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特集『テレクラキャノンボール2013』はロックだ!

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……特集、作っちゃいました。

「どうして音楽だいすきクラブでこの特集をしなければならないの?」という疑問が頭に浮かばなかったと言うと嘘になります。でもやっぱりロックを愛する人は観るべきかと。もちろんジャンルがジャンルなので「絶対に観なきゃだめ!」と言うつもりはさらさらありません。でも2時間に編集された劇場版が渋谷で公開後満席を記録して全国各地での公開が決定し、「めちゃイケ」でオマージュ企画が制作され、Base Ball Bearの小出祐介がバカリズムに自分のバンドの新作ではなくこの映画のDVDを渡す、そんな局所的とはいえ凄い盛り上がりを見せている作品を「みんなも楽しめばいいんじゃない?」というのが今回の特集の動機であり、僕からの提案です。

とはいえ分野が分野なので、強制はしません。おまけにDVD版だと10時間あります。でもほら、そこはちょっと長い「水曜どうでしょう」と思ってもらえれば。アレな映像も含んでいますが、基本的には30代から40半ば過ぎのおっさんたちがおバカなレースをする話です。なぜここまで必死になるのか。なぜ必死になった姿が笑えるのか。なぜかっこいいのか。なぜ観る人は人生を重ねてしまうのか。そのようなことを考えてしまう熱い映画です。

決して人を不快にさせるような映像を含む作品ではありません。もちろん好き嫌いはあると思います。とりあえず下のYouTubeの映像を見て判断してください。この動画には決してそちら方面の映像は含まれていません。

そして気になった方には、以下の2つのレビューを読んで貰えたらうれしいです。今回、カンパニー松尾本人がRTするAVブログ「ゴリとラーのAV放浪記」のゴリーとラー(@GandR_Drifters)さんに寄稿していただきました。「こんなすごい文章載せて頂いていいのか!」と思うような凄いレビューです。そして巻末にジャンルを関わない「この作品から連想した10作」も付けました。カンパニー松尾もロックファンであり、過去にレーベルを運営して豊田道倫川本真琴のCDを出しています。やはりロックファンは必見です。でも無理しない範囲でこの特集を楽しみ、そしてこの作品に少しでも興味を持っていただけたらこれ以上幸せなことはありません。(ぴっち)

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『テレクラキャノンボール2013』 特報 youtube

注意:閲覧注意の画像や文章はありませんが、読みたくない方もいると思うので空白行を配置しています。読む方はスクロールをお願いします。最初は僕のテキストで、後半がゴリーとラーさんのレビュー、そして巻末に「連想する10作」を掲載しています。

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自分は「テレクラキャノンボール」を知る前から、監督のカンパニー松尾の名前を知っていた。銀杏BOYZ峯田和伸のブログにその名前が出ていたからだ。2005年2月27日の記事にその名前がある。

峯田和伸の★朝焼けニャンニャン - 高崎club FLEEZ(2005年2月27日)

そこでは「これまでも松尾氏の作品は好きで観てきたが、今回のこれはまた最高の「映画」だった」と書かれている。自分はこの頃、間違いなくこの手のビデオは持っていたが、松尾さんの映像は観たことがなかった。僕はこの手の映像でドキュメンタリーをやっている人がいることさえ知らなかった。

時が立ち、僕は松尾さんの映像と出会い、彼のファンになった。彼の作品では被写体が他よりもきれいに撮れている。他にも好きになる理由はたくさんあった。でもそれ以上に他の作品にはありえない映像が含まれていた。バイクに乗る。街を歩く。夜の街でベンチに座る。カレーを食べる。友人のライブを見る。父親の介護をする。そういう時、彼はカメラを回していた。それらの映像が僕を虜にした。そういう映像を見ていると、松尾さんの気持ちがほんの少しだけわかる気がした。もちろんそれだけを目的に彼の作品を観るわけではない。でも彼の孤独は、僕をリラックスさせてくれる。

