ネットの音楽オタクが選んだ2023年のベストアルバム 50→1

2013年から始まった「ネットの音楽オタクが選んだベストアルバム」11年目です。今回は502のデータを集計しました。毎度同様、順位はあまり気にせず、国とかジャンルも気にせず、この記事をきっかけに2023年の作品を再発見していただければ幸いです。

最終日です。作品にはできる限りリンクを付けているし、記事末尾にはプレイリストも付けています。ぜひご活用ください。(ぴっち)

 

このランキングについて
  • ネットの音楽オタクが選んだベストアルバムは音楽だいすきクラブ、及びそのメンバー等の特定の誰かが選んで作ったものではありません。
  • Twitterハッシュタグ、募集記事のコメント欄に寄せられたものを集計しています。
  • 502人分のデータを集計しました。
  • 同点の場合、乱数を発生させて順位づけしています。
  • 順位に深い意味はありません。気にしすぎないでください。
  • 150位以内はすべて4人以上に挙げられたものです。
  • レビューは有志によるものです。500字以内、ディス無しでやっています。
  • レビューは随時追加しています。興味がある方は@pitti2210にリプかDMください。

 

50. Cleo Sol『Gold』

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49. Sigur Rós『ÁTTA

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48. yeule『softcars』

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47. Summer Eye『大吉』

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46. Paramore『The Is Why』

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45. Jessie Ware『That! Feels Good!』

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44. James Blake『Playing Robots Into Heaven』

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43. Maneskin『RUSH!』

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マリンスタジアムを震わし沸かせたサマソニ2022、個人的にはその年のベストアクトだ。すべてがノリに乗っていて、脂も乗っていた、まるで特上の大トロ。直視したライブパフォーマンスは、間早く変わりながら僕らの目に焼き付けた。それは、大トロを舌に乗せた瞬間溶け、香りと感覚は持続しているような。本題へ。

00年代初頭のThe StrokesThe White Stripes等を思い出させるギターサウンド。ガレージロックっぽさもあるけど、リフはLed Zeppelinのような居心地良さもある。イタリアから、SNSの力で世界から飛び出した彼らのフルアルバムは欲に満ちている。近年の流行に沿ったリズム主体の音作り、重低音が文字通りに重くドシっとくる。しかし負けてないのが、先ほど挙げたギターリフと、ミクスチャー・ロックにも似たメロディとダミアンの声。

これは正真正銘、現代のロックンロール。僕らが聴いていたロックンロールは、着実に階段を上がり、流行も取り入れながら進化していた。このアルバムはある意味ロックンロールの完成形であり、Maneskin が提示した可能性のカケラだ、その証拠に日本含め全世界でセールス的成功も収めた。この先、変化するロックンロール史に、まだまだ進化するManeskin が一旦の及第点として旗を上げた作品であり、歴史を刻んだ作品でもある。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

42. Romy『Mid Air

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41. ずっと真夜中でいいのに。『沈香学』

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「あいつら全員同窓会」を聴いて「これは陰キャのアンセムだ」と思った。陰キャといってもグラデーションのように段階が分かれているので誰かを陰キャと断定するつもりはないけど、でもそう思った理由は2つ。ひとつは主人公が露悪的なところ。「身勝手な僕でいい」と自分を身勝手だと断罪している。もうひとつは人を傷つけたくないところ。あれだけ「どうでもいいから置いてった」と毒づくがこれは頭の中の叫びで、面と向かって批判したくはないしその資格もないと思っている。

僕は基本的に世の中は善性の人のほうが多いと信じていたい。ネットで口が悪くても優しい人のほうが多いと信じたいし、現実でもやさしい人が心のなかで荒れ狂っていることもよくあると思っている。ACAねの歌を聴いていると、この人は他者を慮るあまりに自分のことを蔑ろしていると思う。

全13曲、うち11曲がシングルとしてリリースされたアルバムで、かつ音楽性も多彩になった。バンドは成熟しジャンルも一辺倒でなくなった。ACAねの口の悪さとにじみ出る善性がたまらなく2020年代を生きる僕ら同類の生き様を肯定する。あばらの骨が折れるまで笑われながら生きていこう。

ぴっち(@pitti2210

 

