreverness』は深く沁みる。ぜひ、暗闇の中で不思議な時間に身を委ねてほしい。

MAZDA@suuuuuuupercar

 

クリスマスに行われたthe hatchとNOT WONKのライブへ行ったのだけど、「About Foreverness」を奏でる彼らはまるで光そのものみたいだった。書きながら気がついたけど、その瞬間の彼らはFrank Oceanが『Blonde』にて最後投げかける《How far is a light year?》という問いへ、姿ひとつでバッチリ答えてしまっていた。この2枚を聴くときの気分って案外近いかもしれない。永遠性について。ずっとデタラメ言ってるわけじゃないんだよ。

ele-kingのレビューにて彼らを評す時、「パンクを”優しさ”や”真面目さ”と捉え」という表現がされていて、全くもってその通りだと思う。

Sad but okay、巨大で乾いたロックンロールにも悲しみはベッタリ張り付いてたっていいんだと彼らが教えてくれた。最後に収録されている曲、「Asshole」の和訳を加藤修平がnoteに載せているのだけど、本当にすばらしいのでぜひチェックしてください。ずっと頼れるお兄ちゃんみたいな存在だ。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

苫小牧から、空間を超越する音楽が発信されている。座標のみならず、タイムマシーンに乗って様々なルートや速度で過去と未来をいったりきたり冒険体験するみたいなアルバムだ。音の響きの随所に無数の閃きや緻密なこだわりを汲み取れる。かといって、壮大さに向き合うというよりは軽装でサラッと気軽に立ち寄れる身近さも存分にある。バンド初?の日本語詞も飛び出したりもするけど、短いフレーズが数回くらいってバランスなのも印象的ですね。聴き心地抜群かつ一筋縄ではいかない不思議な世界を遊泳できる、真にオルタナティブな表現を更新した名作でした。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

41. sombr - I Barely Know Her

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40-31

40. TOMOO - DEAR MYSTERIES

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1日の半分って、夜なんだな。

そう思うほど、陽の光を感じる前半と、宵闇に向かっていくような後半とでコントラストがじんわり変わっていく。時間の経過を感じる並び。朝から軽やかに出かけること(お昼ごはんは餃子)、夕方の風、川辺での花火、眠りにつく前の静けさ、夢に出てくる旧友、眠れない真夜中、そういったそこかしこを見つめる視線の、なんとフラットなことか。どこかに偏ることなく、隙間にたゆたう音楽。日々に馴染むくすみカラーみたいな音楽をつくる印象だったけれど、その土台には確かな芯があって、それが少しずつ輪郭を帯びてくる感覚があった。

とりわけ「Lip Noise」から「高台」への展開に心を奪われてしまった。静けさが鳴っている夜と、希望がにじむ朝焼けの移ろい。夜に沈んでいく残照のようなピアノが、次の瞬間には朝の光がぱらぱらと落ちてくる景色に変わる。

世界は美しいと、素直に思わせてくれる余白だった。

はやしこ(@rinco_hys

 

39. betcover!! - 勇気

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いつかの映画で観たような、うらびれたキャバレーや場末のバーでくたびれながら度数の高いお酒を飲んでいる気分になる。哀愁に含まれるどこか滑稽な感じ。ひたすらにムーディーな7曲。カリスマ視されるbetcover!!像を解体する試みも少なからずあったのではないかと邪推してしまうが、その誠実さと、打破するために掴んだ手立てがこういったムードの召集であったことに改めて信頼を抱いてしまいました。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

38. Ninajirachi - I Love My Computer

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年間ベストを決めるなんていう変態は少数派でしょう。すみません、変態は褒め言葉です。そんなに怒らないでください。僕もその変態の内のひとりなんですが、なぜそんなにたくさんの音楽を聴くかというと「これは良い!自分の感性に合った音楽だ!」というものに巡り合うため、なんですね。僕ぁそうなんです。

でよ、このアルバムに出逢ったわけです。あぁ、なんか懐かしいなぁ、っていう感覚でした。最近あまり出会っていなかった気がする。自分の感性に合う音楽。初めてPerfumeの『GAME』を聴いた時に似た感覚。いろんな音楽を聴くのはこんなアルバムに出会うため。「ぼくの ねがいごとは かなった みたいだ!」さすが、ジラーチを冠するだけのことはある。

ジョリボッサ(@nan4y.bsky.social

 

37. Laura day romance - 合歓る - bridges

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前編『walls』から舞台はより鮮明な賑わいを魅せる。遠ざかるほど恋しくなる情景が浮かんでは消え、儚くも力強くもある煌めきが瞬いて、ドラマチックに彩る。心の望郷のメロディに導かれた先は現在地点。酸いも甘いも噛みわけて、筆圧の濃い手紙のような、想いを込めた絵文字で彩られた電子メールのような、眠れぬ夜のLINEのスタ爆メッセージのような……最近は何?今っぽくしすぎるとよくわからくなってきましたが、脳内から外へとしっかりとした歩みに弾みをつけるBGM。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

前後編に渡ってアルバム2枚をリリース(インターバル10ヶ月!)。"バズ"やインスタントなものばかりが求められる昨今において、前後編のアルバムを出すという行為は時代に逆行している。楽曲の多さによるクオリティの低下、間延びといった不安もつきまとう。ただ圧倒的なソングライティング、歌の強度、演奏の精度を前にその心配は杞憂に終わる。特に後編にあたる本作『bridges』が凄まじい。

白眉は7曲目の「恋人へ」。アルバム2枚を通して描いてきた登場人物ふたりの物語、感情が、ここで一つのピークを迎える。それを顕著に表すのは、《海岸線に手を振れ 傾く日 港の灯 祝祭日 戻らない》というフレーズが繰り返されるアウトロ部分。どうしようもなく胸を掻きむしられるような感情の爆発や衝動を、徐々に変化する演奏とともに表し切った。

全編に"静"のムードが漂うからこそ、この"動"がより際立ち、ドラマティックに聴こえてくる。乱暴な物言いだが、他の楽曲はこの「恋人へ」のための前振りではないかとすら思えてくる。いわゆる良質なインディー音楽の枠に収まらない国民的バンドになり得るチケットを、このアルバム二枚で彼らは手にした。

ひげ(@HIGE1989

 