しかし「テレクラキャノンボール」にわかりやすい寂しさは一切ない。1997年にはじまったこのシリーズには当初、花岡じった、平本一穂、市原カズ、バクシーシ山下といった彼の仲間が集った。彼らは仲間であり戦友でもあった。彼らと共に旅をする松尾さんに寂しさはない。それから舞台を移し、2009年に再開されたこのシリーズには同世代の戦友だけではなく、社員監督であったり、年下の仲間でもあり強烈なライバルでもあるメンバーが参加する一種のオリンピックのようなものになった。もちろん一緒に旅をするわけだから、男子学生的なお馬鹿な話もする。しかしレースが始まると一瞬で目の色が変わり、ありとあらゆる方法で勝ちに行く。

結果、今回出場した6人が6人とも自分を追い込むことになる。彼らは全員がその手の映像の監督として活躍している。しかしその6人全員が松尾さんのようにドキュメンタリー的な作品を撮っているわけではない。松尾さんでさえ普段から自分を撮るためにカメラを回しているわけではない。しかし結果的に全員が勝つためになりふり構わなくなり、不甲斐ない己の姿をカメラに収めることになる。

ネタバレ禁止なのでここには書かないが、それはもう、全員がひどい目に合う。そしてその姿は死ぬほど笑える。一応書いておくが、被写体を馬鹿にするようなことは一切ない。そのことについては下のゴリーとラーさんのテキストに詳しく書かれているが、基本的に彼らは紳士である。にも関わらず、自らドツボにはまり、結果ひどい目にあう。その姿は死ぬほど笑えるのだが、同時に観ている僕をどうしようもなく動揺させる。そして一つの疑問が頭に浮かぶ。

「なぜ彼らは躊躇しないのか」と。

別に彼らは奇人変人ではない。基本的には僕らと同じ一般人だ。サラリーマンとして働き、仕事としてその手のビデオを制作し、販売してお金を稼ぐ。普段からリミットを外して戦っているわけではない。だけど勝負をしなければならない時がある。「それがバイクレースやセックスレースなのか?」と問われれば答えに困るが、でも彼らにとって本気で勝負できる場所、それがテレクラキャノンボールなのだ。

それって何かに似ていない?そう、ロックだ。

なぜ銀杏BOYZ峯田和伸は、他のメンバー3人が脱退することになってまで9年という長い歳月をかけてアルバム『光のなかでたっていてね』を制作したのだろうか。それは峯田にとって本気を出せる場が銀杏BOYZだからだ。なぜ細美武士は命を削るようなアルバム『ELEVEN FIRE CRACKER』を制作した後に、さらに限界まで己を追い込み、バンドを活動休止までに追いやったのか。なぜ吉井和哉はアルバムリリース後に計113本のライブを1年かけて回るツアーを刊行し、文字通り『PUNCH DRUNKARD』になったのか。

簡単だ。彼らはロックだからだ。

カンパニー松尾はロックであり、テレクラキャノンボールはロックバンドなのだ。確かにこの作品はジャンル的にはアレだし、内容的にはアレ抜きの「水曜どうでしょう」だけど、一度映像を見ると、そこには決死の覚悟で勝負する6人の男たちがいる。プライドや若さ、男性としての機能、会社を傾けるほどのお金、愛。ありとあらゆるものを犠牲にして彼らは死闘を繰り広げた。

「ジャンル的にはアレだから、万人に薦められるわけではない」ということは何度も書いたけど、この『テレクラキャノンボール2013』は、間違いなく2014年の絶対に観なければならない作品である。編集が遅れに遅れたおかげで、2014年という年に銀杏BOYZの新作のリリースと重なったのは決して偶然ではない。今、本気でロックに殉ずる男たちがいる。本気でレースに殉じる男たちがいる。「テレクラキャノンボール」と銀杏BOYZは「本気を出す」ということを教えてくれる。

 

 

ぴっち(@pitti2210

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この作品を見た多くの男子は、一心不乱の6人の演者達の疾走、暴走、鉄風雷火の限りを尽くしてキレてイカしたバカ踊りに、抱腹絶倒して拍手喝采するに違いない。だけれども、女性の中にはモヤッとしたものを感じる人もいるだろう。その靄を突き詰めていけば、それは「女性蔑視」になる。確かに、女性が40代と言うだけでポイントはマイナスされ、コンドームを使用しないでセックスすれば、プラスポイントをゲットできると言うルールであるし、容姿の醜い女性とのセックスを仲間内で大笑いするシーンもある。