40. 家主『石のような自由』

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ロックンロール!なんて叫びはしませんが 暮らしは静かに熱く滾るよ

月の人(@ShapeMoon

 

39. Lana Del Rey『Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd』

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38. a flood of circle『花降る空に不滅の歌を』

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37. Gia Margaret『Romantic Piano』

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幻想的でアンビエントな息遣いのインストゥルメンタル作品で、6曲目「City Song」のみはボーカル有り。ポロポロと日常を噛み締めるようなピアノの音色に、素朴な味付けが添えられる。静の音楽の醍醐味を全身で感じ取り、精神を休めるのに不可欠な浄化装置。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

ここはGia Margaretの部屋。シカゴ・イリノイのシンガーソングライター。彼女がピアノを弾いたり歌ったり、ギターを爪弾いたり。アンビエントミュージックが混ざっていたり、なんでもあり。だけど全然難解ではない。ほっとする。疲れ果てて何も聴きたくない時にでも滋養が染み出してくるような、まるでお粥のような音楽。とか書くと褒めてる感じがしないけど、僕にとってはそうでした。

ぴっち(@pitti2210

 

36. world's end girlfriend『Resistance & The Blessing』

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35. Kelela『Raven

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今は死語になりつつあるオルタナティブR&B。前作『Take Me Apart』はまさにその代表作である。2018年のサマソニのライブでは幻想的で神秘的なライブパフォーマンスを披露したことが印象に残っている。瞬く照明に目眩く動きと歌声、初来日の機会に観れてよかった。

ジャンルが定まらない音に僕らはオルタナティブ(型にはまらない)という便利な代名詞をR&Bに付けた2017年、では今作2023年の Kelela はどうなのか?もはやディープハウスにも似た何かを定めている、変化するBPMの中で、シームレスに繋げアルバムとしての完成度が高い。不吉の兆しの意味を持つ『鴉』と名付けられたアルバムは、漆黒の水の中に潜るようで、ミニマムなクラブミュージックとアンビエントミュージックを行き来し、リビドーを感じながら、曲がりくねったリズムを潜り抜けてゆっくりと深層に下降する。そこは静寂に近い。特に「Closure」「Contact」「Fooley」は中深層から漸深層へ行くような息も出来ない完成度。『Take Me Apart』よりもボーカルはしなやかになり、聴くもの全てに魅力と潤いを与えてくれている。

Kelela しか出来ない空気感と声、LCDXOXO や Kaytranada などの名プロデューサーによるサウンドメイク、さらにワープレコーズから前作に続きリリースと文句のつけようがない。2023年の Kelela は、型にはまらないのではなく、型を新たに作った作品ではないのか。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

34. Young Fathers『Heavy Heavy』

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33. Laurel Halo『Atlas』

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32. 100 gecs『10,000 gecs』

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ポップ・パンクやスカ、メタルコア、EDMなどなど好きなもんを全部突っ込みました!みたいな破天荒すぎな作品。30分も満たないアルバムでこんなにエキサイティングにまとめられるのは彼らだけだろう。「Frog On The Floor」はお洒落さを飾らない、思わずキッズたちが2ステップを刻んでしまうような軽快さとポップさ、かと思いきや「Billy Knows Jamie」はニューメタル讃歌ではないか、しかも音が割れるぐらいの歪み。そしてなんといっても「mememe」は、俗に言うピコリーモのようで口ずさみたくなるイントロ。ヴァースなんて「ノウノウノウノウ」「ミーミーミーミー」で振り切って歌い、歪んだドラムとギターの気持ちよさを伝えてくれるとはあっぱれ。

ハイパーポップってなんなんだ?カテゴライズされたこの言葉に、彼らはもういないのだよ。ユーモア・モア・ユーモアとちょっとのクレイジーさがこのアルバムの良さ。そして、人生楽しんだもん勝ちと笑いながら僕らに言ってるのかもしれない。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

子供の頃はあんなにいろんな場所でいろんな遊びができていたのに、私たちはいつの間にかそれができなくなってしまった。法律やルールがあるわけでも無いのに、『大人は遊びをしないもの』みたいな言い方をして急に遊びが飲みに変わった。かくいう私も、その台詞を何度か口にした覚えがある。もちろんどこかに遊びに行くこともあるかもしれないけれど、その目的は既に完成された遊びを体感しに行くという受動的なもので、結局自らの中から生まれる無限のクリエイティブさみたいなものは無かった。