36. Deafheaven - Lonely People With Power

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35. ピーナッツくん - Tele倶楽部Ⅱ

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今となっては単なるアバター持ち配信者としてのVtuberは多いが、古参ながらあまりブレずに「生きるアニメ」的なキャラクター性を維持しているピーナッツくん。キャラ作家として魔界ノりりむパートも完璧に綴り上げた「Stop Motion」のポップさが痛快すぎるし、轟はじめのキレキレかつふわふわな魅力が相性抜群の「Clione」といった同業者のコラボ以外にも、縁を結んできた多種多様なゲストたちが手を添える。マスコット的に愛され、尖った精神は残したまま突き進んだ結果が生んだ、異様な美しさのラップアルバムだ。漢やKamuiのようなハードコアな魅力があるMCとも絶妙なコンビネーションだし、何よりみんなが楽しそうにバトンを繋いでくこの物語のリレーが、コンパク
トなアニメ作品の親しみやすさをもつ。

このアルバムを引っ提げた渾身のバーチャルライブ『PQ』はバーチャルで活動する者の可能性を拡張した決定打のひとつであり、アニメ映画と生配信の音楽ライブを両立した、VTuberならではの表現をもつエンタメが実現したものであった。アドリブありのやりとりも含めて新体験で、この作品を観たことによってよりアルバムの没入感が深まりました。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

疲労困憊な時、わたしはCANDY TUNEの「キス・ミー・パティシエ」と今作に収録された「Stop Motion」しか聴けなくなります。かつて小沢健二の歌った《左へカーブを曲がると 光る海が見えてくる 僕は思う!この瞬間は続くと! いつまでも》と全くおんなじ気持ちになっちゃうね。

Vtuberとヒップホップを繋ぐ架け橋として多くを担い、実際それが成功している。その役割に立つにあたって「キャラクター」について語らざるを得なかった点もこのアルバムをスペシャルにしている要因だろう。PSGの「愛してます」を引用しながら、取り繕わない声で湿度とリアリティーの高い描写を続ける「免許」は今作のハイライトだ。そういえば彼が何らかのインタビューでかつて小袋成彬の「Butter」をベストトラックに挙げていたことを思い出す。重心の低いビタースウィートな質感に惹かれながら、ドリーミーでチャイルディッシュな世界観を描き続ける。そんな風に引き裂かれながらも(フリースタイル参加や今年の刀ピーにも顕著だ)独自の路線を突き進む、ピーナッツくんの美学にあてられ続ける一年でした。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

34. 小袋成彬 - Zatto

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2000年前後に生まれた私たちの世代にとって、小袋成彬は特別な存在だ。『分離派の夏』の自意識や美への追求、オルタナティブR&Bを経由した優れたJ-POPの再構築は何よりJust For Meに感じた。『Piercing』の持つ魔法的な魅力はまだ言葉にできません。好き嫌いなどとは違う次元で、人生で1番執着と関心を持った曲は「Three Days Girl」だったし、「Gaia」は今でも若い才能たちの中でとびきりのアンセム。

そんな彼の4枚目は腕利きのミュージシャンたちと作り上げたタイムレスな魅力に満ちている。先日のブルーノート公演にて、いつかコラボレーションしたいアーティストとしてJeff ParkerやCarole Kingなどを挙げていたが、彼が今作を出して一年、リスナーとして私の耳が教育されたのか自然と愛聴していた名前ばかりだった。

年末のポストにて、彼自身2025年にいちばん聴いたのは『Zatto』だったと言っていて、そういうところで私は彼を敬愛しているなと思った。若いカリスマのお兄ちゃんとしての彼は影を潜めたけれど、音楽が大好きな、この時代に生きるビジョナリーとしての彼は今も健在だ。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

33. Black Country, New Road - Forever, Howlong

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32. The Otals - All Imperfect Summerland

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路地を抜けたら海が見えて突っ走るとか、ファミレスで放課後に友だちとドリンクバーで粘るとか、真夜中に友だちを公園に呼び出すとか、改札で待ち合わせるとか、そんな10代の思い出は誰にでもあると思うけど、考えたら俺ないな?田舎育ちなのでまったくなかった。だけどこのアルバムを聴いていると「そんな馬鹿をやったな」という気持ちを捏造してしまう。

The Otals、北海道の小樽市(実際は近郊らしい)出身の従兄妹2人はこういう10代を送ったのだろうか?彼らとは年が離れているし同じ北海道でも住んだ場所が違うから断言はできないけど、たぶん送っていないんじゃないかな?どこかで見たようなティーンネイジャーの普通をこうやって形にする。キラキラを還元濃縮してシューゲイザー・ポップに青春を注ぎ込む。Teenage FanclubスーパーカーCHVRCHESPerfumeに影響を受けた彼らが、東京で青春とロマンを注ぎ込んだ全17曲の絵巻物を作る。やっぱりこれはパンク、つまりは反抗だと俺は思うよ。2025年に最も心動かされたロックアルバムでした。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

ありもしない青春のフラッシュバックか。いや、それにしてはエネルギーが効きすぎている。キラキラと漲るギターノイズは、産地直送でパッケージされてチャイムを連打する。入道雲は爆発し、濃厚な青と目が眩む太陽光のハッピーセット。着色料、香料を感じなくはないが必要な調味料だろう。ポカーンと大口を開けて全身で享受したい心地よさ。

こんな小樽は知らないよな〜とここ数年で何度か行った小樽を思い返してみると、見慣れぬ街並みのワクワクや、炎天下の灼熱地獄のあの日、静かな商店街の小さなアニメショップ、大勢の外国人観光客で賑わう混沌さといったあらゆる思い出がペタペタ引っついてきたのであった。札幌にいる自分からしても、小樽や千歳へは気軽に行くことは無い。何度も小樽に連れてってくれた友人に感謝しながら、Otalsの描く足跡をなぞり冒険するシミュレーションゲーム。この音日記は8月31日の先でもバグらずに鳴り響く。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

31. 明日の叙景 - Think of You

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夏をコンセプトにした前作『アイランド』はブラックメタルをルーツに持つバンドとしては異例なほどの明るさとポジティブさを内包した爽やかな作品で、驚きをもって迎えられるとともに名盤としての地位を確立しました。

その後、Borisとの海外ツアーや様々なバンドとの共演を経ての今作は、さらに一段踏み込んだ痛快なアルバム。DeafheavenやCoaltar of the Deepersなどを思わせるシューゲイザー的な影響はそのままに、さらに雑多な音楽性を注入。それは例えばヴィジュアル系であったり、ダンスミュージックであったり、アイドルソングであったりと、多様でありつつどこか日本的。