だけれども、それは表面的な事象に過ぎない。もしくは、カンパニー松尾監督の神編集の術中に嵌っている。

なぜならば40代の女性だからと言って演者達はスルーなどしないどころか、むしろゲット出来た喜びで満ち溢れている。彼らは、事前に性病検査をして証明書まで持参しており、コンドームを使用しない事でリスクを背負い込むのは男性側である事。また、醜女とのセックスを笑うものは、自分も笑われており、結果として笑い合っているだけで、それは演者達だからこそ許される行為であり、決して女性蔑視などではない。なぜなら彼らは当事者であるからだ。もしそこに「女性蔑視」があるとするならば、それは画面を見て笑っているこちら側の人間にある。

以上の事から本作は「女性蔑視」ではなく、むしろジェンダー論的に言えば、「男性蔑視」の作品である。これを見た多くの男子が、画面の中に演者達にロマンを感じ、渇望し、憧れを抱く。でも彼らのやっていることは、制限速度を無視して公道でレースをし、あちらこちらで、素人女性をゲットしてセックスをしてポイントをゲットして勝負を競うと言う、もはや社会不適合者の所業である。

ではそれらに憧れると言うことは、どういう事か?社会のルール、マナー、世間体に雁字搦めに拘束されて健常者のフリをしているからこそ、演者達を羨望して憧憬するのであろう。本作は、男子の本質、根幹が、バカ丸出しの社会不適合者である事を、間接的に知らしめている。これはもう「男性蔑視」としか言いようがない。

作品の冒頭、「抜きに特化」した作品ではない旨が告示されている様に、初っ端から長々とレースシーンが続き、セックスバトルのターンに入っても、素人女性をゲットするのに四苦八苦するシーンが延々と映し出され、もはや、濡れ場はメインコンテンツなどではなく、素人女性の人間模様を映し出す1つの要因でしかない。となれば、「テレクラキャノンボール」はAVの体裁を成し得ていない。

AVの本質、根幹と言うのは、女性が喘ぎ悶えている姿を映し出すことである。なぜならば、AVと言うのは、男性の性的欲求を解消する為のものだからである

としか思っていない。もしくは、思いつかない。ユーザーも、おそらくは作り手の多くも。

カンパニー松尾監督は、神編集に、叙情に満ちたテロップ、そして音楽を多用して独特の世界観を映し出すが、彼の根幹はそんな表面的なものなどではなく、誰も彼もが同じような一極集中のAVを作る中、濡れ場があれば、後は何をしてもよいと言う考え方、すなわち、「AVにあるべき形などない」と言う思考の差異である。そして、差異による万象の変質が生まれる。それが極まったものが「テレクラキャノンボール」であると個人的には思う。

ただ多くの人の目には異端に映ることであろう。だが異端からメインストリームに逆襲した本作が、那由他の彼方から放った乾坤一擲の矢は届いたのだろうか?

DVDが発売される直前、オーディトリウム渋谷でのレイトショーで約2時間に再編集された「劇場版テレクラキャノンボール」が単館上映され、口コミがツイッターで広がり、連日連夜、大入り満員となった事で、青森から沖縄まで全国展開の様相を呈し、『めちゃイケ』がネタとしてパクり、「Respect to カンパニー松尾」の文字が、土曜のゴールデン枠に踊り、発売して数か月後に、アマゾンで1位を奪取する。

本作の続編である「裏テレクラキャノンボール」を見ればわかるのだが、伊達や粋狂、道楽で作った作品ではなく、企業的、会社的に満身創痍になってまで生み出されたAVである。だからこそ、まだまだ話題は尽きない。

 

 

ゴリーとラー(@GandR_Drifters

ゴリとラーのAV放浪記

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めちゃめちゃイケてるッ! モテない男No.1決定戦 本気ナンパ対決」(2014年5月10日放送より)

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テレクラキャノンボールから連想する10本

せっかくの特集なので、『テレクラキャノンボール2013』から連想した作品を2人で5本ずつ上げてみました。下に行くにアレ色が強まっていきますが、それも魂のこもった作品ばかりなのでぜひとも観る/聴くことをおすすめします。(ぴっち)

1. 水曜どうでしょう『原付ベトナム縦断1800キロ』(バラエティ、2003)