100 gecsの音楽を聴いた時、本当に遊ぶってどんなことかを思い出させられた感じがした。100 gecsは音を使って本気で遊んで、音楽を本気で楽しんでいるように見えた。その姿は羨ましさを感じさせると共に、活力を与えてくれた。

もしかしたら私たちが遊べば遊ぶほど、他の誰かは嫉妬したり、起こったり、冷笑したりして抑えつけようとしてくるかもしれない。でもそんな奴らの言うことに耳を傾ける必要なんてまったくない。そんな奴らに使っている時間なんて人生の無駄でしかないから。もっとみんなで遊ぼうよ。そっちの方が、きっと楽しい人生だよ。

ハタショー(@hatasyo5)

 

31. ANOHNI And The Johnsons『My Back Was a Bridge For You To Cross』

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僕はスマートフォンとイヤホンで手軽に音楽にアクセスできるライフスタイルをこよなく愛しているけど、アノーニのこのアルバムはスピーカーでできるだけ大きな音量で、何もクリックせず、ながら聴きをしないで音楽に身を任せてもいいのではないか。

感情が溢れる。人を慈しむこと、そうせざるえない厳しい現実がそこにはある。ジミー・ホガースのギターに導かれるまま、魂そのものを歌うかのような41分に身を任せるこの贅沢を、今からでも味わうべきではないか。

ぴっち(@pitti2210

 

30. The Japanese House『In The End It Always Does』

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29. JPEGMAFIA x Danny Brown『SCARING THE HOES』

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28. BUCK-TICK『異空』

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27. Wednesday『Rat Saw God』

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26. JJJ『MAKTUB』

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25. 君島大空『映帶する煙』

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君島大空による1stフルアルバム。君島大空というアーティストは、歌詞ではなく音で曲のイメージを作れるアーティストだ。流れが異なることもあるが基本的には"イントロ~Aメロ~Bメロ~サビ"で構成される日本のポップソングにおいて、音に曲のイメージを託す事は正直とても難しく、大抵のアーティストはその部分を歌詞に託す。もちろん君島大空だって歌詞に託しているものは多々あるが、それよりもやはり特筆すべきは音にある。

風の調べを切り取ったようなウィンドチャイム、ハレーションを感じさせるようなシンバル、一定間隔で存在する縫い目とその流れを断ち切ってほつれる糸を思わせるリズムとギター。どれも奇をてらった楽器ではなく、普遍的に存在している音をどう切り取るかで新たな音の響きを生み出している。

映り合う景色はそれ単体だとバラバラの要素が存在するだけのノイズにも見えるが、君島大空はそれらを組み替えて美しい景色に変換し直す事の出来る。そうした美しい景色を音で立ち上がらせることのできる感覚は、平面の中に線だけで人間の営みまでを描く優れた設計士と同じなのだ。彼の設計した建築物は、きっとこれからもっと重要なものになるだろう。

ハタショー(@hatasyo5)

 

あなたに、お気に入りのぬいぐるみはいただろうか。そのぬいぐるみは、今、どうしているだろうか。

私には幼い頃、大好きなぬいぐるみがいた。そのぬいぐるみは共に過ごしていく内にどんどん汚れ、形もつぶれ、最初に出会った時の姿ではなくなってしまった。だけど、そうしてぬいぐるみが姿を変えていく過程には、私がそのぬいぐるみに注いできた愛があって、その変容の過程は私がぬいぐるみを抱きしめてきた何よりもの証拠だった。

時が経ち、私がそのぬいぐるみと一緒に眠りにつくことは少なくなった。だけど、特別苦しいや悲しいこと、そして嬉しいことがあった時、私はそのぬいぐるみを抱いて眠りたくなる。そんな時、ぬいぐるみはいつだって黙って私を受け入れてくれる。その時、ぬいぐるみは中に詰まった綿だけでなく、私をもぐるんでくれるいるのだ。たとえ今はほつれてしまった糸で縫われたぐるみだったとしても、確かにそこにはぬいぐるみから私に対しての愛がぐるまれている。