中でも特筆したいのは「キメラ」の方向性をさらに推し進めたような「ステラ」や「マジックアワー」でしょう。ダンサブルでエモーショナルでありつつもメタル由来の旨味をしっかり味わうことのできる名曲で、クラップの導入やタンバリンの音色からも伝わるように、彼らの現在のモード、より開かれたスタイルを存分に感じ取れます。味わい尽くしたい一枚。

tk_saxo(@tksaxo.bsky.social

 

30-21

30. Oneohtrix Point Never - Tranquilizer

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29. Wednesday - Bleeds

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ドリームポップというには生々しすぎる、グランジオルタナシューゲイザーサウンドにカントリーやサザンロックを掛け合わせたバンドの4作目。ヘヴィなバンドサウンドに頼らずともアコースティックな歌の力で持っていかれる曲もあって、なかなかメリハリが効いている。

後半になると、轟音&絶叫で駆け抜ける「Wasp」やアンビエントな静けさの「Carolina Murder Suicide」などさらなる音の起伏が生まれ嵐のように過ぎ去る37分のロック・ショー。愛せるトピックをかき集めてながらも、傷つきながらも生きる。そんなただの現実が描かれているようだ。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

28. Deftones - Private Music

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27. Tyler, The Creator - DON'T TAP THE GLASS

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ダンスミュージックってウーファーで暴力みたいに低音出して酩酊するだけじゃないんっスよね😭という気持ちになれるサイッコーーーなアルバム。これを聴いてからスティーヴィー・ワンダーとか聴くとめっちゃ踊れる。

8曲目の「Dot’t You Worry Baby」が大好きで、胸いっぱいになりながらステップを踏んでしまう。泣きダンス。無理に言葉にせず脈打つ感情のまま表現できているからめっちゃ本当のことをしているなーって気持ちになります。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

26. RADWIMPS - あにゅー

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ぶっちゃけた話、RADWIMPSのアルバムを丸々聴いたのは久しぶりだ。たぶん、『絶体絶命』以来。嫌いになったわけではない。聴くキッカケがなかっただけだ。そんなキッカケを作ってくれたのが「MOUNTAIN VANILLA」だった。ローファイなインディーロックとエモは青春時代のノスタルジーを感じさせ、The Strokes並にエコーがかかったボーカルで歌う《アジカンエルレバンプを爆音で流してさ》が異様に胸に刺さった。僕の青春もそうだった。勉強中はラジオからアジカンが流れ、通学時はエルレでテンションを上げ、夜はバンプを聴きながら一日を過ごした。野田洋次郎もそうだったのだ!当時から今も人気が衰えないアーティストと同じ音楽通過点があると気付き親近感が湧いた。

「DASAI DAZAI」や「ピリオド。」は「揶揄」のようなRADWIMPS特有のユーモアがある歌詞だし、「ワールドエンドガールフレンド」は「ふたりごと」級のラブソングだし、「成れの果てで鳴れ」はトレンドを取り入れたドラムンベースだし、変化しているものの核となるところは変わらないRADWIMPSだった。青春の片隅にRADWIMPSがいた当時の僕との距離を縮めてくれた、青く壮大でノスタルジーが詰まったアルバム。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

RADWIMPSが朝ドラ主題歌をやる時代なのだと率直に思った。「賜物」を朝ドラサイズで聴いた時、とてもRADWIMPSしていた。デビュー当時の雰囲気を世の中が許容していることが、なにか自分のことも肯定してくれているようでうれしかった。『あにゅー』には新しいものを届けたいという意味を込めていると野田洋次郎は話しているが、新海誠との時代を超えてまたデビュー当時の衝動を今風にアップデートしている、そんな印象を受けた。

このアルバムを聴いて2005年頃を思い出した。アジカンエルレバンプを爆音で流していた時、それももう20年前になってしまうのかとすこしエモくなる。そしてRADWIMPSに出会ったのもちょうどその時だった。当時からちょっと気恥ずかしくなるくらいの歌詞とバンドサウンドが印象的だったが、そのあたりは今も変わらない。むしろ説得力というか重みが増した気がする。「賜物」は多幸感があり、「MOUNTAIN VANILLA」はどこかエモく、個人的には「大団円 feat.ZORN」がまさにロックアンセムで好きだ。20年ロックキッズをしていてよかったと思えるアルバムだった。

mokko(@mokko

 

景色の全てを祝祭のファンファーレに変える力が漲っている。セカイ系的なスケールの表現は身近な記号として溢れ、猥雑な混沌と日常が溶け合っている昨今。そんな中で、純度の高いポップなミクスチャーサウンドにRAD特有の歌詞のクセが乗っかれば、実家の安心感と世界の開放感を点と線で繋いだ超デカい抱擁である。

20年前の名盤、『RADWIMPS 3』でハマってから遠いところまできた。久々にRADの新作と向き合ってみて、何周も回ってたどり着いたようなこの初々しさに「ああ、今はここにいるのか」ってしみじみと噛み締める。この流麗でポップな洗脳サウンドを自浄作用に変換すると、ちょっと気分が晴れる。それが音楽の有効利用の方法のひとつだと錯覚。スタジアムロック・マジック。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

RADWIMPSについては私的なことしか書けません。中学生の時に熱心に追っていたWebメディアがRADの歌詞は恋愛に酔っ払った状態で凄まじいみたいな取り上げ方をしていて、そこから興味を持ちました。高校時代に出会った今いちばんの親友は学校祭の打ち上げで「いいんですか?」を歌っていて、それをきっかけに仲良くなった。高2が観るには「天気の子」は爆薬で、以来5年近くセカイ系なるものに囚われました。

ただ近作は以前ほど熱心に聴けなくなっていたのも事実。どちらかといえば不安な思いで聴いた今作、結果として人生にとってかけがえのない一枚になった。野田洋次郎名義で電子音楽やラップ表現に挑めたのだろうか、回帰したバンドサウンドを、勇気を持ってNo Busesやミツメのような瞬間さえ含んでいると言い切ってみたい。現行のロックシーンを追ってる人も心踊るのではないでしょうか。

