スーパーのBGMに思いを馳せる
昔から気になっていたものがあります。誰も触れない究極の音楽、スーパーマーケットで掛かっているBGMです。便宜上「スーパーのBGM」と一括りにしてしまいましたが、スーパーに関わらず小売店等全般でかかっているインストの、フュージョンみたいなアレです。アレは一体何なのだろう。誰が作っているのだろう。
恐ろしいほどの匿名性・非商業性の高さですが、かなりの数の聴き手に強制的にアプローチできる音楽でもあります。(※J−POPのインストアレンジバージョンは除きます)
ここでこのサイトの閲覧者なら誰もが必ず聴いたことがあるであろう、有名なものを3つ。 誰が作ったか探るなんて野暮なことは探しません。
1. ハードオフ
2. ゲームセンター(※正式にはSEGA NEW UFOキャッチャーのBGM)
3. イオン
どうでしょうか。こうしてあらためて聴くととてもチープな音楽ですが、しっかりと頭にメロディーが刻み込まれています。それと同時に懐かしさとか、思い出が蘇ってきて郷愁に浸ってしまったり。話し声や雑音が混ざった状態で聴くと落ち着く人もいるでしょう。
今、これに近い音楽が作品として世に出されています。ちょいと前に流行ったVaporwaveです。先述の「スーパーのBGM」だったり、「つけっぱなしにしたTV・ラジオでかかってる音楽」と言った形容をされていますね。アーティストの匿名性が高かったり、アートワークも妙にチープなものにしていたりと、「スーパーのBGM」的なニュアンスをしっかり踏襲していると思います。制作者もリスナーも一体として、これまで聞き流されていたものを評価させてやろう、という貫かれたテーゼを感じます。
Vaporwaveが流行った理由としては
- シンセポップから派生していったChill Wave(チルウェーブ)がブレイクした
- 個人の好みがネットの普及で拡大したり、時代が回って「フュージョン」や「AOR」、「ニューエイジ」、はたまた「スーパーのBGM」がダサいという風潮がなくなった
- 音楽のバリエーションがネタ切れし、これまで誰も触れなかったところまで手が伸び始めた
などいろいろあると思いますが、どんな音楽でも気軽に、お金を掛けずに聴ける時代、リスナーが寛容になったというところでしょうか。
関係ないかもしれませんが、Mr.Childrenの「Surrender」という曲で
《大キライなフュージョンで泣けそうな自分が嫌》
という印象的な歌詞を思い出してしまいます。
それではまたここでVaporwaveの代表的なものを。
みなさまのお住まいのそれぞれの土地でも、地元のスーパー等でいろいろな音楽がかかっているはず。しばらくは決して評価もアーカイブもされないでしょうが、ちょっと愛情を持って耳を傾けてみてください。音楽の世界が広がる事と思います。
Dysk(@Yooooooske)