どうだろう、今改めて、ぬいぐるみに出会い直してみては。もしかしたら、出会い直したぬいぐるみは、声を出してこう応えてくれるかもしれない。『君の隣できっと目を覚ますのさ!』

ハタショー(@hatasyo5)

 

24. The Rolling Stones『Hackney Diamonds』

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23. Mitski『The Land Is Inhospitable and So Are We』

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Mitskiの7枚目のアルバムであり、彼女がカントリー、フォークというジャンルに足を踏み入れた作品だ。長年彼女のプロデュースを務めるPatrick Hylandと共にナッシュビルとロサンゼルスのスタジオで、ライブレコーディングで制作された。ニール・ヤングポール・マッカートニーからアラバマ・シェイクスまで作品を作った場所で、しかもFather John Misty等の作品を手掛けたDrew Ericsonにオーケストラの編曲・指揮を担当し、しかも彼女自身が合計17人の合唱団のアレンジを担当して作られた。だからまあ、音が無茶苦茶気持ちいい。

タイトルを直訳すると「その土地は非人道的であり、我々もまた同様である」となり一筋縄ではない物語があるがそれは聴けばいい。生きていれば良いことも悪いことも起こる。両方を経験することで良さがわかる。彼女が今まで作り続けてきた愛とかその真逆のものが、アナログ的な手法でより高い解像度で具現化される。より高く、より自由を獲得した彼女が音楽と戯れている。世界も人もInhospitableだけど、このアルバムを聴いている間だけは豊かだ。

ぴっち(@pitti2210

 

22. THE NOVEMBERSThe Novembers

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21. betcover!!『馬』

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20. Mr.Children『miss you』

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通算21枚目となるオリジナルアルバム。ネット上には様々な意見が挙がっているが、よく見かけたのは「桜井和寿のソロ作品?」という内容だった。個人的にもわかる部分はあり、今作にはインディーミュージシャンの宅録作品のような趣が見受けられる。

筆者の極端な持論(暴論)だが、ミスチル最大の魅力は「桜井和寿のポップ・ソングライティング」×「小林武史プロデュース」による化学反応で生まれる全方位的なポップ・ソングと捉えている。今作に小林武史は参加していない。しかし、今作の各楽曲のバンド外のアレンジを聴くと、バンド内だけで後者を補えるのではないだろうか。それだけ今作の楽曲に寄り添ったアレンジは秀逸に感じられる(「LOST」のサビにおけるコーラスワーク×シンベ×ピアノの組み合わせは鳥肌モノ!)。結果、セルフプロデュースで培った表現力の賜物として、『miss you』はここ数作では聴こえなかった(と感じる)ミスチルのポップ性が再度花開きかけた作品になったのではないだろうか。(作品イメージで近しいのはテイラー・スウィフトの『Folklore』)。

バンドサウンド優先であった数作より一転して楽曲第一至上主義と思われる『miss you』。果たしてどうなる次作?

のすぺん(@nosupen)

 

19. Olivia Rodrigo『GUTS』

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18. Parannoul『After the Magic』

 

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前作『To See the Next Part of the Dream』では、シューゲイザーとエモを上手くブレンドさせながら、そこにサンプリング(日本映画や日本アニメの台詞など)入れ、世界のシューゲイズファンだけでなくインディーファンをも囲った。個人的にも2021年ベストアルバム1位だった Parannoul 。前作がお気に入りすぎて、今作はそれに勝る作品なのか不安であったが、そんなことはなかった。

時の流れは、世界を変えるように。子供が大人になるように。Parannoul は変わった。再生ボタンを押した瞬間、魔法がかかる。ストリングを加え、アコースティックも入れながら前作のシューゲイザーとエモはそのまま。これまでレーベルメイトなどとコラボはあったが、それからは想像がつかないサウンドエスケープ。美しくもありながら、ポップスへの変遷もあり、決めるところでは伸びがある歪みのギターが涙腺を震わす。女性コーラスも目立ち、閉鎖的な印象の前作からとは大違い外向的なスタンスに感じる。スロウコアに似せながら、さらにオルタネイティブになった。

1時間近くあるこの作品を聴くことで、僕らが見ていた世界はガラリと変わる、全てが儚く壊れる運命であろうと、キラキラ輝きながら叫び、世界と共鳴する。素性をあまり出さない Parannoul だが、作品から伝わるメッセージは確かにある。アフター・ザ・マジックと付けられたタイトル通り、聴いたあと森羅万象に魔法を掛けてくれる不思議な作品!