相変わらず歌詞は彼にしか書けないすばらしい(時にたじろいでしまうような)筆致なのだが、「筆舌」には嗚咽を漏らすほど泣いてしまった。私はこれを聴いて自分自身の青春にけじめをつけようと決意できました。きっと生涯大切にする一枚。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

25. Alex G - Headlights

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24. Mei Semones - Animaru

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私は札幌に住んでいるのだけれど、コーヒーが安くて、タバコが吸えて、なおかつアクセスがいいことから通い詰めている喫茶店がある。店名はずばり「Bossa」。名の通り、店内にはいつも素敵なボサノヴァとジャズが流れていて、そこに入り浸るうちに影響を受け、聴くものに迷えば、ボサノヴァばかりを選ぶようになった。——そんなふうに私がハマったのは局地的で極めて私的なエピソードなのに、どうやらボサノヴァはじわじわと世界的な流行をみせているらしい。このランキングに入っているNOT WONKも「Embrace me」というすばらしい曲を収録していた。

ブームの中心に彼女は欠かせないだろう。一度ライブを観たことがあるのだけど、ブラジル音楽のサウダージな感じと、Oasisみたいなアンセミックなギターのストロークどちらもを一曲に詰め込んで、大小どちらも表せる凄まじさを体感した。また彼女の書く日本語詞は、母語じゃないからこそ私たちが無意識に堰き止めていた本当のことへ辿り着いてしまうような、どこか千葉雄喜のリリックに驚嘆するのと同じワンダーを感じる。

余談だが私は、これからの数年のムードとしてサウダージは非常に重要だと感じている。数年後再訪した読者たちにこの自論は果たして見当違いだったのか、判定してもらいたい。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

23. mei ehara - All About McGuffin

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ゆらゆらと飽きさせない波音。壁づたいに感じる誰かの些細な生活音と仲良くなってきたりして、それが立体的に膨れ上がると、こうなるのかも。どこかの他愛のない会話から、アイデアを養ったり。得体の知れない恐怖と葛藤した挙句、振り出しに戻るループに閉じ込められるよりは何かしらの糸口を求めて探すだろう。アンビエントな響きの物悲しさの中に、確かな感情を覚えたり。癒しのパートナーだけではない、ずっと大切に常備しておきたい胃に優しい回復薬。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

22. Big Thief - Double Infinity

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6枚目のオリジナルアルバム。ベースのマックス・オレアルチックが脱退し3人体制になった。Big Thiefにとって一つの時代を終え、新たなチャプターに入ったことを示す作品だ。2024年冬にニューヨークのPower Stationスタジオで3週間にわたって、仲間と共に全員がアレンジを即興で作り録音された。

Adrianne Lenkerのソロが彼女の歌を中心とした活動だとすれば(にしてはレコーディング至上的だとは思うが)、Big Thiefの作品はバンドとして作り上げていく意味合いが強い。即興から発展したと思われる部分が多く、歌だけどダンスミュージック的な反復が多い。「Los Angeles」に至っては笑い声が足される趣向が凝らされ、古くはビートルズ、近年だとヒップホップもあるような編集を積み重ねた作りになっている。レコーディングならではの密度の高さとシンプルな演奏と歌で音を届けるライブ感、その相反する要素が絶妙なバランスで同居したアルバムで、良い意味で狂ってると思う。最高。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

21. FKA twigs - EUSEXUA

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20-11

20. Oklou - choke enough

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アンビエントからクラブミュージックの文脈にアクセスしながら、ポップとエクスペリメンタルのちょうどよいバランス感が、まさに"今"の音楽シーンの最先端!ビートやシンセの音は、繊細に感情の輪郭をなぞりながら、浮遊感と透明感、静けさと緊張感を一音一音で表現。オープンニングの「endless」からフィナーレまでドラマチックな展開。アコースティックの温もりとエレクトロの精密さが際立つ愛のうた「blade bird」は名曲!「壊れながらも美しい心でいてね」って願いが詰まった愛おしくも儚い傑作。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

19. GRAPEVINE - あのみちから遠くはなれて

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タイトルの"あのみち"が指すのはサードアルバム『Here』ではないかと直感している。2000年にリリースされた『Here』にふれたのは、中学生のころ。それからバインの音楽を聴き続け、田中和将の歌詞やインタビューを血肉にする如く読み込んだ。捻くれ、媚びずに、斜に構えた、こんなおとなのなりかたもあるのかと、大いに影響を受けた。また、孤独であるからこそ、寄り添える他者をみつけることができるのだとも。

『新しい果実』以降、音楽性が変わったという世間の評価を、わたしは鵜呑みにすべきだろうか?バインのリスナーである以上、思考停止することなく世の中を眺めたい。「豚の皿」が「ドスとF」に、「南行き」「B.D.S.」が「追憶のビュイック」に繋がるように、孤と同時に人を愛し、時にユーモラスで時に痛烈に尖りまくるその田中の歌詞こそが、GRAPEVINEの音楽に筋を通し、確固たる芯を成していると思う。わたしは、彼らの音楽性が変わったとは思わない。GRAPEVINEはロックバンドであることを軸に、地平の限り、水平の限り、拡大し続ける途中にいるのだと、信じてやまない。

やや(@mewmewl7.bsky.social

 

18. kanekoayano - 石の糸

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カネコアヤノからkanekoayanoへ。自分の名前をより記号化して仕掛けるのはロックバンドの一員として音の内側へと没入することだった。轟音、ノイズ、時にサイケ、時にグランジ。多様なサウンドはシンガーソングライターらしいチャームを手放して、自分の内的世界を晒け出すために必要なアプローチだった。

アテンションを引いたり、ゲームをハックしたり、外面と効率の良さで勝負したがる現代的なノリに逆らうように、『石の糸』は心の奥へと静かに、しかし激しく伸びてゆく。思えばカネコアヤノはいつだってライブで吠え叫び、その想いを丸ごとぶつけようとしていた。自分自身を容易に消費させないために、私たちが私たちのままで在れるように。本当のことだけを編み込んだ、ほつれ得ぬ魂の形。

月の人(@ShapeMoon

 

