BUGY CRAXONE『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』

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もうずいぶん前になってしまったけど、BUGY CRAXONEのアルバムが相変らず素晴らしかったので。

2012年の『Joyful Joyful』、2013年の『いいかげんなBlues』と、BUGY CRAXONE1年おきにリリースされるアルバム第3弾。今回は結構尖った"夜っぽい"アルバムだった。おそらく意図的なものではなく、自然な流れでそういうモードになったのだと思う。もちろん『Joyful Joyful』以前からの日常に根ざしたロックミュージックで変わりないけれど、今回は冒頭からかなり挑発的だ。

おおきな声でいわれても 
いみがないから きこえない
このかわをわたって生きていく

 

「いみがないから きこえない」

元々ブージーオルタナティブロックが出自とはいえ「We are Punk Lover!!」というコピーを掲げるように、パンク色の強いバンドだった。ところがハイスタ及び青春パンク以降、ミッシェルがガレージロックの枠組みで語られたように、ブージーも立ち位置が曖昧なまま、爆音のロックを鳴らすバンドとして活躍する一方で、メジャー撤退後はシーンから徐々に遠ざかりつつあった。そして自主レーベルを運営後、怒髪天のレーベルに所属し、体制を立て直したのが2012年の『Joyful Joyful』だった。

「ハレルヤ」

すばらしいスケーターは転んでも
止まらない ひたむきなステップ
何度でも

「オーライ」

今日がどんな日だって
ゼイアーゴッドスペシャルフェイバリッドオーライ
次の日には笑えるように
ゼイアーゴッドスペシャルフェイバリッドオーライ
オーライ

音楽を再び奏でることの喜びと、それだけじゃない痛みや大変さ、楽しさ、うれしさ、達成感のすべてが詰まったのが『Joyful Joyful』だった。そしてその希望がみるみるうちに膨らみ、喜びがピークに達したのが昨年リリースされた『いいかげんなBlue』である。

「いいかげんなBlue」

ハイ みんな!また敢えてうれしいって感じだよ
泣けちゃうような今だけど
元気だよっていいたいよね
親切な日々と シンプルなルール
いまセカイとむかいあったところだよ

そしてその楽園から日常に帰り、再び闘争の日々を再開させたのが今作の『ナポリタン・レモネード・ウィー アー ハッピー』なのだと思う。そういう意味で前半は、シリアスとまではいかないけど、結構真面目だった。鈴木由紀子が作曲したトラッド/ニューウェーブ色が強い"少しまじめ"な曲が前半に並び、後半に進むに連れて「パレードだよ」「クレイジーがいっぱい」といった以前同様のお祭り色の強い曲が並ぶ。

そしてこの3年間で最高のロックナンバー「なんとなく Be happy」に突入する。

「なんとなく Be happy」

こたえを急がずに時には止まったり
こころはわたしが思う以上に ずっとまだ広いよ

鈴木さんがUS要素の強いトラッド/ロック曲を書くからこそ、及川さんがベタベタなJ-POP的なロック曲を書くことができるのだと思う。ミッシェルの「ダニー・ゴー」やブルーハーツを彷彿させるような、目の前に青空が一気に広がる真っ当なロック。現実をすべて考慮した上での楽観的かつ前向きな力強さが頼もしい。北海道の人ならわかると思うけど、かなり北海道っぽくて、実際に「夢チカ18」の6月のテーマ曲になった。おかげで夢チカライブで観ることができた。11月のツアーも楽しみだ。

「人と光」や「NORTHERN ROCK」の頃のブージーを知る人にはびっくりするくらいの変わり様なのかもしれない。だけど年月を重ねるごとにバンドが変わっていく/なくなってしまう厳しいシーンの中で、順風満帆とは言えない状況なのかもしれないけど、1年に1枚着実にアルバムをリリースするブージーの姿勢は素直にかっこいい。毎回これ以上ないほど幸せな気持ちにさせてくれるのだから、もう文句のつけようがないです。

話は変わるけど、先日の夢チカライブ、序盤から全然物販にスタッフが来なくて、ついにはライブがはじまって、そして終了後に息を切らしながら走ってきた鈴木さん、頑張り過ぎです。というか、物販であんなに緊張したのははじめてでした。

あとさら余談だけど、日本でここまで日本語のままケルティック・パンクを導入しているバンドはブージー以外いないと思う。多分そういう点でも今年のフジロックに出るThe Poguesが個人的に気になるのだと思うけど、これは完全に余談ですね。すみません。

 

 

ぴっち(@pitti2210