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

17. Homecomings『New Neighbors』

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16. GRAPEVINE『Almost there』

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15. GEZAN with Million Wish Collective『あのち』

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14. Caroline Polachek『Desire, I Want to Turn Into You』

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P.C.Music の Danny L Harle と手を組んだ本作は、まるで旧劇場版エヴァを見てるようなリビドーとデストルドーを僕らに与えてくれる。紛れもないアート・ポップなのだが、その本質は彼女の欲望(=Desire)に満ちている。生の雄叫びをあげる「Welcome To My Island」でリビドーを感じさせ、「Blood And Butter」〜「Billions」の流れはデストルドーを終え音楽の安堵と彼女自身が融合を果たしたよう。まさに人類保管計画。

トレンドのラテンやドラムンベースなどを入れつつ、歌詞はロマンチックで生々しい。彼女が神になるような神秘と破壊、そして救いがこの作品には含まれている。

Caroline Polachekとして神々しく音楽界にセカンドインパクトを与えた本作、来たるサードインパクトは何を望むのか。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

13. NewJeans『Get Up』

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12. Cornelius夢中夢

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「環境と真理」のMVで焦点が当てられる人の歩き方は、普段人が歩くとき時の姿勢に比べ少しばかり前傾姿勢になっている。たった少しだが、前傾姿勢になっているが故に歩行は身体が倒れない様に足を前に踏み出すような動きに変わり、結果的にその姿勢をやめない限り半自動的で前に進み続けることになる。「環境と真理」のMVにおける人間達は、常に前に進み続ける。それは前に進もうとして前に進んでいるのではなく、前に進むしか無くて前に進んでいるのだ。

時間は決して戻らない。どんなにうれしいことがあっても、どんなに苦しいことがあっても、戻ることも立ち止まることもできない。だから毎日何にも無かったかのように歩き続けて、生き続けている。そうしているうちに今は過去の事となり、日々は忘却される。だけどふとした時、決して止まることのない諸行無常の時の中で、過ぎていった時間に置いてきたはずの感情が火花のように一瞬だけ美しく燃えて光る。その火花に伴う感情は明るいものばかりでは無いかもしれない。だけど、その感情こそがあなたという人間の形を規定する大事な要素で、あなたという人間が生きてきた確かさなのだ。

無常の世界は、無情の世界ではない。

ハタショー(@hatasyo5)

 

11. King Gnu『THE GREATEST UNKNOWN』

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10. くるり『感覚は道標』

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別の道を歩むことになった人に連絡することは、相当な勇気がいる。私はそう思っているからこそ、くるりの2人がバンドをやめるという決断をしたメンバーともう一度アルバムを作ることに驚いた。バンドをやめるということは相当な訳があったのだろうと思ったからだ。

しかし、聴いてみると仲間と音を奏でる楽しさが伝わってきた。1曲目の「happy turn」はくしゃみから始まる遊び心がある。そして、たくさんついたお菓子の粉が『ささくれの傷に染み込む』ことが想像できた。「お化けのピーナッツ」では、ラテンのリズムで曲が進んでいく。ボーカルの岸田曰く〈ピーナッツは残念な感じ〉というところから着想を得たものである。

年齢を重ね、各メンバーが様々な経験をしてきた。だからこそ20年前に袂を分かつ決断をした3人がまた共に音楽を奏でられたのだと思う。より良い音楽を奏でるために挑戦をしていくくるりをまた見てみたいと感じた。

ジュイ(@jouy_blue

 

9. 君島大空『no public sounds』

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「諦観」のサビにおいて、とても小さな声ではあるが「わたし...」という歌声が入っている。また、3連符を基本のリズムとしている「賛歌」のサビでは、3連符で進む曲の中で小さく8分音符を刻むライドシンバルの音が聞こえてくる。『no public sounds』と名付けられた本作では、上述したような聴こうとしないと聴こえない音がいくつかある。君島大空がこのアルバムに対して書いたセルフライナーノーツにて、彼はこの作品を「無くなってしまった場所に克明な居場所を見つけようとする実験」と表現した。彼は音楽というツールを使い本作で、社会の中で公共性や"皆"にかき消されてしまう/しまった様な、そんな私/あなたの私/あなたたらしめるものを肯定しようとしたのかもしれない。