17. Little Simz - Lotus

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再生した途端、積乱雲の向こうにアルバムジャケットのような黒いオーロラがなびく景色が過ぎる。そこから、華やかさもコーティングされた七色(黒って300色以上あるらしい)の雄叫び列車が出発進行である。ぐんぐんと発信していき、様々な心象風景を通過する。自分がイメージしたのは、ジャングルを抜けて都会、地下空間、乗客気分でいるといつの間にか回想……追憶へ潜り、草原地帯、裏路地の多い繁華街、広大なホールのような施設、見知らぬ駅に停車。ふらふらと彷徨い、帰路に着くと辺りは陽が落ちて夕暮れ。そして再びダークな陰影に覆われかけながらも、明かりを頼りに寝床へと足を運ぶ。

濃い深みをもつ作品に対して、凡庸でわかりやすすぎる印象だとは思う。ただ最初に自分が黒と思ったのは黒ではなく、灰色も、なんなら白も含めた他の色も黒の範疇と認識できるのかもしれないと。終始ナイーブにざわついていた心のフィルターが落ち着くまでの、追体験を味わった気分。最終、少し穏やかになりました。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

16. Quadeca - Vanisher, Horizon Scraper

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15. Tame Impala - Deadbeat

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14. 青葉市子 - Luminescent Creatures

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ぷわっ。ぴちゃっ。ちょぽん。
ぴかっ。ざああっ。ふわあん。
ぽにょん。しゅーん。びゅん。

ここはまっくらであたたかい。すいすいと泳ぐことがたのしい。どこへだっていけるよ。ここがどこであろうと、ただわたしがいるだけであろうと、わたしはこの場所のなかであればどこへだっていける。

どん。どか。どん。どし。どん。
めりめり。ぐりぐり。のんのん。
ぐいーん。きゅるきゅる。ぱっ。

おや、あっちがぼやぼやと光ってる。なんだろう。いってみよう。よいしょ、よいしょ。あれ、さっきの光ってこんなにびかびかとしていたっけ。まぶしい、ううん、目をあけていられないな。おもいきって飛び込んでみよう。えいやっ

わあっ!

やや(@mewmewl7.bsky.social

 

去年は「FLAG」という曲に出会わなければ生きていられなかった。真っ暗な夜の海に走る一筋の光にすがるように生き抜くことができた。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

13. 羊文学 - D o n’ t ‌ ‌ ‌L a u g h ‌ ‌ ‌I t ‌ ‌ ‌O f f

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「笑ってごまかさないで」と題されたアルバムだが、羊文学が真摯なバンドだということは彼女たちの音楽を聴いてきた人ならわかっていたことだ。3ピースの素朴な構成でありつつ鳴らされる轟音、そして昔からずっとまっすぐに響く塩塚モエカの声。彼女の写真を見るとオフショットに近いものは大体笑っているが、それは何かをごまかすためのものではない。「いとおしい日々」で《何にもない今日が過ぎる それだけでも明日を繋ぐ》と、「Feel」で《何でもないふりで笑って 上手に隠してるつもりで 痛みさえ閉じ込めてしまっても まだ消えないのは何?》と彼女は歌う。何もごまかすことはなく。

フクダヒロアが叩いた曲もあるが全体的には元CHAIのYUNAがドラムを担当した。ジャケットには残った2人の後ろ姿が並ぶ。フクダヒロアは脱退を選択した。望まない現実が訪れても彼女たちはごまかさない。タイアップを次々とこなし、ツアーで全国世界中を飛び回る。羊文学の忙しい日々。傷つきながら前に進む彼女たちが眩しい。日々自分をごまかしながら生きている僕はもう少しがんばってみようと思った。健康を損なわない程度に、だけどね。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

12. HAIM - I quit

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1曲目の「Gone」の歌詞をGoogle翻訳にかけると大体こんな感じになります。《一生この墓地にいた やりたいことはなんでもやる 会いたい人に会いに行くよ 好きな時にセックスするよ 私は私が必要だと思うものならなんでもなるよ 私はもう去った 銃声のように早く 走るために生まれてきた 我慢できない 今、私は自由!》

あれほど自由なハイム姉妹にも抑圧はあったのかと思ったけど、苦しみがない人間なんていない。元Vampire WeekendのRostamを迎えて作られた今作は、これまでの70-90sロックとR&Bらしさは変わることはないが、どこか軽やか。HAIMの曲を聴きながら僕もやりたいことをやるよ。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

11. Laura day romance - 合歓る - walls

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安心安定安寧のネオアコギターポップなノスタルジー。穏やかな少年漫画や少女漫画の読み心地。素朴な味わいのワンシーンを重ね重ね巡り、その果てはまだ折り返しのセーブポイント。あんな過去やこんな空想をしんみりと映し出す、脳内劇場の上映作品として流れるBGM。この感情をグッと抱えこんで、延々と浸るもよし、後編へ続くもよし。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

10-1

10. Blood Orange - Essex Honey

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年明けにレオス・カラックス監督による最高で最高の映画、「ポンヌフの恋人」を観て、映像の快楽と魔法みたいな音遣いにそれはもう心底感動したのだけど、ルカ・グァダニーノ監督が撮ってBlood Orange≒デヴ・ハインズが劇伴を務めたドラマ「WE ARE WHO WE ARE」にて作中の青年たちが「Time Will Tell」を踊るシーンをなぜか思い出した。あれも私の知る映像のなかでとびきり最高と思うものの一つだ。

母親との離別や故郷への想いなどが歌詞のテーマとして描かれた今作だが、ここでは一度サウンドのみで語らせてほしい。デヴ・ハインズの故郷エセックスについて私は何も知らないけれど、乾いた秋の風や、テイクアウトしたのに冷えてしまったコーヒーのようなシーンをありありと感じられる。「The Field」は2020s中期の空気として何かを完璧に捉え切ってしまっている。ドラムンベースは私たちを掻き立てるのに、あくまでもメロウな響きが一貫している。熱狂には間に合わなくて、冷笑にも乗れない、ナイーブにぼやけた私たちのためのサウンド

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

9. Rosalía - LUX

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luxとはラテン語で「光」を意味する言葉であり、同時にSI(国際単位系)における照度を意味するSI単位でもある。luxの定義は「1平方メートルの面が1ルーメンの光束で一様に照らされる時の照度」であり、その概念を分かりやすく言うと「照らされた場所にどれだけ光が入っているか」、つまり照度ということになる。そのため、luxは[lm/m²]のSI組立単位で表されることもある。