サブカルファンなら誰でも知っている北海道のローカル・ドキュメンタリー・ロードムービー型バラエティです。今はすっかり全国区になった大泉洋がひどい目に合うのだけど、思えばこの番組がはじまったのもテレキャノと同時期。今回は一度番組にピリオドが打たれたベトナム編を選びました。笑いとドキドキと切なさ、そして寂しさがテレキャノ同様、観る人の胸を打ちます。(ぴっち)

2. 銀杏BOYZ『光のなかに立っていてね』(ロック、2014)
光のなかに立っていてね *通常仕様

光のなかに立っていてね *通常仕様

 

 

メンバー3人がいなくなるまでして、峯田和伸が作り上げたものはなにか。どうしてそこまで音楽のために殉じることができるのか。そこに深い意味はきっと泣くて、ただただ銀杏BOYZという場が楽しくて、同時にどうしようもなく苦しいけど、本気を出せたのだと思います。この作品を聴くとどうしようもなく勝っていて、それと同時に負けていて、その感触がテレキャノとまるっきり同じ。(ぴっち)

3. Weekday Sleepers『OK Alive』(ロック、2010)

上のYouTubeの特報でもお馴染み『テレクラキャノンボール』シリーズのテーマ曲を手がけるWeekend Sleeperのアルバムです。ホームページでフリーダウンロード可。U2の「Vertigo」、New OrderDinosaur Jrを松尾さんにYouTubeで見せられて生まれたのが、かのテーマ曲「Passion Fruits Telecrider」とのこと。ロックです。(ぴっち)

4. 豊田道倫『m t v』(ロック、2013) 
m t v

m t v

 

実は豊田道倫のライブ映像を撮影することが、カレー以外の松尾さんのライフワークなのです。そんなわけで松尾さんの作品では豊田さんの音楽だけではなく、豊田さん本人も登場します。実を言うとその流れでこのアルバムを買い、雷に打たれ、一気にファンになりました。(ぴっち)

5. 平野勝之監督失格』(映画、ドキュメンタリー、2011)
監督失格 DVD2枚組

監督失格 DVD2枚組

 

これは普通のドキュメンタリー映画です。たしか年齢制限もないはず。でもこれはAV女優・林由美香とAV監督・平野勝之の物語です。公私にわたって林由美香と付き合った平野勝之が、彼女の死を発端に自らの「監督失格」に向き合う映画です。プロデュースがエヴァ庵野で、主題歌が矢野顕子。もっともっと届けられるべき作品だと思います。(ぴっち)

6. カンパニー松尾『僕の愛人を紹介します』(AV、ドキュメンタリー、2007年)

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えっと、AVと言うよりかは、ロードムービーです。一人の女性が心の忘れ物を取りに行くと言うね。北欧の景色と女優さんのコントラストが、ものすごく美しい!っす。(ゴリーとラー)

7. カンパニー松尾『恥ずかしいカラダ DOCUMENT 愛咲れいら』(AV、ドキュメンタリー、2011年)

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生まれ育った震災直後の被災地に行き、情緒不安定になった女優さんを映し出す事に批判する人もいるだろうが、リストカットの跡が無数に残る幸薄い女性を通じて、個としての彼女の不幸と全としての震災の悲しみを重ね合わせているようにも感じられるディープな作品っす。(ゴリーとラー)

8. カンパニー松尾『TANGO』(AV、ドキュメンタリー、2012年)

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夏の日本と冬のアルゼンチン、アルゼンチンの昼と夜の街並み、ブエノスアイレスの美しい人工的な街並みとイグアス国立公園の滝や自然の景観などの様々な対比がイメージとして描かれている素晴らしいロードムービーっす。(ゴリーとラー)

9. 梁井一『レイプ』(AV、ドキュメンタリー、2014年)

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「レイプ」って言う題名なんだけど、もはやレイプではなく、カラミでもなく、AVの現場を追うドキュメントでもなく、一見キワモノに見えるかもだけど、その本質は、自分で理解できない他人の判断で行動する事で混乱に陥る女優さんの姿を映し出した人間ドキュメントっす。(ゴリーとラー)

10. ビーバップみのる『501』(AV、ドキュメンタリー、2014年?)

これは、まだ見ていないと言うか、まだ発売されていないんだけど、制作途中報告動画を見るとね、もうすごく興味湧いちゃうんですよ。それとtwitterと連動して双方向コミュニケーションでドキュメントが作られていく過程が見られるのも斬新でおもしろいっす。(ゴリーとラー)