たとえ今が皆に向けて鳴らされる音が響く2分前のような、いずれ大きなものに飲み込まれてしまう予感は孕んでいる現在地であったとしても、「賛歌」の8分音符が「16:28」のサビで同じライドシンバルで刻まれる8分音符へと受け渡される様に、誰かの想いや存在が別の誰かに肯定され受け継がれていけば消えることは無く、静かに続いていけるのだ。
ハタショー(@hatasyo5)

 

2020年に上演されたロロの「四角い二つの寂しい窓」という作品に登場したムオクというキャラクターは、内と外を隔てる境界線の上を歩き、その線を解いていく存在だった。そんな彼が好む曲の1つが川本真琴の「1/2」で、この曲に対して彼は《2コの心臓がくっついてく》って歌詞からサビの《唇と唇 瞳と瞳と 手と手》って歌詞になるんだけど、「くっついてく」の「く」と「くちびる」の「く」が実際にくっついて歌われるの凄くないですか?」と歌詞を熱弁していた。

あれから3年経った2023年君島大空の『no public sounds』を聴いた時、私には彼が「撃たれたみたいだ!とぼけながら」と「爛々と!目は!君だけに咲いた花!」の「ら」が繋がった曲に興奮しながら誰かにその歌詞の凄さを熱弁している声が聞こえた。

私的な領域でも公的な領域でも様々な場所で分断が進み、それが日に日に強化されていっている現代。分断を生み出す境界線を溶かしてくれるものは、時代の変わり目に不要不急と言われた芸術で、その芸術を生み出したのは誰かと共有はされない個人事だった。そうして生まれた作品を「賛歌」と呼べることが、私は自分事のように誇らしい。

ハタショー(@hatasyo5)

 

それは、易々と言葉で表せない感情の数々。或いは、何とでも絡まって結ばれてしまう細胞の糸。身動きが取れなくて息が乱れそうな、最愛の表現集。思わず涙腺を緩めてしまうし、芯から揺さぶられる。重なりそうな錯覚。彗星の爆発を眺めているよう。とても綺麗な叫び声。

ラニワにて、わど。(@wadledy

 

8. Blur『The Ballad Of Darren』

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約8年間活動を休止し、再開後馴れ合いでなく音楽として真面目に向き合った作品だと伝わったブラーの新作。デーモンはゴリラズ名義で23年リリースしたにも関わらず、今度はブラーでもリリースしてくれるとは誰も予想して無かったのではないだろうか。ギターのグレアムもザ・ピペッツのローズと組んだバンド 〈ザ・ウェイヴ〉でデビュー作をリリース。ベースのアレックスは食と音楽のフェスを開催したり、ドラムのデイヴは弁護士や州議会議員になったりと各々場所は違えど人生を活動していた。色々な経験と年のせいか、ゆったりとしたナンバーが多数あって、ノスタルジーを漂わせつつ、バンドそして人としての成長も垣間見れる作品!「The Heights」のノイズアウトロは、号泣と歓喜が入り混じる。この高揚感は誰もが感じるだろう。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

7. 羊文学『12 hugs (like butterflies)』

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「ダメだね」と笑うあなたの姿みて 笑い返さず抱きしめるのだ

月の人(@ShapeMoon

 

6. スピッツ『ひみつスタジオ』

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5. Sampha『Lahai』

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はっきり言って、この作品は何をしているかわからない。だが、先行曲の「Spirit 2.0」を初めて聴いた時の衝撃は覚えている、「あのSampha が戻ってきた!これは最高!でも何なんだ!」っと。一筋縄、二筋縄、百筋縄でも理解できない作品。理解しようと思い何度もも聴いてしまった。気づいたら好きになっていた。ジャンルとか商業的なことばに収まらない。ただ居心地良い声とビート。私自身2023年もっとも音を楽しんで聴いていた作品であることまちがいなし!