そんなluxはSI単位ではあるがSI基本単位ではない。SI基本単位に属する単位はs(秒)、m(メートル)、kg(キログラム)、A(アンペア)、K(ケルビン)、mol(モル)、cd(カンデラ)である。故にluxは基本単位で表記することも可能で、その場合の表記は[cd・mー²]となる。とは光度を意味するSI基本単位で、その概念は「光源から出る光の強さ」だ。

luxとはこの世界を規定するための1つの大きな要素であると共に、もっと大きな基本要素の中に属する1つの要素でもあるのだ。luxは決して何とも関わりなく生まれたものではなく、他のものと密接に関わり合いながらこそ生まれたものなのである。『LUX』は点ではなく線で繋がっている。

ハタショー(@hatasyo5.bsky.social

 

8. Vulfpeck - Clarity of Cal

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メンバーのソロ活動を優先するため、2025年はわずか3本のライブのみ。今作も公開形式で5日間で計8回のライブをレコーディングし、その中から良いテイクを選んだ。レコーディング、ミックス、マスタリング、撮影、運営も全部自分たちで行う。広告費も基本的には使わない。マネージャーすらいない。まさに究極のインディーズバンド、それがVulfpeckだ。

僕は彼らがフジロックのヘッドライナーに抜擢されたことで彼らの名を知り、配信でそのパフォーマンスを観て一気に好きになった。こんなブログを長年やっていても知らなかったことは恥ずかしいが、そんなことはどうでも良くなるくらい彼らの音楽は楽しい。メンバーが演奏する楽器は流動的に変化し、ボーカルも当たり前のように交代する。集まる回数が少ないからこそ一瞬を大事にしている。ファンク、ソウルと音楽性自体はどこかクラシカルでAOTYやRate Your Musicでの評価も芳しいとは言えないが、やはりフジロックの影響力は絶大。僕らは一気に彼らのことが好きになった。山下達郎星野源、ラッツ&スター、そしてドリフターズを愛した僕らが彼らを好きになれないわけがない。

ぴっち(@pitti2210.bsky.social

 

7. caroline - caroline 2

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繊細な音響ノイズとサウンドエスケープでフォーク~エモ~ポスト・ロックをミニマムサイズで鳴らしたデビューアルバムから約3年。18ヶ月間イギリスで様々な作曲セッションとレコーディングを重ね完成させた本作。静と動の旋律が絡み合う音像の中に現れる風景は、まさに完全なる幸福な風景!多彩な楽器を取り入れるものの、楽曲のまとまりとクオリティはハイレベル!

バンドの形としての未知の可能性も感じられるまさに、インスタント・クラシック級の作品。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

身に覚えのある瞬間が多すぎる。友達の鼻歌、街中で流れるヒット曲、脳内で流れる甘いジャズ、ふと思い出したこと、、それらが一つになって聞こえていたのってこんな音だった気がする。だって、「When I get home」の奏でるような気分ばかりだよ。

ハウスやスピリチュアルジャズなどは「Love Is Everywhere」みたいなメッセージを一曲の中で何度も繰り返すけれど、そういったフレーズに徐々にやられる快感もこのアルバムには詰まっている。「Tell me I never knew that」のアウトロに反復される《It always has been. It always will be》の意味を掴めていなくたって、掻き立つ感情はあるでしょう?

昨夏、友人らと遠方の保養所を借りて遊んだことがあって、自分は半日ほど遅れて行ったのだけど、すでに酔いもムードも出来あがってる中行くのは憂鬱だ……と思うJRでこれを初めて聴いた。その時の「何もかもがわかるし、思い出されます」という衝撃が忘れられない。ただ遠くの絶景を眺めるようにすべてを理性で俯瞰したがる、厄介な自意識を抱きしめてもらった気持ちでした。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

ベースはインディーロックなのに、めちゃくちゃゴリゴリに電子音楽みたいな仕上がりでございます。今はこんな進化まで辿り着くんですね……。なんか恐縮です。素敵な恐縮。地平線と握手する夢が見れそうな、初日の出やおせちの代わりにもなる縁起物の一枚。

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

6. Bon Iver - SABLE, fABLE

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『22, A Million』から10年も経ってしまった。あんなに混乱していた彼も、今じゃ「Everything Is Peaceful Love」なんて歌っている。それに裏切られたなんて一切思わせないのが彼の素敵なところだね。

『SABLE』の原点回帰した美しさやDijonの参加など、語りしろはたくさんあるけれど、彼が彼のまま、心揺さぶるようなソウルミュージックを獲得して、冬の山小屋から出ようとしている。それがもう本当にすばらしい。きっと私たちの人生にもこれから、このアルバムが聴きたくてたまらなくなる最高の日があるんだろうな。そんな時を待ってくれている風に思う。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

5. Geese - Getting Killed

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The Storkesと比較される様子を見ると確かに初期に通じるものを感じるけど、個人的にはBlack Country, New Roadやblack midi、frikoも通じる基本的にはロックでありつつ整っていない感じに耳が惹かれる。音の重ね方はBon IverやDirty Projectorsのようなチェンバー・ポップからの影響だと思う。でも即興で音を形作る姿勢はどこかジャズ的。全体的にはニューウェーブ的な飲み込みにくさというか。たまらなく歪だけど、でも中毒感がある。

散歩をしている時によく聴いたけど、ペースを守りながら歩く時のお供には向いていない。踊りたくなる。へんてこなダンス向きの音楽。外でそれをやるとただの変質者だけど、幸い地方で人通りのない場所でやってたので通報されませんでした。

ぴっち(@pitti2210

 

4. Dijon - Baby

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アルバム全体の音の情報量が凄いけど、アイデアが整理されてスッキリと聴き通せる最新型R&B。ポップミュージックとして悠然と響く様は、原点的な音楽から変容してここまで発展するのかと歴史の厚さ、時代の積み重ねに馳せるようだけど、その過去の作品群も振り返れば膨大なアイデアを数十年前から繰り広げてきた訳で、組み合わせ方や聴かせ方の取捨選択を本気で塗り替えて楽しむ熱量を感じる。聴く者は呼応し、浮ついた空っぽな感情へ向けて詰め込んでいく形の無いデリバリーサービスとして受け止めた。VR体験よりも手軽で、ワクワクするアトラクション展開のソウルミュージック

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

3. kurayamisaka - kurayamisaka yori ai wo komete

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聴き始めてすぐに思ったのは、「あ、これ、なんか好きなやつだな」という、わりと即物的な感想だった。その「なんか」は、ザラついたギターが掻き鳴らすメロディにある。荒っぽいのに妙に整理がよくて、音は多いのに耳が疲れない。一見すると無骨なのに、芯のところがとてもポップにできている。これ、なんだっけ……と少し考えて、すぐに思い当たる。スーパーカーじゃん!しかも初期の、あの頃の感じだ!

