The Ting Tings『Super Critical』

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僕は田舎の町育ちで、ネットさえない時代に育ったので、ラジオや週末土曜日のCDTVJAPAN COUNTDOWNで音楽を漁っていたので洋楽を聴く機会さえほとんど恵まれなかった。ロッキング・オンの名前も知らなかったし、ビートルズエアロスミスくらいしか聴いたことがなかった。今思うとレッチリを聴いていたら洋楽エリートになれたはず。そういうわけなので、基本的にはヒットチャートの音楽しか知らなかった。だから一人暮らしで都市に出てROCKIN'ON JAPANを読み始めてから世界が変わった。

そういう経路を歩んでいたので、あまり洋楽を聴く余地はなかったんだけど、それでもたまた手にとったRadioheadのアルバムは今でも強烈に焼き付いている。あれほどおどろおどろしい音楽ははじめてで、逆に言うと洋楽を聴く価値はそういう部分にしか見いだせなくなっていた。それ以前にアブリルとかブリトニーなどのポップな方面の洋楽も聴いていたけど、そういう欲求は邦楽で充分すぎるくらい充足されるので、あまり手が伸びなかったのかもしれない。

つまり「ポップ/ロックな音楽=邦楽で満たされる、エクストリームな音楽=洋楽で満たす」、そんな図式が、僕の中にはできあがっていた。だから2008年に僕がThe Ting Tingsを好きになるのは、今考えると相当難しかったはずだった。その前年、僕はVampire WeekendにもArctic Monkeysにも、それからOasisにもハマらなかったのだから。

 

思えば遠くに来たもんだ。

「Great DJ」で僕のような邦楽リスナーのみならず、世界中で熱狂をもって迎えられた。それから6年『Super Critical』(=最高に決定的)という3rdアルバムを発表しつつ、先行トラックは「Wrong Club」だった。

I’m in the wrong club/Listening to this shit/I’m in the wrong life, someone get me out of this

意訳すると「間違ったクラブで、クソみたいな曲を聴いてる/誰か私を連れ出して」そのような現状を、彼らは6年前の想像できたのだろうか。

いや、何も変わっていないのかもしれない。あの頃から彼らは1stアルバムを『We Started Nothing』、つまり「今日も何も始められなかった」と名づけたように、彼らはクソみたいな現状を最高の音楽に変えていた。あくまでラフに。深刻に見せないように。

「最高に決定的」と名付けられたアルバムは「Failure」で幕を閉じる。《Please someone come and tell us what to do》(=私達が何をすべきか、誰か来て教えて)と歌うのは、以前同様ドツボにはまりながら、それでも踊り続ける彼ららしいと思う。

ディスコを真ん中に据えつつ、いつも同様の幅広い音楽性。そして人を舐めくさったはぐらかし。そして最高のダンスミュージック。The Ting Tingsの最高到達点だと思う。やっぱり欧米のメディアは耳が腐ってるよね。

The Ting Tings『Do It Again』

The Ting Tings「Wrong Club」

 

 

ぴっち(@pitti2210