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

4. Sufjan Stevens『Javelin』

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3. カネコアヤノ『タオルケットは穏やかな』

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心とも身体ともつかぬ痛みだな 温もりはここにあるというのに

月の人(@ShapeMoon

 

2. cero『e o』

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5年ぶりのアルバムとなった『e o』はそれまでのceroが持っていた、身体性あふれる濃厚なセッションを基軸にしたものとは違う。そのサウンドはどこか冷ややかで、密閉された感覚をまといながら快楽と混沌が混ざりあう。ビートの探求者たちが2023年に到達したのは、静謐でアンビエント的な質感を持った幽玄的な音楽だった。そしてこの変化は彼らにとっては必然であった気がする。

考えてみてほしい、ceroは常に時代と共に変化してきたバンドだ。震災後に出された『My Lost City』、D'Angelo『BLACK MESSIAH』の翌年に出た『Obscure Ride』など、常に時代に寄り添いながらフレキシブルに空気を取り込んできた。本作もそうだ。コロナ禍となりサポートメンバーたちと集まれないなか、3人の原点である宅録に立ち返りアイデアをかき混ぜて作られた。だから「密閉された感覚」は集合できないがゆえの変化であり、今のムードを柔軟に取り込めるバンドが故の宿命だったのではないだろうか。

ゴリさん(@toyoki123)

 

1. boygenius『the record』

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これはある意味パワープレイな面々。Julien Baker、Lucy Dacus、そしてPhoebe Bridgers。現行のインディーで最も重要な3人が組んだスーパーグループ。全員が主役だし全員が引き立て役。それぞれの個性が出てる楽曲に、彼女たちの重なるハーモニー。作り込まれているのにシンプルに聴こえる。なぜこんなに美しいのか、なぜこんなに落ち着くのか、僕には言葉にできない魅力がたくさんある。これは10年経っても色褪せない作品。

あの店の水を飲むと腹がくだる(@showhaya

 

ネットの音楽オタクが選んだ2023年のベストアルバム 50→1

1. boygenius『the record』
2. cero『e o』
3. カネコアヤノ『タオルケットは穏やかな』
4. Sufjan Stevens『Javelin』
5. Sampha『Lahai』
6. スピッツ『ひみつスタジオ』
7. 羊文学『12 hugs (like butterflies)』
8. Blur『The Ballad Of Darren』
9. 君島大空『no public sounds』
10. くるり『感覚は道標』
11. King Gnu『THE GREATEST UNKNOWN』
12. Cornelius夢中夢
13. NewJeans『Get Up』
14. Caroline Polachek『Desire, I Want to Turn Into You』
15. GEZAN with Million Wish Collective『あのち』
16. GRAPEVINE『Almost there』
17. Homecomings『New Neighbors』
18. Parannoul『After the Magic』
19. Olivia Rodrigo『GUTS』
20. Mr.Children『miss you』
21. betcover!!『馬』
22. THE NOVEMBERSThe Novembers
23. Mitski『The Land Is Inhospitable and So Are We』
24. The Rolling Stones『Hackney Diamonds』
25. 君島大空『映帶する煙』
26. JJJ『MAKTUB』
27. Wednesday『Rat Saw God』
28. BUCK-TICK『異空』
29. JPEGMAFIA x Danny Brown『SCARING THE HOES』
30. The Japanese House『In The End It Always Does』
31. ANOHNI And The Johnsons『My Back Was a Bridge For You To Cross』
32. 100 gecs『10,000 gecs』
33. Laurel Halo『Atlas』
34. Young Fathers『Heavy Heavy』
35. Kelela『Raven
36. world's end girlfriend『Resistance & The Blessing』
37. Gia Margaret『Romantic Piano』
38. a flood of circle『花降る空に不滅の歌を』
39. Lana Del Rey『Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd』
40. 家主『石のような自由』
41. ずっと真夜中でいいのに。『沈香学』
42. Romy『Mid Air
43. Maneskin『RUSH!』
44. James Blake『Playing Robots Into Heaven』
45. Jessie Ware『That! Feels Good!』
46. Paramore『The Is Why』
47. Summer Eye『大吉』
48. yeule『softcars』
49. Sigur Rós『ÁTTA
50. Cleo Sol『Gold』