シューゲイズなこの感触に、浮遊と疾走が同時に成立していた、あの不思議なバランスの匂いがする。考える前に、先に身体が納得してしまう、あの感じ。それを懐かしさに寄りかからず、2025年の音像として、あっさりやっているのがいい。そこに気負いがないのも、なおさらいい。

それにこのアルバムは一枚で聴くのが、いちばんしっくりくる。曲を選ぶ必要もないし、順番を入れ替えたいとも思わない。1曲目の1曲目らしさ、そして2曲目の「metro」から3曲目の「sunday driver」へ進んでいく流れが、ちゃんとこちらを掴みにくる。こんな時代に、一枚のアルバムを通して聴く。その体験ごと、音楽として成立しているのが嬉しい。

ああ、好きな音に出会うって、こういうことだったな、と思う。好きなものは、やっぱり好き。それで十分だ。ふふふ。

unix@unix_080

 

思い出してほしい、SUPERCAR『スリーアウトチェンジ』を聴いた時に感じた、瑞々しくも心の中に残る、あのポップネスを。きのこ帝国『eureka』を聴いた時に感じた、退廃的でありながら脈打つ"生きた音楽"を。Kurayamisakaの本作には、その両方が同居している。それは、言い換えるなら脈々と受け継がれていった日本のインディポップの系譜において、最新でありながらも先人へのリスペクトを奇をてらわずに打ち出したアルバムだとも言えるだろう。けれど、それだけで魅力を語った気になるのはいささか早計である。

思い出してほしい。「kurayamisaka yori ai wo komete」での、余分な音を削除して余白を生かしたサウンドを。「metro」での、つかめそうでつかめない浮遊感のあるリズムを。Kurayamisakaは大先輩たちへ敬意を払いながらも、そのどれとも違う“自分たちの手触り”を本作で提示する。

1998年には『スリーアウトチェンジ』があった。2013年には『eureka』があった。もうあんな作品たちには出会えない、そう思ったがなんてことはない。2025年には本作があるのだから。

ゴリさん(@toyoki123

 

2. 藤井風 - Prema

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藤井風のこのアルバムに出会ったことで、救われた命がいっぱいあるんだろうと想像する。もうだめだ、ここまでだと思ってたけど、あとちょっとだけ生きてみよう、とかね。あるいは、ひどい夫や恋人をころさずに済んだ、という人もいるかもしれない。今、何かに絶望していて、知らない街の真っ暗な道にひとりぼっち、みたいな気持ちでいる人にはぜひぜひ、このアルバムを聴いてほしいよ。光はこっちだ!ってわかるから。てか、実は愛と祝福、光の中に既に自分はいたんだ、って気がつけるよ。

そんで、あなたが忘れていた大切なことを思い出せるよ。私は思い出したよ。このアルバム、サウンド的にはエルトン・ジョンとかビリー・ジョエルとか、フィル・コリンズとかの80年代の音楽を永遠に愛してる中高年のみんなにもめっちゃ刺さる気がする。彼の80年代の音楽への愛とリスペクトをビンビンに感じるよ。藤井風って何歳だっけ?と検索すると、うわー1997年生まれ?めっちゃ最近じゃねーか!ってなるんだけどね。

藤井風って見性している人な気がする。愛と光に満ち満ちたメッセージと、メロディーの美しさよ!音楽で人をギュッと幸福に導く、藤井風が出現した今、この時代に共に生きることができて、私たちはラッキーだ。

Julia(@Julia0721

 

1. 星野源 - Gen

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自分の好きなものとたくさんリンクしていてうっすら好きだった星野源という人。そして気まぐれにチェックしていた星野源の音楽。はたまた星野源とは直接繋がりの薄い、その他の好きなものたち。その何もかもが、ひとつの空気にパッケージされてるんじゃと錯覚を受けるほどに濃密な空間で、この宝箱の中身を磨いて陳列する星野源という人がいた。「創造」でマリオランドのBGMを組み込んだときはどうしようもなく心を掴まされてしまったんだ。ジャズ、ネオソウル、ゴスペル、ファンク、R&Bな統一感と、散らばった遊び心。そして抑えきれないポップスター模様のオーラがチラついてしゃーない。ああ、星野源。貴方はどうして星野源なの?なんで五文字なの?としまえんとおんなじね。決して閉園はするなよ、星野源という人。

星野源という人は遍在する。自宅にも公園にもフードコートにもゲームコーナーにも、きっとヒトカラ専門店にも。ゆめにっき、あらゐけいいち、オモコロに癒される自分もまた星野源という怪異なのかもしれない。どうも、星野源でした!

ウラニワにて、わど。(@wadledy

 

昨年の晩秋、台湾へ行ったのだけど、なぜかずっと「Why」が頭から離れなかった。《今のうちに旅をしよう 僕らは悲しみにひらひらと手を振る》、何かをばっちり捉えてしまった、驚異的な曲だと思う。

「不思議」を作っていた時、どこかでずっと上間陽子の「裸足で逃げる」という本を意識していたとラジオで語っていた。沖縄の夜の街で働く少女たちの声に耳を傾けた、とても誠実なノンフィクションで、私もずいぶん前に読んでいまだ影響を受けている。《君と出会った この水の中で 手を繋いだら息をしていた ただそう思った》という歌い出しは私の知るラブソングで一番すばらしいと思うのだけど、背景にそれらを包括しているなら、一層響くものがある。

彼は近年「So Sad So Happy」や「MAD HOPE」という言葉を多用していて、私も過度なほどそれにあてられてきたリスナーだけど、ちゃんとHappyでHOPEがあるんだなと、最近は感じられるようになりました。去年一番聴いた曲も、一番カラオケで歌った曲も「Eureka」だった。勝手な願いだけど、星野源には無理せず気が向いた時に音楽を作って、安心と健康の中で暮らしてほしいです。

ハヤト(C-origin)(@c_origin_)

 

「伝えたいことやメッセージが何もない」そう星野が言った本作は、コロナ禍以降のシングル曲を集めたベストアルバムともいえる作品だ。加えてルイス・コール、サム・ゲンデル、サム・ウィルクス、ジャジー・ジェフなど海外から客演を迎えている点からも、ポップの第一線で活躍する彼にしかできない作品になったように思う。

だがあらためて書くが、この作品にメッセージはない。あるのは、つまらない日常をちょっと豊かにする、すばらしい音楽だけだ。時に思う、僕らはコンテンツに意味を持たせ過ぎではないかと。三宅香帆「考察する若者たち」がベストセラーになっているという事実一つをとっても、受け手が自分なりの正解を求める傾向を象徴しているようにも見える。

そうした「意味」への過剰な期待に対する距離の取り方こそが『GEN』の態度とも言える。そしてその背景には紅白の「ばらばら」で生まれた「さまざま意味」への返答があるのかもしれない。「音楽はもっと自由なもの」そう教えてくれる本作にメッセージはない。だが解釈と極論が渦巻くディストピアな今にとっては、意味のある作品だ。

ゴリさん(@toyoki123

 

AM7時。「はーい、起きて!朝だよー!」キッチンからの妻の声で目覚める。最近はめっきり寒くて布団から出るのが億劫ではあるが、まだ横で寝ている2歳になった娘を目をこすりながら抱きかかえてソファに移る。熱を測る。36.4℃、問題なし。ダイニングテーブルには少しだけ冷めたコーヒーとトースター2枚が置いてある。バターといちごのジャム。最近は大人と同じものが食べたいらしい。ちょっとずつ大きくなってるんだよな。朝食を終えて化粧を終えた妻と入れ替わりで私と娘の歯磨きを進める。テレビからは花を咲かせるカッパのアニメが始まっている。この後の喋る椅子と女の子とサボテンのキャラクターが出る番組が終わる頃には出なくちゃいけない。「じゃあ宜しくー!」と出ていく妻を見送りながら、遅れること15分後、我々も家を出る。家から保育園までは徒歩10分。

「寒いね」「さむい!」
「あ、バス走ってるよ」
「バス!バイバーイ!」
「ここのゾーンからはお花が沢山あるよ」
「あ、おはな!あっちも!」
「いろんな色があるね」
「あか!」「いや、あれは黄色」「きいろ!」
「先生に会うの楽しみ?」
「みきこせんせいとねー、あとたいせいくん!」
「そうかー、楽しみだね」

もうあと5分で保育園に着く。中高層のマンションから覗く朝日がいつもより少し眩しい気がする。今日はいつもより少し早めに仕事を終わらせたいと思う。いや、いつもか。

うめもと(@takaaaan.bsky.social

 

なんとなく未来を想像して勝手に絶望してしまった2025年。そしたら映画館もライブも行きたいと思わなくなってしまった。星野源が昨年5月の「あちこちオードリー」で「何にも興味がなくなった」「言いたいことが何もない」と言っていて、ニュアンスは少し違うが、それでも私にはどうしたらいいかわからなかった。ただ、このアルバムを聴いたことで何かが変わった気がする。手本通りにと思い込んでいた今までから、自分が納得できるかどうかに着地した今。何かを創ることでこの命は救われている。それに気付かせてもらえた。

布団の上で独特なステップとリズムでジャンプする娘。沈む夕陽を見ながら「見て、きれい」と言う私。風を切るブランコ、共に歌うジングルベル、小さいレジャーシートとピクニック、「お母ちゃんに見せるの」と言って花を摘む姿、手を繋ぎ走る坂道、黄昏の三日月、夜のお絵描きタイム、工事現場を眺める小さな目、ケーキを美味しそうに頬張る笑顔。メープルシロップの瓶に挿さる一輪の花。そのすべてがきらきらしている。その瞬間のすべてに星野源は寄り添ってくれる。

絶望にはまだ早い。未来を創り、きらきらな思い出を増やしていきたい。

ジョリボッサ(@nan4y.bsky.social

 

日本にPitchforkみたいな音楽メディアがあれば、おそらく星野源の『Gen』はBest New Musicに選ばれるだろう。商業的にも、音楽的にも、採点は文句なしの10点!

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

順位一覧

ネットの音楽オタクが選んだ2025年のベストアルバム 50→1

1. 星野源 - Gen
2. 藤井風 - Prema
3. kurayamisaka - kurayamisaka yori ai wo komete
4. Dijon - Baby
5. Geese - Getting Killed
6. Bon Iver - SABLE, fABLE
7. caroline - caroline 2
8. Vulfpeck - Clarity of Cal
9. Rosalía - LUX
10. Blood Orange - Essex Honey
11. Laura day romance - 合歓る - walls
12. HAIM - I quit
13. 羊文学 - D o n’ t ‌ ‌ ‌L a u g h ‌ ‌ ‌I t ‌ ‌ ‌O f f
14. 青葉市子 - Luminescent Creatures
15. Tame Impala - Deadbeat
16. Quadeca - Vanisher, Horizon Scraper
17. Little Simz - Lotus
18. kanekoayano - 石の糸
19. GRAPEVINE - あのみちから遠くはなれて
20. Oklou - choke enough
21. FKA twigs - EUSEXUA
22. Big Thief - Double Infinity
23. mei ehara - All About McGuffin
24. Mei Semones - Animaru
25. Alex G - Headlights
26. RADWIMPS - あにゅー
27. Tyler, The Creator - DON'T TAP THE GLASS
28. Deftones - Private Music
29. Wednesday - Bleeds
30. Oneohtrix Point Never - Tranquilizer
31. 明日の叙景 - Think of You
32. The Otals - All Imperfect Summerland
33. Black Country, New Road - Forever, Howlong
34. 小袋成彬 - Zatto
35. ピーナッツくん - Tele倶楽部Ⅱ
36. Deafheaven - Lonely People With Power
37. Laura day romance - 合歓る - bridges
38. Ninajirachi - I Love My Computer
39. betcover!! - 勇気
40. TOMOO - DEAR MYSTERIES
41. sombr - I Barely Know Her
42. NOT WONK - Bout Foreverness
43. Wolf Alice - The Clearing
44. Horsegirl - Phonetics On and On
45. Perfume - ネビュラロマンス 後篇
46. Wet Leg - moisturizer
47. Creepy Nuts - LEGION
48. Barry Can't Swim - Loner
49. サニーデイ・サービス - サニービート
50. a flood of circle - 夜空に架かる虹

 

プレイリスト

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